【完結済】シルヴァリオ アリアンロッド   作:湯瀬 煉

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光狂い、闇の住人、境界線、神祖、人間賛歌……。
シルヴァリオで出てきた答えを自分なりに咀嚼して、どう答えるか。
作者なりのアンサーです。



chapter4 最新の英雄譚/Grand Order
眠れ宿痾よ、目覚めは遠く/into the underworld


 第二太陽(アマテラス)は原初の極晃星(スフィア)。旧日本国民たちの総意によって作られ、世界へ干渉し、地上へあまねく星辰体(アストラル)を降り注ぐ存在である。

 カルラの描く極晃は、いわば第二太陽の再現。現在ならばともかく、本格的に発動してしまえばカルラと彼の星辰光の影響を受けた者を起点に同化が進み、全世界の意思が統合されると同時に完成──次元震を故意に引き起こし、地球は新たな第二太陽として、あらゆる願いが飽和しながら満たされた理想郷へ至る。

 

「これが俺の描く、新世界!!」

 

 準備段階で既にカルラと共鳴した人間は皆、極晃星(スフィア)としての強化を得ている。

 戦闘はついに、複数の極晃星(スフィア)対複数の極晃星(スフィア)の状態へ至る。

 

 

 

 

 

 ベルン・アリアンロッドは、特異点の中をさまよっていた。

 暗く、光のない、星が見えない暗黒宇宙のような空間だ。

 

 天を廻りて、冥界に堕つ。

 ヴァルゼライド閣下やカグツチ、ヘリオスのように王道を信じ、貫き続けるのは難しいし、かといってゼファーのように過去、思い出だけを大切に抱えて生きていけるほど、社会は優しくない。 ならば両立と、境界線を探すならば、途方もない時間と聖人のような精神性を要するだろう。

 絶対者から与えられた幸福に満足するのは楽だが、それは絶対者に突然全てを奪われることを良しとすることでもある。しかしもちろん、荒野に花を咲かせるのは並大抵の努力では成し遂げられない。

 

「じゃあ、どうすればいい?」

 

 この自問に答えるのは──

 

「分かりっこないよ。俺達には歴史がない」

 

 カルラが極晃星に目覚めると同時、特異点に放逐された柊だった。

 

 

 

 

「歴史がない……か」

 

 ベルンは噛み締めるように呟いた。

 

「そう、歴史がない。過去はただの操り人形だったし、現在はこの通り……何も為せずにふたりぼっちだ」

 

 その言葉も、彼女にはひどく虚しく響いた。

 こちらに同情しているようで、しかし全くこちらを見ていない。彼は常に先へ先へと進めるから、今もどうすれば特異点を抜け出せるか、どうやって敵を倒すかということしか考えていないのだろう。

 

「ゆえに進もう。自らの歴史を創造するためにも」

 

……という結論を、彼は出すと思っていた。

 想定内。想定通り。しかしかつてのように、じゃあ頑張ろう、という気持ちにもなれない。

 

「私たち、居なくていいんじゃないか?」

「──は?」

 

 もう、彼女は天高く飛べる翼を持たない。地を這い、復讐を誓い、そして堕落していく負け犬に過ぎない。いや、いまや復讐という熱すらも存在しない。

 

「私たちに過去はない。

 このまま滅奏や天奏が負ければ、カルラの再洗脳で飼い犬に戻るか、またはぶっ殺されるんだろうし、未来も尽きた。

 過去と未来が真っ暗なら、それに地続きの現在も当たり前に真っ暗だ。どこにも行きようがないなら、どこにも居なければ──」

 

 言葉は遮られる。

 柊による、全力のパンチによって。

 

「マドロック家に頼って、滅奏に頼って、“暁の海洋”に頼って。全部消えたらはいおしまいって、それは情けねぇだろ。

 お前はどこにも行きようがないんじゃなくて、初めからどこにも行ってないだけだ」

 

 柊の怒号も、しかし光から抜ければ虚しく聞こえる。

 

