【完結済】シルヴァリオ アリアンロッド   作:湯瀬 煉

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前回はビックリさせてすみません。
1回、選択ミスしたバージョンが書きたかっただけです。



chapter2 真実の在処/Argonauts
再起/True √


 星の裁断者(スフィアパニッシャー)が目を覚ます。

 己と接続した対象が“悪”だと判断したがゆえ、彼は衝動に基づき起動したのだ。

 遍く闇を、偉大な雷火で焼き尽くすため。

 

 クリストファー・ヴァルゼライドという人類最強の男は今や、純粋な『悪の敵』として機能している。

 人呼んで閃奏、星の裁断者。己のような塵屑でも、悪を討つための死の光として動くならば不満はない。新西暦、或いはそこと繋がった高位次元の有事には必ず目覚め、何らかの力で力を貸すだろう。

 ()のような破綻者がわざわざ表に出る必要は無い。そう思いつつも、人間の時に存在した理性(ストッパー)は力の塊である極晃星(スフィア)の自分には弱く、悪を見つければ迷いなく剣を抜いてしまうだろう。そんな自分をどうしようもなく憎み、燃え盛るような怒りを抱きながら、自意識を形成していく。

 次の瞬間には次元を紙のように切り裂き、見つけた悪を処断しにいくはずだったが────

 

「或いは、新西暦(この世界)の法則なのかもしれんな。こういう重要な局面に至って、運命に砂粒が紛れ込み、事を動かす」

 

 次元すら超えて眺める景色はマドロック家の所有する工場。彼らは()()の座標から遠のいたが、仮に再び、更に接近するようなことになれば収集のつかない事態に陥るだろう。その時こそ、己が再び地上に戻る時。

 このまま進んでも危機ではあるものの。

 

「遠くでやっていろ、か。良かろう。ではどうする、冥王(ハデス)

 “勝利”からは逃げられんぞ」

 

 今はただ、見守るのみだろうと。

 男は静観することに決めた。今は討つべき悪はなく。遅咲きな花となるか、このまま悪と堕ちるか。

 それ次第でどちらへ刃を向けるべきか、或いはどちらにも刃を向けるのか、決めることになる。

 それまで俺が出しゃばっていいことはない、と。悪の敵は、両手に握られた燦然と煌めく極光斬撃(ケラウノス)を鞘へと納めた。

 

 ──運命の時は近い──

 

 

 ■ ■ ■

 

「………このまま行きましょう。それほど厳重な警備があるのなら、きっと何かがあるはずだ」

「後ろも気になるけど………ゼファーさん、どうします?」

 

 私としては、ここで下がって何かないかと探すほうが時間の無駄に思えた。

 ゆえに一応、柊の言葉も聞きつつ前進したいとこの場のリーダーに訴える。

 

「……そうだな、警備の強さは確かに引っかかる。。探ってみたところ俺らが来た道にも()()はあったっぽいが、下手に色々探るよりまずはこのまま調査を続けよう。

 これで何も無ければプランB、つまり、戻って()()を探してみる」

 

 前方を歩くゼファーさんの言葉に頷き、私たちは星の力を用いずに歩き始めた。

 

 その瞬間。

 

《警告 警告 侵入者発見 体温感知器(サーモカメラ)に反応あり

 警備兵は直ちに侵入者を排除してください》

 

 サイレンと共に、私たちの進行方向から鬼面の軍隊が現れた。

 

「......どうする、ベルン。話しかけてみる? 万分の一くらいの確率で助かるかもよ」

「いい冗談だな、柊。死にたいなら試すのもアリじゃないか?」

 

 今も殺意を燃やしながら近付いてくる傭兵百人近くを、不法侵入者の立場で説得できるなら、世界はどんなに平和だろう。

 

 だが不可能だ。目の前の相手にそこら辺の慈悲は無さそうだし、何よりも戦闘態勢に移っている。

 

 話し合いの時間はとうに過ぎたと、そういうことだろう。

 

「サーモカメラ……。そうか、俺たちの体温を感知したのか! くそ、どこまで……。

 総員、戦闘隊形に移れ……ッ。なんとかして生き延びるぞ!」

 

 無駄口を叩き合う間も、ゼファーは素早く戦闘態勢を整えていたらしい。鋭い声に反応して私たちもまた、戦闘隊形へと変化する。

 

 潜入する時は、斥候に長けたゼファーが前衛で、残る2人は縦列になって進む形だったが、戦闘時はゼファーさんは一撃必殺、確実に仕留められるチャンスを伺うため後衛へ。そして正面戦闘ならゼファーさんより得意な私たちが前衛へ移動する。

 

 これは撤退戦だ。思い切りぶちかませ無ければジリジリと潰されるのみだろう。

 

 そして互いに互いの星を知り合う私と柊のコンビネーションは、こういう時にこそ真価を発揮する。

 

