「この先です」
その声に促されるままたどり着いた扉の前で俺は、息を飲む。よくよく考えればこの先に何があるかなんて、当然だが分からないのだ。いきなり襲われることは無いにしろ(そう思いたい)…不安が多い。
そんな風に躊躇っていた所に声をかけられる。
「どうかしましたか?刑事さん。」
「いえ、大丈夫です。」
寺田さんも気になったのか、俺に大丈夫かと聞いてきた。ここでグズグズしてても仕方がない、行くか。そう決心した俺は重い扉を開けた。
そして扉を開けた先に待っていたのは
\ヨウセイナツガ−ムネヲシゲキスルー/
\ハイ、ソコカットネー!/
\ドウグタリマセーン/
\マリクモットコエダシテー/
\キタウラサン!アレモッテキテ!/
何の変哲もない撮影現場だった。
「どうですか?うちの娘のチームは、和気あいあいとしとるでしょ。」
「…そうですね。」
なんか拍子抜けというか…こんな所で本当に事件なんて起きたのか?
「おーい、ナナ!」
「あ、パパ!…と?」
「こんにちは」
「お客さんの真島さんだ、皆を集めなさい。」
寺田さんの一言で娘さんがチームメンバーを集め始めた。娘さんは元気ハツラツな感じの方でこの場の雰囲気が彼女を中心に作られているのが分かる。
「皆、こちらがお客さんの真島さんだ。真島さんは刑事さんである事件について教えてほしいそうだ。」
「東都警察署から来ました、警部補の真島翔平です、本日はよろしくお願いします。」
「私ここで監督やらせてもらってる、寺田ナナです!何でも聞いてください!」
という流れで全員の自己紹介の時間が始まった、このチームのメンバーは
監督 寺田ナナ さん
助監督 一条さん
専属脚本家 名崎さん
カメラマン 澤井さん
道具班スタッフ マリクさん
スタッフの北浦、堀越さん
の少数で組まれているらしい。
…にしても男性が少ないのは気のせいだろうか、北浦さん以外女性なのだが…、まぁそういうチームなのだろう。
「…自己紹介ありがとうございました、それで本題に入りたいんですけど…」
と話題に入ろうとした時、俺と寺田さんがさっき入ってきたドアからノックの音が聞こえた。
「あの〜…永城様の奥様が…」
誰かの奥さんが訪ねてきたのを事務の方が伝えに来たようだが…このチームにはそんな名前の人は…
「「「いないですよ、永城なんて人は」」」
俺が考えてるのを遮るような、大きな声でチームの全員が食い気味にそう答えた。
「…はい、奥様にはいないとお伝えしときますね」
事務の方も慣れたような態度で戻って行った。
元気が良いチームだなぁ〜ハハハ……
おかしいだろ、あんな強く否定するか?
普通は「うちのチームには永城っていう人は居ないですよ」って代表の監督とかが一人で言うもんじゃないのか?
何故全員で、デカい声で、冷たい口調で否定するんだ?映画作成が上手く行ってないとかなのか?
「刑事さん?」
「え?あっはい」
「娘も忙しいんですよ、ちっと邪魔が入りましたが本題をお願いします。」
「あぁ、失礼しました。では本題に入りたいと思います。」
そして俺は、今回の事件についての概要を全員に話した。とはいえ以前ここに調査が来たときに説明を受けたためか、反応は薄い
「とまぁ、これが事件の一応の説明になります。」
「刑事さんはこの事件が、このチームで本当に起こったと?」
そう聞いてきたのは北浦さんだった
「まぁ、電話でこのチームで起きていると言っていた訳ですし…」
「その電話って、[何か]証拠があるんですか?」
「…はい?」
「だって、イタズラ電話の可能性もあるじゃないですか?その電話を鵜呑みにして、またここに調べに来たんですか?」
「その可能性はありますが、ここで起きた可能性も…」
「だったら、今日は帰ってもらえませんか?こっちも新しい映画に向けて忙しいんですよ、今スタッフが一人居ない状態なんですから。」
? どういうことだ?
「スタッフが一人足りないっていうのは…?」
「道具班のスタッフ数が足りなくて」とマリクさんが答えた。
「今たくさんの道具が必要で頑張って作ってるんです。」
「そういうことですか、ありがとうご…」
「なので!…今日はお引き取り下さい。」
「刑事さん、との事なので本日はここまでで。」
低予算でスタッフが足りないのか…?まぁそんなことより、何か隠してる感じがするな。でも今日はこれ以上ここに居ても何も得られなさそうだな…。
「…確信もなく来てしまいすみませんね、本日はありがとうございました。」
と言い寺田さんと歩いて出口へ向かってるときに、ドアが勢い良く空いた。
「失礼します!今日からここで働かせてもらう!道具担当の牧村です!」
嘘だろ、お前
「あ!翔ちゃん!?なんで?」
よりによって何でここで合うんだよ。