【仮名】ダンまち×ワンピース 短編集   作:何でもない

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突発的な執筆欲の発散のために書き上げた(ry

執筆欲の発散中に別の執筆欲が湧きました。



コンセプト:伝説のジジイがいるなら伝説のBBAがいてもいいじゃない





【魔女医】編
【魔女医】は永き旅を終えて新たな旅を始める


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 ──あれはいつの話だったか。そう、もう過ぎた年月を数えるのも馬鹿らしいほど昔の話だ。とある海賊の船に乗って海に繰り出していった不祥の弟子にしてバカ息子が帰ってきた。とんでもない男の船に乗って、そいつらと一緒にとんでもないことをやってのけたというのに、帰ってきたバカ息子は相も変わらずといった様子だった。まあ、医者としての腕や知識は多少なりとも磨いてきたようだがねェ。

 

 ──そのバカ息子は、患者の治療だけでなく一丁前に弟子なんかをとって医術を広めるために世界を駆け巡るようになった。

 

 『俺だけが"万能薬"だと駄目なんだ。万能薬はいつでも誰でも必要なときに飲めないと意味がないんだ。だから、俺がやるんだ。世界中に沢山の万能薬を作るんだ!』

 

 ──そうして、アイツは引っ切り無しに各地を転々としたようだ。あの悪魔の実で得た力も使って人手が届かないような僻地にも足を運んだんだとさ。まったく、お節介なところはあのヤブ医者そっくりだね。

 

 ──……あたしかい? なに言ってるんだよ。あたしは"医者"さね。治療を求める患者がいるなら己の全てを使って治すだけさ。まあ、あたしは貰うもんはきっちりと貰うがね。医者は神様じゃないんだ。無償の救いなんてものを求めるんじゃないよ。

 

 ──あたしが変わらない中で世の中は大きく変わった。あの"Dの意志"を継いでいた麦わらの坊主が中心となって変貌を遂げた。だけど人の生き死にまで変わるわけではない。人間生きてりゃあ何処かしら怪我するし、何処かしら病を負う。そして、そいつらを治し癒すために医者はいる。つまり、あたしのやることが変わらないのも道理さ。

 

 ──そして、どれ程の月日が流れたんだろうか。あたしも250歳から自分の歳を数えるのを止めた。あたしの不祥の弟子でもあるバカ息子も勝手に先立っちまったよ。あの親不孝なバカ息子は地獄に堕ちたのだろうか? いや、海賊になるほどの大馬鹿野郎な我が息子は仮に天国へ行けたとしても、呆れ返るほど平和な天国より人々が苦しんでるであろう地獄へ行くことを選ぶだろう。ついでに、あのヤブ医者の頭も一緒に治療しておいているといいんだがねェ。

 

 ──そして、あたしも人の子だ。怪我や病と無縁でも老いからは逃れられず、死からも逃れられない。かといって、老いからも死からも免れるとするならばそれは神の御業だ。人がそんなものを求めるもんじゃない。人の生き死にに向き合う医者ならば尚更さ。

 

 ──閑静な森の中に佇む一軒家、それがあたしの終の住み処であり私の墓標だ。酒も飲んでないのに手が震え目が霞むようになってからは医者はキッパリ辞めた。これで続けてたらヤブ医者だと罵倒したあいつのことを言えなくなっちまうからね。後は命の残り火が減っていくのを感じながら静かに本を読み、そこそこに酒を嗜む。老いぼれの人生の使い方なんざそれでいいのさ。

 

 ──そんな世捨て人をの下を訪れるのなんざ、あのバカ息子の孫弟子だか曾孫弟子くらいでそれも指折り数える程度だ。食料やら酒やら本やらを持ってきてもらっては、こっちは知ってる限りの医学の知恵を教えたり、医学書の内容を噛み砕いて教えたりするのがあたしの楽しみになっていた。それはそうと世俗から切り離されると医学というのは進歩が本当に早いとつくづく思わされるね。世界がどうなろうと人は生きるのに必死ってわけさね。

 

 ──まあ、そんな感じに生きていたんだけど遂にあたしも臨終のときを迎えようとしていた。昔はレンガの壁に突き刺さるくらいに包丁やナイフをを投げられた腕も、レンガの壁を蹴り砕けた脚もピクリとも動きやしない。

