真島警部補の日常   作:ヲビーとうみうし

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真島警部補の日常 第1話 「何気ない1日」

 

 

 \ウマムスメプリティー○ービー/

 

 今日の宮下線もいつも通りの日常が過ぎて行っている。

 イヤホンの指し忘れでポルノグラフィティのメリッサを流してしまっている 20前半くらいの女性

 二日酔いで床に寝てしまい、寝ゲロ5秒前と言わんばかりの表情になっている 俺と歳の近そうな男

 そして、音を切り忘れウ○娘の音声を爆音で流してしまった マジメそうな高校生の子

 

 まだ通勤ラッシュと言えるような時間では無く、周りも眠そうな表情をしているため、彼らが恥をかいて顔を赤くするような事はめったにない。

 

 (あの子、別の号車に行ったな…)

 

 眠気に負けていたゾンビ達を、深淵から見事に蘇らせたネクロマンサー殿はそそくさと別の号車に逃げて行ってしまった。

 

 (…いつもと変わらないなぁ)

 

 この数年間、何十、何百時間も過ごしてきた宮下線の朝6時15分。見慣れすぎて何の面白味も無い線路沿いの大きな自然公園。公園内でラジオ体操をしている高齢者達も、今日も変わらないメンバーでやっているように見える。

 

 だがいつもと1つ違う物がある。

 それは俺の心境だ。

 今日の朝、時間つぶしにと読んでいたあの資料で、俺の心にはいつかの少年時代のようなわくわく感…?というような期待の感情が渦巻いている。

 

 だが、そんな心の変化なんかがこの風景に何かしらの影響を与える事は無く、ただただ皆の普通の日常が目の前の液晶から流れていく。

 

 \ボックラガ!!ウーマレテクゥルー/

 

 (また外れてるな…)

 

___________________

 

「んで、今日からの調査のやつ どうなのよ?」

 

「どうなのよ…と言われましても」

 

「具体的に何を調べようって聞いてんのさ」

 

出勤してきた俺に常田さんが話しかけてきた。

 

 「今日は…、居なくなったって言われている従業員について詳しく聞き込みをしようと思っています。」

 

 「あー、例の通報者ね。…やっぱそこ気になるよな。」

 

 どんなに鈍感でも、この違和感に引っかからない刑事はいないはずだ。常田さんも頷く。

 

 「そうですね、人が跡形もなく消えるなんて、普通ありえない事ですから…」

 

 「まぁ、何を調べるかハッキリしてるならいいや。…!! 気合入れてけよぉ!」

 

   『バァン!!!!!』

 

 っと常田さんが言った直後、オフィスに豪快な痛打の音が響いた。 

 

 「いったぁ!何するんですか!?」

 

 「闘魂注入だよ!頑張ってこいよぉ!」

 

 にしても遠慮無さすぎたろ!めっちゃいてぇよ!

 

 「はい…行ってきます。」

 

 応援してくれるのは嬉しいのだが…、本当に加減がなさすぎる…。

 

 常田さんはいつもこんな感じだ、昭和時代の熱血刑事のイメージを、そのまま体現している様な人だ。飲みは毎日のように誘ってくるし、熱血指導みたいなこともよくやる、『The漢』みたいな人。

 …まぁ頼りがいが有って、とても良い上司だ、セクハラやパワハラも無いし。

 

 (いや、パワハラはあるか…。)

 

とツッコミを入れる余裕が出てくるぐらいには痛みは引いていたが… 

 

 (まだ痛ぇよ…。)

 と苦しむ俺だった。

 

 ______________________

 

 

 【テラダ映画製作所】

 

 「ここか…」

 

 目的の場所についたのだが、この建物は俺の心を掴んで離さないようだ。

 

 ちょっとボロいが大きく構えているこの感じ、古き良き映画会社って感じがして俺は好きだな…

 

 なんてな、仕事仕事。さっさと受付に行くか

 

 ………

 

 「え〜と…東都警察の真島様ですね…担当の者が来るまで、少々お待ち下さい」

 

 受付で責任者を呼んで貰うように話した俺は、待ち時間にどんな会社なのか少しでも情報を探ろうと周りを見回す。

 

 (色んな映画のポスターが貼ってあるな)

 

 受付の近くの壁にはこの会社が過去に手掛けてきた作品のポスターがズラリと張り出されていた。

 

 「お、『江戸ワンダータイムクリスマス』か懐かしいな…こっちは『探偵学園O』!?俺の青春じゃねぇか…映画化してたんだな…」

 

