異伝・シンヱヴァンゲリヲン   作:◆QgkJwfXtqk

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結-5 父殺し(ガチ)パート

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 巨大なAAAブンダーの甲板の上で繰り広げられる攻防。

 全長2㎞を超える巨艦の背を、ところせましと暴れる初号機と13号機。

 その余波で砕けていくAAAブンダー。

 だが、戦いは初号機が劣勢であった。

 差は槍の存在だった。

 13号機が持つ2つの槍、ロンギヌスの槍とガイウスの槍だ。

 長大な双頭の幅広剣に変化したロンギヌスの槍。

 重量のある穂先を持ったガイウスの槍。 

 如何なシンジ、如何な初号機とて徒手空拳で使徒とエヴァンゲリオンの抑止装置でもあるソレらを持った13号機を圧倒するのは不可能であった。

 にも拘らず抗戦出来ている理由は、ソレらの質量が余りにも大きいが故だった。

 そして、操る碇ゲンドウの拙さであった。

 だが、碇ゲンドウはその事に気付けづに居た。

 シンジは、慎重に初号機を操り、隙を伺っていた。

 

『初号機、その中にユイは居なかった』

 

 13号機を操りながら、謳うように言う碇ゲンドウ。

 

『そしてシン化による儀式を進める事も終わった。もはや初号機の役目は無い』

 

「………役目が無いといなら、何で宇宙に封じてたんだよ!?」

 

 激発するシンジ。

 全てから切り離され、眠ったままに過ごした14年間。

 その間、敵意の中で駆け抜けていたアスカを思うと、冷静ではいられなかった。

 だが、それが隙となって13号機の持つガイウスの槍が初号機をしたたかに打ち据える。

 致命傷にならなかったのは、13号機が下手糞だったに過ぎない。

 倒れる初号機。

 その喉元へとロンギヌスの槍を突き付ける13号機。

 

『例えユイが居なくとも、初号機を自由にされるのは腹立たしかったからな。そしてお前の封印だ、シンジ』

 

 勝利が確定したと言う思いが、碇ゲンドウをも饒舌にさせた。

 

『第3の少年としてのお前は、この13号機起動の重要なカギであった。だからこそ残したのだ。第1の使徒にして第5の少年である渚カヲルと共にな。予言に定められた6人。第1の少女としての綾波レイの復元は困難だった。第2の少女はWILLEにあり、慎重な運用がされていたので手を出す事は難しかった。第4の少年と第6の少女はともどもは所在不明となっていた。お前の価値は13号機の起動によって終わったのだ』

 

 長広舌。

 だがシンジはソレを聞いていなかった。

 反撃の機を窺う事だけに集中していた。

 

「そっ。父さんの、自分の都合って事だね」

 

『当然だ。全ては人類補完計画の為、私がユイに再び出会う為だ』

 

「………父さん」

 

『何だ?』

 

「父さんが父さんの夢の為に全てを犠牲にする覚悟は判った」

 

 静かに初号機の動きを止めて呟くシンジ。

 瞠目したかのように動きを止めた碇ゲンドウ。

 併せて13号機の動きも止まった。

 

『そうか。理解したか。ならば私にっ__ 』

 

「だから、僕も僕の我儘にする!」

 

 叫ぶシンジ。

 その瞬間、足場となったAAAブンダーの甲板が弾ける。

 飛び出す1本の鉄杭の様なソレが13号機を襲う。

 したたかに打ち据えられ、AAAブンダーから放り出される13号機。

 初号機による浸食によって引き出したAAAブンダーで一番強度のある船体竜骨、脊椎中枢材であった。

 剣であるかのように握るソレ。

 

『あくまでも抵抗を続けると言うのか、シンジ』

 

「僕は僕の為に父さんを認めない」

 

『そうか。ならば___ 』

 

 改めて初号機を潰そうとした、その瞬間、巨大な爆炎が頭上で上がった。

 

『なにっ!?』

 

 見上げた空。

 そこではオップファーエヴァンゲリオンを撃破し、丸齧りにしている異形の8号機の姿があった。

 碇ゲンドウの意識がそれた。

 

『8号機、真希波君かっ』

 

 その瞬間を待っていたとばかりにシンジは一撃を決める。

 プルトンビーム。

 13号機の四肢を切り飛ばす。

 そして竜骨の剣をもって胸を刺さんとばかりに13号機に突進する。

 

「うぉぉぉぉっ!?」

 

