異伝・シンヱヴァンゲリヲン   作:◆QgkJwfXtqk

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Epilogueパート

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 世界は蒼を取り戻した。

 海は青さを取り戻した。

 空は青さを取り戻した。

 陸は青さを取り戻した。

 NERV本部第1発令所を飛び出し、蒼さを見た葛城ミサトは大きくため息をついた。

 

「シンジ君たちはやり遂げたのね」

 

「ええ」

 

「初号機の反応は?」

 

「ロストしています。2号機、8号機、13号機も全てです」

 

「そぅ………カルヴァリーベース上空の空間以上はどうなってるの?」

 

「生き残ってる観測機器で得られた情報は全て、無反応(ネガティブ)です」

 

「っ………シンジ君も、アスカも、マリも、誰もみんな帰ってこない訳ね」

 

「残念ながら………」

 

「___ 」

 

 小さな声で何かを呟き、そして腰から拳銃を抜いた。

 流れるような動きでこめかみに筒先を合わせようとする。

 が、出来ない。

 赤木リツコが拳銃を握って止めた。

 

「贖罪の積り?」

 

「そんな良いものじゃないわ。只、終わったんなら、もう楽になりたい。それだけよ」

 

 生気の無い、疲れ切った目をする葛城ミサト。

 先ほど前の凛とした空気は、そこには無かった。

 

「アスカを道具として使った、使いつぶした。あの子が只の女の子だって判ってたけど、ええ。私は指揮官としてそうした。シンジ君だってそう。この結末は見えていた。14年前の時だって、あの子もこうと決めたらやり遂げる強い子だった判ってた。笑えるでしょ、そんな冷徹な指揮官が14年前には家族だって、ハッ、家族ゴッコをやってたのよ」

 

「ミサト…………」

 

「だからサ、リツコ。終わって良いでしょ。終わらさせてよ」

 

「そうね、あの子達への責任ならそれで良いわね。でも残念__ 」

 

 赤木リツコの言葉が終わるよりも先に、伊吹マヤが駆け寄ってくる。

 喜色満面といった所は、20代前半の頃を思わせる雰囲気である。

 

「葛城艦長! 高雄代行から、回収に来てくれるとの事で……す、けど? どうしました??」

 

「最高のタイミングよ、マヤ」

 

「はぁ?」

 

 見上げた空には、高雄コウジの指揮するAAAブンダーの生き残りが乗っている避難船が見えていた。

 

「ミサト、部下への責任はまだ残ってるわよ」

 

「………」

 

「終わりかけた世界で貴方がかき集め、貴方が鼓舞し、貴方が引き連れたのがWILLE。逃がさないわよ?」

 

「………そうね、仕方ないわね」

 

 表情を取り戻し、背筋を伸ばして歩き出した葛城ミサト。

 赤木リツコはその背中を見ながら煙草を吸った。

 14年前の煙草。

 かつての自分の席、その引き出しに入っていた煙草。

 

「辛いわね。目に染みるわ」

 

 指揮官として歩き出した葛城ミサトに代わって、赤木リツコは世界を救った子ども達を悼むのであった。

 

 

 

 

 

 暗転。

 明転。

 

 

 

 

 

 青い空。

 青い海。

 そして、青いソーダ味のアイスクリーム。

 

「味を感じるって、しみじみ14年ぶりよね」

 

 ソーダ味のアイスクリームを齧るアスカ。

 

「美味しい?」

 

「冷たくて、甘い」

 

 シンジの問いかけにとっても甘いと笑うアスカ。

 繋いでいる手と手。

 そんな2人に無粋に声を掛けるのは真希波マリ・イラストリアス。

 

「アチシ達って水以外は何も取れなかったからにゃー」

 

「私も14年ぶり」

 

 クーラーボックスの中に手を入れるのは綾波レイ。

 自分の髪の色とそっくりなソーダ味のアイスクリームを取る。

 

「アンタは寝てたんでしょ」

 

「起きてた」

 

「バカシンジは寝てた筈よ」

 

「碇君はそう。でも私は不寝番」

 

「アンタも大変だったわね」

 

「そうでも無い。碇君と一緒だったから」

 

「………」

 

 マウントだと言えるような物言いに、ビキっとばかりに引き攣った顔になるアスカ。

 綾波レイは気づかない。

 とはいえ、繋いでいるシンジの手の柔らかさが冷静さを取り戻させる。

 

「ま、これからはシンジはアタシと一緒だけどね」

 

「そう? でも家は一緒」

 

「部屋割りの話だっつーの!!」

 

 やいのやいのと盛り上がるアスカと綾波レイ。

 と、そこに最後の1人がやってくる。

 

「お待たせ。ピートパラソル取って来たよ」

 

「ご苦労様、カヲル君」

 

 渚カヲルだ。

 

「担当だった荷物、忘れたのアンタじゃないの」

 

「ハハハハハッ 手厳しいね」

 

「アイス食べる?」

 

「有難う、リリス」

 

「私はリリスじゃない。綾波レイ」

 

「ん、ごめんごめん」

 

 5人は木陰を出て連れ立つ。

 海に向かって。

 泳ぐために。

 世界を満喫する為に。

 

 

「でも、ここ、何処なんだろ?」

 

 歩きながらシンジがぽつりと漏らす。

 気が付いたら居たのだ。

 南の島っぽい場所に。

 5人で。

 大量の食料その他の生活物資が揃っている大きなコテージで目覚めたのだった。

 島を調べたけど誰も居なかった。

 通信機器も無い。

 絶海の孤島といった有様だ。

 だから、開き直って遊ぶことにしたのだった。

 

「判んない。コネメガネ、アンタ、何か判る?」

 

「残念ながらアッシでもコレは良く判んない」

 

「ま、世界がくれたご褒美だって思っておこう、シンジ君」

 

「猫が居た」

 

「アンタ、本当に自由ね」

 

「?」

 

 やいのやいのと盛り上がる5人。

 そんな少年少女の先には、残骸となったエヴァンゲリオンが見守る様に立っていた。

 

 

 

 

 

 




+
 コレにて完結
 そんな感じ
 矢張り、〆は苦労した子ども達がハッピーになれるとか、そんな感じで

 最後のシーン
 イメージはウ=ス異本のアレですな
 シンのAfterなSSでも1つは、アレを念頭に置いた作品を考えているのですが、ま、先に此方と言う事で(お





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