 

 ──まあ、未練は無いさね。ざっと数えたけど300年以上は生きたはずだ。一介の人間が生きるのには充分な長さだろう。むしろ、死後の世界でどうするかを考えるくらいがちょうど良い。あたしは医者として多くの人を治してきたから天国……と言いたいところだが、信心深い生き方をしてたわけじゃないから地獄に堕ちるかもしれない。

 

 ──結局、あれこれ悩んだけれど向こうに行った後に改めて考えればいいと思った。そもそも、人生ですら何が起こるか予想もつかないんだ。死後の世界のことなんか考えて何になるっていうんだよ。まったく余計なことばっかり考えちまったもんだ。こういうのを年は取りたくないっていうんかねぇ。

 

 ──さて、そんなどうでもいい時間を過ごしてたらとうとう"お迎え"とやらが来たようだ。見えないし聞こえもしないけど、なんとなく分かる。あたしの人生もこれで幕引きだ。行った先であのヤブ医者やバカ息子に会えるといいんだがね。

 

 「まったく、いい人生だった……。」

 

 ──その言葉が最期の記憶だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──そう、最期の記憶になるはずだった。

 

 

 

───

──

 

 

 

《???》

 

 ──自分は何者なのか。私はこの答えに頭を悩ませていた。まるで自分が自分ではないかのような感覚が頭の中にいつも渦巻いていた。

 

 ──両親は物心ついたときには既に居なかった。流行り病で早くに亡くなったらしい。それからの私は"神様"の名の下で生きていくことになったらしい。本当かどうかは分からない。もしかしたらこの神様が殺したのかも知れない。でもそんなことを考えていても仕方ない、と冷めた考えを持っていた。

 

 ──私は怪我や病気をした人の手当てが何故か上手かった。別に誰かに教えてもらった訳じゃない。ただ、こうすれば患者を助けられると分かってるように体を動かせた。周りの人はそれを一部の嫉妬を除けば称賛をもって褒めてくれた。だけど、私にとってはこの知識が不気味で仕方がなかった。まるで私ではない私がいるような気がして怖かった。

 

 ──そしてもうすぐ11歳の誕生日を迎えようとしていたある日、私は神様に呼び出された。そこで話された内容は、私のこれまでの功績を称えて正式に私を神様の眷属として迎え入れるというものだった。何でも神様の血を私の背中に垂らすことで正式な眷属としての証を刻むとのことだ。

 

 ──周囲からは羨望の目で見られた。その儀式を受ければ自分の肉体は昇華されただの人間には辿り着けない高みに至れるんだ、と周りの人々からは力説された。だけど、私は興味が湧かなかった。寧ろ恩寵という名の下に"力"によって束縛される感じがして凄く不快だった。

 

 ──だけど、拒否権なんて無かった。身寄りもなければ1人で生きていく力も無かった当時の私はそれを受けるしか無かった。受けなければそれが不敬と見なされて村八分の扱いを受けるだろうとどことなく理解していたからだ。

 

 ──だけど、その儀式こそが奇しくもそれが私の、いや()()()の感じていた不気味さの答えを示してくれるなんて思わなかったがね。

 

 

 

───

──

 

 

 

 (ああああっ!? 何でこんなことになってんだい! お迎えの天使様か死神様かは知らないけど、人の魂1つまともに運べやしないのかい!?)

 

 くれはは柄になく混乱していた。彼女とて300年を越える知識や記憶を1度に流し込まれれば耐えきれるものではない。

 

 そう、彼女は"転生"していたのだ。そして、彼女は今まで認識できなかったDr.くれはとしての記憶を思い出したのだ。

 

 (本当になんなんだい! こんな300年以上生きた女よりもっと優先させる命があるんじゃないのかい!)

