泡沫世界の観測者天使ちゃん   作:タイクーン火災

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ギザ歯ちゃんの方はそろそろ更新します
書きたくなったので書きました


白黒天使と腹黒天使

 

 君たちは天使と聞くと何を思い浮かべるだろうか。

 

 白く美しい翼? 

 頭の上の光り輝く輪っか? 

 金髪で白い清楚な服を着てたりなんかして。 

 

 おっと、これは見た目の話だけだね。外側だけだ。中身がない。

 私が問いたいのはもっと実な話さ。

 

 そうだね、その実態。つまり天使という存在の仕事ってなんだろう? 

 存在意義とも言い換えれるかもね。

 

 魂の導き? うーん、それはどちらかといえばあの根暗集団(しにがみ)のほうかな。ジメジメしてて辛気臭いんだよな、アイツら。私、苦手なんだよ。

 

 人の恋を成就させる? おいおいキューピットだぜ、それは。危ないところだったな。私だったから良かったね。

 そんな戯言、私以外の天使に聞かれてたら

「あんな脳内お花畑と一緒にするな」ってカンカンだぞ。

 温厚な私でもちょっとカチンときちゃうレベルだね。気をつけなよ。

 

 おっ神様の小間使い。ほーん、なるほど、いいね。良い線いってるね。センスあるぞ、君。

 

 そうなんだよ、天使っていうのは別にキラキラしてないんだ。やってることは神様のパシリみたいなもんさ。天界にも上下関係はしっかりある。思ったより体育会系ってやつなんだよ。部下ではなくパシリってとこに着目してほしいね。

 

 それにさ、髪だってこの通り、ほら黒色と白色のハーフハーフだ。ツートンカラーってやつだね。天使のイメージを壊しちゃったかな? ハハッごめんごめん。

 

 ……おい、誰だよ。今、牛みたいって言った奴。たしかに色合いホルスタインだけどさ、セクハラだぞ。普通に。女の子に対してお前乳牛と似てるなって言ってるんだぞ……。悔い改めろよ。

 

 .まあ、今までダラダラ喋っていたけども。つまり何が言いたいかっていうと、たった一言。

 どこの世界でもパワハラ上司はクソ無能ってこと。

 

 こんな私みたいな、超絶優秀最強系天使を、壊れゆく世界を見続けるだけの虚無MAXワークに配属するくらいにはね。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほら~先パイ、また意識飛んでるー。 ちゃんと見てないと駄目っすよー。なにか起きるかもしれないんすから」

 

「どうせ何も起きないよ。それにボーっとしてたのはいつもの毒電波のせいだね。特に問題は無いな」

 

「問題しかないじゃないっすか……。というか毒電波ってなんすか……。

 コホン、いいっすかっ! 先パイ。この仕事は神様からいただいた、大切なものなんです。しっかりお勤めしなくてはいけないんですよ!!!」

 

「あーもう、うるさいぞ。そんなに熱意をもってよくできるね、君。

 私はもう疲れたよ。寝ることにする、異常事態があったら極力、自力で解決しといてくれ。ミスったりほんとにヤバかったら教えてくれよ、君の慌てる顔を見て二度寝するから」

 

「そこは私に任せておけ、とかドンと構えといてくださいよ〜。って、ホントにおやすみの体勢になってるじゃないっすか。完全に私の慌てる姿を肴に一眠り行く気じゃないっすか〜! 

 もー、夢見るんならこっち見てても別に変わんないと思うんすけど……」

 

 

 

 ここはハザマの世界。世界と世界の間に在る名もなき場所。

 世界と世界がたゆたう空間。

 ハザマの世界はこの世に無数に存在する。

 ただ、ここはそんなハザマの世界の中でもトップクラスにレアな場所。

 壊れゆく世界、泡沫の世界が集う場所。

 世界の終点駅。いわゆる世界の墓場だ。

 

 二人の天使の前には無数のシャボン玉が浮かんでいる。

 目を凝らせばシャボンの中が様々に、複雑に光っているのがわかるだろう。

 鈍く、暗く光るものもあれば、底抜けに明るく光るものもある。

 これこそが泡沫世界。崩壊の一歩手前である世界だ。

 

 白色の翼をもつ、一人の天使がシャボンを指さしながら白黒の天使に話しかける。

 

「世界を覗くのって楽しいんすけどね……。ほら、これとかどうっすか? なんかキラキラしてて楽しそうっすよ」

 

「何が楽しそう、だ。君は馬鹿かね。ここに集まるのは潰れる寸前のものばかりだぞ。ほら、すぐに消える」

 

 ツートンカラーの天使が言うやいなや、パチンッとシャボンが弾けて消えた。ピンク色の光が中から溢れてそれもまたすぐに消えた。

 

「何言ってんすか!これっすよ! これこれ! この無常観が良いんじゃないっすか。さっきまであんなに希望に満ちていたのが、パチンと消えるんすよ。何度見ても堪んないっすね」

 

