(俺が呪術師を除霊しちゃったのは)わざとじゃないんです! 作:かりん2022
その呪物を見た時、唐突に前世を思い出すと共に、視界に化け物が現れた。
いや、めちゃくちゃいるな? 霊的防御どうなってんだよ。
というか、なんでこんなヤバい呪物が転がってんの?
ここを仕切ってる神様どこだろ。
まず呪物をなんとかしなきゃだな。
国直属の霊能組織、オカルトGメンを検索。ない。
神様の住まう修行場、妙神山を検索。ない。
化け物も悪霊ではない感じ。もっと禍々しい。
「どうなってんだよ……」
ふと思いついて歴史を検索する。違う。並行世界……?
とにかく、この呪物をなんとかしないと。
封印の札はほとんど力を失っているし、なんか毒を毒で制す的な感じ。
同業者はいると思うのだが、本物の同業者を探すのは骨が折れる。
基本この世界は、コネと伝手なのだ。
それでもなんとなくそれっぽい集団を発見した。
「都立呪術高等専門学校……本物っぽいのはこれかな。にしてもなんて名前だよ」
できれば、この世界の霊能事情も知りたいのだが、検索しづらいな、これ。
記憶を取り戻すまでの間、武術を習ったりスピリチュアルな事に惹かれて独学でなんちゃってお札など作っていたようだが、今となっては不出来すぎて恥ずかしい。
それでも、いくつか効能があるものもある。
それらを組み合わせ、簡易的な封印を施す。
ひとまず通報をして、回収する人間が近くまで来ているようなので渡す事となった。
部室でオカルト用品を使えるのと使えないので整理しつつ夜まで待機する。
精霊石の原石をいくつか見つけたので、くっそビビりながら加工処理。
幸い加工までは途中までしていた。ナイスだ俺。
こちらではザンスはないし、日本でも取れるらしい。すげぇ。
すぐに全財産で確保して……いや、焦るな調べ物してからだ、でもちょっと買っとこ。
「虎杖悠仁だな」
「待ってた! って、学生!? 大丈夫なのか?」
渡そうとした宿儺の指を引っ込める。
「正式に任務を請け負ってる。これ、証明書」
「これ、相当やばそうなんだけど」
「だから俺が来たんだ」
不安で胸がいっぱいになりながらも、とりあえず渡す。
その途端、推定悪霊達が襲いかかってきた。
「!?」
「くっ 封印がゆるんでたか!」
「お前封印できないの?」
「無理だ」
「ほらやっぱり学生ー!」
「とにかく逃げろ!」
にしても、簡易封印はやったはず! なんかおかしい!
「玉犬!」
伏黒が異世界の式神? 悪魔? を召喚し、俺の頭は真っ白になる。
『……お前は式神に選ばれなかった』
あの絶望。
……伏黒は、式神使いなのか。
自分の中に黒い淀が溜まるのがわかる。
だめだだめだ。霊能者は冷静でないと。
にしても、力の質は邪悪。あの悪霊もどきと同質。
え、大丈夫なのかこれ。
今まで、魔族の力を怖いものだと思っていたが、これを知ると魔族の力もまた清廉なものなのだと思ってしまう。それぐらい邪悪だった。
伏黒は押されている。
「くらえ趣味で買い漁ったスピリチュアルグッズ!」
本当に不出来で俺の作と認めたくない聖水をぶん投げる。
「効くかそんなん! そもそも呪力には呪力しかきかな……」
じゅうううううっと音がして、悪霊が引く。
「……効いたな。 それ、呪具かなんかか」
「えっ 呪力ってなにそれ。霊力とかじゃねーの?」
「そんなものはない。一般的にオカルトとされてんのは全て呪いの仕業だ。負の心が具現化したもの」
「ふのこころがぐげんかしたもの」
そんな訳あるか。
「神父様とか、巫女さんとか、神様の力をお借りして、ヤァーって」
「そんな訳あるか」
「悪霊とか出た時どうしてんの」
「呪術師が呪力で祓う。お前、見えんのか」
