EBA 一番と四番の子供達   作:アルポリス

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 始まり、始まり。


第三話

 弐号機の中、カガリのわけの分からない絶叫に何故かアスカは感銘を受けていた。未だ精神攻撃を受けているのにも関わらず、そんな事をお構いなしに気分が高揚しているのが自分でも分かった。

 

 事も無げに乗れなければ、また乗れるように成ればいいと言った、正確には言ってくれたカガリの言葉が死ぬほど嬉しかった。誰もがパイロットを外すことでしか対処を考えてくれなかったのに彼女だけはまた乗れるようになれと言葉にして告げてくれた。それが無知から来るものでもよかったのだ、唯、誰かに、シンジやミサト、リツコにそう言って欲しかった。でも、言葉にするのは否定的なものばかり、撤退もまたアスカにとって己を否定する言葉でしかなかったのだ。仮に言った本人にそんな思いが無くともそう聞こえてしまうほどアスカの精神は追い込まれていた。

 

 それを共に戦った誰よりも先に彼女が死ぬなという言葉と共に肯定してくれた。

 

 彼女に怒られるかもしれないが、それが死ぬほど嬉しかった。

 

「何よ、これ……涙?」

 

――まだ生きてなさい。

 

「泣いているのは、あたし?」

 

――まだ死んでは駄目よ。

 

「暖かい、久々ね、涙を流すなんて」

 

――まだ死なせないわ。

 

「ママが死んだ時以来かしら?」

 

――生きる事を望みなさい。

 

「なによ、あいつ、ゴリラみたいに叫んで…なのに嬉しい言葉、サラッと言ってくれちゃって…あたしを久々に泣かせて」

 

――生きて、生きて、生きて。

 

「この戦いが終わったら、よくも泣かしてくれたわねって怒鳴ってやる」

 

――生きて………。

 

「そんで…感謝の言葉を述べなきゃ」

 

――グスッ……そろそろ気づいて、アスカちゃん

 

「え?」

 

――ママ泣いちゃうわよ。

 

「は?」

 

――4号機のコアにあるあれのおかげで欠けた魂が戻ってきたのに酷いわ、アスカちゃん。

 

「…ママなの?」

 

――そりゃあ、悪いとは思っているけどね。仕方なかったのよ、ドジって半分しか魂が込められなかったからアスカちゃんに嫌なトラウマ植え付けちゃったけど、ママだって好きでああなったわけじゃないのよ。

 

「ママ、そこにいたんだ」

 

――軽っ、アスカちゃん軽いわよ!! もっとそこは、ほら、感動の再開的な、涙ぐむような…。

 

「泣いてるわよ」

 

――うん、そうよね。言うと思った。でもそれ、私に対する涙じゃないもの。

 

「我侭ね」

 

――言っちゃった! この子、はっきり言っちゃった!!

 

 アスカの母、キョウコが声だけでオヨヨと泣き崩れる。それに対してアスカは酷く面倒くさそうな表情を浮かべながらも話題を変えて立ち直らせようと試みる。

 

「でも本当だったんだ、エヴァには心があるって資料で書いてあったけど、まさか、ママの魂が込められているなんてね」

 

――そうね、少なくとも初号機から3号機まではチルドレンの母親が入れられていると思うわ。4号機に関しては私にも分からないけど、多分いると思う。

 

 簡単に泣き止んだキョウコに内心で軽いわね、と思うアスカだったが、表面上は話を続ける。

 

「零号機は無いんだ」

 

――残念ながら、あれに関しては私にも分からない、けど、もしかしたらとんでもない魂が込められているかもしれないわね。

 

「そっか……今度聞いてみようかしら?」

 

――アスカちゃんにも友達が出来て、ボーイフレンドもいるみたいだし、ママ嬉しいわ。

 

 浮き浮きした声にアスカの顔が朱を帯びる。

 

「ちょっ!! あんな笑顔で他人を黙らせるような男なんか、こっちから願い下げよ!!」

 

――まあ、いいじゃない。さて、私たちのやり取りはフィールドのおかげで見られていないと思うけど、何時でも垣根越しから覗こうとしている痴漢のような視線が気に入らないわ。

 

 先ほどまでの明るい声色と違う、酷くドスの利いた声色でキョウコがそう言った。

 

「あ、やっぱりママのおかげなんだ。嫌な気分が無くなっているし」

 

――このやり取りもほんの数秒の感覚だから、相手には抵抗力が強まったぐらいにしか感じてないでしょうけど、はっきり言って……邪魔ね。

 

 邪魔と言った部分が酷く殺意が篭っているなとアスカは感じるも、母親の存在が強みとなり、気持ちに余裕が出来たのか、殺意を肯定する。

 

「乙女の心を覗くなんて最低な異星人よ」

 

――ふふ、これはもう家訓でもって相手をしてあげなきゃ、収まらないわね。

 

 そうと告げられた瞬間、アスカは目を全快に見開き、心臓が強い鼓動を上げた。

 

「家訓……そう、か。あたしには家訓があったんだ」

 

 普段ドイツ軍人のような冷静さで持って対応してきたアスカの心の奥に封印された想いが顔を出し始めたのだ。それはとても激しい感情であり、アスカが惣流の血を引くからこそのものである。

 

「分かったわ、ママ。惣流家の意味……心を覗いた駄賃に相手をぶち壊してやる!!」

 

――さすが我が娘、やられたらやり返すが惣流家の家訓よ、惜しみない暴力で持って叩き伏せなさい。

 

「惣流家家訓!! やられたらやり返せ、地獄の沙汰も暴力次第!!」

 

