泡沫世界の観測者天使ちゃん   作:タイクーン火災

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プカプカ系上位者

 

 悪魔がクスリと笑う。白黒天使が眉をひそめた。

 

「ふむ、何故? と、言われましてもですね。理由なんてあとからついてくるものなのでしょう」

 

 白黒天使から詰問されてもどこ吹く風。一柱の悪魔は口角を上げる。白黒天使がまわりに浮かばせた光球は今まさに破裂しそうなほどのチカラが渦巻いている。破裂したら上位者存在ですら手酷いダメージを受けるのは目に見える。

 

「お〜ん、気に食わねえなあ。この私でもお前が腹では何考えてるか分かんねえもんな。大したもんだよ。……余裕だぜっていうそのツラもまあ腹が立つ」

 

 光球がひときわまばゆくなる。菓子をポリポリ食べてた真っ白天使から全く場違いな笑い声が届く。

 

「先パ〜イ、わかんないんっすか〜。私にはもう手に取るようにあ〜ちゃんの気持ちが分かるっすけどね〜。なんせ、ダチ、なんすから」

 

「何だよ、後輩くん。急に入って来るなよ。それにダチって……。ハァ、まあいいさ、それはもう。……問題はコッチの悪魔だろ。なんでわざわざ私のとこまでやってきたのか。ほれ、キリキリ喋れよ」

 

「先ほど申し上げた通り、理由、と言われましてもなのですが。……まあ、強いて言うなら好奇心、でしょうか。……いや、おっと、ちょっと待ってください。巫山戯てるわけではないのです。先の対戦での貴方の勇名は上位者界隈に轟いていましたので。……それに、彼女がそれはもう楽しそうに貴方のことを喋るのでね、先パイが〜、って」

 

「ちょっと、あ〜ちゃんそれは言わないお約束じゃないっすか〜。恥ずいっすよ〜。先パイのことが大好きなのバレちゃうじゃないっすか〜」

 

「あ゛? 先パイ冥利にゃ尽きるが、それが全部じゃねえだろ。……それはそうと後輩君が私のことなんて言ってたかは後で教えてくれよ」

 

「どっひゃ〜、恥ずかしいっす〜」

 

「君な……。どうせろくでもないことあーだ、こーだ言ってたんだろ。もう今更、後輩くんに対してどうこうはないよ、ちょっと気になるだけさ」

 

「先パイってば気にしいですもんね〜」

 

「君はホントに……。んで、悪魔くんさ、なんで来たのさ。流石に好奇心だけで君等の言うところの殺人鬼の根城まで来ないだろ、案外敵討ちか? 私がボコしたやつの中に友達でもいたのかい?」

 

 白黒天使がニヤニヤ笑いながら悪魔を見る。悪魔は変わらずすました顔で紅茶を飲んだ。

 

「いや、ホントにただの好奇心なのですよ。私は悪魔界隈では異端ってやつなので、私は背反の悪魔なのです。どうしょうもなくそう在るのです。私が今、ここにいるのもそれ故なのです」

 

「あ〜、そういや魔神ぶん殴ってきたんだっけ? ホントかどうかは分かんないけど。それにしても、背反かぁ……、んで、悪魔か。定められたコウモリ野郎かぁ? それならそれでめんどいんよなぁ」

 

「背反云々は元々他称ですよ、行きずりの名です」

 

「余計、めんどいな。もっと単純な方が好みなんだけどなぁ……。めんどいのは嫌いだよ、後輩くんの友達なのが一番、めんどくさい」

 

 白黒天使が身の回りに浮かぶ光球を消した。

 

「とりあえず後輩くん、そのクッキー頂戴」

 

 白黒天使がゴロンと宙に転がった。

 

「え? もしかして急にディスられたっすか? ほらっ、先パイ、クッキーっすよ〜。ヘイ、パ〜ス!」

 

 悪魔がキョトンとした顔で小首をかしげた。

 

「おや、やらないんですか? 一番単純ですよ、めんどくさいの嫌いなんでしょ?」

 

 クッキーを受け取った白黒天使がボリボリと食べる。こぼれるクッキーのカスが周りのシャボンに降りおちた。

 後輩天使が「また散らかして〜」と口をとがらせる。

 

「いや、いいよ。単純なのは好きだけど、それよりもだらけるほうが好きっちゃ好きだ。それに、後輩くんの友達らしいしね、君を殺しちゃうと後輩くんがめんどくさそうだ」

 

「なんすか〜、私をだしにしてサボりたいだけでしょ〜。このダメダメ先パイ〜」

 

「先パイにそんなこと言うのか。もっとダメダメなダメ後輩くんがさ」

 

「まあ、私にとってはありがたいことではありますが……。ええ、友情の勝利、というやつですね、これが」

 

「圧倒的だったっすね〜、先パイに初勝利っすか〜!?」

 

「調子に乗るのも大概にしろよな、君たち。今からやるか? お?」

 

「いや〜、遠慮しとくっすよ〜。ねえ、あーちゃん」

 

「ええ、平和にいきましょう。平和に、争いは何も生まないのですから!」

 

「そうそう! 平和が一番っすよ〜」

 

「……君たちはどうしてこう、いや、まあいいや」

 

「あ〜! それより見てくださいよ先パイ! この世界!」

 

 真っ白後輩天使が一つのシャボンをランランと輝く目で見る。覗き込むと緑豊かな自然世界に巨大な隕石が無数に降っていた。

 よくよく見るとそれは隕石というより、どこかもっと違う何かのような──―

 

「ん? っていうかこれさっき先パイの近くにあったシャボン……? 隕石も形が歪なような……」

 

「なあ、後輩くん。君がクッキーを私に渡したよね。確かにこぼしたのは私だが、責任の所在で言うなら私と君で5:5。いや、4:6じゃないか」

 

「えこれクッキーのカスなんすか? っていうかなんで私のほうがより責任負うんすか〜」

 

 「後輩と先パイ、だろ?」

 

「エグいパワハラっすねー」

 

「え? 世界の崩壊ってこんな感じで訪れるんですか? 悪魔の私からしてもこれは中々……」

 

「うるさいぞ、悪魔くん。私はもう寝るから、あとはそこのお友達とどうにかしなよ」

 

「現実逃避っすね〜。……お供するっす!」

 

「いいんですか? これこのままで……。って、あなたまで寝るんですか……」

 

 天使が二人で横並びで眠り始めた。周りにあったシャボンが次々と弾けて消えた。残された悪魔はちらりとそれを見て嘆息した。

 悪魔は寝ている二人のそばに寄る。少し悩んだあと、白黒天使の横で眠り始めた。

 

 真っ白な、シャボンの浮く謎の空間で3人の少女が眠っている。

 真っ白な天使が横の白黒天使に抱きつくように寝てる。

 悪魔が白黒天使の直ぐ側で丸まるように寝てる。

 白黒天使は大の字で寝ている。

 

 シャボンは3人を取り囲んでプカプカ浮いていた。

 

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