 

 自分の頭に流れ込む大量の情報の波に苦しみながら彼女は意識を手放した。

 

 

 

───

──

 

 

 

「はあ……。これが生まれ変わりだか何だかは知らないが、なっちゃった以上は色々考えていかないとねぇ。」

 

 彼女は自身に与えられた個室のベッドから上半身を起こし、静かにぼやいた。目を覚ましたときに近くに居た人──倒れた自分を手当てしていたらしい──から話を聞いたところ、自身は神からの【恩恵(ファルナ)】を授かった直後に苦しみ出して昏睡したとのことだった。

 

 「【恩恵】を受けたことで肉体という器が高みに昇ったことで精神との剥離が起きたのではないか、と主神はおっしゃっておりました。調子が良くなるまで休んでいて構わないともお聞きしていますのでどうかゆっくりお休みください。」

 

 世話役の彼女からの伝聞を聞いたくれはは、しばらく1人にさせて欲しいと頼み部屋を空けてもらった。人が居なくなったことを確認した彼女は改めて状況の確認に移る。

 

 (あたしの"今の"名前はオーム・リフ*1で年齢は11歳。ここはリブロ街*2で神様だとかいう■■■((主神))が治めてる。今までは診療所で小間使いとして働いていた。そこでの働きが評価されて【恩恵】を受けた。まあ、原理はともかく記憶を取り戻したのはコレが原因で間違いないね。)

 

 彼女は自身のこれまでを振り返り、殂して自身の背中に意識を向ける。

 

 (で、問題なのはこの【恩恵】ってやつだ。力が手に入るかどうかは知らないけど、こんなものに縛られるのは不愉快極まりないね。そして"神様"。話の限りだと天界から降臨した本物らしいけど下らないったらありゃしないね。どこぞの天竜人といい、どうして地上に降りてきて人々を引っ掻き回すかね……。)

 

 彼女はタメ息を吐いた。元々神とは変化の無い下界に飽きて、刺激を求めて地上へ降りてきた存在だった。超常的な神の力などは封印されているとはいえ、元々持っている権能を使えるものは少なくなく、ある程度の特権を有してもいた。

 

 (色々悩ましいけど……今考えるべきことはあたしの未来についてだね。)

 

 くれははこれからのことを思い巡らせていた。理由や置かれている状況はともかく、自分は第2の人生を歩んでいる。300年以上生きた知恵を活かせばどのような未来でも選ぶことは出来るだろう。

 

 (これからどうするか? 決まってるさね。300年より昔からやってきた仕事を今さら手放せるわけがないだろうがね。世界が変われど人が病に苦しむならやることは変わらないだろうからね。)

 

 だが、彼女の心は決まっていた。300年以上続けてきた生き方の続きを改めて始めようと既に決意を固めていた。

 

 

 

───

──

 

 

 

 「■■■((主神))様、御身の加護賜りし際に意識を手放すという愚行、どうかお許しいただきたく……。」

 

 「ふふっ、我が威光に下界の子であるお前が付いていけなかったことを咎めるようなことはせぬ。その力に感謝を忘れずに日々励むがよかろう。」

 

 「寛大なお心、感謝申し上げます。」

 

 彼女は心にもない敬語を用いながら自身の主神と対面していた。ちなみに神には下界の人々の嘘を見抜く力があるが、彼女の発言自体に嘘はない。神という存在に対して不用意に意識を手放したのは彼女にとって愚行であったも、その行為に対して恩赦を求めることも、その恩赦に感謝したいことも本心のことだった。

 

 「つきましては■■■((主神))様、厚かましくもお願いしたき儀がございますが、お聞き頂けますでしょうか?」

 

 「許す、申してみよ。」

 

 「【恩恵】を授かったのを機に気持ちを新たに医術に邁進したく、我が名を改めたく思います。いかがでしょうか?」

 

 「ほう、なんとも殊勝な心掛けではないか。よい、許す。新たな名を名乗るが良かろう。で、その名はなんと言うのだ?」

 

 彼女はゆっくりと息を吸い、神の目を向いてはっきりとそれを告げた

 

 「"くれは"。Dr.くれは、と名乗らせていただきます。」

 

 

 

───

──

 

 

 

 斯くして、彼女の第2の人生は本当の始まりを迎えた。彼女が先ず始めに行ったことは【恩恵】による肉体的増強分を自ら封じて且つ【恩恵】を持つ者と同様に医療行為を行うことだった。彼女は周りにこう言って憚らなかったという。

