遅くなりました、始まります。
ただ、今後もゆっくりとした投稿になります。
「皆、本当にいいのね?」
各々のエヴァが格納されている格納庫前の廊下でミサトは問うように、そしてどこか憂いを帯びた眼差しで言った。
「構いません、僕らは死にたくない。そしてミサトさんたちにも死んで欲しくない。だから同じ人間とでも戦います」
「そうね、あたしはエヴァに乗ることに誇りを持っているの。それを他の誰にも穢されたくないわ。なら戦うしかないでしょ」
シンジとアスカが力強く頷いた。その姿にミサトは申し訳なさそうな表情を浮かべて謝った。
「ごめんなさいね、私たち大人が不甲斐ないばかりにあなたたち子供が嫌な思いをする。使徒ならまだしも人間を相手にするなんて、私たちは何のために戦ってきたのかしら」
「おいおい、そんなの明日を生きる人のために決まっているだろう?」
項垂れるミサトにプラグスーツを着たカガリが声を掛ける。
「あんたはこのネルフの参謀なんだろう、だったら悲壮感を漂わせてないで景気良く送り出してくれなきゃ困るぞ」
「え、カガリさん。もう着替えたんですか!?」
「さすが、姉御。もう戦闘態勢に入っているのね、あたしたちも負けてられないわ、シンジ、行くわよ!!」
「あ、待ってよ、アスカ」
一目散に走り出したアスカに続くようにシンジも駆け出した。残されたミサトは苦笑気味にそれを見送ると件のカガリに振り向いて先ほどと同じような憂いの表情を浮かべる。
「カガリさん、あの子たちをお願いね」
「ああ、任せろ。レイからも頼まれているからな、必ずこの戦いに生き残らせてやる」
「それで、レイの奴は今回も単独行動するつもりなの?」
この場にいなければならない姿が見当たらず、そう問えば、カガリは苦笑気味に頷いた。
「あいつは内部の敵と戦わなければならないからな。本命の動向を見守っているんだろう」
「そう……碇司令が行動を起こすとき、彼女は動くのね」
カガリが僅かに驚きを見せれば、ミサトは不敵な笑みを浮かべた。
「こっちだって情報は得ているのよ。碇司令はセントラルドグマにあるリリスを使って独自の人類補完計画を起こすつもりね?」
「ああ、レイが言うには悲しくも尊い願いを叶えるため、この世界を犠牲にするつもりらしいが、それは―」
「今を生きる者にとってはた迷惑な願いというわけよね」
その最たる存在がロンドベルに在籍しているものたちだろう。彼ら決して戦う前から逃げ出す補完計画認めない。そしてそれはチルドレンたちにも言えることだ。
ミサトは強い眼差しでカガリを見据え告げる。
「いいわ、カガリ。命令を告げます。この先、ネルフ本部に楯突く全てのものをエヴァによってなぎ払いなさい。けれど決して無理はしないこと、最優先はあなたたちの命だと言う事を忘れないで」
「了解、これよりあたしたちはエバに待機、敵が現れ次第掃討作戦を開始する」
「ネルフ内部での白兵戦に関しては私たち大人に任せなさい。あなたたちは外の敵だけを考えて」
最後は苦笑で言い終えた。それ対してカガリは笑顔を浮かべる。
「なら絶対死ぬなよ!!」
「……それ、フラグになりそうだから止めてよね、縁起でもない」
「そうか……なら、絶対死ねよ!!」
「それこそ縁起でもないから止めなさい!! フラグの意味分かっているの!?」
「我侭だな」
「なによ、私が悪いわけ!? 違うでしょ、天然のあんたが悪いのよ!!」
ツッコミが久々で肩を上下に動かしながら荒い息を吐き出すミサトとツッコミ力に感動して目をキラキラさせているカガリの耳に警報が鳴り響いた。
「はぁ、はぁ……どうやら、始まったようね。何で私は始まる前から疲れているのかしら…まぁ、いいわ。カガリさん、後はお願いね」
そう言うと、ミサトは司令本部に向けて走り出した。それを見送ったカガリも4号機格納庫に向けて歩き出す。
「外と内……すべてを終わらせて未来を勝ち取るぞ、レイ」
拘束具に押さえ込まれた4号機に乗る際、ここにはいないレイに想いが伝わるよう願いながら呟いてカガリはプラグに乗り込むのだった。
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『今朝、連邦政府及び日本政府によりA801が発動されてから三時間たちます』
廊下を歩くミサトに内線端末でマコトから伝えられる。
『特務機関ネルフの特例による法的保護の破棄、指揮権の連邦政府への委譲がその内容ですが、既に発令されていると思われます。最後通達ですね』
「そう、概ね予想通りの展開ね」
