始まりんす。
+サイド今はレイの元おじい+
翌日の昼ごろ、自室で昨夜の雷雲について考えていると外が俄かに騒がしい事に気づいた。同時に昨夜と同じくカガリが慌しく部屋に入ってきた。
そして告げられた、松代で行われたエバ三号機起動実験の失敗と基地崩壊、正体不明の機影が今現在ある場所に進行中だという報告。
ようやくそれで昨夜の雷雲の正体を思い出したのだ。
わしを呼ぶカガリに目もくれず、急いで部屋を飛び出して同志参謀に面会、ことの説明を行った。
「つまり昨晩報告された雷雲に使徒が潜んでいたという事ですね」
頷くわしに同志参謀は考え込む。きっと、正体不明の機影のことを推測しているのだろう。そして同時にわしが何故知っているのか、それに信憑性があるのか、考えているのだろう。
同士参謀が顔を上げる。
「何番目の使徒なのか、分かりますか?」
「十三番」
「では、あの機影は使徒だと?」
「違うけど……そう」
口惜しい、こっちは必死で話そうとしているのにどうしても口が動いてくれない。死に物狂いの基準が分からない。
怪訝そうにする同志参謀にわしは内心で舌打ちした。いくら同志とはいえ、あちらもプロ、わしが知りえない情報を鵜呑みにするほど愚かでない。
「ようやく追いついたぞ! あたしが話しているのにどっかにいくなよな」
追いかけてきたカガリが文句を言いながらわしの顔を見た。すると、急に眉を潜めた。
「レイ、泣きそうだぞ? なにがあった」
無表情であろう、わしにそう言ってきたのだ。
「カガリ……」
「大丈夫だ、あたしに言ってみろ。全部拾ってやる」
優しく諭すように言われ、不覚にも涙が出そうになった。対等な相棒が出来て肉体に精神が引きずられているとでも言うのか、わしは最近涙もろい。決して、年のせいだと思いたくない、察して欲しい、そういうお年頃なのだ。
わしは出来る限り、必死な想いを抱いてカガリに語った。
雷雲に潜んでいた使徒は寄生型の使徒だと言う事。
それがエバ3号機寄生して使徒化した事。
使徒化したエバがある場所に向かっている事。
わしの拙い言葉をカガリは拾い集め、同志参謀に伝えていく。その言葉は本当にわしの言葉を拾い上げたもので、これなら同志参謀もあくまで予想の範囲内であるが、一つの予想として受け入れてくれるであろうものだった。
しかし、同志参謀は表情を変えない。
「カガリさんが言う、ある場所とは浅間山にあるゲッター線研究所で?」
わしとカガリが頷いた。それの何処に引っかかるのだ。ゲームではそうだった。
「ですが、正体不明の機影はその方角と違う方角に向かっているとの報告があります」
「はあ!? どうなっているんだ、レイ」
カガリがわしにそう問いかけるも、わしだって理解できなかった。ゲームではげったー線を求めて研究所に向かうはずなのだ。
「確かに昨日ゲッター線研究所にて謎の大爆発が起きてあの区間は今立ち入り禁止の状態です。ゲッター線濃度が通常の三百倍では仕方がありません。ですが、今日現れた機影は最初から別の方角に向けて移動を開始しています」
言って、話を切ると参謀は一枚の書類を提示した。
「ネルフ本部は進行方向を新潟と断定、そして先ほどMAGIによる詳細の進行方向が割り出されました。賛成三つで正体不明の機影は新潟港に向かっているようです」
まさか、あの使徒は…。
「ええ、使徒は確実に私たちが乗る船の目的地に向かっています」
それを聞いてこれはもう、ゲームの未来は一先ず捨てた方が良いのかもしれないと思った。それに囚われすぎれば状況判断に支障が出そうだ。現にいらぬ情報を与えてしまったのだから。
それにしても、どうして使徒はわしらの方に向かっているのだろう。それを考えているとカガリが唸るように頭を抱え出した。
「うぅぅん……まさか…でもなぁ…もしかしたら」
「カガリ?」
「う、うん。あのな、もしかしたらだけど、本来はその浅間山? ってところに行ってたんじゃないかな…うん、だからレイは悪くない。悪いのは多分、あたしだ!!」
