【完結済】シルヴァリオ アリアンロッド   作:湯瀬 煉

11 / 16
おまたせしました。



冥府の竪琴/come back

 ベルンと柊との対決。

 その決着の瞬間に、彼らは特異点に完全に干渉することに成功した。もっとも、ベルンが接続した先は望んでいた光ではなく、闇の冥星だったわけだが。

 

 カルラ・マドロックは自らの興奮を抑えつけて、冷静に過去を振り返る。計画に抜け目がないかを慎重に検討する。

 

 ……本当の問題は、両者が特異点に飲まれてしまったということだった。過去にも、他の実験で判明した事なのだが、特異点に飲まれてしまうと、座標がズレて、全く違う場所へ飛ばされてしまうことがあるらしい。ゆえに、無論、すぐに追いかけた。

 貴重なモルモットを、ここで逃す訳にはいかない。

 

 しかし命令を出した直後、自分たちの意識は消し飛んだ。何が起こったかは分からないが、意識を取り戻した後も記憶が混濁しており、ようやく正気を取り戻した時には既に、実験から一日が経過していたのだ。

 

 だが冷静に考えて、これは運命の導きだろう。

 新西暦はいつも『こう』なのだ。少数の誰かを中心に、劇的な物語が幕開ける。

 

 ならば、それも良しと。

 その運命、過去に俺がいる以上は必ず俺も参戦するはず。その流れに身を投げて、望みを達成するとしよう。

 

 他の人間ならばこういうことは出来ないだろう。何かをしかけ、巧妙に仕組み、自分の所へ手繰り寄せるしかない。

 

「だが違うんだよ。この俺だけは」

 

 必要なピースは、過去の因縁を清算すべく俺の手元に来るはず。

 そして後は接触さえしてしまえば。星辰光(アステリズム)で、ベルンが特異点へ干渉したときの記憶を俺へと移せる。

 

 全ては、計画通りに進んでいた。

 

「お前は……何がやりたいんだ………?」

 

 俺の手駒を確実に仕留めながら、滅奏が吠える。

 血を吐くような、心からの憎悪をぶつけるような台詞。むき出しの殺意を受け止めながら、涼しげに私は笑う。

 

「最初は、最強の軍隊を作りたいだけだった。

 これからの時代は第三型魔星の量産化、或いは 星辰奏者(エスペラント)人造惑星(プラネテス)化だろう。あれほど明確に、絶対的な強者が生まれた以上、世界はその技術を無視出来ない。

 ヴァルゼライド亡き今のアドラーで、機密情報を絶対漏らさずにいるなんて不可能だ。確実に、数年もすれば魔星は当たり前の戦力になる。

 ……では当家はどうするのか? 時代に追いすがって、その研究に取り組むか? まあそれは間違ってはいないんだろうが。

 いいや、私は魔星技術なら自前で何とかできる。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。ならば、我々マドロック家が手を伸ばすべきは魔星のその先──極晃星(スフィア)だろう、とな」

 

 俺の話を聞くと、苦虫を噛み潰したような顔になる極晃星たち。

 確かに、決して簡単なものでは無いのだろう。安易に手を伸ばしていい分野でないのは分かる。彼ら一人ひとりの物語があるのだと、そういう事なんだろう。

 

 だが、それでも。

 

「だが、ああ、そうだ。俺は神になりたかったんだよ。

 目の前に極晃星(おうかん)がある。俺はそれを手に入れる切符を手に入れたんだ。

 まあ、必要なのはベルンだけだ。二人で先に極晃星(スフィア)になられても困るし、マサシには先に死んでもらったが。お前たち、他の極晃も邪魔だ。だからどうか、ここで死ね」

 

 空気中の星辰体(アストラル)が増大していく。

 既に高位次元への干渉は始まり、第二太陽から注がれる粒子がこの空間に集っていく。

 

 あと数分、いや数秒も経てば“()()”が起こることは確かだろう。

 

 もはや間に合わない──と思われた瞬間。

 

「天昇せよ、我が守護星──鋼の恒星(ほむら)を掲げるがため」

 

 俺の体は、勢いよく地面に叩き付けられた。

 

 ……なんだ? 何が起こった?

 

栄華を求めて旅立つこの航海。玉座を求めて幾星霜。ああ愛しの我が魔女よ、お前なしにそこへは至れまい。

 高い教育と豊かな実りを我が王国に。

 座礁と共にこの身が擦り潰れたとて、決して夢は潰えはしない。分かっているとも、我が妻よ。俺の女は真実お前だけ

 

 立ち上がることには成功した。

 ()()()()()()()()()、バランスを崩したらしい。

 理解した次の瞬間、重い蹴りを受けて俺は屋外へと蹴り飛ばされた。

 無様に地面を転がる我が身。まるで小石のように、今度は体が軽い。

 

支配するこそ愛の証明。

 蕩けて混ざって交合おうぞ。この求めを受けぬならば、自軍をもって処断するのみ。

 この決闘を受けるがいい。

 毎日毎晩戦い続け、我が掌で踊るのだ。

 至高の女王に跪け。さらば、朽ちた死肉となっても愛してやろう

 

 この声は。

 この力は。

 いやありえない。奴はもう、心臓を破壊されたはず。

 

 これはどういうことだと、目を見開くが。

 その視界に映るのは、その、ありえない現実のみ。

 

超新星(metalnova)──栄轟の軍勢、(Gwydion)我が触指に導かれ踊るは愛憎の輪舞曲(Argonauts)!!」

 

 マサシ・柊・アマツが、立っていた。

 

「神になりたいだって?

 そんなことの為に、俺とベルンを巻き込んだのか!」

 

 マドロックの極晃星量産実験の過程で、柊にもベルンにも、特殊な金属が埋め込まれている。

 オリハルコンと呼ばれるそれは、高い再生機能も有しており。空気中の星辰体濃度が増した今なればこそ、彼は消し飛んだ心臓を再生することに成功したのだ。

 

 奇しくもそれは、別の世界線でアシュレイに牙を向いた強欲竜(ファヴニル)がやってみせた業であり。しかしこの世界では誰も目にしていない理不尽である。

 

 柊の資質は光に近く。ゆえに死んだ程度で止まりはしない。

 

「許さんよ。ここで死ね」

 

 マドロックの計画に、崩壊の兆しが訪れた。




R.I.P.マドロック。
本物の光狂いと戦ったことないからこういうことになるんだぞ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。