 

 「医者がやるべきことは神様の奇跡じゃない。人の努力の実を結ばせてやることさ。【恩恵】の有無で治療出来る・出来ないなんて馬鹿な話があっちゃならないのさ。医術なんてのはそれこそ獣だろうがバケモノだろうが知識と腕を磨けば出来るようなものじゃなきゃ意味がないんじゃないかい?」

 

 そして彼女はその威勢に違わず、誰よりも人を救った。記憶を取り戻す前より高かった彼女の医師としての名誉はますます周辺の町村に知れ渡るようになった。

 

 そんな彼女の【恩恵】の伸びもまた群を抜くものであったという。あるとき、それを知った者が彼女にその秘訣を尋ねた。彼女はこう答えたという。

 

 「【経験値(エクセリア)】をどうしてそんなに稼げるか、だって? 馬鹿なことを言うもんだねえ。人間、自分の寿命を全うするのが最大の偉業じゃないのかい? それのお手伝いをするんだから経験値なんかいくらでも積めるのは道理さ。もっとも、そんなこと考えて医者をやろうっていう馬鹿に限ってろくな経験は積めないだろうがね。」

 

 また、彼女は看護の傍ら厳しい肉体の鍛練にも取り組むようになった。彼女の人生にとって、それは医者としての知識と腕の次に必要になることが分かっていたからだ。あるとき、その鍛練の理由を尋ねられた彼女はこう答えたという。

 

 「前線で戦うわけでもないのに鍛練をする意味があるのかって? 人を救うのを何だと思ってるんだい? 兵隊さんは平時なら訓練してればいいかもしれないけど、私たち医者は平時だろうがお構い無しに患者が来るんだ。しかもそれは訓練じゃなくて実戦さ。しくじれば人が死ぬんだ。どっちが体力を要するか分かるだろ?」

 

 また、【恩恵】を用いない医療を行う彼女であったが、鍛練や修学となれば話は別だった。寧ろ、【恩恵】によるスキルや魔法、発展アビリティなどには興味を強く示し、それらによる影響がどれ程になるのかを細かく調べ、それらを修めようとした。あるとき、その矛盾点を指摘されて彼女はこう答えたという。

 

 「持つ者も持たざる者も等しく施術出来る医術はもちろん理想さ。でも考えてみな、持ってるものを使わず鍛えずで目の前の患者を救えなかったらそれこそ大馬鹿者だと思わないかい? まさか、医療器具が万全に使えるのに素手で治療しようとする医者に看病してほしいのかい?」

 

 こうして彼女は医者としての働きと研究者としての学習と1人の人間としての鍛練を繰り返す日々を送った。前世から培った知識と体の動かし方を持ってしても苦行といえる日々を耐え抜いた彼女を遂には【恩恵】すら偉業と認めたのだ。

 

 ──Dr.くれは、Lv.2にランクアップ。14歳、3年の月日を費やしてのことだった。

 

 (だが、駄目だ。この世界において私が求める医術には【恩恵】無しじゃあ辿り着けない。【恩恵】を1度私の手に納めなくちゃならない。でも、あの神が私を手放すとは思えない。)

 

 周囲からの称賛の声を余所に彼女は頭を抱えていた。【恩恵】のことを調べるうちにこの世界に触れた彼女は世界への興味をより強いものにしていた。現世において肉親の居ない彼女にとって、この町や主神への未練は無いに等しかった。だからこそ、この街を飛び出して世界の知識に触れたいと日々考えていた。

 

 それを考える中で問題となったのは自身の【恩恵】と現在の主神との関係だった。【恩恵】を更新するのは主神のみの特権であり、それを抜け出すためには現在の主神から改宗(コンバーション)という主神を変更する許可を受けなければならなかった。

 

 しかし、彼女の名声が高まる中でくれはの主神は彼女への執着心を緩めることは無かった。とにかく自分の下に縛りつけようとしていることを彼女自身が把握していた。かといって、主神への武力行使は最大級の犯罪行為とされていたので手を出すことも出来なかった。そのような板挟みの中で彼女は治療と研究と鍛練の日々を過ごした。

 

 

 