『午後零時丁度を持って地上及び外部との連絡が一切絶たれました。職員の携帯も含めてのようですから特殊なジャマーによるものと予想されます、これにより作戦行動は開始されたと見て間違いないでしょう』
「本命はここの要となるMAGIオリジナルの奪取が目的よ、それについてはどうなの?」
『そんな! 今ちょうどMAGIに対して五カ国に配置されていたMAGIタイプによるハッキングが開始されました!』
「一対五なんて分が悪いにも程があるじゃない!」
端末を耳に当てて親指を噛みながらこれ以上事態の悪化を防ぐすべを考え込んでいるとマコトの焦る声とマヤの感激する声が聞こえ、何故か次に聞こえたのは同じくマヤの悲鳴だった。
「どうしたの!?」
『葛城三佐、大変です!! 先輩が、リツコ先輩がご乱心です!!』
「何ですって!?」
端末から何かを奪い取るような音が聞こえると低い憎悪に満ちたようなオドロオドロしい声が耳に入る。
『……ねぇ、ミサト……あのクソ野朗は何処にいるのかしら……』
「り、リツコ、何があったの!? と言うか、今までどこに行っていたのよ!」
『ねぇ、教えなさい、ミサト……教えてくれたらMAGIに第666プロテクトを掛けてあげる。あれなら、本部直接占拠までの間くらいは保たせられるわ、どうする?』
それは悪魔に魂を売るような選択にどこか似ていた。それほどにリツコの声は恐ろしかったのだ。きっと教えたら最後、我らが総司令はリツコによってきっと地獄に落されるだろう。クソ野朗という言葉だけですぐさま総司令に辿り着くミサトもまた酷いが、それならば導き出される応えは簡単である。
何て素敵な選択だ。そう瞬時に判断したミサトは司令がいると思われる場所を即座に回答した。
『そうなのね、あの場所に…気の早いこと……待っていなさい、クソサングラスが……私のこの手で息の根を止めてくれる』
端末を強制的に切られ、ミサトは身震いしながら司令本部に向かう。
司令本部の何時もの場所、第一発令所に辿り着いたミサトは震えながら作業するこれまた何時ものメンバーと顔を思いっきり腫らしたコウゾウが出迎えた。
「あの、副司令……その顔はどうしたのですか?」
最初に一番目に付くコウゾウに問いかければ何時もの渋い表情を浮かべたいのに浮かべられない間抜けな表情で明後日の方向に視線を合わせた。言いたくないらしい。その他のメンバーに視線を向ければ皆一様にして思い思いの場所に視線を合わせて目を合わしてくれない。
「……リツコがやったんですね」
リツコというワードを告げた瞬間、目に見えて彼らが怯え出した。
「それで、当のリツコはどうしたの?」
この場所にはもうリツコの姿は無かった。
「えっと、赤木博士はMAGIにプロテクトを僅か二十秒で掛け終えるとゲームのような部屋を徘徊するゾンビの歩き方で出て行きました」
眼鏡を何度も押し上げる仕草を行いながらマコトが告げてきた。
「そう……今回の事が終わったら皆で総司令に線香でも上げに行きましょう。副司令もそれでよろしいですね?」
「ああ、かつてのキョウコ君を彷彿とさせる闘気だった。碇も年貢の納め時だな。私もこれだけで済んだのが奇跡的だよ」
やはり、顔の腫れはリツコによるものだったらしい。そして何気にゲンドウの終わりを見据えるコウゾウは割りと酷いだろうが、この場所に居るものたちにそれを指摘するものはいなかった。
「さて、戦況はどうなっているの、マコト君」
切り替える意味も込めて明るい声色で戦況を聞くミサトに皆も忘れるようにして明るい表情を浮かべる。これでも本部を占拠せんと白兵戦が仕掛けられている最中なのだ。
「第六、第七、第八リフトよりエヴァ三機が浮上、命令通りジオフロントに配備させました。それと外部との連絡は未だに取れませんが、センサー類は先ほど回復させました……赤木博士が」
最後の方は小声で告げたマコトの肩に優しく手を添えてミサトは笑みを浮かべ頷いた。それだけでマコトの恐怖は緩和する。
「センサー類の回復により地上に展開する部隊を補足、モビルスーツ部隊と思われます」
シゲルがデレ顔のマコトの変わりに告げた。
「OZは壊滅、ティターンズも解散しているのに。何処にそんな余裕が」
「その通りだ、今の連邦に力は無い、だからこそ考えられるのはゼーレの介入で再編されたティターンズによるものだろう」
コウゾウの言葉にミサトが眉を潜める。
「ゼーレにはそこまでの力が?」
「ああ、老人たちは金だけは溢れるほどにあるからな、失墜した議員を買収して再編させるのも難しくは無い、まして我々ネルフは独自の権限を持つことから連邦政府にとっては眼の上のたんこぶのような存在だからな」
