【完結済】MASKED GUITER HERO ぼっちちゃん 作:リチウム
いつものトークイベント、初の各メンバーによる生ライブ。そして、あのZepp Hanedaでの完全ライブイベントの開催と完全新曲の発表!
会場は大盛りあがりでしたね! まあ、私は配信勢だったのですが。
次のライブイベントはチケットを当選したいものです。まあ、キャパシティ2925人なんでまず無理そうな倍率ですけどね。
バンド的には憧れの場所なのに、ぼっち・ざ・ろっくとしては狭い箱になってしまっているというジレンマ。次のイベントはもう少し大きい箱を期待したいところです。
そして、新曲ですよ! 完全新曲!
アニメにも一切関係ない完全にオリジナルの推定ライブ用の新曲!
もはや、結束バンドは漫画、アニメの枠を超えた実在する存在と言っても過言ではないでしょう。
これ以上はキリがないので割愛させていただきます。まあ、今週は色々あったんだなと思っていただければ。そして、この調子で2期発表されないかな~、などと思ったり。
今回も、お気に入り、高評価、感想、ここすき等お待ちしております。
あのぼっちがチケットを捌き、喜多ちゃんが発狂した次の日、3人は金沢八景にいた。
そう、珍しく3人である。わざわざ片道2時間の道のりにも関わらずいるのだ、山田が!
道中で見つけた自販機でスポドリを買いながら話す3人。
「ぷは~、あっつ~! もうすっかり夏だね~」
「今日は曇りなので、まだ涼しい方ですけどね」
「もし雨か晴れなら来なかった。わたしの日頃の行い」
「それなら台風来るんじゃないの」*1
「後藤さんの家は後もう少しですから、サクサク進んじゃいましょうね」
「やった~! っていうか、道案内ありがとね」
「いえ、慣れてますから」
少し喜多の影が色濃くなった。
どうやらダメージが抜けきっていないようだ。
いや、今日はそのダメージを抜くためにここまで来たのだ。
虹夏も山田も準備万端。理想を言えばどこかに連れ出すのが良いのだろうが、流石にライブ前に何処かに遊びに行くのは憚られた。
というか、その場合、高確率で虹夏と喜多の二人旅になる。それならまだ喜多ちゃんの友達と遊んでもらうほうが良いだろう。
「でも、なんか新鮮だよね~。
ほら、あたし達、STARRY以外で会うこと、ほとんどないしさ」
「ですね」
「そういえば、ぼっちの家ってどんな感じ? やっぱりレアな楽器とか置いてある?」
「いや、後藤さんが持ってるギター以外の楽器は見かけませんでしたね。
ただ、後藤さんのお父さんが元バンドマンで、あのギターも借り物だって言ってました。
だから、もしかしたらお父さんの部屋とかには有るかもしれませんよ?」
「ううむ……、アレだけ弾いてれば他のギターに目移りしてもおかしくないはずなのに……。
さすがはブラック・ビューティー……、魔性の女……」
「ぼっちちゃんは楽器屋さん、行けないだけな気もするけどね」
「ふむ、つまり先輩としていい店を紹介してあげる必要があると」
「おい、自分の欲しい楽器買わせるなよ?」
「私も先輩の行きつけのお店、行ってみたいです!」
「そういえば、喜多ちゃんは弦とかピックとかの消耗品とかはどうしてるの? やっぱり、スタジオでついでに買ってる?」*2
「はい、それもありますけど……、一番は後藤さんのオススメを分けてもらってる感じですかね。
後藤さんの使ってるエリクサー*3? とは違うやつですけど」
会話の流れは自然とバンド関係に移っていく。
この3人の繋がりがその1点だから当然だし、普段なら好ましいぐらいなのだが、今日ばかりはそうではない。
今日は喜多ちゃんの休養日(予定)、それを忘れてはならない。
「う~ん、結局ぼっちちゃんの家ってどんな感じなんだろう?」
「多分父親は宇宙人で始祖鳥みたいなカラーリングしてると思う」*4
「いや、流石に普通の人間でしょ! ……普通だよね?」
「普通の方ですよ。いや、ちょっと後藤さんに似てるところはありますけど」
「足が8本あるとか?」
「宇宙人から離れろ!」*5
「そうですね。例えば、目とかはそっくりですよ!*6
あと、時々自分の世界に飛びがちなところも近いかもしれません。
でも、ネガティブさはご両親のどちらも似てなくて、妹のふたりちゃんも明るい子でしたから、突然変異の可能性も……」*7
「まあ、ツチノコがそんなに居たらUMAなんて呼ばれないだろうし」
