異伝・シンヱヴァンゲリヲン   作:◆QgkJwfXtqk

7 / 9
結-4 やろうぶっ殺してやる! のパート

+

 空を進むAAAブンダー。

 それを、綾波レイは悲しみと共に見ていた。

 シンジと碇ゲンドウの和解、それを嘗ては夢見たからである。

 だが2人は決定的に道を違えた。

 碇ゲンドウは我欲の為に人類補完計画を進める事を決めている。

 シンジは、その碇ゲンドウを止め、その手に握られてしまっているアスカを助けると決めている。

 最早、和解はありえない。

 そんな両者に対して、綾波レイはそれぞれに思いを抱いている。

 選べない。

 それ故に何も出来ない。

 だから傍観者となるしかなかった。

 最初、エントリープラグに入ったシンジは、誰も居ない中で小さく感謝を口にした。

 有難う。

 綾波レイに告げる言葉であった。

 

「碇君………」

 

 半透明な綾波レイはエントリープラグの中でそっと目を閉じた。

 

 

 

 AAAブンダーを捉えた碇ゲンドウは、不快気に笑った。

 如何なる手段をもってかAAAブンダーを動かし、まだ抵抗をする積りであるのかと。

 とは言え、蟷螂の斧であると断じて冬月コウゾウに迎撃を命じる。

 冬月コウゾウは、指揮下の護衛部隊、エヴァンゲリオンMark.07の群れに迎撃を命じた。

 だが、一瞬で消え去った。

 AAAブンダーが発射したプルトンビームが全てを焼き払ったのだ。

 

「はっ!?」

 

 馬鹿げた、余りにも非常識な火力に冬月コウゾウも絶句する。

 あんな兵装はNHGシリーズに搭載されていない。

 予定すらされなかった。

 WILLEに改装する技術も物資も無い。

 であれば__ 原因を思いつく。

 

「初号機、第3の少年か。碇、急いで先に行け。貴様の息子は私が止めよう」

 

『………任せた』

 

 13号機が、4機の槍を持ったオップファーエヴァンゲリオンを連れて先行する。

 冬月コウゾウは残余の戦力をもってAAAブンダーに立ち向かう。

 

「全周包囲だ。押しつぶせ、如何に覚醒した初号機であろうと、数の暴力には叶うまい」

 

 だが、それは儚い願望でしかなかった。

 シンジの意志を受けた初号機、その侵食管理下にあるAAAブンダーは自らの構造を変化させ、状況に対応する。

 船体前部戦闘ブロックの各所が解放され、そこに射出口が生み出される。

 レンズめいたナニカが艶やかに光る。

 プルトンビームだ。

 360度、全方向に向けて乱射される破滅の光。

 みるみるとエヴァンゲリオンは溶け散っていく。

 

「ええい、厄介な。だが………」

 

 手を振る冬月コウゾウ。

 その指揮に従ってアヤナミSeriesがブリッジ内を忙しく動き回る。

 NHGシリーズによる反撃。

 3隻の粒子砲による光の奔流がAAAブンダーを撃つ。

 命中。

 A.Tフィールドを簡単に貫通し、AAAブンダーの船体を破壊する。

 だが止まらない。

 連続射撃。

 その槍衾の様な粒子砲を無視して突進してくるAAAブンダー。

 流石に冬月コウゾウも慌てる。

 

「何故、沈まぬ!?」

 

 その目が最後に捉えたのは、眼前に迫ったAAAブンダー。

 その艦首部が異形めいて開口し、作り出された軸線砲の艶やかさであった。

 

「馬鹿な」

 

 閃光。

 至近距離から放たれた極太のプルトンビームが、NHGシリーズ3隻を纏めて焼き尽くした。

 

 

 

 

 

「AAAブンダー、NERVのNHGシリーズを撃破!」

 

 そう報告を上げたのは日向マコトであった。

 居る場所はNERV本部第1発令所。

 AAAブンダーから離艦したWILLEスタッフは、取り合えずと言う事で洋上に漂っていたNERV本部に避難していたのだ。

 南極圏からの離脱の為の物資を探しての事であったが、NERV本部の施設がまだ生きていると言う事を知って、その設備を使ってAAAブンダーの戦いを観測しているのであった。

 それは、まるで14年前の姿だった。

 

「………」

 

「艦長、使えそうな飛行艇を発見しました!」

 

「総員、乗れそうなの?」

 

「はい! ギリギリですが可能です」

 

「そう。副長、後の指揮は任せます。総員は急いで退避。取り合えずオーストラリアを目標にして」

 