 貫通。

 苦痛に吠える13号機。

 

『シンジ、貴様っ!?』

 

 対応しきれない碇ゲンドウの前で、13号機に飛びつく初号機。

 

「アスカを返せっ!!」

 

 13号機から2号機を剥がそうとする初号機。

 首を振って拒否を示す13号機だが、四肢を失ってしまえば不可能だ。

 2号機を引きちぎろうとする初号機。

 だが、成功する前に碇ゲンドウが動く。

 

『させぬ』

 

 碇ゲンドウが盾となって初号機を弾いた。

 転倒した初号機。

 だが追撃はしない。

 必要が無いのだ。

 

『どうやら遊びの時間は終わりだな』

 

 ガフの扉が完全に開くまでの間、邪魔を刺せないと言う事。

 それが碇ゲンドウがシンジと初号機とを相手取った理由であった。

 故に、扉が開けば相手をしてやる意味は無いのだ。

 とは言え、問題が1つ発生した。

 真希波マリ・イラストリアスが8号機でオップファーエヴァンゲリオンを喰っているのだ。

 開けたガフの扉が、門の担い手が消えた以上は閉まる。

 であれば、早急に門を通らねばならぬのだ。

 

『もはや会う事はあるまい。さらばだシンジ。私はユイの愛を独占したお前を………憎んでいたよ』

 

 13号機と共にAAAブンダーを離れた碇ゲンドウは、置き土産とばかりに広域攻撃を仕掛けた。

 光の雨。

 オップファーエヴァンゲリオンからの粒子砲攻撃であった。

 A.Tフィールドで弾くが、その為に13号機の追撃には失敗する。

 門を超える13号機と碇ゲンドウ。

 生き残った2体のオップファーエヴァンゲリオンも後を追った。

 

 その背を追おうとしたシンジを止める真希波マリ・イラストリアス。

 

『まだ戦える、わんこ君!?』

 

「行くよ、マリさん。アスカを救いたいんだ」

 

『折れて無いね、上々上々。ところでブンダー、まだ飛べそう?』

 

「あちこちが壊れて酷いことになってるけど、初号機が繋がったままだから真っすぐだけなら大丈夫だよ?」

 

『オッケー。ゲンドウ君を追っかけるには、ブンダーが必要なんだ』

 

「あの、門とやらを潜り抜ける為に?」

 

『ザッツラーイ。操縦は任せた。後、わんこ君。初号機の持ってるソレ、貸して』

 

「コレ?」

 

 真希波マリ・イラストリアスが言う初号機が持っているモノとは、AAAブンダーの竜骨、即席の剣槍であった。

 8号機に手渡しながら、問いかけるシンジ。

 

「どうするの?」

 

『ゲンドウ君のたくらみ。人類補完計画をぶっ壊す為の鍵、7番目の槍を作るのさ』

 

「槍?」

 

『そっ、或いは創生の鍵』

 

 オップファーエヴァンゲリオンから奪ってきた2本の槍。

 AAAブンダーも含めてNHGシリーズが生み出した、ガフの扉を開ける為の鍵。

 それが8号機の腕の中でAAAブンダーの竜骨に巻き付いていく。

 

『奇しくもNHG-№ⅡとⅢが手にしてたんだ。これは運命だよわんこ君』

 

「そう……なのかな?」

 

 真希波マリ・イラストリアスの勢いに若干引いているシンジ。

 

『そうさ、そうに決まってる! 姫は14年間わんこ君を待ち続けていたんだよ!? だからこそ報われ無ければならない!! 姫は6人の運命を仕組まれた子ども達の中で一番の苦難を背負ってきたんだから!!! だから、わんこ君。君がするべき事は判ってるね?』

 

「父さんをとめる。そしてアスカを助ける」

 

『違うっ!!』

 

 強い口調で断言する真希波マリ・イラストリアス。

 脂汗を流しながら、だが揺ぎ無く言う。

 

『わんこ君の仕事は姫を助ける事だ。順列を間違えたらだめだ。ゲンドウ君の始末はアタシらが、大人が付けるべきなんだよ』

 

「マリさん…………」

 

『さぁ、君の槍が完成した。ゲンドウ君から姫を取り返しに行くよ!』

 

「はいっ!!」

 

 

 

 

 

 ガフの扉を抜けた先、因果律の果て、宇宙と地球の始まりの場所たる超上位次元に到達した碇ゲンドウと13号機。

 だが、そこに碇ゲンドウが待ち望んでいた碇ユイの姿は無かった。

 

