追記:長い線で区切っているところは時間軸、視点ともに変わります。
打ち付けるように風が当たり、周りの雲は俺の肌に触れて水の玉となり体温を奪っていく。
激しい閃光と爆発音の中、俺は箒に乗っていた。
いや正確には乗せられている。
俺は前にいる金髪に白黒の服と帽子をかぶった少女、『霧雨 魔理沙(きりさめ まりさ)』に情けないことにしがみついていた。
もしこれだけ聞いたなら俺はとてつもないヘタレのように聞こえるかもしれないが。
なんせ足場は折れてしまいそうな木の箒一本で、地上が雲に隠れて見えない程高いところを飛んでいるんだからだれだってしがみつくだろう。
当たり前だ。
おまけに辺りは激しい弾幕が展開しており、光の弾や氷柱がぶつかり合ってはキラキラと輝く。
俺は上下左右前後あらゆる方向に振り回されてもう精神的に限界だった。
そのとき魔理沙が弾を避けるために大きく横に動き、グンッと箒が回転してその勢いは倍になって後ろの俺に伝わった。
その反動で後ろにいる俺の足が箒からはなれて空中に浮く。
腕は魔理沙からいとも簡単に引き離れ、雲の中に俺は吹き飛ばされた。
一瞬身体にかかる重力が消えたように浮いたと思ったら、今度は見えないなにかに引っ張られるかのように一気に下に落ちていく。
「うわあああああああ!!」
俺は喉が壊れる程大きな声で叫んだ。
しかし落下は止まらず、風が耳元で死の宣言をするかのように大きく唸っている。
魔理沙は一瞬後ろを振り返ってから、すぐに気づいたようで下に落ちていく俺を見ながらなにか叫んでいる。
「か……で!!」
落下しながら俺は恐怖のあまり目をつむった。
一体全体、どうしてこんな事になってしまったのだろうか…
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「か……で!!」
遠くから声がする。
聞き覚えがあるが、決して今聞きたい声ではない。
「かえで!」
声はよりいっそう大きくなりはっきりと聞こえるようになった。
目を開けると自分の部屋の木でできた天井がある。
背中にはベッドの心地よい弾力が感じられ、部屋はカーテンのおかげで薄暗かった。
声の主は下の階から俺を呼んでいるようだ。
「楓(かえで)!今日、蔵の中から梅干の入ったつぼをとって来てくれるかしら?」
母が台所から大きな声で聞いてくる。
時計を見ればもう午後の三時になろうかというところだ。
閉めていたカーテンからは夏の眩しい日光が漏れてきている。
「はいはい」
俺は面倒だなぁと思いつつベッドから起き上がり部屋から出ると、階段を下りて右の玄関で靴を履いき始めた。
「まったく、いくら夏休みだからってだらけすぎじゃない!」
靴紐を結んでいると母は顔だけを玄関とは反対にある部屋から出して呆れる。
俺はその声に対して『モウシワケナーイ』と返しながら靴紐を結び終えた。
「あなたねぇ……せめて着替えなさいよ」
立ち上がり戸の窪みに手をかけたところで再び母は口を開いた。
自分の身なりを今一度見てみる。
黒い半ズボンに白いドライのTシャツ、後は腕時計。
ものすごいラフなかっこうである。
「まぁ、物取ってくるだけだからそこは大目に……」
俺の言い訳に母はまた口を開こうとしたが先に戸を開ける。
「いってきます」
俺は玄関に飾ってある写真と母に逃げるように挨拶してから外に出た。
一瞬家の中と外の明るさの違いで何も見えなくなるが徐々に目が慣れてくる。
外に出ると夏の日差しが肌をジリジリと焼くように照りつけてきた。
『葛ノ葉(くずのは)』と書かれた家の表札を横目に俺は自転車にまたがり家を出た。
目指すは近所の山の中の蔵にある梅干。
しばらく自転車を走らせるうちに町を抜けて目的の山の中に入っていた。
覆いかぶさるような木の葉のおかげでここは夏でも比較的に涼しい。
しかし道はずいぶんと錆びれて、車が通る気配は一切ない。
俺は自転車を立ち漕ぎして山の斜面を登っていった。
徐々に視界が開けていき、なにもない広場に出た。
いや、なにもないというより、一つを除いてなにもない。
そこは大きめの公園のような芝生の土地で、奥に蔵がポツンと立っている以外は何もない。
ただ木がこの広場と蔵を隠すように周りに生えているだけである。
「ふぅ、やっとついたか・・・」
山の斜面を登りきり、蔵の前についた俺は自転車を止めた。
大きな木でできた両開きの蔵の扉を開けると中は真っ暗だった。
俺は扉の横についていたスイッチを押し電気をつける。
すると蔵の天井に裸のまま吊るされた電球達が蔵の中を照らした。
蔵の中は両側の壁には人が寝れるほど長い棚がいくつもついておりその中にはつぼや箱、鍋などガラクタが積み込まれている。
蔵の中に視線を巡らせると目当てのつぼは直ぐに見つかった。
俺は蔵の中から梅干の入ったつぼを持って来て自転車に積んだ。
