異能雀士はレズしかいないって本当ですか?   作:りーたー

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麻雀が強い=モテる世界

 幼い頃から、やたらと女性にモテる人生だった。

 八歳の頃、ちょっと喉が渇いて近くの自販機までジュースを買いに行った日、私は誘拐されかけた。

 顔をマスクで覆った下着姿の成人女性にストッキングを頭に被せられ危うく連れ去られるところだったのだ。

 幸いにも、同じように私を誘拐しようとしていたグループが複数いたため、それらがつぶしあいになった隙をついて何とか逃げ出すことができた。

 

 以来、私は学校と麻雀教室以外には基本でかけない人生を送っている。

 それ以外の場所――外食とか映画とか――は必ず家族同伴、絶対に一人で私を家の外に出さないというのが我が家の家訓となっている。

 

 いやぁ、怖かったね。

 未だに下着姿の女性を外で見かけると発作を起こしてしまうくらい、当時の光景はトラウマになっている。

 いやそんなことねーだろって思うかもしれないけど、結構あるんスよこの世界……

 

 まぁ、そんな頭のおかしい異世界現代事情はさておいて。

 つまり私はとてもモテる。

 これはTS転生によるバグの影響だと私は考えているが、そもそも雀士ってのは強ければ強いほどモテるのがこの世界の常識だ。

 当然それも無関係ではないだろう。

 

 で、昨日のバレンタイン騒動を踏まえて。

 じゃあ他の強い雀士の恋愛ってどうなってるの……というのが今の疑問だ。

 

 そして今、私はそれを解決するべくネット上の知り合いと麻雀を打っていた。

 私が中学に入学し、パソコンを買い与えられて以来ずっと卓を囲んでいる知り合いだ。

 全員が私と同じ女子学生。

 中学か高校かの違いはあるが、私ともう一人が今年進学するので、来年は全員が女子高生だ。

 リアルでも、オフ会を通して顔を合わせたことのある信頼できるメンバー。

 少なくとも、私に対して発情しないというだけで私には交友関係を続ける理由のある人々だった。

 

Shino_そういえば、今年のバレンタインお前らどれくらいチョコ貰った?

 

 Shino、これは私。

 先程までやっていた半荘が終わって、次の半荘が始まったために話題が切り替わったのでこう切り出した。

 

ユエである故_お、なんですか? いきなりモテマウントですか?

 

 ユエである故、私と同じ中学生のメンバー。

 実は出身が同じ県なので、オフ会以外でも結構面識がある。

 

快法女子_それ聞いちゃう? ボクらにそれ聞いちゃう?

 

 快法女子、ボクっ子。

 リアルでの印象はモテそうだなぁ、こいつって感じのボーイッシュ女子。

 実際モテる。

 

ドラ待ち師匠_Shinoさん!? もしかして本命とか受け取っちゃったんですか!?

 

 ドラ待ち師匠。

 何か私への視線が怪しい発情女。

 でもこいつは信頼できる、理由は察しろ。

 

Shino_いや、私の話じゃなくて皆の話が聞きたいの。ってか私のバレンタイン事情は全員知ってるでしょ

 

ドラ待ち師匠_それで本命は!? まさか本命は受け取ってませんよね!?

 

Shino_受け取ってないよ落ち着け。

 

ドラ待ち師匠_落ち着いてますよあそのドラポン!!

 

ユエである故_ちょっとー!? 手番飛ばされた上にドラまで献上してるじゃないですかー!?

 

快法女子_テヘペロ

 

 ――なんて、まぁ割りと気の置けない友人達である。

 ネットで麻雀を打ちながら、我々は適当にダベり続けている。

 三年以上ネットで続いた関係なんて、まぁそんなものだ。

 

ユエである故_そうですねー、私はそんなに貰ってませんよー

 

Shino_へぇ、以外。快法女子ほどじゃないけど結構モテると思うんだが

 

ユエである故_そりゃー、彼女いますしねー、私

 

Shino_なるほど

 

Shino_え?

 

 いやまって、とりあえず最初に切り出したユエの話を聞こうとしたらとんでもない爆弾発言が出てきた。

 いるの!? 私知らないんだけど!? 年一くらいのペースで顔合わせてるのに知らないんですけど!?

 

ユエである故_いますよー、家が隣で幼馴染なんですー。付き合ってもう十年くらいになるかなー?

 

快法女子_関係深っ、羨ましいねぇ

 

ユエである故_Shinoちゃんが知らないのも無理はありません、あの子麻雀はそんなに強くないから、大会とかにでませんからー

 

Shino_ああ、なるほど

 

 そりゃあ会わないわけだ。

 何せ、私とユエが年一くらいで顔を合わせる場所ってつまり、全国中学生麻雀大会の会場だからな。

 応援席にはいるかもしれないが、会場の外では私とユエは少し会話する程度の繋がりしかなかったので会わないのは自然だ。

 

 ユエは当然ながら強い異能雀士だ。

 個人戦で全国に行ける枠は4つあるのだが、そのうち二つは私とユエで常に確定ってくらい、この三年間は私とユエの世代だったほどで。

 だからまぁ、ユエだって当然モテるのだろうけれど、恋人がいれば遠慮が発生するわけだ。

 

 ――私の場合はどうだろう。

 少し考えたけど、たとえ恋人ができても奪い合いになる未来しか見えねぇ……っ!

 教師が倫理観振り切ってガチ恋してくるんだぞ! 寝取られなんか怖かねぇ! 野郎寝取ってやる! みたいなやつが量産されるに決まってる。

 

 やっぱりバグってんな。

 

快法女子_ボクはえーと、ひーふーみー

 

ドラ待ち師匠_こいつ数え始めたんですけど!! 羨ましいんですけど!!!

