【完結済】MASKED GUITER HERO ぼっちちゃん 作:リチウム
喜多ちゃんがギターボーカルになった!
以上!
やっぱり年末はどこも忙しいですね。
次話以降はもう少しペースが上がるはず……。
そして、前話で集った甲斐あって評価バーが埋まりました。
ドモ、アリガト。Mr.ドクシャサン。
今回はギター練習と第3回バンドミーティング。
アー写には届かなかったよ……
今回も、高評価、感想、ここすき等お待ちしております。
暗い空模様、春の雨特有の生暖かい空気が包む5月も半ば。
ぼっちと喜多はスタジオでギターの練習をしていた。
「駄目ね……」
「あ、でも一応、最後まで弾けて……」
「そこなんだけどね!」「は、はい……」
「考えてみたら私、ボーカルもやるわけじゃない?
でも今は全神経ギターに行っちゃって、歌どころじゃなくて……」「な、なるほど……」
「もういっそ、ボーカルだけの方がバンドのためなんじゃないかと思ったんだけど……。
でも、間奏中とかやることなくて、私オロオロしちゃいそうだし……」
「──だから……」「あっ……」
少し、喜多が俯いて言葉に詰まる。
も、も、も、もしかして、わたしの教え方が下手だった!?
やっぱり、わたしごときでかいナメクジが先生なんて烏滸がましかったんだ……
何か体がぬめぬめして角が生え始めたぼっち。
このまま無脊椎動物に退化するかと思われたぼっちにトドメの一言が突き刺さる。
「もっと頑張らないとね!」キターン
「うわっ! 目、が……!」
爽やか向上心パワー眩しすぎる!
網膜から突き抜ける太陽光に脳の裏まで灼かれるような錯覚を起こすぼっち。
アレから結構な時間を二人のレッスンに費やしているのだが、毎度折れそうになると突然発光するものだから、ぼっちからしたらたまったものではない。*1
しかも、心なしか以前よりも光量が増している気がするのだ。
いや、光量と言うか熱量がニュアンスとしては正確か。
なにやら陽キャの明るさはそのままに少年漫画のような熱血的要素が加わり、太陽の如き明るさから太陽そのもののような熱さまで感じるようになったのだ。
そのせいでぼっちの肌は練習のたびに赤みがかるようになってしまった。ぼっちの肌は焼けない体質のようだ。*2
しかも、結構な密度で練習してるのに
指が切れても、腱が攣っても弾き続けようとするものだから、こちらがいいタイミングで止めてあげないといけないぐらいだ。
わたしも最初の頃は、よく弾き過ぎでお父さんに止められたっけ……
そう言って昔を懐かしむぼっち。
今では毎日6時間弾いても腱鞘炎や筋肉痛も起こさないし、ギターだこもあんまりできないし……*3
──はっ、いけない。
もうじき止めないと疲労と痛みで変な癖がつく。
ぼっちはもう一回頭から弾こうとしていた喜多を止めた。
「き、喜多さん……、ここらへんで通し練習は一旦……」
「そんなぁ……、も、もうちょっとだけ……、ね? 後藤さん?」
「ゔおっ!」
小首を傾げつつ上目遣いでおねだりする喜多ちゃん。
カワイイ*4が突き刺さる!
しかし、ここで折れてはならぬ。
ぼっちは他人のためなら意外と強く押せる人間なのだ。
「そ、それじゃあ、ギターボーカルの練習にしましょう……。
コードはAとGのパワーコード*5を1小節ずつ交互に弾きながら歌う感じで。
歌いながらギターで8分を正確に刻むのって、結構難しいですよ?」
「分かったわ! 後藤さん!」
なんとか、腕の負荷の少ない練習に切り替えることに成功したぼっち。
最初の頃はあたふたして練習を止めてしまうだけだったが、今では自然に誘導できるようになっていた。
仮にぼっちの両親がこの光景を見たら大号泣間違いなしである。
「あ、でもせっかくだから、後藤さんが歌ってるところが見たいかも!」「うえ゛っ」
「今まで、動画は何回か見せてもらったけど……、実際に後藤さんのギタボ、聞かせてもらった事ないもの!」
確かに、自分のとは言え、動画を見せるだけでは先生として説得力に欠けるかもしれない。
ただ、ギターヒーロー
「じゃ、じゃあ、準備するので少々お待ちを……」
そう言って、ギターケースの底から救急箱を取り出すぼっち。
すわ何事かと身構える喜多であったが、箱から取り出された不自然なほど大きい包帯を見て理解した。
なるほど、動画に見た目まで合わせてくれるのね。
結構本格的かも!