「どういう事だ。何故、ユイが居ない………」

 

 因果律が解けている、この空間に於いて距離は関係ない。

 碇ユイが居る。

 碇ゲンドウが逢いたいと願う。

 そうすれば叶う場所の筈なのだ。

 

「初号機の中には居なかった。ならば、この時空であればいる筈だ。魂が眠るべき場所なのだ」

 

 探す。

 探す。

 探す。

 だが、居ない。

 

「何故、居ない」

 

『居なくて当然! ユイさんは、とっくに成仏したからサ!!』

 

 突然の真希波マリ・イラストリアスの声。

 8号機に殴り飛ばされる碇ゲンドウ。

 

「この空間にどうやって!?」

 

『入り方を知ってるのはゲンドウ君だけじゃないって事!』

 

「流石、イスカリオテのマリアか」

 

『うわっ、ひっどい昔の綽名を言うね!? でも、それが隙だよ』

 

「なにっ!?」

 

 13号機に初号機が組み付いていたのだ。

 手に持った蒼を紅の槍、ガイウスの槍で13号機のコアを貫いていた。

 

『アスカは返してもらうっ!!』

 

「私の邪魔をするなシンジ!!」

 

『知った事かっ!!!」

 

 初号機がガイウスの槍から13号機に融合していく。

 初号機が持つ赤いA.Tフィールドの翼が2機と1本の槍を巻き込んでいく。

 否、そこに2号機も加わっている。

 それは、正に巨大な繭であった。

 

「何をする気だ!?」

 

 それは碇ゲンドウの知識を越えた光景だった。

 慌てて13号機を取り戻そうとするが、それを8号機が止める。

 

『黙てみてなよ。君の息子が世界を治すんだ』

 

「馬鹿な!? 3度の浄化(Impact)によって再誕寸前の世界を潰す積りかっ!!』

 

「さぁ? でもゲンドウ君、世界は若い世代に委ねられるべきだと思うよ」

 

 

 

 

 何も無い、ドイツの森の中で膝を抱えて座っているアスカ。

 昏い森。

 プラグスーツ姿のまま、じっと膝を抱えているアスカ。

 赤いプラグスーツは、かつての、シンジと共にあった頃のモノであった。

 破れ、壊れ、様々な補修をした痕の残っている、アスカの戦歴を示すプラグスーツ。

 

アスカ____

 

 誰かが読んでいるのが判ったが、顔を上げる元気は無かった。

 

アスカ___

 

 煩いと顔を顰める。

 エヴァンゲリオンの部品として生み出され、最後まで戦った。

 最後の結果は十分では無かっただろうが、それは受け入れて欲しい。

 

アスカ__

 

「もう疲れたのよ」

 

 誰に言う事もなく、零す言葉。

 ここが何処であれ、何でああれ、もう何もしたくない。

 そう思うアスカ。

 その手をそっと包み込む様に触る手が現れた。

 誰のものかと判らない、温かい手。

 

「温かい…………」

 

 温かさに、俯いていたアスカが顔を上げる。

 手はいつの間にか白を基調としたシンジのプラグスーツのソレになっていた。

 

「お待たせ、アスカ」

 

「バカシンジ?」

 

「うん。迎えに来たよ」

 

「夢? 夢でもありがとう。もうアタシは終わってるのに」

 

「アスカは何も終わって無い。終わって無いよ」

 

「嘘つき。でも嘘でも有難う」

 

 手を差し伸べるシンジ。

 抱きしめ返すアスカ。

 何時しかプラグスーツは消えていた。

 眼帯も消えていた。

 生まれたままの姿で抱き合う2人。

 

「碇君」

 

 と、唐突に綾波レイが現れた。

 

「優等生?」

 

 14年間で何度も見たアヤナミSeriesでない事を、下位次元に残ったアヤナミSeriesでない事も、何故かアスカは理解出来ていた。

 戦友であった綾波レイである事を。

 

「お久しぶり」

 

「え?」

 

「積りは無しは後だ。マリさんが父さんを抑えている内に、やってしまうよ」

 

「世界の再誕だね、シンジ君」

 

「うん、そうだよカヲル君」

 