 

Shino_そういうとこだぞ。

 

快法女子_二十二個でしたー、うち本命は私の目算だと六個ー。いやぁモテるねぇボク

 

ユエである故_いいなー

 

ドラ待ち師匠_ここに浮気者がいるんですけど!!!

 

 快法女子は一般的なモテる異能雀士の典型みたいなやつ。

 私というバグをさておけば、このコミュニティで一番モテるのは間違いなく奴だ。

 今ここにいる四人以外にも、雀士は結構いるけれど、ことモテる雀士といえば快法女子を置いて他にいない。

 そんな快法女子が貰った数が二十ニ個ということは、世間一般の最大個数はだいたいそれくらいが上限ということ。

 

 異能雀士は強ければ強いほどモテるというけれど、しかし。

 私がバグってる理由にはつながらなそうな気がしてきたぞ。

 

ドラ待ち師匠_ちなみに私は! 私は!

 

Shino_はいはい三個ね、乙

 

ドラ待ち師匠_なんで私だけそんな塩対応なんですかあああああああ!!!

 

 うるさいからだよ。

 他にも距離は近いし、鼻息荒いし、話題が興味あることに映ると早口で何か気持ち悪いし……

 

ユエである故_これで、彼女がこのコミュニティで一番麻雀つよいってんだから、理不尽なもんですよー

 

快法女子_そうだねぇ

 

 そして、ここにももう一人麻雀強い=モテるの法則を否定する者がいる。

 ドラ待ち師匠、こいつは強い。

 とんでもなく強い、今は異能なしで麻雀を打っているからいいけれど、異能アリだと手がつけられないくらい強い。

 一応、私は切り札を色々と隠してはいるので、それを使えば初見なら普通に戦えると思うが二回目以降はどうだか。

 

 そして、ドラ待ち師匠はそれだけ強いにも関わらずモテない。

 言動がアレすぎて、こうして友人付き合いをするにはいいが付き合うのはちょっとというタイプ。

 だから、麻雀が強いTS転生者だからといって、無条件でモテるわけではないだろう。

 

 ――盛大に話は逸れるけれど、まず大前提として異能雀士は異能なしでは麻雀を打てない。

 中には打てる奴もいるけれど、大抵の場合はある程度能力が自動発動してしまう。

 もっと言えば、自分の異能を無視して麻雀を打つと異能が無効化してしまう雀士もいる。

 なので、一般的に麻雀を打つ際は異能は発動することが前提である。

 でも、それでは異能雀士が初心者に麻雀のルールを教えたりすることができない。

 そこで便利なのが、いわゆるネット麻雀だ。

 

 しかし、ここでも一つ問題が発生する。

 何故かとてつもない親近感を感じる某異能麻雀マンガでは、ネット麻雀では異能を上手く使用できない描写があった。

 だが、この世界では違う。

 ()()()()()()()()()()()()()使()()()

 使えてしまうのだ。

 

 だが、この世界の人々は諦めなかった。

 異能雀士が異能を使わずとも麻雀を打てる世界。

 それを実現するために、人々は奮闘し、そして成果を得たのである。

 元より、現実でも特定の手順を踏めば異能を無効化した麻雀も可能ではあった。

 とにかく手間がかかるから、よっぽどのことがない限りはこれまでやってこなかっただけで。

 それと同じことをネット上で、いつでもできるようにしたのが、今の異能未使用ネット麻雀の世界だ。

 

 そんなわけで、今では誰もが同じ条件、同じツモで麻雀を打てる時代になった。

 こうして実力の違う異能雀士たちがネットを介してコミュニティを作り、だべりながら麻雀を打つ時代になった。

 元々、前世ではネット麻雀で麻雀を打っていた私にとって、もっとも馴染みの深い光景がそこにある。

 ……というか、お恥ずかしい話なのだが、実は私、前世でリアルの牌を使って麻雀をしたことがない。

 山の切り分け方とか、転生して初めて覚えたよ。

 あくまでネット上の趣味として麻雀を嗜んでいたからね。

 案外、そういう人は前世では結構多いのではなかろうか。

 

「ん」

 

 そんなネット麻雀に感謝を捧げながら、友人戦で彼女たちとダベリながら麻雀をしていると。

 

 <Shino手牌>

 {二三四①②⑤⑧⑨23379} {8}(ツモ)

 

「うわ出たよ、好みの分かれそうなツモ」

 

 現在は四巡目、ドラは{九}、日課である字牌を払う作業を終えたところにコレだ。

 メンツが5つしかできておらず、かといって{233}以外は両面が一つもない状態。

 {⑤}は浮いているものの、ひっつけばかなり手広く使える牌だ。

 とはいえ、多少好みは出るものの――

 

「まぁ、{①}だな」

 

 ニサシの三色も見て、{④}を引き入れられれば強く出れるなという打ち方。

 {⑤}とニサシの三色がなければ{②}から打つのだけど、これもまた好み。

 ……如何、こういうことを考えてると何切る警察が出動してきそうだ。

 うるさいな、私は何時だってこの形なら{①}を切るんだよ!!

 

ユエである故_まぁ、結論ですけどー

 

快法女子_うん。

 

ユエである故_やっぱりShinoちゃんが全部悪いですよー

 

ドラ待ち師匠_ですね!!!

 

 え? あ、うん何だって?

 ごめん聞いてなかった――

 

 とは、話題を切り出した本人であるため言えなかったが。

 どうやら、私がモテるのは私が悪いらしかった。

 なんでやねん。




麻雀の話もちょっとします
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