「最近見えるようになったんだけど」
「そうか。この業界は万年人手不足だから、見えるだけでも呪霊を報告する窓って仕事とかがある。祓えるなら呪術師だ。今俺が通ってる学校に通うことになる」
「濃いメンバーいっぱい居そう」
「1年生は二人だ」
「俺、どうせ通うなら廃校寸前のとこじゃなくて大手に通いたいかな」
「東京と京都の二校しかない。人数少ないんだよ呪術師」
「そんな呪霊すくねーの。日本国民の全部の負の気持ちってすごそうだけど」
「万年人手不足って言ったろ」
「OH……」
なんだろう。触らない方がいい予感がすげーする。
多分俺の知ってる呪術師とも違う感じがする。
直、この間にも逃げたり戦ったりしている。
俺のなんちゃって除霊グッズが消えてなくなる……。
精霊石もあるから、推定。じゅうお……やめよう。考えたら死んでしまう。
大体、物価が違うから。うん。精霊石とか数千円だったし。
早いところ、霊具作ろう……。消耗品じゃないやつ。
「ちな、一回の除霊ってどれくらい?」
「そうだな。今くらいのやつで」
聞いた相場は話にならない金額だった。
あ、基本呪力で攻撃。戦力自前。呪具は基本武器で消耗品ではない。
なるほど、必要経費低いのか。
いや、ここ霊能者くっそ不利じゃね!!?
霊能者なんてお札使ってなんぼだぞ、原価割れするわ!
色々とカルチャーショックを受けながらも、教師だという五条悟が指を引き受けにきた。
「ん。なにこれ」
俺がはったお札をペリペリと剥ぐ。お前本当にオカルト関係者か。
宿儺の指の気配が濃くなり、小首を傾げた。
「呪力が感じないのに、宿儺の指を封じてた? マジでなにこれ」
「こいつのスピリチュアルグッズ、なんか呪霊に効いてました」
「んんー? でも、呪力は人並み、術式はないね」
「見えるそうです」
「そう。見えるんならいっか。うちの学校に来てみない?」
「(呪術師に学ぶことはなさそうなんで)いいです。俺、やりたいことあるし、じいちゃんが病気だし」
ちょうどその時、じいちゃん危篤の連絡が来て、俺はじいちゃんを看取ることになった。
先生が、俺を瞬間移動で移動させてくれたから、死に目に間に合った。
「……ありがとうございます。おかげで死に目に会えました。お礼は後日必ず」
「こっちの都合で危険な目に合わせちゃったしねー。いいよ! ちょっと聞きたいんだけど
この呪具……じゃないね。呪力ないし。これ、どこで手に入れたの? お札も君でしょ」
「神社巡りしたり、パワースポット巡りしたり、おまじないしたり、色々だけど」
「検証したいな! いい?」
「いや、それはちょっと。俺も将来、除霊とかしたいと思ってるので」
「んん? 呪いを祓うってこと? じゃあますますうちの学校に来た方がいいじゃん」
「いやぁ。フリーでやります」
「下手したら呪詛師認定されて追手が来るよ?」
「は? でも俺呪術なんて習う気ねーし、神社巡りとか色々やりたいことあんだよ」
呪術師に偏見はないつもりだが、一応、前世ではいっぱしの霊能者だったのだ。
系統も違うし……。異世界というのはやはり大きい。
更に、業界的にやばそう。給料が原価割れして人数少なくて仕事はいっぱいって末期じゃん。ブラックじゃん。
「君、天涯孤独でしょ? うちの学校ならお給料でるよ」
「学生だけで実戦に放り込む学校はちょっと」
「そういうもんでしょ?」
そういうもんじゃねーよ。
んー。
「じゃあ、一ヶ月くらい考えさせてもらってもいいですか?」
「できるだけ早く入学した方がいいと思うけど……まあわかったよ」
そうして、俺は遺産を使って神社仏閣巡り、いや、霊的ネットワークを確認とこの世界の情報収集をする事にしたのだった。
見切り発車