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第3村での牧歌的生活。
日が昇れば起きて、日が沈めば眠る。
日中、生活に必要な農業や漁に勤しむ生活。
シンジもアスカも、それに馴染んでいる。
シンジは体力的な問題から釣りが主体。
アスカは技術的な知識から機械的なトラブルなどでケンスケに呼ばれ助手的な作業をしている。
「式波が来てくれて助かったよ。何でも屋って言って俺に何でもかんでも要求してくるからな」
車の中でアスカに話しかける相田ケンスケ。
嬉しそうに楽しそうに、饒舌である。
だが、助手席のアスカは口を開く事無く外を見ている。
青い空を見ている。
空の、1条の黒い線を見ている。
「なぁ、式波が良ければ、俺、お前の事をアスカって___ 」
誰も居ない森の中、車を止めてアスカを見る相田ケンスケ。
その目には欲気が浮かんでいる。
だが、アスカは気にする素振りも無い。
気だるげに、空を見上げながらそっけなく返す。
「………欲をかくな。他人から信頼され、嫁を貰ってんだから、そこで満足しておきなさい」
「でも、俺、中学校の時にお前の事が」
アスカに手を伸ばそうとする相田ケンスケ。
だが手がアスカに届く事は無い。
アスカは車の外に居た。
空いた窓から話しかける。
「五月蠅い。自由な夢が見れる場所だからって、アタシを巻き込むな」
そして歩き出すアスカ。
「混ざり始めたか。私やシンジを認識し始めた。そして___ 」
左目の眼帯を触るアスカ。
うっすらと蒼く輝いている。
痛みにも似た感覚がそこにはあった。
「時間が迫りつつある、か」
その事にアスカが思う事は無い。
その為に作られたのだから。
その思いは、14年もの稼働時間 ―― 摩耗したが為により強固になっていた。
道具として見られ。
道具として使われる。
ヒトあらざる者。
リリンでは無いと言う意味だけではない身。
だが、そんな疲れ果てた心であっても、少しだけ、この時間が惜しいと思う気持ちはあったのだ。
下位次元での生活。
生身の儘で落ちて来たシンジとアスカ、そしてレイは第3村にとって異物だった。
だからこそ、受け入れられていても同じには成れない。
そんな中で自我の薄いレイは、第3村をうけいれていった。
それはA.Tフィールドが薄れると言う事を意味していた。
何となく、それを理解していたレイ。
それを理解するアスカは、ある夜、それを尋ねていた。
確認。
アスカは説明する。
NERVによる適切な調整を受けなければ維持できないレイと言う存在。
かつての綾波レイとは違う、道具として量産されているアヤナミレイ。
だが、この第3村に残れば消える事は無いのだ。
体を
第3村はm第3新東京市に生きた人間の縁を持って作られたグループである。
綾波レイを知る人たちも多い。
そうであるが故に、留まればアヤナミレイと言う存在も、他に人々の観測によって確立し、残る事が出来るのだ。
A.Tフィールドを失った魂が存在を残している理由は、正に、この相互観測があればこそであった。
だからこそ、人々は縁毎にまとまっている。
そして他所の縁との繋がりが無く、孤立しているのだ。
「そう………」
薄れた己の手を見るレイ。
そして顔を上げる。
「貴方はどうするの?」
「アタシは道具。作られた目的があるわ」
エヴァンゲリオンパイロット。
人類鎮護の務め。
その為に生み出された式波アスカ・ラングレー。
「そう……………がんばって」
「え?」
「応援。こういう時に言うって聞いたわ」
「有難う」
夜明け。
快晴の空。
アスカはシンジを連れ出す。
尋ねる。
第3村の生活は楽しいか、と。
衒いの無い顔で、楽しいと答えるシンジ。
釣りをした。
農作物の収穫の手伝いをした。
土木工事を手伝った。
その全てが楽しかったと言う。
嬉しそうなシンジの顔に、感じるモノがあったアスカはソッポを向いて「そう」と言う。
風か奔る。
シンジの麦わら帽子が飛び、アスカの髪が盛大に巻き上がる。
髪がアスカの顔を隠す。
俯き気味も相まって隠された表情の中、唯一、露出している唇が動く。
「アンタには2つの選択肢がある。ここに残って日常を送ると言う選択。そしてもう1つは、あの救いの無い世界に戻ると言う選択」
「………アスカはどうするの?」
「アタシの事はどうでも良い。アンタの未来よ」
「第3村の生活は楽しいよ。だけど、楽しかったのはアスカが一緒に居てくれたからだ」
「そう。でもアタシは………」
「アスカはどうするの?」
「…………帰る。それがアタシの定めだから」
そしてアスカは言葉を続ける。
式波アスカ・ラングレーとは何であるかを。
対使徒決戦兵器として作られたエヴァンゲリオン。
だがパイロットが居ない。
だからこそ、エヴァンゲリオンパイロットを作り出す為に始まったラングレー計画。
人為的なパイロットの製造。
7つのTypeが作られた。
その中で、ある程度の人間性 ―― 情緒を重視して設計されたのが式波Type。
