異伝・シンヱヴァンゲリヲン   作:◆QgkJwfXtqk

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結-3 和解と対話はありませんなパート

+

 13号機から生まれた線が、2号機の残骸を捕らえる。

 捕食。

 2本の手が胸元へと2号機を引き寄せ、一体となるかのように縛った。

 アスカの無念を示す様に、2号機は大きく口を開き、苦悶の表情をしている。

 無惨。

 

「贄たる第2の少女(式波アスカ・ラングレー)が捧げられた。2号機のコアを焚べる事で13号機は真なる覚醒を迎える___ 」

 

 宙に浮いている碇ゲンドウ。

 その足元でゆっくりと13号機が立ち上がる。

 産声の代わりとばかりに吠える。

 

「初めよう。先ずは場を揃える」

 

 

 

 

 

 NHGシリーズとの交戦はAAAブンダーにとって余りにも不利であった。

 数で劣り、性能でも劣る。

 ただ()()のみは優越しており、そのお陰で何とか抵抗出来ている状況であった。

 

「4番砲塔大破!」

 

「火力が段違い過ぎる!?」

 

「泣き言を言うな!!」

 

 衝撃。

 被弾する。

 

「第3艦橋、応答途絶!! 火災発生!?」

 

「緊急対応を急がせろ」

 

「ヤヴァイです!! 目標ベルタ(NHG Gebet)が正面!? 先回りしてきてますっ!!!」

 

「進路を読まれたかっ!!」

 

 残る2隻で後方と上方とを抑えに来ているNHGシリーズ。

 

「構うな! 正面突破だ!! 舵中央、速力最大、ぶつける積りで行けっ!!! 」

 

 葛城ミサトにとってAAAブンダーの闘いは、ある意味で時間稼ぎであった。

 勝つ必要は無い。

 派手に動いてNERV戦力の耳目を集め、エヴァ2機の作戦を支援するというのがAAAブンダーの役割と割り切っていた。

 その時、何かが変わった。

 音がした訳でも、衝撃波が来た訳でもない。

 だが、確実に何かが変わった。

 そして、NHGシリーズからの攻撃も止んでいた。

 

「状況報告!!」

 

 葛城ミサトの野生のカンが叫ばせた。

 だが、対応できると云う話では無かった。

 

「艦長、南極です!?」

 

「戦闘中よ、不明瞭な発言は___ 」

 

 そこで葛城ミサトも絶句していた。

 正面のモニター一杯に広がる赤い海。

 そして次元境界面。

 南極であった。

 

 先ほどまで、東シナ海洋上で交戦していたにも関わらず、今は南極域にAAAブンダーは居る。

 

「艦長、現在本艦周辺にはNERVのNHGシリーズ、及びNERV本部も観測出来ませんっ! マジ!? コレってどういう事ぉ!?」

 

 悲鳴めいた声を上げる北上ミドリ。

 

「副長っ!!」

 

「…待ちなさい。座標を確認しているわ…………そう。判ったわ」

 

「何処?」

 

「旧カルヴァリーベース、南極で間違いないわ」

 

 非常事態と言って良い状況に、ブリッジが騒がしくなる。

 だが葛城ミサトが対応の指示を出す前に、状況が動く。

 

「どうやって___ 」

 

「神の御業、量子テレポートだ」

 

 誰もが声主を見た。

 誰もが声を失った。

 

「いっ…碇ゲンドウ!?」

 

 声の主は碇ゲンドウ。

 AAAブンダーのブリッジに突如として出現していた。

 怨敵NERVの首魁登場、だが誰もが呆然としていた。

 否、即座に反応した人間が居た。

 旧NERVのメンバーである。

 即座に席を離れて銃を抜く。

 だが、碇ゲンドウは向けられた筒先に興味を示す事無く言葉を紡ぐ。

 

「君たちに貸し与えていたモノを返してもらいにきた」

 

「何……を」

 

「君たちがブンダーと呼ぶNHG Buße」

 

 バイザーに隠されていない口元が歪む。

 衝撃が襲う。

 

「艦長!! 侵食型のエヴァに接触されました!!!!」

 

 ブリッジに赤い非常事態の文字が躍る。

 葛城ミサトと赤木リツコ以外の誰もが対応に忙殺される。

 青葉シゲルが艦内を制御し、外を日向マコトが担う。

 2人はAAAブンダーの次席指揮官であった。

 

「自律防御、始めて!」

 

「システム、起動しません!?」

 

「侵食、止まりません!! 制御系の7割が__ 」

 

「物理的な遮断は!?」

 