「ホント、ろくな金の使い方をしない連中ね。その金で余生を過ごせばそれなりに充実したでしょうに」
「まったくだ」
仮にミサトの言葉を聞いたゼーレメンバーがいれば反抗しただろう、それはリア充ではないと、それでは駄目なのだと。
「外はあの子たちに任せましょう。それで、歩兵部隊に関してどうなっているの?」
「考えられる予想経路には既に武装した職員及び、開発班整備班の合同開発で作られた強力な兵器が配置されています」
マヤによる報告にミサトは再び眉を潜めた。
「うちの連中、仲が悪いはずなのにどうして。それに強力な兵器なんて何時の間に作ったのよ。私ら予算を抑えられたでしょう」
「それが、彼らによると同志の言葉に従ったまで、という言葉の一点張りで要領を得ないんです。その後、『こんな事もあろうかと』と言う言葉はロボダインのロマンだとか叫びだして収集が付かなくなり断念しました」
「分かった、整備班主任に通信繋いで」
命令を受けてマヤがパネルを操作すれば主任と繋がる。
「私です、端的に兵器開発の経緯を教えなさい」
『同志に願いを叶えたまでだ』
「同志とは誰?」
『同志パイロット綾波レイに決まっているでしょうが。俺らにとってあの人は総司令官より尊いお方なんだよ!』
「つまり、レイはこの事態を予測して予算があるうちにコツコツと開発していた、それで間違いないわね?」
『ああ、そうだよ!! いい加減通信を終えさせてくれ、まだ職員に渡していない兵器や配置しなければならない決戦兵器があるんだよ。そっちにも渡しただろう? プラズマ小銃やガトリング砲、ロケットランチャーや高電磁地雷なんかをよ』
「分かりました、無理しないで戦闘が始まったら退避しなさい」
通信を切るとミサトは改めて司令本部を見渡して入り口になりそうな箇所に設置された物々しい武装に頭を抱えた。自動集準のガトリング砲や近未来万歳とツッコミを入れたいプラズマ兵器、職員が持つ武器も正規の兵士が持つ武装の軽く上を行く品揃えだ。
「これじゃ、ここに攻めてくる部隊が皆殺しに合うだけじゃない。どんだけ強力な武装を用意しているのよ」
「ここで働くものたちは皆一級品だからな、資金や資材があれば容易い事だろう」
コウゾウの言葉にミサトはもう乾いた笑みを浮かべるしかない。白兵戦闘経験という陳腐な差では埋められない武装の豊富さに内心、命令で攻めてくる部隊に合掌を行った。
「ホント、レイには驚かされるわね。未来予知でも出来るのかしら」
「言いえて妙だな。それもありなんと言ったところか。彼女には驚かされるばかりだ。しかし、これで職員の無駄な死体は見なくて済む。攻めてくる向こうの部隊の死体は積みあがりそうだが、まずは地表を壊す――!!」
コウゾウが呟いた直後、警報と共に凄まじい衝撃が本部に響き渡る。
「どうなっているの!?」
「地表推積層、融解、これによりジオフロントが地上に露出!! N2兵器によるものと思われます!!」
「予想通りとはいえ……無茶をしてくる」
マコトがモニターを見ながら報告すれば、コウゾウは呆れたようにため息を吐いた。
「あの子たちは!?」
「エヴァ三機、本部を守るように展開、ATフィールドで衝撃を遮断してくれたようです」
マヤが嬉しそうに報告してきた。
「ホント、あの子たちは優しいのに……そんなあの子たちの大切なエヴァを欲しがろうとする奴らは死ねばいいんですよね!」
「そ、そうね……随分アグレッシブな発言をするようになったわ、伊吹マヤ」
ロケットランチャーを構えながら鼻息荒くも宣下するマヤの姿にミサトは内心ドン引きする。ここに敵が攻め込めば、今のマヤならば躊躇無くミサイルを撃ち込むだろう。仲間としては心強いものの違う意味で逞しく成長した後輩が少し怖い。マコトやシゲルも若干顔を引き攣らせていた。
再び警報が鳴り響く。
むき出しの地上から数十体にも渡るモビルスーツが降下してくる警告が立体パネルで映し出され、同時にミサトの元に侵入部隊と先発隊に所属する職員の戦闘が開始されたとの報告が入った。
ミサトは全職員に向けて通信を繋げる。
「これより白兵戦を開始します。皆、外で戦う子供たちの憂いにならないよう敵は必ず殲滅しなさい。それが子供に未来を託す事しか出来なかった我々大人のけじめです。以上、通信終わり。最後に……皆、奮闘を期待する」
通信が切られた直後、各所の重要な施設で武装した職員たちが次々に戦闘に参戦していく様がモニター映し出された。
次回 決戦 モビルスーツ部隊
次回もサービス、サービス……ひぃぃぃ、前回から一週間以上も経っている。そして、今後も遅くなるというかんじ……申し訳ないです、ホント。