 俺は色んな作品のポスターに心を踊らせながら古い記憶を引っ張り出していた。懐かしのアレコレをここで作られていたのかという驚きと懐かしさで俺の気持ちは舞い上がり、見入っていた。

 

 しかし、そんな作品たちの中に1つ、他とは毛色の違う、ちょっと変なポスターが貼ってあった。

 

 「6月の…ぼくらは…?何だこれ。」

 

 パワポで作られたような安っちいポスターには、雑な絵が描かれている。デザインとかに詳しくない俺からしても…ポスターとしての出来は酷いってのは一目瞭然だ。

 

 「それ、私の娘の作品なんですよ」

 

 「え?」

  急に話しかけられ、俺は驚いてしまった。

見入っていたせいか、いつの間にか隣に立っていた男性に気づいていなかったようだ。

 

 「えっと、貴方は…」

 

 「おっと失礼。ワタクシ、ここの代表の寺田歳三と言います。」

 

 「あっ、代表の方でしたか。こちらこそ失礼しました。私は真島と申します。」

 

 いきなり現れたこの人が、会社の代表者か。

 オーラが無いと言うか、何というのだろうか。

 普通の初老の男性にしか見えないな。

 

 「真島さんですか、いや〜こんな会社までご足労頂きありがとうございます。」

 

 「いえ、こちらも仕事ですので。」

 

 「それで、どのようなご要件でこんな所に?」

 

 映画撮影の見学に、と言いたいところだが、こっちも仕事なんでね、事について単刀直入に聞かせてもらいおうか。

 

 「この会社で人が行方不明になったと言われている、とある制作チームの方にお話を聞きに来たのですが、どちらにいらっしゃいますかね?」

 

 「…アナタ、それについて調べに来たのかい?」

 

 まぁ、1ヶ月前にここでの調査は終わっているからな、また来たのかとなるのは当たり前だろう。

 

 「はい、こちらの地元警察がお手上げとの事で、東都警察署から助っ人として、派遣された次第です。」

 

 「なるほど…わかりました。それじゃあ、さっそくですが、私がそのチームの所まで案内します。」

 

 「わざわざ、ありがとうございます。」

 

 まぁ、今更探しても証拠なんて出やしないだろうと思いながらも着いていっていたのだが、急に寺田さんが

 

 「刑事さんはご家族と一緒に住んでいらっしゃるのですか?」

 

 いきなりの質問が飛ばしてきた

 

 「家族ですか?」

 

 「はい、私も娘と一緒に仕事をしているものですので、何かと気になってしまうんですよ。」

 

 娘さんと一緒に映画、か。

 俺も息子と…なんてな。

 

 「…家族は居ないですね、今は一人暮らしです」

 

 「なるほど、一人暮らしでしたか。ところで、彼女さんとかいらっしゃるんですか?」

 

 「え?いや…ハハハ…」

 

 初対面の人間にそこまで聞くか…?普通…?というか…

 

 「…そういえば、今向かっているのってどこなんですか?」

 

 「私の娘の所です」

 

 「え?」

 

 寺田さんの娘さんの所?もしかして…?

 

 「いや〜私の娘の制作チームが怪しいらしくて、この前も刑事さん達が調べに来てたんですよ。なので」

 

 「あぁ…はい…。」

 

 (ある制作チームとは娘さんの所だったのか)

 

 薄暗い廊下を何歩か先を行く寺田さんは、少し悲しそうな声色で俺に話してくれた。

 

 (娘さんが怪しまれてるなんて可愛そうだな…)

 とは思うが

 

 (…まぁ怪しいなら調べるまでだ。)

 という、この気持ちは変わらない。

 

 どうやら、もう到着するらしい。

 

 俺の眼の前の長い廊下の先には、明るい光が指している。

 

 「あの先の部屋が娘のチームの所です。」

 

 廊下の端まで来るとチームの雰囲気を表すような、装飾品でドア前の壁がデコレーションされてる。

 サンタがいたりサンマがいたり。季節感なんて関係無い物ばかりだ。

 

 「娘には綺麗にしろと言っているんですけどね…」

 

 …問題はそこじゃない気がするが。

 

 「ささっ、中へ」

 

 と寺田さんが指差す先には、光が溢れていた。

 

 この先には何が待っているのか、不安半分期待半分の俺は、光の元へと足を進めるのであった。

 

 

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