「それならお前は、ただ進んでるだけだろう。目的地が見えないまま、突っ込んでるだけだ。

 私にあれこれ言うが、それじゃあ勝算は? 方法は? 素晴らしい未来とかいう幻想に目を焼かれて現実から目を逸らしてるだけじゃないか!」

 

 きっと、どちらも間違っているのだろう。

 昔も今も操り人形だから、と逃げるのも、昔から操り人形だったからと、無闇に突っ込むのも、どちらも違う。

 過去は不変。過去からは逃げられない。

 

「方法なら、ある」

 

 道は無い、とベルンは語った。

 ()()()()()()、と柊は笑う。

 

 

「俺たちも極晃を描くんだよ。無い道は作ればいい」

 

 最高の答えだと確信していたがしかし、ベルンからの反応は悪い。

 

「はぁ……。それが出来れば苦労しないよ。お前たち光はこれだから」

 

 思考が単純なのだ。

 壁がある、じゃあ乗り越えよう。

 大変だ、頑張ろう。

 出来る、やろう。

 諦めだとか、疲れだとか、微かな感情の揺れを排除して、極めて機械的に、作業をするように、それでいて情熱的に大義に挑める。

 人間はそんな単純じゃない。特に、闇側に堕ちてしまう、ベルンのような人間は。

 

「難しく考えすぎなんだよ。

 光だの闇だの。過去がどうたら未来がどうたら」

 

 分かっている。

 お前は単純すぎるって思うんだろう。しかしそれならこちらにも言い分はある。

 

「人は変わるものだろ。

 信念も、夢も、願いも。疲れたら休むし、周りが頑張ってたらなんとなく頑張らなきゃって思う。

 過去に洗脳されてようがされてまいが、人はなんやかんやとグラついてる」

 

 この言い方は少し露悪的かもしれない。

 罵るつもりは無い代わりに、肯定もするつもりは無い。

 

「カルラって奴だって、なんか急に俺たちを襲撃してたし、我らが団長のアリスさんも割とライブ感で動くことあるし。

 俺たちもほら、奇跡的に特異点への接続権はあるし、魔星だから、極晃星(スフィア)の条件は満たしてるんだからさ。ライブ感で、何となくのノリと勢いで、星に願ってみようぜ」

 

 そんな適当な覚醒があるか、と小さく呟くのが見えた。

 あるんだよ。人は割と小さな決意ときっかけで大きく変わるからな。

 

「過去からは逃げられない。

 過去からは逃げられない。

 過去からは逃げられない。

 だから、尽未来際、飽きるまで生き続けよう。くたばるまで、色んなことをやりつくそう。

 少なくとも、このままカルラの思うままことが進むよりは、()()()()()ぞ」

 

 その言葉を聞いて、ベルンの口角が上がったのを、柊は見逃さなかった。

 マサシ・柊・アマツは知っている。

 この女は、こと未来を目指して前進することは苦手であるが、格下を圧倒することだけは好きなのだと。

 殊に、気に入らないやつの気に食わなそうな顔を眺めるのは好きなのだと。

 シンプルに性格が悪いだけならまだマシなのに、無駄に良識があるからそこで悩む。ならば、肩の力を抜いてやればあっさり素直になるものだ。

 

 ()()()()()()()()で、()()()()()()()()()()()()()()という方向なら二人とも迷わない。

 とりあえずやって見る、という段階まで持っていけば闇属性持ちは最高に輝くし、そもそも光はなにか目標がそこまで突き進める。

 

 

 特異点から出た時には、そこは戦場だろう。

 負ければマドロックの奴隷か、死か。まともな未来はきっとない。

 

「それでも行こうぜ、ベルン」

「そうだな。

 私たちの、自由のために」

 

 二人で笑い合って決意して。

 ベルンと柊は、特異点の戦いに乱入した。




なお私は王国に現れたシャガルマガラに単独で挑み三乙しました。
渾沌ゴアに挑む勇気がなくて、なんか今日も百竜ノ淵源を討伐してます。
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