中二カヲ「カガリ、あいつが僕をいじめるよ!! 後、ゲンガーだと思う」
カガリに抱きつく中二カヲ。
カガリ「うん? ゲンガーサンダーだと思ってよく見たら似ていないぞ!!」
中二カヲ「そっちに付けちゃんなんて流石、天然カガリ……でも、違いを見抜いてくれた僕の愛するカガリ!!」
カガリ「抱きついてこない方がイケメンだな!!」
中二カヲ「辛辣だよカガリ!!」
カガリ「けど、あたしの好きなカヲルはお前だけだぞ!」
中二カヲ「うわぁぁぁん、男前カガリ、僕も大好きだ!!」
Qカヲ「あれ、同じ顔なのに凄いイラッとくるんだけど、あいつ」
Qカヲは中二カヲの顔に唾を吐きかけたくなった。
続く?
始まります。
振り切られるマゴロクソード、初号機にとって三体目となる量産型の首が跳ね、血飛沫が舞う。返す手で白い胸部に向けてソードを突き出すと的確にコア部分を貫いた。パキッという鈍い音を最後に量産型は完全なる機能停止に陥る。
初号機の背後では巧みに量産型の攻撃を避ける4号機がカウンターとしてパレットライフルを撃ちつくし確実に装甲を潰していく。4号機もまたこれが三体目だ。装甲をつぶされ、剥き出しになるコア、しかして既に再生が始まりコアが隠れそうになるのを見逃すカガリではない。足の武器ラックから高性能プログレッシブナイフを二本取り出してコアを貫いた。ナイフから発生した高威力の超振動がコアを直撃、装甲とは違い脆さを残すコアは形を保てず融解する。
二体のエヴァから離れた場所にある湖畔では弐号機が雄叫びを上げながら三体目に暴虐の限りを尽くしていた。惣流の名の通り、武器などは使わず、その腕で量産型の両腕を引き千切り、しゃがみながら繰り出される回し蹴りは足を竦ませるどころか、恐ろしい回転と威力に太ももから下を吹き飛ばす。足を無くした量産型が崩れ落ちる次の瞬間にはその手で頭を握り締め強制的に立たせ、もう一方の腕を胸部に向けて撃ち出した。
『これどぇ、ラストォォォォォ』
アスカの雄叫びと共に貫かれた腕は白い背中を突き破り、確実にコアを握りつぶすと同時に頭も握りつぶされた。初号機のときとは比べられないほどの血飛沫が舞い上がる様は圧巻だ。最後の量産型は一切の攻撃が出来ずに沈黙する。
時間にして九分、カガリたちはエヴァ量産型のコアを完全に破壊することに成功した。
その場には引き千切られた白い腕や目の無い顔、あばら骨を剥きだしにした胴体などが転がり落ちて宛ら地獄絵図のような有様であったが、その中央に凛として立つ三機のエヴァは逆に神々しくあった。
「終わったな」
4号機の中、カガリはホッと息を吐き出して笑みを浮かべる。彼女らは何度も再生する量産型を相手に力の限りを尽くしたのだ。
初号機は最大の武器とも言えるマゴロクソードで三体目の量産型を破壊した時、その役目を終えたかのように折れた。
弐号機は操縦者の血が成せる技か、敵に一切の攻撃を与えず破壊し終えると、それによって出た返り血を避けることもせず堂々と浴び続ける。
4号機もまた、敵の攻撃を巧みに避けながらATフィールドを中和、残りの武器庫にあった武器をすべて使い尽くし量産型を破壊することに成功した。
満身創痍の状態とはいえ全てを出し尽くし、仲間も欠けることなく勝利できたのだ。こんなに嬉しい事はない。
『姉御、本部から連絡よ、量産型の破壊に伴い本部に侵入していた敵はすべて撤退したわ。職員の死傷者も予想していた範囲を下回ったそうよ』
『そんな、やっぱり死んだ人が……』
報告を聞いていたシンジが声を詰まらされた。そんなシンジにアスカが語りかける。
『シンジ、あたしたちは彼らと同じ人間で神様じゃない。人に出来る事は限られているのだと思うわ。あたしは偶々エヴァに乗れた、ただそれだけの人間。上手くいかなくて、嘆いて、心配してくれた人を拒絶して、自分の殻に篭ってしまう弱い人間で、この戦いで死んでしまった人間と変わらない』
『アスカ』
『でもね、人は大切なものと心を通わせれば何倍にも強くなれると思うの。あたしの場合のあんたや姉御、ミサトやリツコ、このエヴァのために尽力してくれた全ての人、その人たちが一丸となったからこそこの結果を得られたのだとあたしは思うわ』
『これは喜ぶべき、ことなのかな?』
『少なくともあたしはそう思うわ。言っておくけど、あんたもそう思えとは言ってないわよ、シンジにはシンジの感じ方があるからね。あたしが言いたいのは仮に悲観しても最後は前を見据えなさいって言っているのよ。あんたの根本にはネガティブ要素が満載だから』
