青き炎、エイリアと戦う   作:支倉貢

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91話 vsダークエンペラーズ1・苦しい戦い

それぞれが重い足取りのまま、ベンチへ集合した。まだ足が完治していない私はすぐにそこに座って、みんなを見守る。

ショックなのだろう。私だってそうだ。ようやく全てが終わって、みんなで笑い合ってサッカーができると思った矢先にこれだ。しかも戦うのは、エイリア石を受け入れる仲間達。機嫌が悪いとか、そういう問題じゃない。でも、心が重いのだ。

 

「壁山、それは……」

 

ふと、円堂さんが壁山さんに話しかける。その手には、雷門中サッカー部の看板が。

 

「……みんな、忘れちゃったんスかね……?」

「……………………」

 

ゆっくり立ち上がって、壁山さんの元に歩み寄る。そっと木製の看板に手を添えた。

 

「……忘れてなんか、いません」

「青木さん……?」

「忘れてなんかいません。忘れるワケありません。きっと……」

 

グッと込み上げてくる何かを堪え、拳を握りしめた。

 

「たとえ部室が無くなっても、貴方達はサッカーを捨てなかった……。その魂は、エイリア石なんかで奪われるほど、柔じゃありません……だから……だから!」

「そう、だな……あんなに頑張って……俺達はサッカーを続けてきたんだ……。だから、エイリア石に潰されるはずがない!!」

 

自分を落ち着かせるための譫言が、円堂さんに聞かれていたらしい。私は顔を上げた。

 

「仲間は、いつまでも仲間なんだ!!」

「!」

 

力強く断言した彼に、私の心はまた震えた。ああ、貴方はどうしてそんなに強いの。そして、その言葉に励まされている自分がいることに気がつく。私だけじゃない。前を向いたのは、他のみんなも同じだ。

 

「取り戻そう、本当のみんなを!」

「……あいつらは、俺がサッカーを諦めかけた時、側にいてくれた仲間だ! 今度は、俺達が……!」

 

一之瀬さん、豪炎寺さんをはじめとした初期メンバー、更にはこの旅で新たに仲間に加わったみんなも、気持ちを一つにする。

試合を指揮する響木監督が、私達を見渡す。

 

「お前達、準備はいいか」

「響木監督……!」

「あいつらに見せてやれ! お前達のサッカーを!」

「「「「はい!!」」」」

 

声を揃えて答えた私達は、今度は円陣を組んだ。中心で手を重ね合わせる。

 

「さあ、いくぞ! みんな!」

「「「「おおっ!!」」」」

 

この戦い、必ず勝つ。そして、みんなでまたサッカーをするんだ。強い決意が束ねられ、一つの大きな塊になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

足を負傷している私は、今回もベンチで見守る。キックオフは雷門(こちら)から。ボールを受けてドリブルする鬼道さんが、上がってくる円堂さんにパスを送る。

すると、すぐさま風丸さんが駆けつけた。円堂さんもボールを奪われまい、と気を引き締める……が。

 

「!」

 

私は思わず、自分の目を疑った。すれ違いざまに、風丸さんがボールを掠め取ったのだ。あのスピード……人間じゃない……!

土門さん、鬼道さんがフォローに入る。それを認めた風丸さんがニヤリと笑うと、胸元が紫色の光を放った。

 

「疾風ダッシュ‼︎」

「なにっ……!?」

「なんだあの速さは!」

 

かつて見たスピードを遥かに超えている。これも全て、エイリア石の力だというの……? せっかく……富士山まで行って、その根本を破壊できたと思ったのに……! 忌々しさが込み上げてきて、膝の上に作った拳を強く握りしめる。

中盤は風丸さんが一人で突破し、残るは壁山さんと立向居さん。普通のシュートだけでザ・ウォールを突破し、ムゲン・ザ・ハンドで阻止する。しかし、その威力はかなりのものらしい。

 

「……まだ、ほんの小手調べさ」

 

風丸さん達は強い。必殺技無しで、ここまでだなんて。きっとみんな、エイリア石の力無しでのレベルも上がっているのだろう。

 

「爆熱ストーム!!」

 

豪炎寺さんが必殺技を放つ。GKの杉森さんは、影野さんとの連携技・デュアルスマッシュで軽々とシュートを止めてみせた。雷門ベンチの横……つまりダークエンペラーズ側のベンチでは、研崎が嬉々とした声で言う。

 

「ダークエンペラーズの強さは圧倒的……! 勝敗は火を見るより明らかだ!」

 