「……そういえば、君はそんなやつだったね。今思い出したよ。一応聞いておこう、世界の崩壊理由は?」

 

「あーっと、見てた限りだと発展のし過ぎによる世界側のエネルギー不足による自滅っすね。特に生物の望みを実現する願望実現機構? みたいなのが滅茶苦茶エネルギー食ってたみたいっす。幸せなまま何も考えられず死にゆく人々の姿には涙が出るっすね〜」

 

「オーケー、過度な発展による世界の崩壊か。よくあるパターンだね。願望実現の段階にまで至るのは、やや珍しいが……。特段、イレギュラーもないみたいだし、別に面白みもないな、ありふれた終焉だ」

 

「面白くはあると思うんすけどね。まあ、アブノーマルではないっすよねー。たしかに、意外性があと一歩足りないっす」

 

 世界の崩壊は基本は安定している。ほとんどの世界は老衰のようにひっそりと終わるのだ。

 勿論、その世界に住む者たちからすれば天変地異である。

 しかし、天使などの上位者存在からすれば文字通りシャボン玉が弾けたぐらいの出来事である。

 気にも留めない、留めることなどない。そんな些細な出来事。

 

 だが、そんな世界の終焉を愛するような上位者もいるらしい。まあどこにでもモノ好きはいる、ちょうど目の前にいるアホのように。

 

「おい、指でちょんちょん泡沫世界をつっつくのはやめろ。何が起きるかは私もよく知らないんだよ。これでイレギュラーなことが起きたら怒られるのは私なんだぞ」

 

「それってつまり、無限にちょんちょんしてもいいってことっすよね? この手触り、癖になるんすよ。先パイも触ってみます?…冗談っすよ!冗談。イレギュラーが起きるとマズイっすもんね。

 まあでも正直、私はイレギュラーっていわれてもよくわかんないですし。今、何のためにこうやって世界を監視してるのかも分かんないんですけどね」

 

「嘘だろ……。君はその程度の理解度で私にさっき講釈を垂れていたのか……。信じられん。そして君のその無駄にあるこの業務へのバイタリティは一体どこから来たんだ」

 

「私は神様のこと普通に好きですからねー、やれって言われたら当然やりますよー。あっもちろん先パイのことも好きですよ。安心してほしいっす。まあ、神様のため、そして自分の実益のため、この仕事に従事してるっすね」

 

「その動機、2:8ぐらいだろ、内訳。クソッ見た目があまりにも天使すぎるから中身をよく忘れてしまうっ!」

 

「私は純正天使っすからね。生まれつきの天使、そのまんま天使っすね。天使に成ったもの達とは違うんすよ。いわばエリートっすね」

 

「なんでそんなエリート様がこんな辺境にいるんだか。私みたいな成り上がり天使には皆目見当もつかないね。

 というか君、ホントに純正か? 真っ黒な内面もこの仕事の内容を知らないのも不自然すぎるぞ」

 

「純正っすよー。誕生してから一度も天使じゃなかった瞬間は無いっすよ。それに別にどんな天使だって腹は真っ黒っすよ。私らの最高権力者(かみさま)も、腹の色はわかんないですもん」

 

「あんなん真っ黒だろ。私にはわかるね。この私をこんな役職にまで左遷したんだぞ、黒かろうが黒くなかろうが許せないね」

 

「別にこの職も言うほど窓際部署ってわけではないでしょうに。それで? 仕事の内容教えてくださいよ、先パーイ」

 

「んあ、そうだったね。ホントに知らないのか、君。結構君が私の補助に入ってきて長いんだけどな…。君はずっと何をしていたんだよ…。

 まあいいさ、過ぎたことは。おさらいだ。私達の仕事は単純、壊れゆく世界、泡沫世界を観測し、我々まで牙が届きうるイレギュラーな生物、物体を発見、対処すること。

 イレギュラーであっても敵対的でない場合には、天使への転生など仲間になるように打診すること。こんぐらいさ」

 

「へー、意外と単純っすね。簡単そうだし」

 

「何が簡単なのか、周りを見てみろアホ後輩が。この数は一体どうなってる! どちらを向いてもプカプカプカプカ。アホ面浮かべて浮いてやがる、私は君が来るまでの数世紀、ワンオペだったんだぞ。一人で来るも来る日もシャボンを眺めていたんだ!私はもう疲れた、寝る」

 

「寝ないでくださいよ〜。なんでそんな負の連鎖(ワンオペ)を繋げようとするんすか。二人で協力すれば作業効率は2倍、いや4倍だって夢じゃないっすよ!」

 

「2倍はまだしも4倍はどんな計算式なんだ。その場合過剰に働くのは君だぞ。

 まあ、別に上の事情もわからんでもない。天界、天使業界は人手不足だ。ほんの前、悪魔との大決戦があった。未だに悪魔との小競り合いはちょこちょこある。こんな仕事に天使はそう割けない」

 

「人手不足なのはわかるんすけど、イレギュラーってヤバイんじゃないんすか? 私達に届きうるんすよね」

 

