EBA 一番と四番の子供達   作:アルポリス

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 始まります。


第五話

 本来ならば自分の母艦に帰るところだがリツコの指示によりアークエンジェルに収納された4号機の中からフレイと共に降り立てば学生組み及び、マリュー艦長やムウ大尉、ナタル少尉などが出迎えてくれた。

 学生組みの一人、サイはフレイを危険な目に合わせた張本人のあたしに酷くご立腹のようだったが、フレイの庇う発言でどうにか落ち着いてくれたようだ。眼鏡の奥の瞳から、俺の婚約者に何してくれてんだという無言の訴えは絶えず来ていたが。

 

 その視線に耐えて沈黙を貫いていれば空母艦Lilinから艦長の赤木リツコと何故かカヲルがやって来て――誰にも見られないよう4号機から降りてきてちゃっかりリツコの隣に現われたのだろう。黙っているあたしを見て二人とも怪訝な表情を浮かべた。

 

「何を黙っているよ、気持ち悪いわね」

 

 酷い言われようだが、苦笑で返せば初見の者達は驚きを見せていた。組織のトップとその部下のやり取りとは思えなかったのだろう。もっともこれこそが普段あたしとリツコのやり取りなのでカヲルは何も言わないで淡い笑みを浮かべるだけだ。

 

「うわ、凄いイケメンねぇ」

 

 その笑みに思わず口に出したミリアリアの言葉は隣の恋人さんを不快にさせたようだ。それもそのはず、カヲルは二年前の中性的な姿に比べ、身長も伸び、顔もシャープになったようで、俗に言うイケメンのようになったらしい。

 元々の素体をあたしに合わせて成長させるという器用な事をカヲルはやってのけたのだが、あたしには細かな違いを理解できないようで、その事を本人に告げたら泣かれてしまった。あたしの印象は成長したなという認識だけで、その時は思わず解せぬという言葉を吐き出したものだ。

 

 そんなカヲルが初見組に口を開いた。

 

「初めまして、私設艦隊エバーズ代表補佐の任についています、渚カヲルと申します。この度は代表である綾波カガリの保護及び、ここまで連れて来ていただいたこと誠に感謝申し上げます」

 

 補佐の任に付かせているからこそ、リツコより先に挨拶するのは妥当と言ったところなのだが、どうやらまだ青年の域を待たさない少年の位に彼女らは驚きを見せているようだ。代表が少女で補佐も少年では仕方がないとは思うが、驚きすぎではないだろうか。

 

「私は先ほど挨拶を済ませましたのでお礼だけを述べさせていただきますわ。部下を含め代表の保護、感謝いたします」

 

 あたしの横にいるラスティーを視界に入れただけで思惑を感じ取りそう付け加えて感謝を述べたことに少し薄ら寒いものを感じるが、良い意味で捉えれば頼もしい限りである。隣のラスティーも僅かに表情を変えただけですぐさま当たり前のように受け入れて平然としているのだから元軍人は伊達ではないのだろう。

 逆に理由は分からないが代表補佐のカヲルは部下と告げられた時に盛大に表情を歪めたのには驚いた。危うく不信感を抱かせてしまうところをリツコが思いっきり頭を叩くことで事なきを得たのだが、普段飄々としているカヲルには珍しい現象だ。

 

「あの、代表補佐である方をぞんざいに扱ってよろしいのですか?」

 

 そのやり取りにギョッとした面々の中、代表でマリューが問いかければ威圧感のある良い笑顔を浮かべたリツコが問題ありませんときっぱり切り捨てた。次にカヲルの方に視線を向けて目で問えばコクコクと首が取れるのではないかと思わせるほど頷かれ、これ以上の追求はしてくれるなという想いが伝わったのかこの問答は終わりを告げたようだ。

 

 互いの挨拶が済めばリツコから組織の説明が成された。

 

「さて、先ほど望まれた所属についてですが、言ってしまえば我々エバーズは出資者個人が所有する組織であり、現連邦政府及び関係各国との繋がりは一切ありません」

「このような不明瞭な機体を所持し、高性能の戦艦を作り出せる出資者と一体どのような方なのですか?」

 

 マリューの問いかけにリツコは用意していたのだろう説明を続ける。

 

「我々の殆どは先のバルマー戦役に置いてとある国の特務機関に所属しておりましたが、戦争終結の折その機関が解体、一部を残して多くのスタッフは行き場を失っておりましたところ、その出資者がもつ財力で我々を雇い入れて下さったのです。言わば我々の恩人とも言うべきそのお方は自身の名が表に出る事を好としません。故に如何な連邦政府特使団所属の軍の要求であってもお教えできかねます」

