EBA 一番と四番の子供達   作:アルポリス

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 ストック分お待ち! もう終わりだ、チクショウ!!

 始まります。


第四話

 

 翌日の予備パイロット機動実験において渚カヲルは弐号機に乗っていた。モニターを見ながら計測するマヤとマコト、本部にいないリツコの代わりにコウゾウが数値をみて問いかけた。

 

「この数値に間違いは無いな?」

「すべての計測システムは正常に作動しています」

 

 マコトがモニターを一度見てそう告げ、マヤも補足を付け加える。

 

「はい、MAGIによる誤差及び改竄は認められません」

「そうか」

 

 数値の実証性が浮き彫りにされてコウゾウが唸る。同じく、マヤやマコトも苦笑気味に互いに見合わせ頷きあった。

 

 コウゾウは結論を出す。

 

「やはり、コアの交換なくして起動は難しいか…………全然駄目だな」

 

 シンクロ率0%、絶望的というより、まるで相手にされていないような数値である。

 

「やはり、キョウコ君相手ではいくら使徒でも荷が重かったようだ」

 

 独り言のように呟きながら別のモニターを見れば、カヲルがエントリープラグ内で体育座りして顔を埋め嗚咽を漏らしていた。大方自分の駄目さ加減にショックを受けているのだろう。使徒とは言え、少年には悪い事をしたなと内心で憐れみ、カヲルに実験終了を告げた。

 

 その後、傷心気味でプラグスーツから着替え終えたカヲルが更衣室から出ると、まるで待っていたかとばかりにカガリとシンジが出迎えた。笑顔で話しかけてくるのだが、何処と無くその瞳が可哀想なものを見るような眼差しだったのでカヲルの心に更なる傷を負わせるのだった。

 

 酷く落ち込んだカヲルの気持ちを盛り上げるためにシンジはエンジェル・ハイロゥの調査から戻ってきたロンドベルに足を運ばないかと提案、絶望しすぎて声も出せない状態のカヲルの変わりにカガリが賛同して向かう事になった。

 

 なのに、とカガリはカヲルが不憫になった。

 

 ロンドベルの戦艦に着いた途端、兜甲児が乗るマジンカイザーが謎の起動を始めて今にも動き出しそうになり、それだけならまだしも真ゲッターまでもが動き出していて、彼らが着いた頃にはメンバーは大慌てだった。とてもカヲルやカガリの紹介をしていられる状態では無い。ダメ押しでタスクと呼ばれる、普段は明るく気さくな、(シンジ談)少年に痴漢野郎、心を覗いてんじゃねぇとカガリには訳も分からない理由でカヲルに喧嘩を売ってきたときは流石に不憫すぎて、慌てて仲裁に入り、即座に戦艦を後にした。踏んだり蹴ったりである。

 

 遠い目をして海に逝きたいと不穏な言葉を口にするカヲルを引きずってネルフ本部に着いた頃、シンジはトレーニングがあるとかで別れ、食堂で遅い昼食を取る事にした。

 

 混んでいた時刻から外れていたのか人が疎らな食堂で二人は各々注文、受け取った料理を持って向かい合わせで席に座った。そしてお互いのメニューを見て、カガリは眉を潜め、カヲルは苦笑を浮かべた。カガリのお盆には大盛りのカツカレーとこれまた大盛りラーメンという思春期の少年が食べるような量が置かれ、逆にカヲルのお盆にはサラダとパンが一切れ、後はコーンスープと痩せたい女子か!! というメニューが置かれている。

 

 カツを一気に三切れも租借して飲み込むとカガリが口を開いた。

 

「量が少なすぎないか、そんなんだとこれから先、戦えないぞ?」

 

 パンを一口代にして食していたカヲルが、苦笑で答えれば何を思ったか、カガリが一切れのカツをフォークに刺してカヲルの口元に伸ばした。その行動にキョトンと目を瞬かせていたカヲルに痺れを切らしたのか無理やり口に入れる。咄嗟の行動で驚きを見せるも租借して飲み込めば、カガリは笑みを浮かべて頷いた。

 

「よし、ちゃんと食べたな」

「えっと…カガリ、どうして?」

 

 カヲルにしてみれば当然の疑問にカガリは少年のような笑みを浮かべた。

 

「エバを動かしたいなら肉を食え!!」

「はい?」

「すぐに血肉になる肉を食えば、きっとエバは答えてくれるぞ!!」

「うん、意味が分からない。そして何ゆえ、エバなのか、エヴァじゃないのか……リリンが分からないよ」

「あたしの持論だ!!」

「それはエバとエヴァについて、あ、違うっぽいね、そうか、エバに関しては今更論点にもならないわけだ、まあいいけど……て、事は起動の。いやいや、単純すぎると思うよ、僕が起動できなかったのはコアに拒絶されたからであって……まあ、僕を拒絶出来る事が凄い事なんだけど、パイロットのアスカさんを見ていると、仕方が無いような気もするし…うん、そうなると僕のせいじゃないよね、何しろあのコア、なんか威圧感が半端ないから…」