――よろしい。アスカちゃん、私はエヴァの中で常にあなたを見ています。怯えて心を閉ざす者など惣流家には必要ありません。惣流の名を名乗りたければ覚えておきなさい。

 

「あたし、ドイツ生活が長くて忘れてたわ……あたしは旧世代日本の裏世界で己の暴力のみで駆け抜けた惣流家最後の末裔」

 

――戦って私の元まで逝きなさい。あなたはラングレーであり、古き任侠道を継承してきた惣流なのだから。

 

「惣流・アスカ・ラングレー様なのよぉぉぉぉぉ!!!」

 

 ここで追記するならば、彼女は忘れながらも無意識に戦う時、言葉が荒くなっていた。そして、無意識に見る映画がすべて任侠ものになってはいたことから、心の底ではそうなりたいと、戻りたいと思っていたのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 母親と心を交わしたアスカが復活の雄叫びを上げた同時刻、アスカのシンクロ率を監視していたマヤが驚愕して声を上げる。

 

「そんな、アスカのシンクロ率が急激に上昇!! 100…240…390、まだ上がるの!! まさか……シンクロ率427% この前の初号機を超えています!!」

 

 ミサトと協議していたリツコがその声を聞いて慌てながらマヤの元まで行くと同じくモニターを見て驚愕し、次いで怯えたような声を上げる。

 

「そんな……弐号機には欠けた魂しか備わっていないのに、どうしてあの方まで目覚めてしまうの」

 

 普段、冷静な姿しか垣間見ないリツコの生理的に震える肩を落ち着かせるように己を抱きしめる姿にミサトやシンジは驚きを見せる。

 

 ミサトはそんなリツコにどうして怯えるのか問いかけた。すると、リツコは怯えを含む眼差しでモニターに映る六つの目を爛々と光らせた弐号機を見ながら語り出した。

 

「惣流・キョウコ・ツェッペリン……あの方はシンジ君の母親の良き理解者にして最強の親友、私の母親や碇指令が際も恐れた女傑博士。一研究者でありながら、例えどんな大物スポンサーに対しても決して退かず、まして媚びる事など一切せず、またスポンサーを怒らせ、スポンサーを下りられてもそれを道端の小石のように省みない。愚かにも彼女の前に立ちはだかる敵対研究者を拳一つで地に這いつかせ、心を許した親友が泣いていればどんな困難な場所からでも駆けつけ元凶を叩き伏せる。シンジ君、あなたのお父様もそんな一人よ」

 

 話を聞いていたミサトが、どんだけ世紀末!! と突っ込みを入れてしまうのも無理は無い。逆にシンジの方は目を輝かせ、尊敬の眼差しで弐号機を見つめていた。

 

 リツコが端末を操作した。すると、モニターの映像が変わりエントリープラグの中を映し出した。そこには肉体を残し、荒れ狂うように叫び散らす、茶髪から黒髪に、青い瞳から漆黒の瞳に変貌したアスカの姿があった。シンジが400%の時は肉体がLCLに溶け込み物理的にも精神的にもダメージを与えない領域に至らしめた状態だったが、アスカは違うようだ。

 

「やっぱりそうなのね。シンジ君の時とは違い、あの方は決して娘を安息の場所に誘わない。その痛みすらも己が突き進む糧にするのがあの方の特徴よ。そして、色素変化は脅威のシンクロ率がなせる、言わば先祖返りでしょうね」

「何言っているのよ!! 400%の物理的接触は人の精神の限界を軽く超える代物よ、これではアスカの精神が壊れてしまうわ!!」

 

 ミサトの言はもっともなのだ、リツコとて理解していないわけではない。それでも昔、母親が科学では説明できない事柄がキョウコにはあると独り言のように呟いていたことを知っているからこそ冷静でいられるのだ。

 

「そうね、理論上400%の接触は人差し指で肌を触る程度の接触でもトラックに突っ込まれるような衝撃を与えてしまうとされているわ。でもね、あの子はあの方の娘なの。科学者でありながら科学の範疇を逸脱してしまったあの方の魂が弐号機にはいるのよ」

 

 リツコは思い出していた、母親が怯えを含み語ってくれたあの方の逸話。その際たるものが、昔、まだここが脳研だった頃、初めて作り出されたエヴァを操作していた碇ユイが間違って暴走させたとき、逃げ惑う研究員の中、あの方だけは暴走するエヴァに悠然と歩み、その拳で黙らせた。『人』が、神を模して作り出された始まりのエヴァを地に叩き伏せたのだ。

 

 それ以降、エヴァの強化案は続々と提案、製作されていく。今のエヴァがあるのはある意味、あのお方のおかげかもしれない、母はそう言って酒を飲み干していた。今だからこそ、その様が酒で忘れたいという足掻きのようなものに思えてしまうのはリツコが酒を嗜める年齢を越えたからだろう。

 

 リツコはようやく震えから落ち着いた体から手を離してミサトとシンジを見据える。

 

「ミサト、シンジ君……覚えておきなさい。あの方は人の皮を被った化け物で、あの子はその娘で同じくその力を秘めている。この戦い勝ったわよ」

 

 

 その力強い言葉にシンジとミサトは呆気に取られながらも内心で、どこぞのマスターか!! というツッコミを叫ぶのだった。

 




 次回 死に至る恐怖、そして





 次回もサービス!! サービス!! ……うん? 何か違うが、アスカ覚醒(笑)


 プルルル、プルルル、ガチャ


ゲ「私だ、司令室に白い布を頭から被った露出狂がいる、すぐ諜報部を寄越してくれ、それか警察を呼んでくれ」

 数分後。

サ「ぎゃああああああああ……サービス……」


ゲ「問題ない」



                    冗談です。
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