「連邦上層部直属配下の我々であっても同じであると思ってよいのですね?」

 

 目を僅かに吊り上げたナタル少尉が脅迫染みた強めの言い回しで告げるも我が艦長は凛とした表情を見せる。

 

「我らが恩人の願いを無碍にする者はこの組織におりません」

 

 そう断言した直後場の雰囲気がガラリと変わる。次いでナタル少尉によって集められたのであろう連邦兵が格納庫に押し寄せてくるとあたしやラスティー、リツコとカヲルに向けて一斉に銃を構え始めた。

 

 知らされていなかったマリューがナタルに詰め寄る。

 

「何のつもり、ナタル少尉!? この方達は命の恩人なのよ!」

「不明慮な組織に所属する者達を拘束する為です。我らの任務はこの新造艦とストライクをアラスカ基地に持ち込むことが第一、今後の憂いを立つという意味でも必要でしょう」

「カガリさんたちはプリペンダー直々の保護要請があるのよ!? こんな事をしては遺恨が生じてしまうわ!」

「それは既に果たされている。彼らの要求はあくまで組織までの返還が対象です」

「屁理屈を! では、人として貴方の判断は正しいというの!?」

「軍人は命令が最優先されます。そこに一々人道を挟めば命令自体が立ち行かなくなる恐れがあるのなら切り捨てることも必要です」

「ナタル少尉!!」

「艦長、貴方こそ理解していないようだ、高性能の戦艦や先ほどの敵と同じバリアを有する巨人、これらを所有するのが一個人というのは可笑しな話ではありませんか。彼らの裏に大きな組織が関わっているのは誰でも予想できることでしょう」

 

 二人の押し問答の最後、苦悶の表情を浮かべたマリューは口を開いた。

 

「それでもカガリさん達はこの艦に滞在中、一度として不審な行動をしていなかった。むしろ不安なキラ君達を懸命に励ましていたわ。露骨な監視の目を欺くことせず私達に対する配慮も心がけていた…そして何より、カガリさんを心の底から信頼する彼らが貴方の暴挙を許すとは思えない」

 

 そう言って、視線を向ければ開かれた扉から古参と言われるヒイロ達や、カミーユ、そして何故かジュドーに手を掴まれながらも懸命にこちらに来ようとするプルが波の如く押し寄せてきた。緊張から息を呑む事しか出来なかったキラやフレイの学生組が彼らの登場に強張った肩を下げ、安堵の息を吐く。

 

 掴まれていた腕から抜け出したプルがマリューの前まで躍り出ると声を上げた。

 

「カガリお姉ちゃんたちは悪い事なんてしないよ! 私達に面白いマンザイだってしてくれるんだから! 酷い事しないで!!」

「プルの言うとおりだ。こいつらの身の保障はプリペンダーがしてやるよ、な、ヒイロ!」

「デュオにしてはマトモな意見だ」

「テメェ、ヒイロ!!」

「この先も彼女らの笑いと言う奴が見られないのは寂しい。俺の心は笑いを欲している」

「無視かよ!!」

 

 どんな状況でもデュオとヒイロやり取りは変わらないようだ。

 

「ヒイロさんってホント、シンジたちのお笑いが好きですよね。まぁ、僕も彼女らが黙って裁かれるのを見ているつもりはありませんが」

「ええ、共に戦ってきた仲間を見捨てるような事を僕らがするわけない」

「そうそう、カミーユさんやカトルの言うとおりってね、何ならカガリさん達の保障、俺からブライトさんに聞いてあげてもいいよ?」

「何よ、ジュドー! 最後にカッコいいこと言って! 私がここに行くの、渋ってたくせに良いとこ取りは良くないぞ!」

「プルの言う通りだな、情けないぞ、ジュドー」

 

 キリリッと構えた表情でジュドーが告げるも、即座にプルやプルツーの俗に言う妹組の鋭いツッコミを入れられ、それをあとからやって来たシャングリラチームにばっちり見られると格納庫は沢山の笑い声に包まれた。

 やる時はやる少年、けれど普段は弄られキャラがデフォであるジュドーは、そりゃないよ、と情けない声を上げながら肩を下げ項垂れる。

 