これであとは帰るだけである。
蔵を閉めようと戻ってきた時に俺は蔵の奥に大きな箱が置いてあるのに気づいた。
「あんな物あったけ?」
俺は疑問と興味が湧き、箱に近づいてみた。
三十センチ程の正方形の箱にはびっしりとお札が貼られている。
尋常じゃない数だ。
明らかにこんな箱はなかった、気がするが……それよりも何が入っているのか気になる。
箱の封を解いて俺はふたを持ち上げた。
中には箱の幅と同じ位の大きさの丸い金属の板が入っている。
「何だこれ?…………鏡?」
鏡とおぼしき物を手に持って立ち上がると俺はそれを眺めた。
鏡には髪を首より少し短めに伸ばし、自分を見つめる顔、すなわち自分の顔が映っていた。
とくだん別の人間が映ったり、しゃべったりはしない。
その時である。
ふいに鏡が青白く光ったかと思うとバチッと静電気のような音がして俺は蔵の外まで吹き飛んだ。
外に吹き飛ばされ地面に打ち付けられる。
ゴッと頭に鈍い音が響いて俺の視界は暗くなった。
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俺は和室の中にいた。目の前にはもうだいぶ昔に死んだはずのおばあちゃんが座っている。
そして和室の戸を開けて小さい子供が入ってきた。
しばらくその子供はおばあちゃんと遊んでいたが、
急におばあちゃんは遠くを見るような目をして話始めた。
「いいかい?楓。私たち葛ノ葉の一族には代々受け継がれている大切なお仕事があるのよ」
「お仕事ってなぁに?おばあちゃん。ふうの事?」
子供はおばあちゃんのひざの上に乗って尋ねた。
「そうだよ、楓。私たちはこの世界には出てきてはいけない物を見守るお仕事、『封』があるんだよ。」
「出てきてはいけないものって?」
「あらゆる物の心を変えるこわーいお化けだよー」
おばあちゃんはわざと怖がらせるように言った。
「えー、そんなの見たくないよ!」
子供はおばあちゃんの言葉に少し怖くなったようで不安そうな顔をしている。
「大丈夫だよ。きっと楓ならやれるわよ。だから……」
おばあちゃんはにっこりと笑いながら言う。
目の前の光景も徐々に暗くなっていく。
「……けて……げ・さい」
完全に真っ暗になった世界の中に途切れ途切れの言葉が残った。
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目が覚めると周りは紅色に染まっていた。
いつのまにか夕方になってたらしい。
蔵はいつのまにか固く戸が閉められている。
腕時計に目をやって俺は驚いた。
「五時半!?」
たかが梅干のつぼを取るのに二時間半もかからないだろう。
早く家に帰らないと親が心配してるかもしれない。
俺は蔵で起きた出来事を考えるより先に自転車に乗って家に帰った。
今日の出来事は明日にでもまた調べに来よう……
自転車で山を下りつつ俺はそう思った。
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夕方。私と紅白の巫女『博麗 霊夢(はくれい れいむ)』は神社の縁側に座りながらあくびをこらえていた。霊夢はせんべいのなくなった鉢のなかに手をつっこんでいる。
しかし当然せんべいは出てこないのだがこの残念な巫女は物を漁るのが習慣づいていうからやめようとしない。
そして目の前では夕日に当てられて真っ赤になった天狗『射命丸 文(しゃめいまる あや)』が指を立てて自慢げに話しを三十分ぶっ続けでしていた。
「博麗結界。
この名前を知らない人間は幻想郷にいない。
昔妖怪の賢者達が幻想郷を守るために張った巨大な結界で、代々博麗の巫女がその結界を修復している。
そこには博麗の巫女しか使えない技術がうんたらかんたら……」
「で?そのどうでもいい話はいつ終わるのかしら?」
霊夢がふいに口を開き話をぶった切った。
「霊夢さん、話の腰をおらないでくださいよ!」
文が霊夢に話を邪魔されて不機嫌そうに言う。
--そうだぜ?霊夢。明日はそのどうでもいい話の結界を直すんだろ?
「魔理沙さんもさらっと肯定しないでください!」
「うるさいわね。面倒なのよアレ。疲れるし」
霊夢は聞く耳持たずといった感じで不貞寝してしまっている。
これで巫女だと言うんだから不思議だ。
もっと適任がいると思えてくる。
--やれやれ。あんなんで明日大丈夫なのか?
「まぁ、紫(ゆかり)さんも一緒に修復をするそうですし大丈夫じゃないですか?」
文は能天気に手帳に『博麗の巫女は平常運行』と書きながら答える。
どうせ明日か明後日の号外のネタにでもするのだろう。
地平線に沈む太陽を追うように星や月が現れ始めた。
--まぁ博麗さんの今後にご期待くださいってやつだな。
私はため息をつきながら星空を見上げた。