「どういうことでしょうか、詳細の説明をお願いします」
冷静な声で参謀が問うとカガリは明後日の方を向きながら語り出した。
「えっと、昨日レイとあの雷雲を見ただろ、その後レイが報告しに行って、あたしはあれが何なのか知りたくて雲に向かって結構酷い言葉を叫んだんだ。そしたらさ、雷雲が凄い雷を落としたもんだから面白くなって、もっと叫んで…そしたらまた雷落として…最後にお前の父ちゃん、ボッチだぁぁって叫んだら、凄い稲光と共に何十もの雷を落として……もうそれが、許さん!! 後で覚えてろよ!! って言っているような気がして……うん、そんな目であたしを見るな、分かってる…あくまでそんな気がしただけで信憑性はない」
わしらの痛いものを見るような目に耐えられなかったのか、後半は涙混じりに呟いた。
参謀はどう思ったかは知らないが、元妻の話を聞いていたわしはありえそうなことだから視線を鋭くしたのだ。カガリよ、ぼっちはいかん、あれは心に嫌な意味で響いてしまう。いかに力を選んだ使徒でも自分たちの親とも呼ぶべき存在がぼっちだと言われたらきっと怒るだろう。実際リリスに拒絶されているからな。リリスが産れたばかりの頃はぼっちだったはずだ。
「まあ、カガリさんの貴重な助言は心の隅の隅に置いておき、後で捨てる事にして使徒がこちらに向かってきている事は確かです」
言ってやるな、同志参謀。その言葉でカガリはもう普通に涙を垂れ流しているぞ。こんな馬鹿…ゴホ、ゴホ、純粋な子を泣かしてはいけない。
やさしく頭を撫でてあげるとぎゅうっと抱きついてきた。もちろん、やましい気持ちは無い。純粋に妹が姉にしてあげる親愛の抱擁である。わしは元妻一筋です、久々(キリッ
「眼福ゴホ、ゴホ……とにかく、時間と使徒の移動速度を考えると私たちはちょうど敵が待つ港に止まる事になります」
今サラッと本音を出しそうになったぞ、同志参謀。思っていても口に出さないのが紳士だろう。
「ですが、浅間山でゲッター線調査任務に当たっていたロンドベルに特務機関命令が下されました。今は目標を追っている状態ですが、距離的と搭乗している戦艦の速度から見て港の手前付近で目標と接触、そのまま戦闘が開始される予定です。よって我々は速度を変えないまま待機、パイロットの両名は一応機体待機になりますが出撃はありません」
「それは命令か?」
カガリがわしに抱きつきながら聞いた。
「はい、碇司令よりそう命令されています」
同士参謀は厳しい表情で頷いた。その表情を見て同志参謀も腑に落ちない命令なのだろうと思った。
「分かった、命令は守るためのものだからな。エバで待機する」
神妙な表情で頷いた。次いで悪戯っ子のような顔に変わり、けどな、という言葉をカガリは続けた。
「お母様がこの世にはフリという尊くも厳しい掟があると言っていた。それは命令された言葉と逆の行動をしなければならない辛いものだ。碇司令はあたしたちにそれを下されたのだろう、聞きしに勝る厳しい方だな」
「はい?!」
カガリの言葉に同志参謀が素っ頓狂な声を上げて驚いた。
「もし、命令違反で処罰されそうになったら、そう言ってあたしのせいにすればいい」
「ちょっ……ですが!」
「大丈夫だ!! あくまで待機はする。だが、状況とは刻々と変わるものだ。もしも、これから出会う仲間たちが危機に陥ってしまったら、あたしは迷わず出撃するだろう。それを忘れないでくれ」
宣下するように言うとわしを連れて部屋を後にした。ズンズと廊下を進んで行くカガリに引かれる形で歩いていると急に立ち止まり振り返った。
「これでいいか?」
わしは内心キョトンとした心情で言葉の続きを聞く。
「レイなら、きっと迷わず出撃するだろうと思った。だから、あたしが変わりに宣言したぞ」
わしの心情を図ってくれたのか。ホント、この子はいい子だ。
「ありがとう」
「あたしはお前の姉だからな、当然だ!!」
こうしてわしとカガリは破る前提の命令を受けて各機体で待機するのだった。
次回 シンジの選択を
次回もサービス、サービス……フリ、頂きました。