 格納庫は一転して暖かい空気が漂い始め、雰囲気も明るくなっていく。流石古参メンバー年少組だ。

 これからも戦いが続く中、仲間内で不穏にならないよう殺伐とした場を敢えて和ませてくれた彼らの配慮を汲むため、リツコに視線を送って目配せする。

 それを的確に理解したリツコは心得たと頷き、口を開いた。

 

「分かりました、出資者個人の情報を出す事は出来かねますが、我々の母体となっていたとある組織についてはお話しましょう。このような兵器を有するのです、確かに一個人だけでは無理な話というもの。ええ、確かにナタル少尉の言うとおりですわ。バジルール家の末子は不出来だと実しやかに囁かれているようですが、得てして噂とは当てにならないという典型でしょうか」

「な!?」

「失礼、決して皮肉ではなく純粋な賞賛ですのでどうかお怒りはお鎮めくださいな。さて、我らの母体となっていた組織はバルマー戦役の折一度解体されたのです、しかし恩人でも在る出資者が解体された組織を再び纏め上げ復活させました。あくまで我らは恩人の所有ですが、その恩人は復活させた組織の代表と言う顔も持っているのです」

 

 一つ息を吐き出してリツコは真実味を纏わせた雰囲気を醸しだす。

 

「その名をゼーレ、一時期は地球連邦の中枢部に深く関わっていた時期もあり、解体復活後の今も各国に少なからず影響力を与えられる秘密組織です」

「ゼーレ、ですか」

 

 マリューやナタルは言葉を繰り返しながら記憶を遡っているようだが、あの当時日本政府の暗部すらもその詳細を掴むのに苦労したのだ、末端の彼女らではその名すら聞く事はなかっただろう。

 

 リツコが言ったゼーレの話は一部本当の事を話しているが、その他は真っ赤な嘘だ。

 二年前暗部によってゼーレの代表が捕まり組織は解体されたものの、ゼーレの所有する死海文書のデータバンクを求めてあたし達はアスカの伝手で秘密裏に解体された組織幹部達に接触を試みた。その過程で得たデータは今もLilinに保管されている。その後は自然に消滅するのを待つばかりだったゼーレだが、当時の影響力ほど無くとも未だ各国に太いパイプを持ち合わせていた伝手に目を付けたリツコは今後の戦いに役立つという予想の下、一つに纏め上げ、再利用することを提案、代表のあたしの許可の元、それは為された。

 しかしながら、再びゼーレを復活させたはいいものの、代表の地位に置く人材については頭を悩ませた。

 二つの通り名があるあたしは物理的にこれ以上無理であったし、リツコも研究開発の任で忙しい。日本で学業に勤しむシンジには荷が重く、アスカは学生の傍ら暗部の組織の代表におさまったばかりで余裕なし、カヲルは端から当てにはしていないという八方塞の中、エバーズ情報網に適切な人物が浮かび上がった。

 

 地球連邦によって逮捕軟禁されていた冬月コウゾウである。ネルフの実質的代表の立場に収まっていた彼ならば私欲に走ることなく組織を纏め上げられると踏んだリツコは早速、ゼーレの名を使い、当時の地球連邦に対して残る影響力を犠牲にすることで冬月コウゾウを釈放する事に成功、その任を願い出れば快く引き受けてくれた。

 よって、ゼーレは過去の秘密組織としてではなく、あくまで組織名の影響力と情報収集の目的のみで存在、真の代表は変わらずあたしになっている。但し、一応という言葉の名の下にあくまで組織の顔という立場でしかないが。

 

「これは善意の忠告ですが連邦上層部に報告するならば公にするのは止めておいた方がいいでしょう。ゼーレは当時の連邦に多大な影響力を持っていました。当然、上が公表されたくない情報も共有していたようで、下手すれば共倒れなんてこともありうる。そんな危険が孕んでいるのなら上は事前に排除したがるもの、十分な注意を払うようお気をつけてください」

 

 捉え方によっては脅しにも似たリツコの善意が効いたのか、すぐに兵は引かれ安全が確保された。さすが天才にしてドSの鬼畜博士様、最後に場を違う意味で恐怖に陥れ、今後のあたし達に降りかかる組織関連の枷になりそうなものに楔を打つ形となったようだ。

 目の前の安全はもちろんのこと、今の連邦政府に巣くうとある組織の台等によって浮かぶエバーズ存続の危機に対しても予防線を張ることに成功したということになる。

 

 




 次回タイトル 三つ目のルーツ。


 次回も頑張れ、カガリ。
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