「創生せよ、天に描いた星辰を──我らは煌めく流れ星」

 

 柊の星辰光(アステリズム)が開帳される。

 彼の、彼にしか紡げない、彼だけの異能、それは。

 

「……よし、これでいい。()()()()()、柊」

 

 一見するとなんの変化もないものの、確かな効果があった。私の軽い踏み込みで身体は銃弾のように敵陣地へと飛んでいく。

 質量操作と呼ばれる力である。1度触れた対象に対して有機物、無機物の違いなくその質量を変化させられる。

 

 星辰光(アステリズム)には6つの性質が存在する。即ち。

 貫通力を示す集束性

 効果範囲を示す拡散性

 どこまで異能を操作できるかを示す操縦性

 自分や他人に害を与えず利だけもたらせるかを示す付属性

 異能の継続使用がどれほど出来るか示す維持性

 自然環境にどこまで影響を及ぼすかを示す干渉性

 

 柊は特に、付属性に秀でた星を持っていた。もちろん、アマツ補正のおかげでそれ以外の性質も平均かそれ以上というハイスペックさなのだが。

 ともかく、敵陣に突っ込む私とは相性がいい星だった。

 

 

 腰から抜いた刀で敵を逆袈裟に切断。すぐさま別の敵へと剣を振り下ろして首を切り落とす。

 攻め攻め攻め攻め、攻め一辺倒。斬って抉って殴って蹴って、あらゆる攻撃手段を自分の体に傷が付くのも厭わず攻め続ける。致命傷だけは避けながらパワフルに。

 

「創生せよ、天に描いた星辰を──我らは煌めく流れ星」

 

 そして迷わず、星の力を解放した。

 敵を皆殺す、己の異能(奥義)なれば、迷うことなどありはしない。

 

「彼方より訪れし我が勇者。お前こそ、我が運命に他ならない。求めるものがあるならば、迷いなく全てを差し出そう。

 

 金色の皮が欲しくば与えよう。

 邪魔する弟は切り刻んだ。

 三人の王女も物言わぬ骸となれ

 

 全てを(なげう)つ献身。狂気じみたこの愛情。山より高く海より深いこの想いを踏み躙るならば、容赦はしない」

 

 “勝利”の為ならばあらゆる全てを投げ捨てて。

 この身さえも惜しくはない。ゆえに全撃必殺。我が敵よ、一切合切砕け散れ。

 刀は止まらず、敵を残さず斬り裂いて進む。

 

「我が子に名前を付けてはならない。

 我が子に武器を持たせてはならない。

 我が子に人の妻を持たせてはならない。

 この禁を全てくぐり抜けたその先に、約束された繁栄をもたらそう」

 

 天へと轟けと、誓いを叫んだ。

 これぞ、我が星光。

 

超新星(Metalnova)──赫翼凶星、運命の輪は廻り出す( S i l v a r i o )我が旅路を照らすは銀の月( A r i a n r h o d)!」

 

 とある粒子の噴射能力。

 体をジェット機のように加速させたり、任意の方向へ凄まじい勢いで粒子を発射する星光である。

 何を噴き出しているのかは私にも分からないが、強力であることは確かである。

 

 星の光が強いからといって研鑽は怠ってはいけない。ゆえに、後は一方的な──

 

「とは、させんよ」

 

 横合いから飛び込む柊。負けじとやつも剣を振り回し、敵を鎧袖一触していく。

 

「勝負だ、ベルン。俺の方がより多くの首級(しるし)をあげてやる!」

「応とも! 私も負けんぞ柊! 共にこの窮地を脱しようか!」

 

 これが私たちの戦法。

 私が飛び込み、乱して、柊がそれに乗じてさらに敵陣を切り崩していく。

 

 だが。

 

 しかし。

 

 この警備兵ども。

 

「強、すぎる!」

 

 柊の言葉に頷く。

 足を切っても、胴を切り込んでも、致命傷を追っても止まりやしない。むしろより苛烈に反撃してくるからタチが悪い。

 更に、敵の数はどんどん数を増していた。

 

「マドロックの手数は流石ってか」

 

 アンタルヤの商人で唯一、自前の兵士だけで一国の軍隊ほどいるとされる家だ。この工場だけでも、何人の警備兵がいるのか想像もつかない。

 

「……もういい。引くぞお前ら!」

 

 ゼファーが、私と柊のどちらかが仕留めた敵兵の体を相手へとぶん投げれば、空中で死体が爆ぜて即席の煙幕と化した。

 

 ゼファーからの撤退の合図。

 口惜しくはあるが、私たちは撤退することにした。

 

 

 首筋に、どこかチリチリとした痛みを感じながら。




実はここでベルンの星辰光を公表するつもりだったんですが、第三者に語らせた方がいいかなと思うのでここで切ります。

ここから正規ルート開始です。
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