「無理です、隔壁すら侵食してきます」

 

 阿鼻叫喚といった状況であったが、葛城ミサトは揺るがない。

 碇ゲンドウしか見ていない。

 

「このフネはAAAブンダー。ブーセなんて名前ではないわ」

 

「だが、建造したのは君たちでは無かろう? 神は万人に愛を与える。だが、盗人へは罰を与えるものだ」

 

 ブリッジの照明が落ちる。

 システムの再起動。

 碇ゲンドウの背にある中央モニターに映るNERVの文字。

 警報、各部からの悲鳴めいた報告。

 

「だが、ここで殺せば終わる」

 

「神は殺せ__ 」

 

 発砲音。

 赤木リツコが撃った。

 それを合図に、ブリッジに到着した警備部隊がめいめい、手持ちの火器を射撃する。

 

「ブリッジで発砲とか馬鹿ですかっ!?」

 

 悲鳴を上げる北上ミドリ。

 近くに居た青葉シゲルが慌てて、その頭を下げさせる。

 

「馬鹿野郎。頭を下げろ。死にたいのかっ」

 

 かく言う青葉シゲルは、拳銃を碇ゲンドウに向けて発砲していたが。

 青葉シゲルだけではなく、日向マコトも憎々し気な顔で発砲していた。

 だがそれらの(意志)も、碇ゲンドウには届かない。

 

「人が神に手を上げるとは不遜だな」

 

「見解の相違ね。人が神を名乗る方がよっぽど不遜よ」

 

 憎々し気に言う赤木リツコ。

 喧騒の中での睨み合い。

 それを終わらせたのは整備班、伊吹マヤからの報告だった。

 

『艦内、未知のシステムが起動しています!?』

 

「止めて」

 

『無理です。システムが応答を拒否しています!』

 

「システムの強制シャットダウン、再起動を図って! 急いで!!」

 

 睨む葛城ミサト。

 

「Bußeが守護者(ゲートキーパー)としての役割を果たす。それだけの事だ」

 

 

 空中に静止しているAAAブンダー。

 その周囲にNHGシリーズも集まっている。

 十字、或いは四角く位置し、4隻はそれぞれ強大なエネルギーを空へと噴き上げていた。

 周囲を飛ぶエヴァンゲリオンと共に、共鳴していくA.Tフィールド。

 槍が4本形成された。

 

「鍵は蘇り、門が開く。人類補完計画、その最終章の始まりだ」

 

「させる訳ないでしょっ!!」

 

 葛城ミサトの発砲。

 届かない。

 そして、ブリッジの正面が破壊された。

 その奥から顔を出す13号機。

 誰かが悲鳴を上げた。

 苦悶の死相を残す2号機が、その胸に抱かれていたからだ。

 

「エバー13号機………」

 

「そうだ。シトとリリンの魂を喰らい、この地に再誕した本当のヱヴァンゲリヲンだ」

 

 碇ゲンドウが浮き上がる。

 そして13号機の元へと向かう。

 13号機の周りには、槍を持った4機のオップファーエヴァンゲリオンが浮かんでいる。

 

「君たちへの罰は、全てを見る事だ。何も出来ず、何も為せず、ただ見ている事しか出来ない事としよう」

 

 

 

 残されたAAAブンダー。

 無力感に包まれる。

 ブリッジの破壊と共に、碇ゲンドウはAAAブンダーのシステムを破壊していた。

 最早、出来る事は無かった。

 そう思われていた。

 

「艦長!」

 

 高雄コウジが声を上げるまでは。

 

「何?」

 

「坊主から、提案だって話です」

 

 

 エヴァンゲリオン初号機の中で一部始終を見ていたシンジ。

 だからこそ言う。

 AAAブンダーを下さい、と。

 

「何をする気?」

 

『さっき、NERVのエヴァが来た時、初号機にまで侵食して来てたんです。その時、逆侵食が出来たんです』

 

「はぁ?」

 

『多分、今ならこの艦は初号機から動かせます』

 

「………可能なの、副長?」

 

「今、指揮操作系統を確認しているわ………ええ。そうね、バイパスが出来ているわ」

 

 AAAブンダーの略図。

 先の侵食が形成した指揮操作回路はまだ生きていた。

 それを初号機が掌握したと言う事であった。

 

「なら、反撃はまだ可能って事ね」

 

 葛城ミサトの瞳に力が戻る。

 だが、それはシンジア否定する。

 

『皆さんは降りてください。碇ゲンドウとの決着は僕がつけます』

 

「………何を言っているの」

 

