【完結済】MASKED GUITER HERO ぼっちちゃん 作:リチウム
みんなも体調には気をつけてね!
自分はもうダメです。
多分ライブ行けてなかったら死んでるんじゃないかな。
前回は初ライブ大成功!希望の未来へレディー・ゴーッ!と言う感じでした。
今日は打ち上げ回です。
今回も、お気に入り、高評価、感想、ここすき等お待ちしております。
ライブは大成功を収めた。
観客の人数そのものは結局10数人程度しか居なかったが、会場が一体となって盛り上がる様はぼっちがいつぞやの路上ライブで感じた幸せを共有する空間そのものであった。
後続のバンドの人にも温まった空気をパスしたことを感謝されたぐらいである。赤の他人に感謝されるなど、後藤ひとりの人生において果たして何度あったであろうか?
そして、日も傾いてしばらくといった現在、人生初の打ち上げなるものに参加する事になったわけである。
場所もSTARRYから徒歩2分程度*1といった所で帰り道の心配はなさそうだ。
全員に飲み物が行き渡り、誰ともなく乾杯の音頭が取られる。
打ち上げの面子は結束バンド4人と店長、PAさん、酔いどれベーシストの計7人だ。
「ライブよく頑張った。今日は私の奢りだから飲め」
「お姉ちゃんありがと~。あたし達飲めないけど」
「先輩好き~」
「お前は自腹だよ! くっつくな!」「エヘヘ、好きですぅ~」
「ていうか、この方誰ですか?」
ここで喜多ちゃんがようやく突っついた。
そう、店長とぼっちは面識があるようだが、他の面子はコレと初対面である。
──約一名がなんか目を輝かせているが。
「誰よりもベースを愛する天才ベーシストぉ~、廣井きくりで~す。
ベースは昨日飲み屋に忘れましたぁ~。どこの飲み屋かもわかんな~い。えへへへ」
「一瞬で矛盾したんですけど?」
喜多ちゃんの脳裏に宇宙が弾けた。
「私、よくライブ行ってました!」
「え~、本当~! 君見る目あるね~!」
「観客に酒吹きかけたり、泥酔しながらのライブ……、最高です!」
「えっと……、それライブの話ですよね?」
喜多ちゃんの意識が宇宙から半分ぐらい帰ってきた。
「顔面踏んでもらったのも、良い思い出です!」
「???」
喜多ちゃんの意識が銀河の彼方に消えた。
「私ってまだロックのこと、ぜ~んぜん理解してないみたいです……」
「多分理解しなくても大丈夫かも?」
少なくとも虹夏の認識する限りではSTARRYではあそこまでヤバいのは見たことがない。
もっとも、アレが姉の後輩である以上、ヤバいのが居ないのではなく、来る日はバイト外されているのではと言う可能性が出てきたわけだが。
そこでふと気づく。
そういえば、アレは姉の後輩ではあったが、そもそもの縁はぼっちちゃんのものだったのだ。
「ねぇ、ぼっちちゃん。あの人と会った時って……、ぼっちちゃん!?」
そこには燃え尽きて真っ白になったぼっちの姿が!!
どうやら、今日のライブで色々と限界を迎えたらしい。しかも、薄っすらと灰になっている。物理的に。
「ぼっちちゃん! 灰が飛んでるから! お店に迷惑かかっちゃうって」「え~、ひとりちゃん、『ぼっちちゃん』って呼ばれてるんだぁ~、ヤバいねぇ~」
「ハッ!」
その言葉にぼっちの灰の脳細胞が活性化し、瞬時に原型を取り戻す。
迷惑という単語に過剰に反応する。陰キャの悲しき習性である。
「ぼっちちゃん、あの人と始めて合った時ってどんな感じだったの?