───

──

 

 

 

 「すまない、我々はオラリオの冒険者だ。冒険者依頼(クエスト)のために遠征していて、補給のためにここで落ち着きたい。」

 

 転機は突如として訪れた。この世界でもっとも栄える都市の1つであるオラリオから冒険者たちがリブロの街に立ち寄ったのだ。

 

 彼女らは【ヘラ・ファミリア】。世界中の強者の殆どが集うという迷宮都市オラリオに置いて8()5()0()年以上もの間最強派閥の片翼として君臨していた。この遠征部隊の代表者もファミリにおける役職を持たない身でありながらLv.5とこの一帯では天上の強さを有していた。

 

 彼女たちは依頼のためにオラリオの外へと繰り出し、その道中でこの街に立ち寄っていた。そして、この街に存在する"名医"の存在についても耳にしていた。

 

 「すまない。あなたがDr.くれはでよろしいか?」

 

 「退いてな、今は治療中だ。患者でもないヤツにうろちょろされてたら邪魔なんだよ。」

 

 くれはは開口一番、彼女たちにそう言いはなった。周囲はそれに恐怖した。何せ相手は世界に名だたるファミリアだ。仮に気分を害したからと暴れられようものならこの街など10分と耐えずに火の海に沈むだろう。

 

 しかし、【ヘラ・ファミリア】の遠征代表者たちはそれに従ってその場を退いた。そして、遠目にくれはの治療風景を観察していた。その後、くれはが治療を他の医師に引き継いで休憩に入ったところを見計らって代表者は彼女に話しかける。

 

 「聞きしに勝るその医術の技量、お見逸れした。どうだ、貴女さえ良ければ私たちのファミリアで活かしてみないか? 確約は出来ないが私がヘラ様や団長らに誠意をもって掛け合うことを約束しよう。」

 

 それは入団の誘いだった。オラリオの第一級冒険者、しかも【ヘラ・ファミリア】の冒険者からの申し出だ。これがどれほどの名誉なのかは誰しもが分かっていた。

 

 だが、くれはは暫し考え込んで次の問いかけをした。

 

 「なら、1つ賭けをしよう。あんたらの……そうだね、Lv.3の冒険者と戦わせてくれ。私が負けたら素直にあんたらのファミリアに入ろう。だけど、もし私が勝ったら1つ頼みを叶えてほしい。どうかね?」

 

 彼女の言葉を聞いたとき、その場にいた全員が驚愕した。いくら、くれはがLv.2とはいえ彼女は医者であり、冒険者でいうところの治癒師(ヒーラー)であり非戦闘職だ。一方で相手はLv.3であり、【ヘラ・ファミリア】という最前線で戦う戦闘職の強者たちだった。あまりの発言にくれはの精神状態を心配するものまで現れた。

 

 だが、【ヘラ・ファミリア】の遠征代表者はそれを承諾した。そして、1人の冒険者を選定した。対戦相手はLv.3になって2年余りのアマゾネス。蹴り技を主体とする格闘系の前衛職だった。

 

 鍛練しているとはいえ街の名医に過ぎないLv.2対【ヘラ・ファミリア】の冒険者にしてLv.3として成熟している前衛型冒険者。本来であれば無謀ともいえる対戦カードだった。

 

 

 

───

──

 

 

 

 「ハアッ……私の……ハアッ…ハアッ……勝ちだね。約束は……ハアッ…守ってもらうよ。」

 

 だが、結果は殆んどの者の想定を裏切るものだった。くれははオラリオの冒険者にしてLv.3の戦士を相手に勝利を勝ち取ったのだ。彼女自身が前世から持ち込んだ知恵と技術、そして現世での努力が彼女を勝利へと導いたのだ。

 

 彼女の望みは当然、現在の主神の眷属からの脱退だった。くれはの主神も【ヘラ・ファミリア】が関わる約束を反故には出来なかった。悔しさを露にしながらも彼女を改宗可として手放した。彼女はここに本当の自由を手にいれたのだ。

 

 また、この勝利は偉業であるとも認められた。──Dr.くれは、2回目のランクアップにしてLv.3に到達。19歳、前世での記憶を取り戻してから8年後のことだった。

 