 自分は残る。

 言外にそう言った葛城ミサトに乗組員たちは動揺の声を漏らす。

 ここに残っている意味など無い。

 只の感傷だと自覚もあった。

 かつて家族同然に暮らした2人。

 アスカを使い潰し、シンジも又、死戦に身を投じさせている事に対する感傷であった。

 そして疲労感でもあった。

 かつては、父を奪った使徒への憎悪が葛城ミサトを奔らせた。

 サードインパクトからは、加持を奪ったNERVへの憎悪に変わった。

 だが、今となっては最早出来る事は無い。

 だからこそシンジを見守りたいと思って居たのだ。

 指揮官としての最後の責任感が、赤木リツコへの命令であった。 

 だが、副長である赤木リツコは淡々と返す。

 

「トリントンベースね」

 

「機能回復シーケンスは8割まで進めているから、あそこなら生き残れる可能性はあるわ」

 

「その判断には同意するわ。伊吹整備班長、指揮官代行権限で命令します。以後は青葉臨時指揮官に従って総員の脱出作業を遂行して。青葉臨時指揮官は事後、指揮官として責務全うを期待します」

 

 自分も残ると言う赤木リツコ。

 揺るがない。

 突然の指名に青葉シゲルは肩を竦めて言う。

 

「言っては悪いですが、お二人が此処の設備を十分に使えるとは思えません。臨時指揮官の権限を高雄機関長に委譲します。以後は宜しく」

 

「何で俺を指名しないんだ?」

 

 日向マコトが問えば、青葉シゲルは軽く返す。

 

「どうせ残るって言う奴に預けても意味は無いだろう」

 

「違いない」

 

 WILLEの旧NERV組は、少しだけやらかい感じになる。

 それはある意味で14年前の光景であった。

 

「仕方ありませんな」

 

 高雄コウジは久々に国連軍式の敬礼を行い、そして指揮を執るのだった。

 尚、伊吹マヤは総員が乗った時点で任務の継承を行って残る気満々であった。

 彼女とて旧NERV第1発令所の一員であり、であるにも関わらずのけ者扱は酷いと言うモノであった。

 と、振動がする。

 

『もしかして、そこに居るのは艦長たち?』

 

 真希波マリ・イラストリアスであった。

 13号機との戦いで吹き飛ばされてから、漸くの再起動であった。

 酷い目にあったと笑っている。

 笑っているが目元がヒクツイテいた。

 この飄々とした人間には珍しい程の怒りが溢れていた。

 

「そうよ。悪いけど8号機で脱出艇の護衛をお願い」

 

『それはお断りかにゃ。アチシはこれからわんこ君の支援に行くから』

 

「行けるの?」

 

『NERVのエヴァ用飛行ユニット、ゲットしてきたから! コレは行くしかないでしょ!!』

 

「そう………」

 

「稼働時間は持つの?」

 

『NERVのエヴァからS²機関を喰ったから、何とかなりそう?』

 

 赤木リツコの科学的疑問。

 それを笑って流す真希波マリ・イラストリアス。

 準備万端なのだと言う。

 画面に映る8号機は、巨大な翼を持った異形となり果てていた。

 

「無茶苦茶ね」

 

「良いわ、マリ、シンジ君をお願い」

 

『任されたっ!!』

 

 

 

 NERV本部内に残されていた武器をありったけ抱えた8号機。

 WILLEクルーによる見送り、敬礼を受けながら真希波マリ・イラストリアスは出撃する。

 わき目もふらずに先を睨む真希波マリ・イラストリアス。

 

「待ってなよわんこ君、アチシの大事な姫の為には君は大事なピースなんだから」

 

 

 

 

 

 冬月コウゾウとNHGシリーズを一蹴したシンジのAAAブンダー。

 だが碇ゲンドウの13号機と4機のオップファーエヴァンゲリオンとの闘いは簡単では無かった。

 如何なプルトンビームと言えど、5機のエヴァンゲリオンが生み出すA.Tフィールドは簡単に破る事が出来ないからだ。

 逆に、13号機の粒子砲による被害がAAAブンダーを蝕んでいく。

 複数の被弾によって左の翼は失われ、戦闘ブロックも右舷側が脱落。

 艦首は潰れて満身創痍となる。

 何時しかプルトンビームを発射する事も出来なくなった。

 だがまだ戦い続けていた。

 生き残っているレールガンを発射し、食らい付かんとしている。

 

「無駄な努力だな」

 

 嘲笑う様に言う碇ゲンドウ。

 AAAブンダーの戦闘力が低下した事を見て、作業を進める事を選ぶ。

 オップファーエヴァンゲリオンに儀式の開始を命令したのだ。

 大空へと伸びる赤い光の柱。

 そして生み出される巨大な円、それは門。

 