「ヤバい。それもめっぽうヤバい。ただ、そんなにヤバいやつはそういない。私達と同じほどのパワーを持ったやつがこんなシャボンから生まれると君は思うかね?」

 

「まあ、あんまりそうは思えないっすね」

 

「だろ? 結局そうゆうことなんだ。それにイレギュラーだとしても別に芽のうちならば容易く摘める。それに世界は壊せても私達に勝てるものはそういない。届きうるぐらいじゃよほどでない限り負けはない。

 そういう意味では、よく考えたらワンオペじゃないだけ私は当たりの部類なのか……?」

 

「当たりっていうなら当たりじゃないっすか? 私みたいな可愛い後輩ができたんですし」

 

「寝言は寝て言え、私のようにな。お休みの時間だ」

 

「あー!!! いつの間にか寝てる、この人! どんな速さで寝たんですか! ちょっ先パイ、寝ないでくださいって」

 

「なんだよ? うるさいな。私の優雅な睡眠を阻害しやがって。たとえ君だとしても私は容赦はしないぞ」

 

「ちょっ洒落にならないですって、それ。なんで武器まで出してくるんすか!ジュッて、翼がジュッてなりましたから。ってかそれ先パイのガチ装備じゃないっすか!前自慢してたやつー」

 

「そうだぞ、かっこいいだろ。私はこの圧倒的火力に惚れ込んでな、って違う違う、君、うるさいぞ。今、急に疲労が爆発したんだ。安眠を妨害したな、こうなった私はもう止まらないぞ」

 

「それ自分で言ってたら世話ないっすからね!止まってください って危なっ!」

 

 白黒天使の放つ光の剣撃が、逃げ惑う腹黒天使から逸れて背後のシャボンを一つ撃ち抜いた。

 途端、切り裂かれたはずのシャボンが膨張して金色に光る。周囲のシャボンを取り込むようにして、さらに巨大化していく。

 二人の目が揃って点となった。

 

「え? え? これなんすか? ヤバくないですか? え? 先パイ?」

 

「ヤバいな、これ。私の持つ圧倒的な聖なるエネルギーが偶然、シャボンに吸い込まれてしまったようだね」

 

「え? 偶然ではないと思うんすけど。こんな場所であの規模感の攻撃ならいくつかのシャボンに当たるのは必然っすよね?」

 

「当たるのは必然かもしれないが、膨張するのは偶然だ! 何度かシャボンを怒りに任せてたたっ斬ったことはあるが、こうなったことは今までにないっ!」

 

「バチバチに前科持ちじゃないっすか、先パイ! ってか今までになかったことが起きてるって、これまさか……」

 

「うむ、イレギュラーだな」

 

「うへー。キツイですって。しかも、さっきまでの先パイの理論通用しないサイズじゃないっすか」

 

「シャボン玉の大きさからは強大な個体になれないのなら、シャボン玉を大きくすればいい、か。面白いな」

 

「なんも面白くないっすけどね……。げんなりっすよ。……んで? どうするんすか?」

 

「まず対話だな。んで敵対意志を確認する。無いんならさっき言ったとおり勧誘だね。あったら破壊だな」

 

「それするにはイレギュラーと対峙しないといけないと思うんすけど。ココ、イレギュラー君これます?」

 

「なんで招待前提なんだよ。行くんだよ、私達が」

 

「え? マジすか?」

 

「マジマジ、大マジだよ。君、崩壊する世界好きなんだろ?」

 

「私、見る専なんすけどね……。まっ、先パイとのデートってことでここは一興っすね」

 

「仕事だよ、馬鹿。私こういう面倒くさいの嫌いなんだけどな……。ほら、手ぇ貸して」

 

「はいはい、これでいいっすか」

 

「ちゃんと握ってなよ。泡沫世界に行くのはコツがいるんだ。手が離れたら別の世界へ飛ばされるかもわからんからね」

 

「激コワっすね。ちゃんと握りまーす」

 

 そう言うと白黒天使の左腕を体全体で抱きしめる。

 

「……動きにくいわ」

 

「しっかり掴めって言ったの先パイっすからね!」

 

「別に掴めとは言ってないんだけどね。

 ……はぁ。しょうがないか。んじゃ、行くぞー」

 

「了解っすー」

 

 気の抜けた声とは裏腹に、暴力的とまでいえる魔力の奔流がハザマの世界にほとばしった。その魔力はシャボンの合間を縫うように巡り、未だ膨張を続ける金色のシャボンに吸い込まれていく。

 

 二人の影がかき消える。ハザマの世界ではさっきまでの喧騒が嘘のように静まり返っていた。

 パチンとシャボンが一つ割れる。

 

 気がつくと二人の天使は枯れ果てた大地の上に立っていた。空には真っ赤な燃える球体がいくつも浮かんでいる。

 生物の姿は見えない。生きてるモノの気配が完全に失せたその大地に二人はいた。

 

 二人の上位者が荒れ果てた世界に降り立つ。

 

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