結構打ち解けてる感じしたけど」
少なくとも虹夏の知るぼっちなら、ただチケットを買ってもらった関係の人をお姉さんとは呼ばないだろうという確信があった。
であれば、もうワンクッションなにかがあるとみるのが自然だ。
「あっ、チケット売るの手伝ってもらいました……。
そもそも、路上ライブやってチケット売るっていうのもお姉さんのアイデアで……、何なら機材も用意してもらって……、セッションまでしてもらいましたし」
「何っ!」
セッションしたという部分に敏感に反応する山田。
「も、もしかしてぼっちの路上ライブって……」
「そ~だよ~、私がベースで~、ぼっちちゃんがギタボやったんだ~。
いきなりボーカルぶっ込んで来たからびっくりしちゃった」
「ぐぬぬ……、そんなのもはや反則……、むしろ私が聴きたかった」
「え~、聴きたい? しょうが無いな~、じゃあベース貸して?」
「ハイっ!」
「「止めんか!!」」「「グエーッ!」」
姉妹がピッタリのタイミングでベーシスト共をしばき倒す。
「他の客もいるんだぞ!」
「時と場合を考えて!」
「せ、先輩、外れる……、肩だけは、肩だけはヤメテ……」
「コフッ……、虹夏……、呼吸が……、お、落ちる……」
店長はオーソドックスなハンマーロック*2でテーブルに抑え込んでおり、虹夏の方はこれまたオーソドックスな裸絞*3である。
とっさにこんな物騒な技が出る辺りが姉妹とベーシストの関係を物語ってる気がしないでもない。
「伊地知先輩、そのへんで……」
「飲み物持ち上げるの疲れるので、もう離してあげたらどうですか?」
レフェリーたちからストップが入ったので、渋々離す二人。
ここらへんの反応は中身もちゃんと姉妹だという事を感じさせる。
「酷い目に合った……」
「先輩おーぼーですよ」
「ほれ、お前ら料理頼め」
「ぼっちちゃん何する~? あたしは~、唐揚げ食べたいかな~」
「あ、い、いいですね……」
どうやら先程の暴挙は全会一致(ベース除く)でなかったことにするようだ。
技のチョイスは酷かったが、アレぐらいの勢いで止めないともっと酷くなるだろうなと思われる程度には共通認識ができてしまっているらしい。
ぶーたれているベーシスト共を他所にメニューがどんどん回されていく。
「あ、あの……、決まったので、メニューどうぞ」
そうして喜多ちゃんにメニューが渡った。
「ありがとう! え~っと……
じゃあ私、アボカドとクリームチーズのピンチョス*4」「ウェ!?」
「あと、スパニッシュオムレツ*5のオランデーズソース*6添えください」
「なんて?」
思わず聞き返す店長。
音楽はともかく、それ以外の流行りに疎い身としては横文字の料理なんてファミレスのメニューが上限いっぱいだ。
「このオムレツ、オランデーズソースのやつです」
「オランダ?*7」「良いね良いね~、どんどんたのも~」
(喜多さん……、また意味不明なおしゃれそうなことを言っている……
喜多さんって、スタパ*8とか普通に入れちゃうんだろうな……、難しい注文とかもサラッとしちゃって……
『トールソイ抹茶クリームフラペチーノライトシロップウィズチョコレートチップエクストラパウダー*9で!』キターン)
言わずもがな、ぼっちにスタパ経験など無い。
というか、ファストフードのチェーン店でも抵抗を感じる人種に行ける店ではあるまい。
「ぼっちちゃんは? 何頼む?」「ハッ!」
(きょ、今日のわたしは違うんだ! わたしも何かおしゃれなチョイスを!)
何やら今日の成功体験がぼっちに良くない自信を与えてしまったようだ。そして、そんな時のぼっちの次の行動とオチはだいたい決まったようなものだ。
「じゃあ、マチュ・ピチュ*10遺跡のミシシッピ川*11グランドキャニオン*12サンディエゴ*13盛り合わせで……」
「ふんふん、マチュピチュマチュピチュ……、ってあぁ? どこだ?」
「あ、間違えました……。フライドポテトです……」「どんな読み間違いだよ……」
案の定である。
せめてわからんなりにメニューを見て言えばいいのにオシャレ意識ばかり先行した結果がコレだ。
大人勢が揃って苦笑いしてるあたり、そこらへんは見透かされているのだろう。
「私は酒盗*14」「君いくつ~?」
一方の山田は山田だった。
マイペース突き通して逆にオシャレなタイプである。
ぼっちも
◆ ◇
そうしている間にも打ち上げは進む。
各々が頼んだ料理をつまみつつ、大人組は酒を飲み進めている。
会話のトーンも明るい感じで弾んでおり、改めて今日のライブの成功を思い起こさせる。
ぼっちは会話には入ってはいないが、その場の一員にはなっていた。
(始めて来たけど、居酒屋って少し楽しいかも……。大人になって、お酒飲めるようになったらもっと楽しいのかな?)
