【完結済】シルヴァリオ アリアンロッド   作:湯瀬 煉

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頑張って描きます


序章/prologue

 過去からは逃げられない。

 記憶というものは脆い。

 未来は不確かで、ならばどうすれば幸福な人生というものが思い描けるのか。

 

 刷り込み──生まれたての動物が初めて見た動物を親だと誤認してしまうという話は、あまりに有名な話だろう。

 その他にも、若年性アルツハイマー、不慮の事故、薬物投与、過度なショックを与えれば、脳の特定分野を傷つければ、人の記憶には何らかの問題が生じ、場合によってはそのまま失われてしまう。状況さえ整えてしまえば、嘘偽りの記憶を定着させてしまうことすら可能なのだ。過去を美化するという行為さえ、1種の忘却といえる。

 ──記憶は脆い。悲しくなるほどに、過去というものはあやふやになってしまう。

 未来が暗く、見えないものというのは仕方がないだろう。何故ならば未来とは未知なのだ。これから起こることを知ることは、どんな炯眼を用いても出来ない。精密な未来予測が精々で、確約された将来なんてものは()()()()()()程度の意味しか持たない。

 だが過去があやふやというのは仕方がないと割り切るには重すぎる。何せこれまでの足跡そのものが不確かなものに変わってしまう。言ってしまえばいつ崩れるともしれぬ足場と同じなのだから、どれほど恐ろしいかは考えればすぐに分かるだろう。

 

 ならばこそ、問わねばなるまい。

 では過去とは全て無駄だろうか? あるともしれず、いつか壊れるかもしれず、不確かで不安定な物は、果たして拘泥するに値しないものだろうか?

 

 否、否だろう。

 希望(ヒカリ)の英雄も、絶望(ヤミ)の住人も、その境界線も、決して過去を蔑ろには出来ない。捉え方が多少違えど、無くて構わないと思っている輩は一人もいないと言える。

 過去とは歩みゆえに。過去(それ)を否定すれば現在(いま)の自分も否定することになってしまう。

 

 

 

 ところで、過去は脆くも大切なものだとして。あやふやでも確かな足跡なのだと主張して。

 ではその過去がゆえに大きく歪んでしまったものは、どうすればいいのだろう。

 足跡(過去)は消せない。覆せない。忘れがたい記憶として刷り込まれ、記憶の曖昧さがゆえに強烈な過去はより強烈に進化する。

 これまで歩んできた過去に勝利があるという意見もある。どんなにつらくても、確かに幸せだった日常があるということに気付く、それはきっと大事で、一つの真理(こたえ)だろう。

 だがそれでも。否定しかない過去であった場合は?

 救いはなく、徹頭徹尾否定され、定められたレールの上を歩いても歩かなくても地獄という場合は?

 ささやかな幸福すら焼き尽くされて、大きく歪み、原型を留めないほど壊れ切ってしまった場合は、いったいどうすればいいという。

 

 

 過去からは逃げられない。

 記憶というものは脆い。

 未来は不確かで、ならばどうすれば幸福な人生というものが思い描けるのか。

 

 ―――過去からの完全なる脱却を。

 ―――過去のすべての痛みに逆襲を。

 ―――輝かしい明日に向かって勝利を。

 

 いずれも不適合。その先に”勝利”はない。

 

 ゆえに。

 

 さあ。

 

 残された選択肢など、一つしか存在しないじゃないか。

 

 

 過去からは逃げられない。

 過去からは逃げられない。

 過去からは逃げられない。

 

 さあ、■■■■■■■■を始めよう。




唐突ですが私はアリスちゃんが好きです。
意味は無いですよ。
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