「あっ、着きました! ここです、ここ!」
そう言って指差す先にあったのは至って普通の一軒家であった。
「おお……、普通だ」
「普通……」
「まあ、初日は結構アレでしたけどね……」
「アレって?」
「アレは私が初めて後藤さんの家に練習に来ることになった時のことなんですが……」
◆ ◇
遡って、時は7月21日。
夏休み初日、つまり鉄仮面事件の翌日である。
昨日はあの後、STARRYでバイトしてそのまま解散した。
──もっとも、その練習量があんなことになるとはこの時はぼっち以外誰も思わなかったのだが……
ともかく、そんなこんなで初日である。
喜多は初めて金沢八景までやってきていた。
今日は曇り空だが、連日の雨のせいかジトっとして蒸し暑い。
駅のホームを降り、改札を抜けるとぼっちの行方を探す。確か迎えに来てくれるとは言っていたのだが……
──と、そこで目に入る人影一つ。
『
縁が電飾でゲーミングカラー*9なのがすごく気になるが、それもまだ許容範囲だ。
だが、あのサングラスは何だろうか。
星型のサングラスは明らかに場違いではないだろうか? というか今日は曇りなのにサングラス? しかも、これも縁が光っている。
しかも、『一日巡査部長』と書かれたタスキは何だ? 付け髭もそうだ。
何よりもここは金沢八景駅だ。どこぞの誰かの誕生日会場などではない。
してぇ……、他人のふりしてぇ~~~~……
だが、それも一瞬で飲み込む。
そうだ、後藤さんは人生が不器用なんだ。きっとこれも後藤さんなりに頑張った結果なんだ。そう思えばこそ、無下にはできない。
なにより、自分は今から教えを請う立場。むやみに空気を悪くする必要もあるまい。
とはいえ、仮に『ありがとう後藤さん! 歓迎してくれてすごく嬉しいわ!』などと言おうものなら、『そそそ、そうですかね~、へへへへへへ』とか言って次回以降も、あるいは他の人相手にもこの格好になる可能性大! それは誰のためにも避けなければならない!
つまり、私に今できることは一つ!
──見なかったことにしよう。
此処にいるのはいつもの後藤さんだ、それでいいんだ。
決してゲーミングカラーに光っていないし、変なタスキも付け髭も存在しない。
いつものジャージ姿の後藤さんがいるだけだ。そういうことにした。
「後藤さ~ん」
「あっ、喜多さん……、よよよ、ようこそおいでくださいました」
「ありがとう! それじゃ、早くいきましょう! 早く」
「あっ、はい」
そうして歩くこと10分程度。
その間も後藤さんのグラサンはピカピカ光っていたが、喜多は一切触れなかった。
──だが、喜多の目にどうしても触れざるをえないものが見えてきた。
『歓迎! 喜多郁代様
癒やしのひと時をあなたに……』
一般的民家にでかでかと飾られる横断幕!
しかも、よりによって自分のフルネームが刻まれたやつ!
喜多郁代は自分の名前が好きではない。
昭和の漫才師みたいな名前*10だし、それのせいで男子によくからかわれた*11し、なにより周りの人の名前がどれもこれもカワイイ感じなのもあって、どうしても好きになれない。
そんなものが住宅街に堂々と飾られているのだからもうどうしていいやら。
名前の感じも相まって、一気に温泉旅館みたいに見えてきた。
「後藤さん」
「は、はい……、気に入ってもらえましたか? ふへへ……」
「アレ、外してくれる?」
「え、え~っと……」
「外して」
「はっ、はい! 只今!」
喜多は終始笑顔であった。
しかし、その裏にある圧力をぼっちは正確に理解した。
何に気を悪くしたのかは分からないが、ともかく不味いことだけは完全に理解した。
一節に拠れば、『笑うという行為は本来攻撃的なものであり、獣が牙をむく行為が原点である』*12らしいが、それをぼっちは痛感した。
そうして、ぼっちが大慌てで取り外し作業に入っているのを他所に、喜多ちゃんは後藤家に足を踏み入れていた。母親に招き入れられたためである。
準備していたおしゃれなお土産を手渡し、1階のリビングにてぼっちを待つ。
今日が平日のためか、父親は不在であったが、母親と妹は自宅に居た。あと犬。
「はじめまして、後藤ひとりの妹の後藤ふたりです。犬はジミヘン」ワウーン
「はじめまして! 私のことは喜多ちゃんって呼んでね!」
「は~い、ねえ喜多ちゃん、きいてもいい?」
「なーに?」