 そんなくれはを見て【ヘラ・ファミリア】の遠征代表者は彼女をオラリオへと誘った。ファミリアへの勧誘こそ叶わないとはいえ、彼女の存在はオラリオにおいても大きな存在となると彼女は考えていた。

 

 「この世の全てが集う"迷宮都市オラリオ"ね……。ふん、馬鹿馬鹿しいね。お誘いはありがたいけど断らせてもらうよ。この世の全てが置いてあるっていうなら何処ぞの【麦わら】の坊主に任せときゃいいさ。」

 

 その誘いをくれはははね除けた。彼女は【ヘラ・ファミリア】に約束を果たしてくれたことへの感謝を告げるとオラリオとは異なる方角へと旅立ったのだった。

 

 その後の彼女は、世界を自由に旅しては道行く先々の町や村で医者として患者を治し、または医学を教えて路銀を稼ぎながら未知の病やまだ見ぬ治療薬の原材料を探して文字通り縦横無尽に足を運んだのだった。

 

 

 

───

──

 

 

 

 《時は流れて》

 

 

 「さて、次は何処へ行こうかね?」

 

 くれはは次の旅に繰り出すために荷物を纏めて滞在している街を後にしようとしていた。旅を始めてから20年が経過し、彼女も39歳となっていた。そんな彼女はこれまでと変わりなく、街の一角で地図を眺めながら次に向かう先を考えていた。

 

 「そこに行く婦人よ、すまない。貴女はDr.くれはではないかな?」

 

 そんな彼女を呼ぶ声があった。くれはが声のあった方向へ振り返る。そこには暗い青髪で同じような暗い青い垂れ目の若い男性が立っていた。

 

 「何だい、医神……いや薬神様。生憎だけど眷属の勧誘なら他をあたりな。それとも、若さの秘訣でも聞きたいのかい?」

 

 「おや、勘違いをさせてしまったようだな。申し訳ない、そのようなつもりで話しかけたわけではないんだ。しかし、その口振りだと私が薬神だと知っていたのか?」

 

 「知るわけないさ。ただ、あんたが漂わせているその匂いは薬品、もっというなら薬品の原材料の薬草やら種子やら根の匂いさ。他の人は分からないかも知れないけどあたしには丸分かりでね。」

 

 「匂いだけで見抜くとは……。その噂に名高き女医としての力量は伊達ではないということか。」

 

 「で、あんたは何者なんだい? まさか、自分の身を明かせないような大層な御身分なのかい?」

 

 「確かに本来なら早々に名乗るべきだったな、申し訳ない。では、改めて……」

 

□男は一呼吸置き、そして言葉を続ける。

 

 「私は薬神ミアハ。Dr.くれは、貴女の一時を私に分けていただけないだろうか?」

 

 

 

.

*1
くれは⇒暮れ葉((季節の)暮れの葉)⇒オータムリーフ⇒オーム・リフ

*2
チェリーブロッサム(桜の英名)⇒チェ(リーブロ)ッサム⇒リブロ






ダンまちの原作キャラを登場させるまでに9000文字近く使っているのは間違っているだろうか

暗黒期以前のミアハの動向は分からないのでオリジナルやってます。後、850年以上の部分は誤記ではないです。つまりはそういうことです。もちろん、経過を書くわけ無いです。



くれはの今世の名前とか産まれた街とか【ヘラ・ファミリア】の団員情報とかは今回限りの使い捨てのオリジナル設定なので忘れてくれていいです。


○Dr.くれは
ワンピース原作最終話の100年後を舞台にした物語とかにしれっと登場してそうなキャラクター。
作中で141歳の純粋な人間にも関わらず、生きてるどころか下手な若者よりアグレッシブ。どれくらいかというと標高約5000mにも達し気温がマイナス50℃を下回るような山頂のお城で、上はジャケット1枚羽織っただけのヘソだしで下は一般的なスラックスという装いで生活出来る御方。作者の尾田先生曰く"超人"。

今回は無理矢理転生させるために現在の倍の300歳以上まで年齢を重ねて何とか死んでいただきました。そんだけ年取っても生きてそうとか言うのは禁句。



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