 浄化によって歪んでしまった世界を、正しい姿に復元する。

 人類補完計画、種としての行き詰まりを迎えていたリリンの、シトとの融合による再誕。

 それは、かつて碇ユイが願った人類の存続。

 マリから詳細をシンジが聞いた訳では無い。

 理解出来た訳でもない。

 只、アスカと共に、綾波レイと渚カヲルと共に願えば良いとだけ言われていた。

 ()()()()()()、と。

 人が人として生きれる様に。

 地球が命の星として再誕する様にと願いさえすれば、願望器たるエヴァンゲリオンはそれを叶えるだろうと真希波マリ・イラストリアスはシンジに言っていた。

 

「やろう、アスカ」

 

「判った。やりましょう」

 

 手を繋ぐシンジとアスカ。

 渚カヲルと綾波レイも加わる。

 光が満ちる。

 

 

 

 解けた繭から生まれた、全く新しいエヴァンゲリオン。

 初号機では無い。

 13号機では無い。

 2号機でも無い。

 全てのエヴァンゲリオンと異なるヱヴァンゲリヲン。

 

「ユイさんの願いを叶えるもの。世界を紡いでいくヱヴァンゲリヲン、あれがヱヴァンゲリヲン最終号機」

 

「私の知らないエヴァンゲリオンだ…と……」

 

「そ、ユイさんの希望、その結晶だよ」

 

「ユイの…………」

 

 魂が抜けた様に力を失い、呆然と最終号機を見る碇ゲンドウ。

 

「ゲンドウ君にも遺言として残してた筈なんだけどね」

 

「……………私は、アレを見る事が出来なかった。ユイが消えた事を受け入れたくなかった」

 

「それも、人間の弱さだよ」

 

「私は神になった、そう思って居た」

 

「逆立ちしたって人間は神様にはなれないよ」

 

「そうか。そうだな」

 

 光に包まれていく最終号機。

 そして空間。

 その中に合って、碇ゲンドウの体は少しづつ光の粒子となって消えようとしていた。

 神の力を得る為のドーピング、ネブカドネザルの鍵を使った反動であった。

 碇ゲンドウは、それを拒否する事無く受け入れていた。

 世界を拒絶する為のサンバイザーを捨て、自らの目で最終号機を見つめる碇ゲンドウ。

 

「マリ君」

 

「何だい?」

 

 返事をする真希波マリ・イラストリアス。

 だが8号機も消えつつある。

 

「伝言を頼まれてはくれぬか」

 

「オッケー でも何を?」

 

「シンジに一言で良い。すまなかった、と………」

 

「判ったよ。でもそれは自分で言うべきだよゲンドウ君?」

 

 返事は無い。

 かつて碇ゲンドウのあった空間には何も残って居なかった。

 

「逝ったか。ユイさんの所に。でもゲンドウ君、遺言を託すのは良いけど、アッシも消えそうなんだよね」

 

 エントリープラグにある真希波マリ・イラストリアスの手も光の粒子になりつつあった。

 

「ま、それも人生。姫、わんこ君、良き人生を(ボン・ヴォヤージュ)

 

 真希波マリ・イラストリアスも解けて消えた。

 光が強くなる。

 超上位次元が、そして世界が、地球が光に包まれた。

 

 

 

 

 




+
 真希波マリ・イラストリアスは正規№の適格者じゃありませーん
 予言の書に描かれていた6人、3対の子どもとは違う、碇ユイが仕込んだシステム
 裁定の槍
 人類史の結実たる7本目の槍を生み出し、シンジに与える役を担っている、英雄の立会人

 本作の碇ゲンドウ
 13号機に喰われるまでは、そのまま13号機の前でぷかぷかと浮いてます
 十傑集みたいに!
 十傑集みたいに!!
 スパロボの十傑集みたいに(しつこい

 書いてて思った
 戦闘パートが半分超えるわ、クォレ
 うん映像化不可能(お

 マイナス宇宙
 なんつーか、センスの無いネーミングと、後は、それの影響力は何処まで?
 と素で思う件
 地球?
 月?
 太陽系?
 オリオン腕?
 天の川銀河系?
 それとも、全宇宙?
 どちらにせよ、地球如きに全宇宙の命運が変えられるモンが転がってるって、流石にナァ
 その意味ではマイナス宇宙
 名前負けし過ぎ

 概案で、ゲンドウが13号機に喰われるEndも考えてたけど、√変更しますた
 雰囲気優先

 マッパで抱き合うシーンで、エレクチオンネタを入れようかとも思ったけど、雰囲気優先で断念





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