通信から聞こえる苦笑にそれを静かに聴いていたカガリは満足げに頷く。彼女はこの戦争を通して強くなった。そして人らしくなったと思う。では、シンジはどうだろうか。
『………うん、僕は悲しい。僕らは人だ、使徒のような力も無いし、神様のように全てを守る事も出来ないけれど、それでも僕はそんな不器用な自分を……人間を嫌いじゃないかな』
ああ、レイ。彼らはもう心に一つの折れる事のない芯を通した。それはやがて大人になろうとも決して折れないものを手に入れたのだ。
そしてそれはカガリも同じである。
レイと出会い、あたしはきっと本来辿る事のない経験をしているのだろう。出会わなければ今もオーブで世間知らずの娘をやっていたはずだ。それをこのような形で世間を教えてくれたレイには、相棒には感謝してもたりない。
使徒と言う言葉も通じない理不尽な存在がこの世の中にいることを知った。本部を襲ってきた同じ人間、それを前にしてこの世の中が綺麗事だけではないことを知った。
それでも、使徒だった存在と心を通わせることもできて、反発していた仲間に言葉を尽くし姉御と慕ってくれるようになった。そんな事実があるのだから綺麗事大いに結構、口には出さなくとも心には常に綺麗事を考えていたい。最良を選択していくそのために何かを犠牲にしないよう考え続ける。それがカガリの見つけた大きな芯。
「レイ、安心してくれ。あたしたちはお前がいなくなっても大丈夫だ」
彼らに聴かれないよう静かに呟いたその直後、通信に割り込むかのようノイズが走る。
やがて呟かれるその声はカガリたちの耳に木霊した。
――始祖を模した人形を扱う矮小なる人の子よ、貴様らに再びの絶望を与えよう。
それはユーゼスを倒したときに現れた声と同じだった。
――我の操りし人形の呪縛は神を射殺す槍であってもすべてを消し去る事は叶わなかったようだな。
憎悪を具現化させたようなその声は人が人である限りその根源たる生を脅かす。
――人の中にはそれに気づくも敢えて見過ごした輩も存在したようだが、そのものたちの望みを我と一つになることで叶えるとしよう。
陰と負、憎悪と死、声は人にそれを刻みつける。
――すべては我より上の存在を消し去るため、今、死の儀式を行わん。
不快な声が止まり、静寂に包まれたジオフロントに響く怪音、その音は主張するほど大きくも無い。しかし、確実にカガリたちの耳に残っていく。特にカガリは自身の勘が最大警戒を告げていた。
「くっ、何が起きるんだ!」
三名のチルドレンは周囲を警戒するも、見渡す限りに変化は無い。けれど、その音の元凶は静かに動き出していた。
量産型が持っていた独特の剣――諸刃の剣と呼ばれるそれが九つ、呼び動作もなく浮かび上がる。
まるでポルターガイストのようだとカガリは場違いな想いを抱いた直後、その形状を瞬時にロンギヌスのようなものに変えた。
「しまった!! ATフィールドが効かない!!」
その槍の特性を思い出して叫ぶも、九つのそれは標的を目指して凄い速さで撃ち出された。
『逃げなさい、シンジ!!』
根源の恐怖から無理やり立ち直ったアスカがそう叫ぶも同じように竦み上がるシンジにそれは刻であった。
槍の標的となった初号機に向けて九つの槍が迫る、その刹那。
『駄目、これは罠だよ、カガリ!!』
「あたしはもう負けない!」
コアからカヲルの静止する声を無視して既に動き出していた4号機をさらに加速させる。それがあの声の目論見どおりでも構わなかった。ただ一つ、レイとの約束を守るため、シンジやアスカを守るため。
壁となるため、初号機の前に躍り出る。
直後、肉を突き刺す鈍い音が続けて九つ響き渡り、次いで鮮血が舞う不快音が奏でられた。
『あぁぁぁぁぁ、カガリさん!!!』
『そ、ん、な、姉御、あねごぉぉぉぉ!!』
「がぁぁぁぁぁぁぁ」
通信から聞こえる悲鳴が、カガリに届くも、それに応えられる口は苦悶の音を紡ぎ出すだけ。
脳を突き破るような痛みが同調率を通してフィードバックされ、体が痙攣を起こす。すぐに生命維持の緊急信号がレットゾーンを越える。普段、レイ以外で誰よりもシンクロ率の高いカガリだからこそ仇になったのだ。そして悲しいかな、カガリは意志が強い。故に失神すすることも出来ず、槍が刺さり続ける限りその痛みを拷問のように受けるしない。
――その強き心が他者を守る、故に愚か。そしてそれは既に供物、始めよう。