結局、情緒あればこそエヴァンゲリオンとのA10神経回路の接続が可能になった。
6つのType開発計画は破棄された。
その時点で式波Typeは1000体からの製造がおこなわれ、そして訓練し選抜されていった。
その生き残りがアスカと言う個体名称が与えられた第1ロット131号体。
「ラングレーProject 式波Type-1st 個体識別№131。それがアタシの全てよ」
「でも一緒に生活したし、学校にだって…………」
「NERV本部で活動する為、あの時点でアタシの記憶は操作されていたのよ。普通の人間の様にふるまう様に、使徒撃滅を適切に行る様に調整されていただけ。今のコレが本当にアタシ」
或いは、
それがアスカ。
式波アスカ・ラングレーと言う存在の全て。
「失望した?」
「正直、吃驚した」
「そう。そう言う訳で、アタシは戻らなければならない。エヴァンゲリオンに乗る為に。人類を護るために。だからアンタとはここでお別れ」
「………どうして?」
「どうしてって、まさか__ 」
「アスカが帰るなら僕も帰る」
断言するシンジ。
顔が引きしまっていた。
「アンタバカァ! 今の話を聞いてたの? アタシは__ 」
「アスカは、アスカだ。僕はアスカと一緒に居たい」
「っ!?」
激昂しかかったアスカの手をシンジが握った。
否、そのまま抱きしめた。
「僕も一緒行く」
俯いて、何かをこらえる様に言うシンジ。
アスカは、何かをこらえる様に空を見上げている。
「言っとくけどアンタ、戻ったらロクな目には合わないわよ。脱走したんだから」
「良いよ」
「厳重に管理されて、或いは殺されるかもしれないわよ」
「良いよ」
「判ってるの!?」
「良いんだ。それでも、アスカと同じ所に居られるから。同じ時間に居られるから」
「………アンタ、本当に馬鹿よ」
下に垂れていたアスカの手がおずおずとシンジの体に回る。
抱きしめる。
シンジも又、抱きしめる力を強くする。
「僕がやった事、父さんがした事。だから
「バカシンジ」
罵声。
だが、もの悲しい響きを持った言葉。
アスカは益々の力を込めて、シンジを抱きしめた。
第3村を見渡す丘の上に立つシンジとアスカ。
並んで立つ、その手は強く握られている。
そしてアスカは眼帯を外した。
蒼い光を放つアスカの左目。
光が空へと駆け上り、そして空を裂く。
黒く染まっていく空。
誰もが空を見上げている。
生まれる光の輪。
AAAブンダーがゆっくりと降りて来る。
世界が揺れる。
AAAブンダーの持つ
AAAブンダーの艦橋。
望遠レンズがアスカとシンジを捉える。
アスカの発した
「式波少佐及び、碇シンジ確認!」
外部の観測その他を担っている北上ミドリが声を上げる。
振動。
吹きすさぶ風の中で、しっかりと支え合って立つシンジとアスカ。
その姿を忌々しく見ている。
葛城ミサトは何も言わない。
無機質な目で見ている。
「………彼、逃げる気は無いようね」
副長である赤木リツコが言うが、答える事も無い。
否、命令を発する。
「両名の回収、急いで。本艦の現空間への滞在可能時間は短い筈よ」
「そうね」
赤木リツコは艦内通信機を取り上げ、艦載機部隊に命令する。
特殊空間作業艇の出撃、そして両名の回収を命令する。
「武装は命令しないわよ?」
「ここに戻る気になったから、式波少佐と居る筈。その意思を尊重します」
「そうね………」
艦載機制御室、その予備ルーム
薄暗い中、光源は作業艇から齎される外部情報だけであった。
映し出されているシンジとアスカ。
第3村の情報も出ている。
多くの人間が呆然と見上げているのが判る。
それを見ている真希波マリ・イラストリアスの表情には少しだけ憂いがあった。
「そっか、わんこ君。それが君の選択なんだね」
俯いていた眼鏡に、光が差して真希波マリ・イラストリアスの表情が見えなくなる。
「なら、姫は頼むよ。その為に私も全力であたるからさ」
独りごと。
そして嘆息。
モニターの電源を落としていく中、気付いた。
レイが映っている事に。
「綾波レイ。それも1つの選択だね」
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正直、あの扱いでミサトを、序破の頃の様にミサトさんって慕うのはナァ と思う訳で。
>「そっか、わんこ君、それが君の選択なんだね」
ここに『今度こそ、姫を護って』と言う言葉を入れようかとも思ったけど、止めた。
ループねた、ウザい。
面倒臭い。
ループが失敗した理由とか、そこら辺まで考えるのが本当に面倒くさい。
後、そもそも、割と他人様の手垢が付いているのでナァ
綾波レイに命名するイベントも考えていたけどぶっ飛ばす事になった。
尺計算した時に浮くってのと、ソレ、シンジの物語じゃないよね? と言う取捨選択。
尚、当然ながらも「綾波は綾波だ」と言うクソみたいな返事は無い。
ポカ波と黒波は別人格だしね。
雑は許すまじ。
尚、当初は、綾波レイ・
色々と境遇とか、信頼とかそう言う部分を考えて(お