始まります。
+サイドアウト+
『行け、ファング・スラッシャー、あの石頭をぶちのめせ』
Mk-Ⅲの腕に搭載された、ブーメランの形状をした武器を取り出して初号機に向け放たれた。それはビームの粒子を纏い高速で回転して迫ってくる。それの照準を見定める想像を頭に描き、シンジはそれに合わせてソードに搭載された機銃を発射、撃ち出された弾は見事に照準をずらすことに成功、初号機は避ける動作を行わず、まっすぐMk-Ⅲの眼前まで飛び込み、ソードを振り下ろした。
「取った!! え?」
しかし、相手はエース級、こちらの予想以上の反応でそれを避け、何時の間にか異空間から出現させたグラビトンライフルを撃ち出した。
「うあ!?」
重力が備わった銃弾は初号機に着弾、するまえにATフィールドに阻まれその力を失った。並みの威力武器では掠らせもしないほど、彼の想いが強いのだ。
初号機は肩ラックからプログレッシブナイフを取り出すと片方の手でそれを装備、シンジは深く息を吐き出して想像力を働かせる。これによりシンクロ率は見る見る上昇、先ほどの動作よりも早く、それでいて洗礼された動きでMk-Ⅲに肉薄する事に成功した。
それでも即座に展開したロシュセイバーをMk-Ⅲが振り下ろすも、それすらもカウンターソードで受け止め、もう片方のナイフで動力部に狙い定め、突くように伸ばした。
「今度こそ、貰った!」
直後、Mk-Ⅲの周りに歪みが発生、それは壁のようにしてナイフを阻んだ。かの機体にはグラビティ・テリトリーと呼ばれる重力フィールドがあることをシンジは思い出す。
「ちくしょう!」
『甘いぜ、シンジ、バリアはお前の専売特許じゃねえ!』
懐の無防備な初号機にツインバルカンが火を噴いた。ただ、この程度の攻撃ではATフィールドを阻む事は出来ない。それはタスクも理解しているはず。そう予測したシンジの前でMk-Ⅲが横に動いた。それによって初号機の眼前に現れた粒子を撒き散らしながら高回転するブーメラン。
先ほど放たれたファング・スラッシャーが大きく旋回してMk-Ⅲの背後に戻ってきた、それをタスクは理解しつつ、自身の機体を目隠しにしてわざと初号機に肉薄させ、無防備な状態を曝け出させる。後は後ろから迫るファング・スラッシャーを念動力で操り僅かな動作も許さずぶつければ良いのだ。
ATフィールドを突破して、ファング・スラッシャーは不規則な動きを繰り返しながら全身の装甲を切り裂いた。
「くうぅぅぅぅ」
シンクロ率により痛みがフィードバックされ、失神しても可笑しくないぐらい精神が疲弊する。それでもシンジは前を見据えた。
「負けるもんか!! 僕らはレイさんのお荷物なんかじゃないんだ!!」
初号機のツインアイが輝き見せれば更なるシンクロ率の上昇を促す。尚も追撃してくる不規則な動きのブーメランを見定め、カウンターソードで一刀両断した。ファング・スラッシャーは爆散する。
せめてもの反抗としてその爆発に乗じて鋭い速さでナイフを投げればそれはMk-Ⅲの右肩に見事刺さり、それに伴う超振動が駆動系をショートさせた事でその腕を使用不能とさせた。
互いに被弾した事で距離を取ると次の攻撃に備えて初号機は構えを取る。
「ふう、アスカは大丈夫かな」
シンジは何時でも動けるようMk-Ⅲを見据えながらも、アスカの様子が気になるのだった。
一方、弐号機は回転しながら撃ち出された二本のパンチをその両手で真っ向から対抗、衝撃音と共に、互いのパンチは弾かれ、半ば胸を晒す様な無防備な状態となった。ところが、マジンカイザーはその胸にある赤いそれを輝かせ強力な攻撃をその状態のまま繰り出してきた。
『ファイヤーブラスター!!』
