階段を降りて一階に降りる。するとそこには誰もいなかった。
カウンターにもテーブル席にも。
少し待ってみるがやはり誰も来なかった。
仕方ないのでそのまま外に出ることにした。
外に出てみるとルウの姿があり見慣れた姿に安堵した俺は話しかける。
「おはよう。昨日はごめんね、ちょっと虫の居所が悪くて」
と軽く謝ったのだがルウはこちらを一点に見つめたまま動かない。
「え?なんか変かな?」
と聞くと、ハッとした表情を浮かべた後、なんでもないと返事をしてきた。
それから二人でギルドへ足を運ぶ事となった。
その最中も言葉は無かったが、不思議と以前までの気不味い雰囲気は無く街の景観を眺めながら歩き続けていた。
ギルドに着くと昨日対応してくれていた受付嬢がパタパタと近寄ってきた。
「おはようございます。依頼を受けに来たのでしょうか?」
昨日と変わりない笑顔でそう問われたので曖昧な相槌を打っておく
「まぁ…そうですね。依頼ボードとかあるんですか?」
そう聞くと受付嬢はあちらにあります。と手で視線を促し依頼ボードの前まで案内してくれた。
「駆け出し冒険者が受けていただく依頼はこちらにあります。」
と依頼ボードの左上にある紙の束を手に取るとパラパラとページを捲るものの内容については俺には一切わからん。
ここはママに…いや、ルウに任せようと黙まりを決め込み周囲に目を配ると様々な冒険者であろう人々がごった返していた。
右に目を向ければ視線のやり場に困るほど肌を露出し局部のみを鎧で隠した女性が、左に目を向けると身長は2mを優に超えるであろうか屈強な男性がごつい鎧を身に纏い、背中には俺の身長程もある両刃の斧をぶら下げていた。
後ろを向くと同じ新米冒険者のパーティーだろうか、それぞれ値段の張らなさそうな装備を身に纏う男女のグループが見えた。
そこには正しく恋焦がれていた異世界の光景があった。
ふと横を見るとルウは受付嬢から渡されたであろう紙を食い入るように見ていた。
「何かいいのあった?」
と聞いてみると、うん!これなんてどうかな。と一枚の紙を差し出してくる。
「どれどれ……薬草採取、報酬銀貨1枚……」
「どう?」
銀貨1枚がどれくらいの価値を持つのかは定かではないが、おそらく銅貨100枚で銀貨1枚だろうと勝手に結論付けた。
ちなみに銅貨があるのかさえ知らない。
ふむ…雑草毟りだけで金貰えんのか、楽な商売だな。と薬草専門家が聞いたら張っ倒されるような事を思いながらもマm…ルウの進言なので素直に首を縦に振る。
「多分大丈夫だと思う。そういえば魔物討伐の依頼とかもあるんですか?」
とルウの意見に同意しつつ受付嬢に尋ねると
「えぇ、ゴブリンやダイアウルフなどの討伐依頼があり採集依頼よりも報酬は良いのですが…」
OK言いたいことは分かった。昨日魔力をぶち込んだら反応するのであろうプレートがビクともしない事を覚えているようだな。
実は魔力だって俺の中にあるんじゃないの?覚醒したら勇者にも匹敵するような魔力が!
そんなことを冗談でも言えない立場の俺は受付嬢が全てを言い切る前に反撃した。
「そういえば、昨日プレート反応しなかったですもんね!忘れてたぁ!アッハッハ」
とわざとらしく笑い飛ばしてやった。
受付嬢は、昨日の件があるので反論できないのか、苦虫を噛み潰すような表情をしながら
「ハハハ…」
と愛想笑いをしていた。俺でも分かる、超無理をしている笑い方だ。まるで飲み会の上司に絡まれて他の上司の悪口に対しての同意を求められているときの俺だ。
そして、俺達はギルドを出て街の外へと出た。
街の外は草原が広がり、遠くには森が見える。
街から出てすぐの所には、まばらに木や草花が生えており道というには程遠いが人が通った痕跡はあった。
「この辺ならありそうな気がするなぁ。」
と独り言を呟きながら予め受付嬢から貰っていた薬草の絵を頼りに探していく。
とそこでルウは何をしているのか気になった俺は目を向けるとそこには
「うん?どうしたの?」
目的である薬草らしきものをどこから取り出したか籠に敷き詰めている彼女が目に映る。
「え?それ薬草?目的のやつ?」
そう、と再び地面に目を向ける彼女。まだ一本も見つけてないんだけど…
戦闘どころか草毟り一つ出来ない俺は絶望に打ちひしがれていると不意に、
どこか聞いた事のある唸り声が聞こえ目を向ける。
…2日前に俺を食わんとしてきた白い毛皮を持つ狼が居やがった。
「うわっ、やべっ」
持ち前の反射神経を生かしその場から全力で逃げようとする。
すると横からブツブツと訳の分からん言葉を喋っているルウが狼の前に立ち
「hrdguihp」
というおよそ人の耳では聞き取れない単語を発したかと思うと、ルウの周りの空間から半透明の矢が発生し、
「kjhuie」
とルウは言い放つ。
すると恐るべき速度で半透明な矢が狼共の肉体に食い込む。鮮血が飛び散る。
1秒と経たずに狼は地面に倒れる。それは魔法としか形容出来ない現象だった。
まぁ、とりあえず
「あ、ありがとう。」
と告げると彼女はどういたしまして、と言い再び地面に目を向けた。
初めて魔法を目の当たりにした俺は、やや興奮気味に狼に食い込んだであろう矢を見に行くと
「あれ?」
あった。薬草だ。躍起になって探していると見つからなかった物がこうも簡単に見つかるのは、やや苛立ちを覚えたが手柄を手にした俺は意気揚々とルウに報告した。
「薬草あったわ!ここに!生えてた!」
「良かったわね。」
そう告げるルウの手元には薬草が山盛りとなった籠がぶら下がっていた。
一気に冷静になった。
そんなこんなで大量の薬草を集めてきた俺達()はギルドへと戻ってきた。