そうしてる内に顔に包帯を巻き終え、手鏡でそれを調整。
最後に、ジャージの上を脱ぎ捨ててギターヒーローの完成である。
「おお~」
動画でみたままのギターヒーローに少しテンションが上がる喜多ちゃん。
そして、ぼっちはギターを構えると、目を閉じて何度も深呼吸をし始める。
スー、ハー、と一呼吸ごとにその間隔が深くゆっくりになっていく。
そして、ゆっくりと一呼吸に10秒かけて終えた後、ぼっちは、否、ギターヒーローが目を開ける。
その瞬間、熱気がスタジオ中に走るのを喜多は確かに感じた。
そこには後藤ひとりはいなかった。
いや、目の前に確かにいる。
しかし、この人が同一人物だとは理性はともかく本能では信じ難かった。
仮に目の前でなく別室とかで準備されていたら間違いなくわからなかっただろう。
そして、動画では感じなかった生身の人間のみが持つ熱量。
その爆発が人型に押し込められたような風情はまさしく本物のロックンローラーのそれであった。
「それじゃあ、今日は喜多ちゃんのためだけに……、かっこいいとこ、魅せてやる。
ヒーロータイムだ!!」
そこからおよそ15分。
曲数にしてたった4曲だが、それは喜多の脳裏に焦げ跡のように焼き付いた。
しかし、そこには憧れではなく、ただただ決意の熱がほとばしるばかりであった。
◆ ◇
曲を弾き終えたギターヒーロー。
そこに拍手が
「スゴイよ、ぼっちちゃん! なんていうか、もう、ドッカーンって感じで」
「うん、やっぱり音楽は生身に限る。動画もいいけど、生はもっと良い」
「おひゃあああああ!!! い、い、いつからいらっしゃったんで!?」
ぼっちが慌てて部屋の隅に飛び退く。
さながら猫のような俊敏さである。
「それは今さっき、最後の曲の途中あたりからかな」
虹夏は平然と会話を続けるが、喜多は宇宙猫*6のような表情で固まっていた。
行動はいつものぼっちなのだが、見た目がギターヒーローのままでかつほんの数十秒前まであんなにかっこよかったのだから温度差でパニックを起こしても仕方がない。
グッピーなら死んでた。*7
一方、山田は喜多のコーチングのためとは言え、自主的にギターヒーローの格好をしていたことについて考えていた。
そもそも、ギターヒーローそのものが嫌なら動画を未だに上げたりしないだろうから除外するとして、じゃあラインはどこにあるのか。
推測だが、ギターヒーローを主として見られなければ良いのではないだろうか。
即ち、ギターヒーローの延長線上に後藤ひとりを置くのではなく、後藤ひとりの延長線上にギターヒーローがいる関係が望ましいのだろう。
まあ、ぼっちを知る人間としては、流石に
というか、キャラが違いすぎる。
あんなのを四六時中求められたら、自分ならそんな関係はバッサリと切って落とす。
……と考えている内に、喜多の方に目が向いた。
そういえば、郁代はぼっちのギターヒーローを生で聞くのは始めてだったはず。(二人の練習の時にすでに聞いてる可能性もあるが)
ここでなにか不味い反応を示していなければいいが……、と思ったが大丈夫そうだ。
あの感じは純粋にやる気に満ち溢れてる感じだ。
変な卑屈さや勝手な憧れが混ざったりしない眼差し。
どうやら、郁代はちゃんと結束バンドのギターボーカルになれそうだ。
と、ここで虹夏が慌てて声をかける。
「はっ、もう時間だ! スタジオは5分前が原則! *8
喜多ちゃん、ぼっちちゃん、ほら、片付けて片付けて。あたしも手伝うから」
「え、ああ、ちょっと待ってください……、
「ほら、リョウも手伝って。この後、ミーティングだからぱぱっとね」
「うっ、持病のレジネス病が……」
「
そう言いつつも、山田を捨て置いて手際よく片付ける虹夏。
流石にバンド仲間相手とは言え、お節介に本気で駆り出す気はないようだ。
それに、ドラムだけあって最もスタジオに慣れている*9自分がやったほうが早いという自覚もあるのかもしれない。
そうして、片付けが済み、4人はスタジオを出た。
目的地はいつものSTARRY。第3回、結束バンドミーティングの始まりだ。
◇ ◆
「それでは、第3回、結束バンドミーティングを始めます。拍手!」
元気よく拍手する喜多ちゃん。
小さく拍手するぼっち。
いつもの山田。
虹夏が手元のスケッチブックをめくり、今日のお題を発表する。
「さて! 本日のお題はこちら!