独特の抜けるような声で紡がれた技名の後に撃ち出された赤い龍のような力の本流は生き物のようにトグロを巻いて弐号機に迫る。フィールドは破られ装甲に当たると思われたとき、弐号機は体を外側に剃るようブリッチを作り上げ、擦れ擦れで回避した。それでも高威力だったのか装甲はバターのように溶け始める。これにはカイザーに乗る甲児も驚きを見せて動きを止めた。それを逃す、アスカではない。そのまま逆立ちして立ち上がるとプラグ内でアスカは感情を爆発させた。
「惣流をなめんじゃないわよぉぉぉぉ」
怒声と共に六つの緑眼が鈍く輝き始める。すると、フィールドの表面に僅かではあるが、棘のようなものを発生させ弐号機の前に現れた。肉眼でも分かるほどのフィールドをまるで盾のようにして突撃、全身でカイザーに体当たりを行う。
轟音が奏でられ爆煙を撒き散らして二体の機体を覆い隠す。やがてそれが晴れると、互いに手を取り、力比べをするように対峙する二体の機体があった。
「くっ、流石鉄の城と言った所ね、あの威力で装甲の表面を破壊しただけってわけ」
『おい、アスカ!! もう止めろ、何で俺たちが戦わなきゃならねえんだ!!』
接触通信によって紡がれる甲児の言葉にアスカは鼻で笑う。
「あんたバカァ!? 既に戦いは始まってんのよ、今更鞘を収める事なんて出来るもんですか!!」
『何でだよ! 何でお前らはあいつらの我侭を叶えようとする!!』
「我侭ですって!?」
『そうだろうが、俺たちは遊びで戦ってるんじゃないんだ、人々の明日の未来のため、世界を守るために戦っているんだよ!!』
「ふざけるんじゃないわよ!! 姉御たちの想いとあんた達の想いのどこに違いがあるっていうのよ!! 姉御たちはあたしたちがいなくなった地球を使徒から守っていた。そんな姉御たちをあんたは我侭の一つで片付けるっていうわけ!?」
『そうだろうが、今までカイザーが勝手に動くことはなかった。それが動いたんだ、並みの危機とは思えない事態が発生したも同然だ、なら力を合わせて戦うのが筋ってものだろうが、それを仲間に足止めさせるあいつらが我侭じゃなければ何だって言うんだよ!!』
「言ったわね!! 言質取ったわよ」
カイザーの胸元を蹴り上げ、強制的に離れた弐号機が傍に置いていた武器ボックスから組み立て式の新装備、デュアルソーを持ち出して構えた。
「甲児、あんたは結局、その機体が勝手に起動したから危険だと判断した。なら、仮にその機体が間違っていたらどうするつもりなの!?」
『な!! おじいちゃんが作り出したマジンカイザーに間違いはねえ!!』
「あたしにはあんたがマジンガーの我侭を聞いているとしか思えないわ」
『てめぇ、幾らなんでも言いすぎだ!! マジンガー侮辱するなら許さねぇぞ!!』
カイザーが両腕を上げて発射体勢に入った。弐号機もデュアル・ソーを起動させた。けたたましい音を奏でて刃が回転する。
「それはこちらの台詞よ、あんたは同じことを姉御たちに向けて言い放った。あんたの言葉は初めから姉御たちを信じようともしない。あんたがマジンガーを信じるのは勝手よ、なら、あたしらが姉御たちを信じるのも勝手にさせてもらう!!」
再び、二体の機動兵器はぶつかり合うその光景を決して高くはない天井擦れ擦れで飛んでいた真ゲッターは見守るように沈黙していた。正確には沈黙せざるおえなかったのだ。
この場所に来て、対峙するエヴァ二機を視界に収めた頃から真ゲッターは操縦を受け付けなくなった。意思あるゲッター線がそうさせているというのは乗っているパイロットは少なくも理解している。しかし、理由に関しては解らず仕舞いだった。
「おい、竜馬。ゲッターは何か言ってないのか?」
動かす事の出来ない操縦桿から手を離してゲッター2パイロット隼人が問いかけた。それに竜馬は瞳を閉じて答えない。コックピットが沈黙に包まれた。やがて、竜馬は瞳を開いて大きく息を吐き出した。
「ゲッターは何も語らなかった。だが、意思のようなものは感じた。これは俺の主観だが新たな可能性を待っているような、もしかしたら見定めているような……そんな気がする」