みんなも、私も悔しさのあまり歯噛みする。パッと視線をピッチに向けると、杉森さんがボールを前線に投げ、染岡さんに渡った。ゴール前には、円堂さんと壁山さんが立ちはだかる。

 

「通すわけにはいかないッス……!」

 

二人のマークの動きに注目しつつ、染岡さんは高らかに笑った。

 

「ッはッはッはッは!! 今の俺はどんなディフェンスだって突破することができるんだぜ?」

「それは本当の力じゃない!!」

「だったら俺を止めてみろ!!」

「染岡……ッ!」

 

染岡さんの胸元に光る、紫色の鉱石。

 

「エイリア石を否定するなら……それ以上の力を……俺に見せてみろ!!」

 

意を決して二人が前に出ると、染岡さんはこれを強引に突破。しかし……そこに、吹雪さんが。

 

「染岡くんっ……! アイスグランド!!」

 

上手く隙をついた守備だった。ボールはサイドラインを出て、一瞬試合が止まる。舌打ちをして戻ろうとした彼の背に、吹雪さんが声をかけた。

 

「染岡くんっ!! ……僕は忘れてないよ……! 君がどんな悔しい思いで、チームを離れたか……どんな思いで、僕に後を託したのか!!」

「…………フン。そんなこと覚えてねぇな……」

「な…………、染岡くん……」

 

そう吐き捨てられ、吹雪さんも愕然とする。……どうやら、今の彼らには何を言っても無駄らしい。

……私が口を挟むか? 私からすれば、架空の力に縋り、それに頼りたい気持ちがわからない。エイリア石を使って、それで力を手に入れて、その力を何に使うのか。

……そもそも研崎は、エイリア石を軍事利用しようとしているわけだ。エイリア石でパワーアップした人間を、兵器として使うために。まるで私のように。少なくとも、私と同じ存在を作るのだけは、絶対に許せない。実験の駒として用いられ、モルモットとしてただただあらゆる薬を投与される日々。脳裏に苦い思い出が蘇り、唇を噛んだ。

形は違えど……私のような思いをする人間は、もう要らない。私だけが知っていれば、それでいい。

だから円堂さん、どうか彼らを救ってください。私個人の願いを、貴方達の戦いに重なるのはとても身勝手だとは思うけど…………でも、これ以上、力に翻弄される人を見るのは嫌なの。だから、どうか……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー私の切なる願いを嘲笑うように、その後も圧倒的な力の差を感じられた。一之瀬さん達のザ・フェニックスは西垣さんのスピニングカットで止められ。闇野さんのダークトルネードは、ついに雷門ゴールをこじ開けた。

ベンチでただプレイを見ることは、私の目にハイソルジャーの身体能力を、まざまざと見せつける結果となった。ザワザワと心が波立つ。

嫌だ。やめろ。やめろ。こんなの……私はもう、見たくない……ッ!

 

「今度は俺が決めるぜ!」

 

これまでの試合の中、チームメイトとしての彼が言ったであろう台詞。それが、敵として聞くとここまで苦しいのか。

攻め込む染岡さんを追いかけ、吹雪さんが走る。

 

「染岡くんは、僕が止める……! 止めなきゃいけないんだ!!」

「やれるもんならやってみろ!!」

 

染岡さんへの思いが強い吹雪さんが、必死になって食らいつく。

 

「ワイバーンッ……!」

「っぐぅぅっ……!!」

 

足が振り抜かれようとした瞬間、吹雪さんが真正面から蹴り防ごうとする。しかし威力は並々ならぬものなのか、吹雪さんの表情が歪んだ。

 

「テメェッ……さっきから俺の邪魔ばっかしやがって!!」

「染岡くん、僕と風になろうって約束したじゃないか!! ……忘れちゃったの!?」

「だから……覚えてねえって、言ってんだろオオ!!」

 

染岡さんの怒号と共に、エイリア石が輝きを増す。そしてーー吹雪さんごと、ボールを蹴り飛ばした。

 

「うわあああっ!!」

「吹雪さんっ!!」

 

宙を舞う彼に、思わず叫んだ。ゴールを強襲するシュートに一歩も引かず究極奥義を放った立向居さんだが……これも破られ、ボールはネットを揺らした。

 

「見たか……! 最強のストライカーは俺だ!」

 

奥歯を噛み締めて、ピッチを見る。今私の表情は、きっと険しいだろう。険しくならない方がおかしい。

……それから攻めてもすぐに止められ、攻められてなんとか防いでという状態が続いた。そして、0対2で前半は終了した。

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