フライドポテトをつまみながらみんなを見る表情は、いつもの奇行からは考えられないほど優しい笑顔だ。
「ねぇ、ぼっちちゃ~ん」「はっ、ハイ!?」
急に話しかけられたせいでキョドるぼっち。
ついでに言えばきくりにいきなりあだ名で呼ばれたのもそれを後押ししている。
「ぼっちちゃん、MCやってたのってやっぱアドリブ~?
喜多ちゃんからマイク奪ったとこカッコよかったよ~」
「えっ、あっ、調子に乗ってスミマセンでした……」
「えっ、私、褒めたよね……?」
もちろん客観的に見ても褒めた方ではあるのだが、いかんせんぼっちの中ではやっちゃった感が否めないために謝罪が先行した形だ。
「謝ることなんて無いよ! あの時のぼっちちゃんには、みんなすごい助けられたんだから!」
「そうよ! 今日の成功は後藤さんのおかげと言っても過言ではないわ!」
「そ、そうですかね……、デヘヘヘ……」
「ぼっち、いっそ次回以降もMCやってみる「あっ、それだけは勘弁して下さい」」
実際、ぼっちの人生において、会話での成功例は今日一つ。それで調子に乗れるほど自分に自信は持てない。
──直前の謎注文の事は忘れよう。
「そう言えば、セットリストも急に変わりましたよね?」
「あ~、2曲目と3曲目本来逆だったな」
「そ、その節は大変ご迷惑を……」
「いや、私達も別に責めてるわけじゃなくてだな……」
「あーいったアドリブは珍しくないですから、こっちも慣れっこですよ。アドリブに合わせてライブを盛り上げてこそのPAですから」
「そうだよ~、アドリブはライブの華! 私もよくノリでセトリ変えてるし、それで結構盛り上がるからさ~」
「癪だがコレの言うとおりだ。ライブハウス側としてはバンドマンはライブを盛り上げるのが第一、それに必要なことならできる限り手を貸すからな」
「私も一升瓶一気飲みとかライブでやってるし、今日なんか全然可愛いよ~」
「迷惑にならない範囲で、だからな。くれぐれもコイツみたいな真似はするなよ」
「あっ、はい」
今日の飲み会でアルコールへの忌避感はだいぶ薄れたが、それでもこのレベルでやろうとは流石に思わない。
というか、酔った自分が信用できない。別に酔ったからコミュ力上がるわけでもないのに気だけ大きくなったらどんな醜態を晒すことか。
「まあ、何よりもさ~、今日のライブは楽しんでたのが良かったと思うよ~。
私なんて初ライブの時はま~、ひどかった。というかあんまり覚えてなくて、後で動画見返したんだけど~、ぐでんぐでんだったね~」
「えっ、最初からそんなだったんですか!?」
「そんなだね~、最初は緊張ごまかすために飲んでたんだけど、なんか合っちゃったんだよね~、ハハハハ!!」
よくよく考えてみれば、最初に合ったときも『将来の不安が忘れられるから』と言う理由で飲んでた人間である。
ならばライブの緊張を誤魔化すために飲むのもそうおかしな話ではない。
「まあ、そんな私が言うのも何だけどさ~。バンドは気楽に楽しく演るもんだよ!
