+サイド今はレイの元おじい+
あの後、精神世界で元妻に驚愕の真実を告げられ、それについて話し合いをしようと思ったら、いきなり元妻が使徒終わた!! などと叫び声を上げた。
で、何故か視界が暗くなり、次に見えたのは操縦席の中だった。そして一面に広がる青い空が元妻の言葉に真実味を帯びさせる。
操縦桿を握り深い穴から這い出れば、すぐ目の前に酷く血にぬれた銀色のエバが下りてきた。そのエバより通信が入る。
『おい! 大丈夫かレイ』
カガリの元気な声が操縦席に木霊して大きくゲームから逸脱してしまったのだと理解した。
(本当に元妻が言ったとおり、カガリの母親がその中にいるのだな)
「カガリ……その中にいるの」
『おう、聞いてくれ! この中であたしはお母様に再会したんだ。で、気づいたら操縦席にいてさ、最初は勝手に動いていたんだけど、今はこの通り』
エバが宙返りを繰り返す。その巧みな動きにわしはカガリの資質を感じた。彼女は元々思い込んだら一直線、猪突猛進なところがある。それは悪い意味で捉えがちだが、こと、エバの操縦では違う。思い込みとは即ち豊富な想像力がなせる業だとわしは思っている。そしてそれは直接エバに動作を伝える一種の原動力になるのだ。彼女は下手に細かい動作を行わなければ動かせない機体よりもこう言った意識を伝え動かす機体の方が合っているのかもしれない。
仕方ない腹を括ろう。わしがこの子も守って見せようじゃないか。この大きく外れた原作が悪い方向に行かないように粉骨砕身全力投球だ。
そんな想いを死に物狂いの気持ちに変えてわしは言葉を紡ぐ。
「カガリ、よく聞いてくれ。君はきっとこれから自分と同じくそれの操縦者になるだろう。戦いは遊びじゃない。それだけは忘れないでくれ」
『あたしだってそれぐらい理解しているさ。これでも専属の教師に色々教わってきたからな。それにお母様が何時も言っていた。世界とは自身が経験して初めて分かる事もあると、自信がした選択の行く末に待つ真実に決して目を逸らしてはいけないと。今あたしがしたこの選択に待つ結末を悪い方向に向かわせないよう努力するさ。そして仮に悪い方向に向かおうともそれから目を逸らさず、全力で良い方向に持っていって見せる!!』
カガリの母親はなんと良い言葉を残したのだ。こんな良い子を守りたいと思い至り冥府から戻ってくる気持ちも理解できなくは無い。例えそれが彼女を戦争に巻き込む手段だとしても彼女自身が選択できるようにしたのだろう。
「君を全力で守る事をここに誓おう。だから君も誓ってくれ、おーぶだけでなくすべての生きる人々を守ると」
わしがそう言えば、帰って来たのは大きな怒声だった。
『馬鹿を言え!! そんな事は当たり前すぎて誓いにならん。だからあたしは誓う、あたしの始めての友が望む世界を一緒に守り続ける事を!! 小さく見えて大きくも見えるレイの背中を守れる相棒になることを誓う!!』
絶句した、これは大きく出たものだと。
このわしに、リリスが味方の、このわしの背中を守ると抜かすか、この小娘は。なんと傲慢でそれでいてなんと力強い言葉。
わしの頬から一筋の涙が零れる。嬉し泣きなど何年ぶりだろうか、この世界に転生して元妻以外に守ると言われたのはカガリが初めてだ。こんなに嬉しい事は無い。
「ふっ、わしを守るか、小娘。中身はお前の何十年も生きたこのわしに抜かしてくれる」
『ふふん、言っておくが、お前が普通じゃない事ぐらい出会ったときから分かっていたんだからな!! 屋敷で過ごした三日でそれは核心になったぞ。言っただろう、お前の背中はとても大きく見えると』
あの馬鹿騒ぎした三日間はとても楽しかった。上手い食事以外は殆どカガリと語らう時間。もっともカガリが一方的に喋ってわしが相槌をうつだけだったがお互い苦痛に感じたことは一度もなかった。カガリ自身からもそう言われた。
『だがな、今日お前が屋敷を去る時の後姿を見て同時に小さい背中だとも思ったんだ。そう思ったら居ても立っても居られず車のトランクに潜り込んでいた!!』
よく見つからずに軍船に乗り込めたものだ。
『後は教師に教わったとおり、気配を消して船に乗り込んだというわけだ。実際見つかることは無かったな』