「喜多ちゃんってお友達レンタルってやつなの? お父さんが言ってたけど」
「違うわよ! っていうか、後藤さんって家でもそんな感じなのね……」
「おねえちゃんはいつでもおねえちゃんだよ! 良くも悪くも……」
「ああ、そんなに……」
喜多は居た堪れない気持ちになった。
この一瞬で先程の怒りなど遥か彼方であった。
「でも、明日から暫くは此処に通うことになると思うから、お父さんもすぐに理解ってくれると思うわ!」
「えっ、ホント! でもなんで?」
「後藤さんに歌とギターの特訓をしてもらうの。8月のライブまで猛特訓よ!」
「へ~、お姉ちゃん、お歌とギターはものすごく上手なの。喜多ちゃんも一緒にライブで歌うの?」
「いえ、私だけよ。後藤さんはギターだけよ」
「あ~、お姉ちゃんに人前で歌うのは早かったか~」
(妹ちゃんにまでこの認識なのね……)
喜多ちゃんはますます居た堪れなくなった。
私は後藤さんに優しくしよう……、そう強く誓った夏の朝であった。
もっとも、これから喜多ちゃんはぼっちによって優しくない日々を送ることになるのだが。
「お、おまたせしました。後は上で準備しましょう……」
どうやらぼっちは無事横断幕を片付け終わったようだ。
「ねーねー、ふたりもいっしょに行っていい?」
「だ、駄目だよ! これからひたすらギター練習なんだから、喜多さんもふたりにかまえないって」
「えー、じゃあ聞いてるだけでいいから~」
「私は別にいいわよ! ね、後藤さん!」
「あっ、ハイ、喜多さんがそうおっしゃるなら……」
なにやら心の距離を感じる喜多。
どうやら先程の威圧の印象が抜けていない様子だ。
今日から最低3週間近くはいっしょに練習する以上、この距離感はよろしくない。
なんとかして先程の印象を払拭せねばならぬ、と喜多は決意した。
──が、その決意は脆く崩れ去る事となる。
「あっ、ここが私の部屋です」
「はーい、失礼しま──ヒッ」
そこにあったのは無数の写真、写真、写真、写真写真写真写真写真写真写真写真写真写真写真写真写真写真写真写真写真写真写真写真。
壁と天井に一面と張り巡らされた無数のアー写であった。
「あ、あの……、後藤ひとりさん、これって……」
「あー! お姉ちゃん、まだ片付けてなかったの! お母さんが『目がチカチカするから、剥がしなさい』って言ってたのに」
「あ、明日やるから……」
「それ、昨日も言ってた」「うぐぅ……」
どうやら家族の方々はこれをちゃんと異常と認識してくれていたようだ。
もっとも、もしそうなら昨日の内に対処しておいてほしかったというのが喜多の偽らざる本音である。
「後藤ひとりさん」
「はっ、ハイ! ……というか、喜多さん? 先程からどうしてフルネームで「片付けましょう、今すぐ」ハイッ!」
そうして喜多ちゃんも協力の元、部屋中の写真は撤去された。
そして、話し合いの結果、写真は一枚だけ大きいのを印刷して額に飾ることで決着した。
そうこうしている内に、もうお昼頃である。
ギターに触れることもないまま昼食の時間になってしまった。
二人の間に気まずい空気が流れる。
ぼっちは先程からの謎の距離感と時折発せられた威圧感から、喜多は横断幕による地雷爆破と写真部屋というホラー攻撃で精神的に参っていたがためである。
そこに後藤母のエントリーだ! どうやら作業中に昼食のための買い出しに行っていたようだ。
「ただいま~。ひとり~、お昼ごはんにピザ買ってきたわよ~、ってあら?」
どうやら2人の間に流れる微妙な空気を敏感に感じ取ったようだ。
家に来た段階でも僅かにあった溝がより深くなっている。
このままではひとりの3人目の友達*13が!
後藤母は早急に対処に移る。
「喜多さんはひとりとバンド組んでくれてるのよね?」
「はい! 私がギターボーカルさせていただいてます! 決してフレンドレンタルとかじゃありません!」
「そ、そう……。この子、自分の世界に入って迷惑とかかけてない? 例えば、今日なんか、大分はしゃいじゃってたでしょ?」
少し強引にだが探りを入れる。
こういった問題は早いほうがかすり傷で済む。
あらゆる人間関係で無傷での解決は幻想にすぎない。早急な対応とそれで作る時間こそが特効薬足り得ることを40近い母はよくよく理解していた。
「いえ、全然迷惑だなんて。むしろ、至らない点を助けてもらうことも多くって……」
(ひとりが誰かを助ける側に回っている!?)