次もその次も、そのまた次も、今日よりも~っと楽しい時間がいっぱいできると思うからさ」
「確かに成功だけ目指してるようなストイックなバンドほど、よく途中で潰れてたりしますよね」
「そうそう、バンドを続けるコツは才能よりもバンドを楽しむことだからな」
「ていうか、先輩はどうして急にバンド辞めちゃったんですか? あんなに楽しそうだったのに」
「え? て、店長さんバンドしてたんですか?」
「そ~だよぉ~、すごい人気だったんだから」
「じゃ、じゃあ何で……」
「──飽きたんだよ、バンド」
「え~? ならライブハウスの店長してるの、矛盾してるじゃん」
(そんな話虹夏ちゃん一言も……、あれ? 虹夏ちゃん、さっきまで居たのに……)「うるせーな、黙って飲め」「えっ、いーの? あざーす」
そう、ついさっきまで隣りに居た虹夏がいなくなっている。
なのでその隣に居た喜多ちゃん……はいつの間にかPAさんの隣りにいた。
結局端っこでマイペースに食べていた山田に話しかける。
「あの、リョウさん……、虹夏ちゃんは……」
「さっき外に出ていった、多分星でも見てるんじゃ「星!?」「うわぁ!?」」
向こう側に居た喜多ちゃんがいきなりこちらに反応してきた。
しかもテーブルに乗り出して至近距離まで顔を突っ込む形だ。山田も少し引いてる。
「ほ、星がどうしました?」
「後藤さん、今日はね、ライブだけじゃないのよ!」
「えっ、まだ何かあるんですか?」
少なくともぼっちには打ち上げ以外に使う体力は残っていない。
「流星群よ! ペルセウス座流星群*16! ホントは昨日が良かったんだけど、今日まで台風でずっと見えなかったじゃない? だから、今日こそは流れ星を見るのよ!」
「あっ、やっぱり、結束バンドの将来を願って……、ですかね……」
「いえ、イソスタに上げるのよ」
「イソスタ……」
「夏休みはあんまりイソスタに写真上げられなかったから」
「えっ、でも、毎日ギターとかの写真取って上げてましたよね……」
「アレはね、単なる生存報告よ」「せ、生存報告……」
「イソスタはね、ただ写真を上げれば良いわけじゃないし、流行りものを上げるだけでも駄目だし、上げるもの全部ステキのお裾分けでなきゃいけないの*17」「な、なるほど……」「可哀想に……、イソスタ欠乏症にかかって……」グスン
妙な圧を発する喜多ちゃんに対し、返事をただ返すことしかできないぼっち。
それは生存報告の片棒を担いだ自覚があるためか、喜多ちゃんの重たい眼光のせいか。
「と、言うわけで私達も流れ星を見に行きましょう!」
「あっ、ハイ」
「リョウ先輩も!」
「しょうがない、今日だけは付き合ってあげよう」
いつもなら『Oh!Tubeでいいじゃん』とか言いそうな山田まで席を立つあたり、今日はえらく機嫌がいいらしい。
まあ、料理を粗方食べたのも関係しているのかもしれないが。
「じゃあ、店長さん。私達、ちょっと星を見てきますね!」
「おう、飽きたら戻ってこいよ」
「は~い!」「あっ、はい」「星なんて、何年見てないんだろう……、すぐそこにあるのに、キラキラが遠い……」「なんでいきなりそんなテンションになるんだよお前は、飲み過ぎじゃないのか?」
◇ ◆
「伊地知センパ~イ」
「あっ、喜多ちゃん! どうしたの?」
「私達も流星群を見ようと思って」
「えっ、今日って流星群だったの!? 道理で何回も願い事できたと思ったら……」
「あれっ、流星群を見てたんじゃないんですか?」
「いや~、ちょっと今日のライブに浸っててさ」
そう語る虹夏は少し遠い目をしていた。
「なんか、今日のライブで一歩だけど、ちゃんと夢に進めたのが嬉しくって」
「夢、ですか?」
(そう言えば、オーディション前日に聞いたな。バンドに懸けた夢の話……)
その時は詳細も聞かずに叶えると言い切ったぼっちであったが、よくよく考えると聞きもせずに言い切ったのはどうだったんだろうか。今更ながら不安が首をもたげる。
「やっぱり、店長さんに関係ある話?」
「そうだね……、みんなには話したっけ? お姉ちゃんが昔バンドやってたこと」
「あっ、さっきお姉さんと店長さんが話してました」
「店長さんは『飽きたから』って言ってましたけど、多分違いますよね?」