「ほう、行動はともかく、教えられた事を実践できるとは馬鹿ではないということか」
『いや、馬鹿だと思うぞ。お母様からもお前は馬鹿なところがあるけれどそれが原動力になると褒められた』
それは褒めているのだろうか…。
『でだ、お前のパイロットスーツをあたしも着たんだが少しきつくてな。それでやっぱり小さい背中だと再確認した。だから言わせて貰うぞ!! いくら中身が大きくてもその体はあたしなんかよりも小さいんだ。もっと大切にしないと駄目だ!!』
「大切にしているつもりだが」
『嘘をつけ、ジャポンの男子学生を守るようにしていたじゃないか。それとお前と乗った時もあの熱さを表情変えずに往なしていたけどな、お前の背中は沸騰したかのように熱かったぞ。我慢していたのは丸分かりだ』
そして極め付けに言われた、今を生きる人のためなら痛くもかゆくも無いという言葉が酷く心に刺さったのだという。そして同時にこの小さな背中を守れる力が欲しいと願ったらしい。それはつまり…。
「ああ、お前は正真正銘の馬鹿者だ! お前の選択は端からわしを守る事だったのか!!」
『ああ、馬鹿だとも、あの時は本当にそう望んだんだ!! そしてその力を与えられる選択を迷わず選び取った。後悔は無い!!』
「……」
言い切ったカガリに不覚にも再び絶句してしまう。その力強い言葉に何の迷いも感じられないことに酷く驚いてしまったのだ。
何だか、カガリには驚かされてばかりだな。
ならばわしも決意する。
誓いを変えなければならない。先ほど言った誓いはカガリがした選択を侮辱する事になる。わし自身が子供を守るという信念を曲げてでも彼女の意思を尊重したいと思ってしまったのだ。
「その想い確かに受け取った。故に誓いを変えよう。わしはお前を守らん、その代わり背中を預けよう。そして共に世界を守る事を相棒に誓おう」
『あたしも相棒の背中を守れるよう努力を怠らず、後ろでも無く前でも無く横に並び共に駆け抜けることを誓おう』
がっちりとした握手をエバ越しでおこない、互いに誓いを述べた直後、アカツキ島の海域で赤い光が発生、島は赤い光に包まれた。
『なんだ!!』
「わからん」
視界が真っ赤に染まり目も開けていられないほどの輝きが襲う。しかし、光はやがて収まり、島は元の静けさを取り戻した。
「あれは一体」
『おい、頭上を見てみろ』
カガリからそう言われて頭上を見れば、そこには二股の赤い槍が浮いていた。
「ろんぎぬすの槍か」
呟くようにわしが言った直後、第三者の声が操縦席に響き渡った。
『おめでとう、あなたたちの誓いを聞かせてもらったわ』
あ、これは元妻だな。
『ドッフンだ!!』
通信からお母様という声を聞いてこれがカガリの母親なのだと理解した。どうやら向こうにも聞こえているらしいが、何故にその言葉をチョイスした。
『ロンギヌスの槍は私たちからの祝福だと思って欲しいわ』
今度は誰かも分からない女性の声だった。カガリも同じく分からないらしい。
『いいこと、小娘、元夫の背中を守るならこの槍ぐらいは使いこなしてごらんなさい。出来なければ即刻槍は返却して相棒関係も終わりよ』
槍はカガリに与えられるようだ。しかし、普通に元夫とか言っていいのか、元妻よ。わしなら冗談で済ませられるがお前は駄目だろうに。
『この槍は凄い力を秘めているけれど残念ながら殆どの機能は停止させているわ。それはつまり始動キーを小娘に預けるということ。小娘が槍を使いこなせるようになれば私が機能を順次開放してあげるから、せいぜい頑張りなさい』
元妻の言葉を最後に声は聞こえなくなった。上空に浮かぶ槍は赤い光の粒子に変わり、エバ4号機の胸に吸い込まれた。あの場所は心臓部、こあと呼ばれる場所に槍は納まったようだ。
儀式の終わりを告げるかのごとく、二機のエバが機能停止して第十二使徒との戦いは終わりを告げた。
猪突猛進カガリが相棒になった。
カガリのGEININ度が3上がった。
カガリのウザさが2上がった……が、後悔はない!
元おじいが泣いた。涙もろさが1上がった。
次回タイトル せめて使徒らしく
次回もサービス、サービス……感想を見ているともっとやれ的なニュアンスに感じてしまう今日この頃。