『もう、葛城ミサトさん達に出来る事はありません。むしろ邪魔です』

 

 AAAブンダーの艦内に人が居れば、その分、無茶な機動が出来ないのだと言うシンジ。

 正論であった。

 だが赤木リツコだけは反論する。

 

「現状、AAAブンダーの全能力を発揮するには乗員は必要よ」

 

『必要ないですよ。飛んで行って、ぶつけるだけなら』

 

「………それで勝てる積り?」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 事実だった。

 神殺しの力だのと葛城ミサトは言う。

 確かに使徒は殺せる力はある。

 だが、それらは13号機などを相手にするには余りにも貧弱でもあった。

 だからこそぶつけて、自爆させると言うシンジ。

 

『AAAブンダーの全機能っていうけど、戦闘だけで言えば、もう使えるのは大砲が1つと艦内のミサイルだけですから』

 

「慌てないで。まだ手はある筈よ」

 

『冷静ですね。でも、無駄ですよね。前もそうだったじゃないですか。碇ゲンドウが僕にアスカの3号機を潰させた時もそうだった。最善の策を探すけど間に合わない。間に合わなかったから仕方がないって言う。言ってる側は良い気分になるでしょうけど、当事者じゃない他人に理屈を言われても不快なだけですよ』

 

 淡々と紡がれるシンジの感情。

 14年前の時。

 3号機事件とニア・サードインパクトの時を覚えている人間は誰もが口を開けなかった。

 

「シンジ君……………」

 

『どうせ他人事みたいに不幸な出来事だったって処理するなら、最初から綺麗事なんて言わなければ良いのに。馬鹿馬鹿しい。僕は父さんを止めてアスカを救いに行きます』

 

 だから降りろと言う。

 14年前の当事者では無い北上ミドリが、憎々し気に言葉を発した。

 

「疫病神が偉そうに」

 

『その疫病神が勝手に行くんだから、降りれば良いでしょ』

 

 北上ミドリの感情を、無視するシンジ。

 そのシンジに葛城ミサトが声を掛ける。

 

「シンジ君、私は、私としては__ 」

 

 WILLEの、AAAブンダーの艦長としての顔ではなく、14年前の、疑似的な家族だった頃の顔を見せる葛城ミサト。

 だがシンジはバッサリと切る。

 

『葛城ミサトさん。貴方の感情なんて聞いてません』

 

「………」

 

『多分、もう時間がありません。父さんが何をしたいのか、何をする積りなのかなんて、わかりません。だからとっとと降りて下さい』

 

 別に、AAAブンダーの艦内に人が居てもシンジに影響はない。

 全てを掌握した初号機が居るからだ。

 にも拘わらず退艦を促すのは、無駄に他人を傷つけたくないと言うやさしさだった。

 

「………判りました。AAAブンダーは貴方に預けます。副長! 総員に退艦命令を発して」

 

「判ったわ」

 

 

 

「もう、ミサトさんとは呼んでくれないのね」

 

『他人ですから』

 

「そう。そうね。そうよね」

 

「艦長、総員の耐寒準備は終わったわ」

 

「結構。シンジ君。AAAブンダーと人類を貴方に託します」

 

『人類何て知りませんよ。勝手に押し付けないで下さい。僕は僕の為に行きます。アスカを助ける為に。父さんを止める為に』

 

「………ありがとう」

 

 

 

 AAAブンダーから葛城ミサトら搭乗員の乗ったカプセルが離れる。

 どこまで逃げられるのかは判らない。

 そもそも、逃げられるのかも判らない。

 最後の人類と言うには、余りにも乏しいソレを一瞥したシンジは、全てを捨てる様にAAAブンダーを飛ばす。

 

 

 

 

 

 




+
 シン、そう言えばNERV本部が日本列島を離れる頃には探知したのに、南極まで交戦せずに自由に行かせたのが草。
 或いは雑。
 儀式の準備が終わった後に、必要な道具を届けに行った感になるので、ええ。
 本当に、シナリオから話の都合のご都合主義感が溢れてて、時間も金もあったんだから検証とかシナリオの担当に人を雇って__
 無理か。
 そんな事をしたら、面白い()でのライブ感覚()での適当な修正が不可能になる(トオイメ

 そう言えばQがああなった所以で、安易な救いはリアリティが無いと言ったとか言う話があった。
 の割に、シンは安易な和解。
 安易な救いのオンパレードやったナァ と割と思う。
 人間が一番嗤われるのは、言ってる事と遣ってる事に差があった時だと個人的には思う。





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