「あ~、そんなこと言ってたんだ、お姉ちゃんらしいや。
──あたしの夢はね、お姉ちゃんの分まで人気のあるバンドになること。それで、STARRYをもっとも~っと有名にすることなんだ!」
『お姉ちゃんの分まで』、その言い方から
「あたし、小さい頃に母親が亡くなって……、父親はいつも家にいないし、お姉ちゃんだけが家族だったんだ。
お姉ちゃんがバンド始めてからは、寂しがるあたしをライブハウスに連れて行ってくれるようになったの。
あの頃のあたしには、全部がキラキラして見えて、すごく幸せな空間で……
そんなあたしを見てたから、お姉ちゃんはバンドを辞めて、ライブハウスを始めて……
STARRYはね、お姉ちゃんがあたしのために作ってくれた場所なんだよ。お姉ちゃんは絶対そんなこと言わないけどね」
それは、おそらく幼馴染の山田でも未だ踏み込んでこなかった虹夏の原風景。そして、虹夏が夢を抱く事に至った全て。
「でも、バンド始めてみたら、あたしの夢って無謀なんじゃないかって思う時もあって……
今日だってだいぶ空回りしちゃったし……
でも、今日のライブで確信したんだ! 『結束バンド』は最高のバンドになれるって! いつか見たキラキラをどこまでも広げられる存在になるって!」
三人はそれに黙って聞き入っていた。それは、みんなも程度は違えど想うところは同じであったからであり、故にこそ次の行動も決まっていた。
「それじゃあ、みんなも結束バンドの夢を語りましょう! ほら、円陣組んで!」
「ええっ!?」「うわっ」
こういうときに率先して切り込むのが喜多郁代という女である。
4人を無理やり引っ張って手を重ねさせる。
「私の夢は、結束バンドでずっといっしょに音楽を続けること! 次はリョウ先輩!」
「はぁ~……、私は誰にも妥協しない、私達だけの音楽を貫くこと。次、ぼっち」
「はっ、はい! わ、わたしは…………」
わたしの夢、それは普通の人間になること。
ギターしか取り柄のないわたしが、唯一みんなと足並みを揃えられる物。
でも、結束バンドのリードギターとしての夢は……
「──ギタリストとして、みんなの大切な結束バンドを、最高のバンドにしたいです!」
「うん! そして、あたしは結束バンドを大人気バンドにして、STARRYをもっと盛り上げること!」
虹夏が改めて夢を宣言し、みんなに目線を配る。
そして、呼吸を合わせ……
「せーのっ!結束バンド~」
「「おーっ!」」「お、「おーっ」」
新たに思いを一つにした結束バンド。なんか噛み合いが悪いのはご愛嬌だ。
彼女たちの次なるライブに向けて、また新たな日々が始まる!
「あっ! 流れ星!」
「おおっ! なんかいっぱいだ!」
「5000兆円欲しい*18! 5000兆円欲しい! 5000兆円欲しい!」
「いや、そこはバンドのお願いしろよ!」
「バンドの夢は自力で叶えるもの、でしょ?」
「くっ、なんか負けた感じがする……」
「先輩、カッコいい!」
極大から外れた日時には珍しい大量の流れ星。
それをぼっちは願い事も忘れてただじっと見つめていた。
(もしも、今日ライブがなかったら、きっとこの星に気付くことも無かったんだろうな……
……楽しいことがいっぱい、か。うん、そうだな、駄目なことも、嬉しいことも、今日は全部楽しかった……)
それは、後藤ひとりにとっての大きな変革であった。
失敗を引きずり、楽しいことに目を向けられない人間性からの脱却。
挫ける事があっても、後に引く失敗があっても、それでも小さくとも前に進めるポジティブさ。それがどんなにわずかでも、マイナスからプラスに転じるという変化は後藤ひとり史上最大の変化であった。
ふと、スマホを取り出し、メモアプリに文字を打ち込んでいく。
今感じた一瞬の熱情、それが詩として明確に現れていく。
(今日という日を、この思いを、ずっとずっと、忘れないでいたいな……)
そして、メモの先頭に題を付ける。
その曲の名前は……
今回も高評価を頂いた、以下の方々に心より感謝を。
敬称略です。
☆10 イミテリス紫音
☆9 カール・クラフト Fマッキー オキサリス ハイネケン ベー太 Layer あかさなは
今回は実質繋ぎ回でした。その割に難産でしたが。
次回は江ノ島回。
体調の許す限り、次の日曜を目標に頑張りたいです。