 

 

「くそ、父さんめ、儀式ってのを始めたのか」

 

 怨嗟めいた声を上げるシンジ。

 時間が足りない。

 始めて操るAAAブンダーでの戦闘は、シンジにとって勝手が違っていた。

 だからこそ()()を進めていた。

 だが、まだ足りない。

 と、激震がAAAブンダーを襲う。

 見上げれば、上甲板に13号機が仁王立ちしていた。

 碇ゲンドウも、その眼前に浮かんでいる。

 

『シンジ。無駄な努力は止め、運命を受け入れろ』

 

「フザケルナ!!!」

 

 激怒するシンジ。

 ニア・サードインパクトはシンジの罪であったかもしれない。

 だがその果ての、赤く凍てついた世界。

 人が消えた中、だが人の為と世界で駆け抜けて来たアスカが居たのだ。

 それを運命などと云う安っぽい言葉で受け入れるなど、シンジには許せる事では無かった。

 生き残っていたレールガンを13号機に向けて発砲する。

 A.Tフィールドを中和し合っている状況なのだ。

 一撃必殺。

 吹き飛ぶ13号機の頭部。

 だが、死なない。

 

『無意味な抵抗だ、シンジ』

 

 みるみると復元する13号機の頭部。

 但し、装甲は復元しない。

 初号機にも似た複眼の頭部装甲では無く素体、肌色の四ツ目の異形となった。

 

「そんなの、やって見なければ判らないだろ!?」

 

『いや、結果は見えている』

 

 13号機が右の腕を振るう。

 鞭の様にしなり、そして伸びたその2本が、AAAブンダーに残された最後の火器、レールガンを粉砕する。

 

『さあシンジ、お前に最早抵抗は出来ない』

 

 だが火器は失せても手段は残されていた。

 アンカー、錨だ。

 ロケット式に打ち出された錨、シンジは一気にAAAブンダーの船体を横回転させる事で操って13号機に直撃させる。

 否、直撃したのは13号機の胸に縛られた2号機だった。

 その衝撃、痛みに悲鳴を上げる様に吠える2号機。

 

「2号機、生きてる!?」

 

『そうだ第2の少女と共に、この機体もまた贄となる ―― そうだシンジ。教えてやろう。お前が大事だと言う第2の少女。今、13号機と共にある。今、抵抗すれば彼女を傷つける事になるぞ』

 

 AAAブンダーの挙動が止まった。

 

『それで良い、シンジ。お前も神を__ 』

 

「父さんはアスカの事を何も理解してないよね」

 

『なに?』

 

「こんな時に、アスカを理由に手を止めたら、後で泣くほどに怒られるんだよっ!!!」

 

 シンジの叫び。

 それは時が達した、反撃の時が来たと言う宣言でもあった。

 AAAブンダーの背中から腕が突き出る。

 

『なっ!?』

 

 腕は13号機の足を掴んで振り上げ、そしてAAAブンダーの甲板に叩きつけた。

 悲鳴めいて吠える13号機。

 対して腕の主がAAAブンダーを裂いて登場する。

 堂々と腕を組み、倒れた13号機を睥睨するかのごとく睨む紫の()神。

 エヴァンゲリオン初号機だ。

 碇シンジの乗る最強が、この場に再誕したのだった。

 

「父さん、貴方の思い通りにはさせない」

 

 シンジの宣言。

 その瞬間、初号機の背中からA.Tフィールドの赤い光芒が噴き出し、翼を形成した。

 

『シンジ、何処までも父たる私に逆らうか』

 

 いっそ憎々し気と言える声を上げた碇ゲンドウ。

 両雄の激突、その第2幕が始まる。

 

 

 

 

 

 




+
 そう言えばシンジが初号機に乗って以降の綾波レイの空気っぷりと言うか、補完までそのまま放置ってのも酷いよナァ
 他に手段が無いとは言えサ
 愛が無い。
 もう少し演出を考えて欲しいモノで。
 尚、本作の綾波レイ。
 シンジ全振りにならない理由は、TVシリーズと違って尺が少なかったから。

 冬月センセの退場。
 ま、劇場作品ってコレ位のテンポが必要だよね!

 そう言えば初号機のシン化って何の意味があったの?
 と言う疑問に、結局は物語は回答をしなかったナァ
 そういうトコやぞ!!! とは声を大にして言いたい

 泣くほどに怒られるか、引っ叩かれると言う勝利の女神(ポップは人間サイツヨ級(普通の出自なんだけどナァ)の2択でしたけど、ま、コッチになりました(お





  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。