後ろから刺されて死んだ俺「もう一度サッカーがしたい!」神「サッカーだと?……よし、俺に任せろ!(ただし超次元)」   作:フェンス・オブ・ガイア

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ヨヤクト・ウコウシ・ワスーレ


家庭環境がピンチだ!俺が助ける!!!

 中学生たちと戯れた後は、家に帰ってサッカーの自主練をする。出来ることなら先のクラブチームに混ざって練習したいところだが、流石にそれは出来ない。コーチや監督にも迷惑をかけてしまうからな。

 だからいつも、ゲームに乱入しては一発だけシュートを決め逃げするくらいに抑えているのだ。

 

 え?そっちの方が普通に練習に加わるより迷惑だろって? 

 

 うるさい!!!!!!

 

 ……さて、今日も今日とて無事帰宅。カギが開きっぱなしの玄関扉をゆっくりと引く。

 

「ただいま……」

 

 静かに家の中に入ってスパイクを脱ぐ。

 

 玄関には、いくつかの靴が乱雑に散らばっていた。スニーカーと革靴とあと、ヒールブーツの合計3足。俺が今履いているボロスパイクをいれて4足になる。ちなみに俺は一人っ子だ。

 

 玄関の電気はついていないが、縦長の渡り廊下の向こうのリビングの電気はついている。

 

 はいここで、いきなりですが問題です。

 

 えー、たった今述べた状況から予想される、リビングで起こっている出来事の家で最も最悪なものとは?

 

 シンキングタイム!

 

 チク…

 

 タク…

 

 チク…

 

 タク…

 

 チッ…

 チッ…

 チッ…

 

 チーン!

 

 タイムアーップ!

 答えはぁ……皆も分かってるよな?

 はいそれじゃ……せーっの!

 

「ぶっ殺す!!」

「ちょっ、やめ……」

「待ってアナタ!この人は違うの!」

「あぁ!?何がどうちげぇんだよ!!」

 

 修 羅 場 !

 

 サッカーどころの話じゃないんだなぁこれ!!! 

 

 おおかた、母さんが不倫相手を家に連れ込んでいたところを仕事を早上がりしてきた父さんに見つかって戦闘開始といったところだろう。

 浮気性のクソアマに酒カスオヤジ。それと可哀想な間男。

 リビングの向こうではこの三人による修羅場が繰り広げられている。

 

 うん、自主練とか言ってる場合じゃないね。まぁこうなってしまったからには仕方がない。ここは息子の俺が一肌脱ぐとしよう。

 

 つっても、この地獄のような喧騒を止めるのは小学一年生の俺からしてみりゃ至難の業だ。

 

 第一に力ずくでは絶対に無理。フィジカルで負ける。

 第二に警察を呼ぶのもNG。ことはなるべく小さく収めたい。というかそもそも連絡手段がない。

 

 うーん、どうするべきか……

 

 ……あっ。閃いた。

 

 ……いくらクズ親といえど、子供への愛情くらい多少はあるはずだ。

 今思いついた作戦を一回シュミレーションしてみよう。

 

 

 

 

 まず最初に、三人は扉の向こうで言い合ってる。

 

『『『わーわーぎゃーぎゃー』』』

 

 口論がヒートアップしてきたところで、俺がリビングの扉を思い切り開ける。

 

 俺は叫ぶ。

 

『もうやめてっ!』

 

 三人は呆然とこちらを見つめる。そして、父さんがハッとしたように口を開く。

 

『っ!ぼ、凡人……』

 

 続いて母さんも

 

『ごめんなさい。私達が間違っていたわ……』

 

 ついでに間男

 

『おっ、なんか逃げれそう?今のうちにとんずらこくぜ!』

 

 間男にはここで退出してもらう。

 

 

 

 ……これで行けるな!

 

 この作戦、題して、題して……題して…………えぇと、うーん………

 

 よし!作戦決行だ!!!行くぞ!!!

 

 音を立てないようにリビングに近づき、入口の扉に手を掛ける。

 

 聞こえてくる暴言に悲鳴、衝突音。衝突音がするということは、父さんがリビングに置いてあるものを使って一方通行ドッジボールを始めたということだ。ふむ、戦いはかなり激化してきているな。

 

 ドアノブを回して、大きく生きを吸う。自ら戦場に身を投じることは流石の俺でも少し躊躇う。しかし、サッカーボールが置いてあるのはリビングの棚の上。自主練をするためにはここへ突入する他選択肢がないのである。

 

 バン、と扉を叩きつけるように開く。

 

 視界に広がったのは、予想通りの地獄。

 父さんが間男と母さんに向かって手当たり次第ものを投げつけている。子供にこんなとこ見せるとは教育に悪い。

 

 肺にためた空気を全部吐き出すように、声を張り上げる。 

 

「もうやめてっ!」

 

 シュミレーション通りのセリフ。

 さぁ、こっちを見ろ……!

 

「今日という今日は殺す!これで男何人目だよ!アァ!おい!なんとか言ってみろよ!なんだ、もう数え切れないくらいに男連れ込んでるってか!?」

「痛い痛い痛い痛い!髪ちぎれちゃう!痛い!」

「ちょ、おちついて……」

「うるせぇ!テメェは黙ってろクソ間男が!」

「あれ……。……んんん、スゥー……もうやめてっ!」

 

 聞こえなかったかな、ともう一度同じセリフを繰り返してみる。

 

「……アンタが悪いのよ!家事は全部私に押し付けて飲み会行ってパチンコ打って……!ギャンブルで負けたら私と凡人に八つ当たりして……もうウンザリなのよ!」

「うるせぇ!それとこれとは関係ねぇだろ!」

 

 もう一度。

 

「もうやめてっ!」

「関係おおあり!男作って遊んでなきゃやってられないわよこんな環境!」

「だまれ!」

 

 もう一度。

 

「もうやめてっ!」

「痛っ!……ほらまたそうやって!都合が悪くなったらすぐに暴力を振るって……!そういうところが嫌いなのよ!クソ男!」

「ごちゃごちゃうるせぇ!不倫するほうがわり「やめろつってんだろ!!!!」───ぐごべっ!?」

 

 

 仏の顔も三度まで。母さんの胸ぐらを掴む父さんの顔面に全力でぶん殴る。

  

 凄い勢いでぶっ飛んだ父さんは、3Mくらい離れた壁に叩き付けられることによってその勢いを殺した。

 彼はずどんと尻もちをついて、放心したような顔でこちらを見つめてきた。

 

 他の二人も、父さんと同じ様子でこちらを見つめている。

 

 奇しくも、俺が先程したシュミレーションと同じ光景だった。

 

 肩で息をしながら、俺は言った。

 

「……そこに直れ」

 

 その後、硬いフローリングの上に正座させて小一時間ほど説教をした。




サッカー要素どこ……ここ……?
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