 

 ボソボソと自分の世界に入り込むカヲルの眼前で手を叩いて強制的に意識を戻すと、カガリは話を続ける。

 

「お前はごちゃごちゃ考えすぎる癖があるようだな。ここにはお前とあたししかいないんだから、無視するのはよくないと思うぞ? あたしはこれでも無視とかされたら泣いてしまう恐れがあるからな、分かったか?」

「え? あ、うん」

「そうか、分かったならいい。あたしもお前に妄想癖があることを知ったぞ」

 

 子供が宝物を見つけて嬉しがるように妄想癖、妄想癖というから、カヲルは慌てて訂正する。

 

「ちょっと、カガリ!! 僕は妄想癖でも中二病でもないからね、なんか、ここに来てから僕のスペックが可笑しなものに塗り替えられていくけど、これでも僕って結構凄いんだからね? 高スペックなんだから!!」

「まあ、人には誰しも言えない性癖があるって言うからな。あたしは碌なことじゃなければ、何でも受け入れるキャパを持ち合わせていると自負しているぞ?」

「え、訂正しているのにこの子手ごわい。それに話が性癖とか変な方向に行っている気がするよ」

 

 内心で、僕の好きになった子はもしかして天然なのか? と恐怖する。

 

「妄想なら誰にも迷惑をかけないからな!! 存分に妄想に耽ってくれ!! 但し、実践は良心的なものにしろよ?」

「やっぱりね!! 僕の妄想が何時の間にか下ネタになっている!! いや、妄想もしていなけれど!!」

 

 話の方向性が変な方向に行く天然が怖い、それでも、好きだ! とカヲルは再確認した。

 

「うん? けど、今日レイに会ったら、お前は頭の中でエロい妄想を繰り広げているから気をつけろと言われたぞ?」

「くそ、あの女のせいか!! ホント、昔から僕の嫌がることばかりしてきやがる」

 

 余計なことを言いやがってと内心で舌打ちしていれば、それでもカガリは嫌がる素振りは見せなかった。

 

「あたしとしては頭の中なら問題ないと思うから、大丈夫だとレイには言っておいたぞ!! なんせ、あたしの頭にも舞台で繰り広げるショートコントの妄想でいっぱいだからな」

「複雑だ…好きな人に受け入れられて喜ぶべきか、誤解を受けて悲しむべきか」

「昨日、お前に好きだといわれたからな、お互いを知るためにこうやって食事でもして会話をすれば、あたしもお前を好きになれるかもしれないと思ったんだ」

「そもそも、僕はこんな三枚目に甘んじるスペックじゃないはずだ。それなのに、リリスには馬鹿にされるわ、リリンの男にある絶対領域を突破されるわ……え?」

「あたしもお母様とお父様のような関係になれたら幸せだ。何より好きな人がお笑い好きなら、言う事はないぞ!!」

「え、え、え?」

「ん? どうした」

 

 リリスに対して恨み辛みを呟いていたカヲルの耳に自身の心をポカポカさせるワードを拾い上げ、カガリを凝視した。あ、いい笑顔。可愛いと心で思いながらも口を開く。

 

「さっき、何て言ったの?」

「え、お前がエロい妄想を」

「戻りすぎ!! そして何故そのチョイス!! 違うよ、その後」

「あたしもショートコントの妄想を」

「妄想から離れて!! 違うから、僕の事を好きになるって」

 

 天然には自分から告げなければ理解できないと思ったカヲルが自意識過剰気味に言えば、そんな事かと言いたげな苦笑でカガリは頷いた。

 

「ホント? 僕の事好きになってくるの?」

「少なくともお前に好きだといわれて嫌な気はしなかったぞ。むしろあたしも好きになれるようお互いを知ろうと思った。だから、今は好きではないが今後は好きになるかもしれない予定だ!!」

「そこは好きになりかけてるぐらい言って欲しかった!!」

 

 机に突っ伏してカヲルが叫べば、カガリは苦笑を浮かべてその頭を優しく撫でた。

 

「我侭だな、すべてはこれからだろうが」

 

 顔だけを上げて優しく撫でてくるカガリを見つめ、内心の荒れ狂うような想いを隠し、綺麗な笑みをカヲルは肯定した。少なくともこの場では肯定するしかなかった。彼女の笑顔が曇るのはカヲルにとって苦痛だからだ。この先、確実に曇ると分かっていても、今この時だけは彼女の笑顔を目に焼き付けたかった。

 




 次回、せめて、ラブコメらしく2





 次回もサービス、サービス……うん、ラブコメって何だろう?
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