愉悦を孕んだ声がそう告げるとその場に異変が起きた。
確実にコアも壊され、理論上死を意味するそれが動き出す。所々欠損した九体のエヴァ量産型が翼を広げて飛び上がる。その中で両腕が健在な二体が宙を浮きながら痙攣を起こす4号機の両腕を掴み共に空へ飛び上がった。それに続く残り七体。
動けない4号機は九体の量産型と共にジオフロントを抜けた。
――我は遥か太古の戦いに置いて負と死の念を取り込んだ。なれば、死体を動かす事も造作ない。
声はそれ以降、シンジとアスカに届く事はなかった。
地上を飛び出した量産型はゆっくりとした羽ばたきで空に舞う。それを見送るしかないシンジは声に対する恐怖と何も出来ない自分に対する憤りが相まって人知れず嗚咽を噛み殺していた。
「くそ、くそ、くそ、どうして恐怖した。どうしてあの時動けなかった。ちくしょう、僕は、僕は悔しい。悔しいのに何も出来ない!!」
今になって動き出した腕が操縦桿をひたすら動かすも、空を飛ぶすべが無い初号機は立ち尽くすしかなかった。
「くそぉぉぉ!!」
後悔、懺悔、怒り、恐怖、頭の中でごちゃ混ぜになって咆哮を上げたプラグ内、アスカの低い、それでいて怒気を最大に込めた声が通信から響く。
『あの声を許さない、恐怖した自身を許さない。何も出来なかった愚かな自信を何より許さない。許さない、許さない、許さない』
その一言、一言に憎悪を込めて吐き捨てられる。
やがてそれはシンジの願望と同じものに変わっていく。
『翼が欲しい。つばさが欲しい。つばさがほしい。ツバサガホシイ……』
ピタリと声は止まった次の瞬間、映像に映し出された弐号機の目が眩い光りを溢れさせる。
『翼が、欲しいぃぃぃぃ!!!』
アスカの絶叫、その後に紡がれるアスカを包み込むような声をシンジは聞いた。
――アスカちゃん、惣流は決して諦めない、特に心を許した友に危害が加えられるならば、その身を犠牲にしても助けに行く。かつての私が親友のユイを守ろうとしたように、あなたに翼を与えましょう。
「アスカのお母さん……まさか、そんな」
呆然と呟いて目の前に広がる弐号機の異変に驚愕した。
弐号機の背にある拘束具が弾け飛び、その場所から何処かで見たことのある光り輝く二対の翼が生えたのだ。それは力強く羽ばたいて弐号機を浮かび上がらせる。
「あれは使徒の翼だ」
シンジは思い返して呆気に取られた。仮にそれが可能ならば、弐号機があの翼を生やせるのも頷ける。
第十五使徒が持ち合わせていた光り輝く翼、それを弐号機は取り込んだS2機関に残るデータを元に再現して見せたのだ。それは有り得ない事象、不可能とも呼ぶべき事をアスカはやって見せた。
「不可能を可能にしてくれるのが、エヴァンゲリオン」
第五使徒との戦いの折、レイが告げた言葉をシンジは思い出していた。
それならば、とシンジは操縦桿を握り締めコアに語りかける。
「今ここでやらなきゃ、僕は後悔するんだ。もう、そんなの嫌なんだよ、僕のせいで傷ついたカガリさんを助けたい、だから、僕に空を飛ぶ力を与えてよ!!!」
この初号機にも同じようにS2機関が搭載されているのだから。
「お願いだよ、初号機!!!」
慟哭の叫びに応えるよう初号機のコアが鼓動を刻むとシンジの耳に優しい声が木霊する。
――それが、シンジの願いなのね。
「この声、前に」
これもまた第五使徒の時に聞いた声だ。
――キョウコの想い、嬉しかったと同時に自身の力の無さが不甲斐なかった。シンジ、あなたはそんな想いをしたくないのね。
声を聞きながら先ほどのやり取りを思い浮かべ一つの結論に至る。
「僕の母さん」
――男の子だもの、キョウコの娘のアスカちゃんを守りたいわよね。良いわ、あなたにも空を翔る力を与えましょう。
初号機の肩ラック辺りから生え始めた見た目布のようなそれは生き物ように初号機の胸部に巻きついて背後に伸びていく。それは初号機が取り込んだ最強の拒絶タイプが持ち合わせていた触手に似ている。そして二本の布は自ら四つ、計八つに分かたれ背後に広がった。
分かたれた布は翼のように羽ばたかせ、初号機を念願の空に導き始めた。
「……初号機が飛べた」
――行きなさい、シンジ。あなたが望む事を。
「うん、ありがとう、母さん」
先に飛び出した弐号機に続くよう、初号機もまた空へと羽ばたいていった。
次回 Air/原作から離れた話を君に
次回もサービス、サービス……想いを形にする機体エバ、きっと、空だって飛べるはず!!