もちろんここで言う助けはギターボーカルのみに限り、むしろそれ以外では介護されまくりなわけだが、後藤母からすれば例えどのような形だろうと人を支えられるようになっている、という点に置いて驚きを隠せなかった。
そして、2人の空気は自分が思うよりも深刻なものでは無さそうな事も把握した。
であれば、自分のすべきことは早急にひとりを回復させることだ。
つまり、好物を食わせれば良いのだ。
そこらへん、ひとりは意外と単純な生態をしている。
「喜多さんありがとうね、続きはお昼食べながらお話しましょう。
ほら、飲み物も有るわよ。ひとりはコーラでいいとして、喜多さんは何が良い? 麦茶とかウーロン茶とか、もちろんコーラも有るけど」
「それじゃあ、ウーロン茶でお願いします」
そうして、昼食を終える頃には気まずい空気もすっかり晴れていた。
想定通り、重篤な問題ではなかったことにホッとする後藤母。
「そ、それじゃあ、早速ギターの練習をしましょう! あっ、その前に手はしっかり洗ってくださいね。弦は汚れに弱いですから」
そう言って二人は洗面台を経由して、部屋に戻っていった。
それからギターの音は鳴り止むことはなく、ようやくヘトヘトになった喜多が降りてきた頃にはもうすっかり
そして、ほぼ潰れてる喜多をぼっちが支えながら駅まで送るという世にも珍しい光景を目の当たりにしながら、その日の後藤家訪問は終了したのであった。
もっとも、翌日もその次も、そのまた次も喜多は現れ、ギターだけでなく歌も合わせて夕暮れ時まで響かせ、時には泊まり込むほどに後藤家に入り浸ることになるのはまた別のお話である。
◇ ◆
「──っていう感じでしたね」
「部屋一面の写真って、もう絵面がホラーだよね」
「その時の部屋の写真とかある? 正直すごく見たい」
「くっ、ごめんなさい先輩……。早急に片付けたかったので撮れてません……!!」
「いや、しょうが無いよ。聞いてるだけでも怖いもん。とはいえ、ぼっちちゃんがそこまで入れ込んでくれてるとは……、いい意味で意外だったかも」
「ふっ……、これも私の人徳」
「何いってんだか……、って言いたいところだけど、一番人間的にぼっちちゃんと波長が合ってて、理解度が高いのってリョウなんだよね」
「わ、私もリョウ先輩への思いなら負けてません!」
「いや、そういうことじゃないから。それより、呼び鈴押しちゃうよ!」
ピンポーンとなる呼び鈴。
「ぼっちちゃん来たよー」
「こんにちはー」
「私は麦茶で」
「要求が早い!」
「あっ、いい、い、今開けまーす!」
ドアのすぐ向こうから聞こえる声。
足音も聞こえなかった辺り、どうやら待ち伏せしていたらしい。
──すでに喜多は嫌な予感がしていた。
そうして開けられるドア。
その向こうにはなんか光ってるぼっち。
その姿は喜多の脳裏にある初日のぼっちと全く同じ姿であった。
いや、パーティークラッカーとパーティーハットが増えている。悪化している!?
そうして呆ける2人+1に向かってパンとクラッカーを鳴らすぼっち。
「イ、イエ──イ! ウェ、ウェウェ、ウェルカ──ム!」
展開についていけない虹夏、初日にしっかりと釘を刺せばよかったと後悔する喜多、笑いをこらえる山田。
そうしている3人に追撃とばかりにもう一発パンとクラッカーが鳴る。
ついに決壊する山田。
爆笑というほどではないが、溢れる笑いが抑えられていないのがよく分かる。
「さすがぼっち、レベルの高い合格点を超えるぼっちをオールウェイズ出してくれる」*15
この感触にもてなしの成功を確信したぼっち。
実際は山田以外には滑ってるし、なんなら喜多は凹んでさえいるのだが、そちらよりは褒め言葉のほうが優先されたようだ。
「後藤さん、それもう外しちゃいましょうか」
「え、えっ……、早くないですか? もう少し……「外しましょう」アッ、ハイ」
そうして、パーティーセットを外すぼっち。
一方、喜多は慣れた手付きでホウキとチリトリを持って来て、クラッカーの残骸を片付けていた。
この2週間で玄関の物の配置まですっかり把握してしまったようである。
(ま、まあ、この調子なら、今日はちゃんと息抜きになりそうかな?)
虹夏は取り敢えず前向きに考えた。
今日は喜多ちゃんのリフレッシュデー。それが達成されるならそれに越したことはない。
喜多ちゃん以外の3人は前向きな気持ちで玄関をくぐった。
一方の喜多ちゃんはぼっちのセンスを何とかすることを強く誓うのであった。
今回も高評価を頂いた、以下の方々に心より感謝を。
敬称略です。
☆9 ラキどん お前は誰だ! Asai Asai
今回で得票者数が100人を超えていました。評価を入れていただいた皆々様には心より感謝を。
ついでに、お気に入りと感想が1000と50をそれぞれ超えそうなので、そこらへんも入れてくれると完結の可能性が高まります。
今回はTシャツ回になる予定でしたが、その手前で停まってしまいましたね。
区切りどころが半端ですが、ここで切らないと長すぎるので……
次回こそはシャツデザイン回を〆る予定です。