「つまり、あの先にゲッター線が行かないのはその必要が無くなった可能性が高いからというつもりか?」
「ああ、俺は少なくともそう感じた。だが、これはあくまで俺の意見であって」
「いや、俺も信じるぜ」
「隼人」
「これが始めて起動した日も、ゲッターの行動は無駄になった。これはそれと同じなのかもしれん」
「しかし、お前はそれを俺の疲れだと思って信じなかっただろう」
「……二回も同じ事が起きれば信じるさ。これは俺の予想だがゲッターはある程度の未来に起こる事象を知っているのだろう。だか、それらの道筋とは違った可能性が浮上、先に待つものを見定めるためゲッターは動かない。前回、動いた結果は骨折り損だったからな」
「面白い解釈だ、隼人が言うなら俺もそんな気がしてきたよ。ゲッター線は人類にとって未知なものだからそう言った未来視も出来るのかもしれない。ところで、弁慶はどうした?」
ゲッター3パイロットが言葉を発していないことに不安を抱いた竜馬が問うと隼人は至極簡単な答えを述べた。
「あいつならいびきを搔いて眠っている」
「……弁慶」
「どっちにしろ動かないんだ、別に構わないだろう。それよりもあいつらはどうする?」
パレットライフルを撃ち続け、それを華麗な動作で避けてみせるMk-Ⅲ、反撃として撃ち出されたフォトンライフルをATフィールドで相殺する初号機。
肉弾戦のように互いの武器でカチ合う弐号機とマジンカイザー、エヴァに関しては乗り手が男女なので逆のような気がするものの、未だ両チーム致命傷を負っていない。
隼人の問いに竜馬は首を横に振って答えた。あくまでこれはゲッターの中での話で今更彼らが聞くとは思えないのだ。甲児は見た目どおり熱くなりやすいタイプで、タスクも普段は気さくだが、一度感情に火が点いてしまったら止めるのは難しい。
「報告には使徒との戦いで被弾したことにしてやるか」
「そうだな、隼人」
真ゲッターは傍観という立場に最後まで収まるのだった。
+++++++++++
赤い水、LCLに満たされた原初の海を模した神秘的な空間、魂の座、神の座とも呼ばれる、ガブの部屋にタブリスは4号機を伴い降り立っていた。
「この感覚、懐かしい…場所が変わってもその本質は変わらないと言う事か…ふふ、もうすぐだよ、カガリ、待っていてね」
厳かな儀式のように宙を浮遊していくタブリスと赤い水を跳ねながら豪快に歩み進める4号機、十字架に貼り付けられた自身の体はもうすぐだ。
少なくともタブリスはそう理解していた。ところが、目的の場所に近づいていくうちに眉が下がっていく。
「可笑しい、肉体が反応しないのは何故だ」
本来なら、己の剥き出しの魂が現れれば肉体の方が取り戻そうと反応を見せてくるはずなのだ。タブリスは自身の魂を既に戻そうと決意している。肉体に覆われようとそれは剥き出しの魂と変わらないはずだ。それなのに、先のほうに見える本来の肉体は一切反応を見せてこないどころか、回帰を促す肉体と魂の共鳴すら発現しない。
「本当にどうなっているんだ。まさか、肉体が僕の魂を求めていないとでもいうつもりか」
十字架に括られた肉体に近づけば近づくほど、タブリスの中で不安が膨らんでいく。
「槍のせいで休眠状態なのかもしれない。そうだ、そうに違いない…まずはロンギヌスを抜いてしまおう」
それでも、僅かな希望に縋って、4号機に槍を抜かせようと動かした時、自身が発したATフィールドを中和、突破される感覚を捕らえた。それが出来るのはエヴァの機体だけ、タブリスが渾身の想いで作り上げたそれを意図も容易く中和して見せた力を持つもの。
「待ってはいなかったよ、リリス」
振り返り、その濁った瞳で見据えた先、悠然と降りてくる零号機の姿に語りかければ、槍に手を掛けようとしていた4号機は翻して標的に向けて走り出しだす。零号機もまた習うように走り出し、互いの巨体は赤い水の中で戦闘を開始した。
突き出されるナイフに対して首を傾げることで避けた零号機はナイフの持つ腕を掴み上げ背負い投げを繰り出した。水しぶきが上がり4号機が倒れこむ。ただ、倒れこみながらも零号機の足に手を伸ばして掬い上げたことで、零号機もまた仰向けで倒れこんだ。
上空からその様を眺めていたタブリスが腕を掲げた。すると、呼び動作なく4号機は立ち上がり、腕を支えに起き上がろうとする零号機の支えを足ではらい再び水面に倒れこんだところを力の限りで踏みつけた。
「僕の人形だ、操る事に造作もない。リリス、君はそこで地に這い蹲っていればいいんだ。そして僕がこれからする行動を黙って見ていろ」
終わりを示す機械音がプラグ内で鳴り響く。内部電源が終わりを告げ、零号機はその機能を停止した。
「なんだ、ここに来るだけで精一杯だったわけだ」
言って、腕を動かせば踏みつけていた足を退かして4号機が槍の元に歩き出した。そして今度こそ槍を引き抜き投げ捨てる。
それにより十字架に括りつけられた使徒の下半身が再生するかのごとく生え始めた。
「さあ、今度こそ僕を受け入れておくれ、アダム。白き月の民、その始祖たる僕の半身」
白い使徒に向けて全身を投げ出したタブリスが近づいてく。刹那、二十はくだらない拒絶の壁がタブリスの前に立ちはだかりそれ以上の進入を拒んだ。拒絶の壁に込められたあの肉体の記憶か、始まりたるあの時のような絶対の拒絶はタブリスの瞳に光りを取り戻す。
そして絶望が全身を飲み込んだ。
「あああ、これは、リリス……リリスの肉体だ」
この部屋に来たときから頭の片隅で理解していたことをようやく受け入れて苦悶に満ちた表情を浮かべた。
「分かっていたよ、ここはリリスの座だ。リリスなくしてこの場所が開放されるわけもなく、これがアダムでない事は……理解……したくなかったな」
呟いた直後、タブリスの右腕がその役目を終えたかのように千切れ、赤い水の中に落ちて小さな水しぶきを上げた。
「時間切れだ、僕の体も、僕のたった一つの望みも…何もかも」
後は自身の体がATフィールドを保てなくなって消滅するのを待つだけである。けれど、その前にタブリスは行動に移す。
「己を殺すことで少しでもカガリに懺悔を捧げよう、絶望と後悔を胸にして使徒らしく苦しんで死のう」
残った左腕を動かして4号機をこちらに向かわせると、己の体を巨大なその手に握らせた。後は力を込めさせれば使徒らしく絶命する。最後の使徒の終わりが自殺だとは何とも滑稽か、他の使徒たちに示しがつかないけれど、リリンの肉体に落された自身らしい結末だ、そう自嘲的に思いながらタブリスは死刑台で待つ囚人のように身を捧げた。後は4号機に命じるだけだ。
「ごめんね、カガリ。君の大切な人を殺した僕をどうか許さないで」
嘘だ、タブリスは内心で呟いた。許されたい、もう一度彼女の声を聞きたい。そして、そして、本当は彼女と共に。酷く人間らしい感情が渦巻くも、それに蓋をして口からは別の言葉を紡ぐ。
「そして、願わくは君がこれから先も生きられるように……僕の願いでは聞き届けられないかもしれないけどリリス、どうかカガリを守っておくれ」
力を込めろ、タブリスは4号機に命じた。
直後、その声は聞こえた。
「駄目だ、エバ!! そのまま動くな!!」
タブリスにとって、何時までも聞いていたい声であり、今の自分には語りかけてほしくない声が4号機を止めよとしている。
しかし、無駄なのだ、これはもう物言わぬ操り人形で、仮に人形の糸を切り裂く奇跡があったとしてもその声に応えてくれる絆は自身が壊してしまったのだから。
次回 せめて、ラブコメらしく5
次回もサービス、サービス……敢えての敵対は次への布石なのです。