ズバリ! より一層バンドらしくなるには?」
「「お~(ざっくりしている!)」」
拍手する二人であったが、表情がボケーっとしている。今一つ内容が掴めないためだ。
一方、山田は気怠げに溜め息を一つつくだけである。低気圧の影響だろうか?
「せっかくメンバーも集まったんだし、まずは4人でより一層バンドらしくなっていきたいな、と」
「な、なるほど」
要するに、連帯感とか結束感を深めようと言うことだろうか。
連帯……、結束……、フタリグミツクッテー、うっ、頭が……。*10
「いや、練習あるのみなのは分かってるよ? だけどそればっかりだとね~。
いろいろ話したりするのも大事かな、って」
(もしかして……、虹夏ちゃん、最近練習頑張ってる喜多さんの息抜きに……)
「まずは形から入ってみるのもアリでしょ」
「アリですね! 流行ってるメイクとかも、真似してるうちに様になってくるというか」「そうそう!」
(どうしよう。全然ピンとこない……)
ぼっちの身だしなみは、
①:毎日風呂に入って体を洗う
②:寝癖を直す
③:洗濯された服を着る(ジャージ固定)
──以上である。
メイクなんて宇宙の神秘の向こう側だ。
「というわけで~、とりあえずバンドグッズ作って来た!」
(予想以上に形から入って来た!)
「それ、ただ結束バンド巻いてるだけじゃ……」
「え? かわいくない? いろんな色あるよ~」
そう言って広げられたのは4色の結束バンド。
ご丁寧に各々のパーソナルカラーと思しき色合いである。
そんな、結束バンドをじーっと見つめていた山田が一言。
「物販で500円で売ろう*11」(ぼったくり……)
「サイン付きは650円で」「安い! 買います!」
(それじゃバンド内でお金が循環するだけでは?)
どうも喜多は山田関連になると頭のネジが数本飛ぶようだ。
山田も山田で金銭に関する内容だと丼勘定が過ぎることが最近わかってきた。
「他にバンドらしくなるアイデアある人~」
「もしイソスタとかやるなら、私やります!」
「いいね! SNS大臣に任命します」
「その時が来たら毎日更新しますね!」
実際、現代社会において、あらゆる集団はSNSアカウントを持っておくのは基本である。
例えばSHARPやタニタのようにSNS上でキャラクターが確立したアカウントは企業について興味がなくとも目に留まる機会を増やしてくれるし、ナウル共和国*12観光局のように逆にSNSが本体と言っても過言ではないものもある。
イソスタで万以上のフォロワーを持つ喜多ちゃんならきっといい感じに運営してくれることだろう。
──ナウルのように関係ない話が本体にならなければ……。
「後は~、ファンクラブの設立?」(すごく気が早い)
「年会費は1万円」(そして高い!)*13
スキあらばぶっ込む山田。
もはや大喜利の空気である。*14
「ファンクラブの特典として、握手会と年に一度のメンバーとのたこ焼きパーティーを……。
材料はファン持ちで」「安い! 入ります!」「喜多ちゃんもメンバーだからね?」
「後藤さんは?」「え?」
ここで喜多のキラーパスが刺さる。
いや、本人的には会話に参加できていないぼっちへの気遣いのつもりなのだが、会話の準備のタイミングの合図が必要なコミュ障には酷な話だ。
「何かアイデアある?」
「えっ? え?(どうしよう……、何も考えてなかった!)
い、いや……(なんか目がキラキラしてる! 期待の目をされてる!)
えっと、え~っと……(何か言わなきゃ、何か……、何か……、はっ!)」
ここでぼっちに電流走る!
「あっ、あの、結束バンドのOh!Tubeチャンネルを作るのはどうでしょう。
わたし、動画編集の経験、豊富です!」
よし、楽しく話せたな。*15
直前の練習が頭の隅っこにあったおかげでなんとかパスを繋ぐ事ができた。
今のぼっちの脳内ではワールドカップのゴールシーンが如くガッツポーズと歓声が響き渡っている。
「おおっ! それ良いね! さすが30万人!」
ぼっちの脳内にトロフィー掲揚シーンが追加された。
「それじゃあ、リョウは?」
最後に虹夏が山田にパスを出す。
ここで、山田が真剣な表情で語りだす。
「バンドなら、オリジナルソングの作成。それ以外にない」
「あはは、そりゃそうだ……」
この世界線では、まだ作詞作曲担当が決まっていない。
「まあ、作曲は私がやるとして、作詞はどうする?」
「ああ、それなら、ぼっちちゃん、どう?」「うぇっ!?」
ななな、何故にそのような大役を!?
作詞は作曲と並ぶバンドの音楽性を決定づける重要ポジション……
ソレをわたしみたいなのの100%濃縮還元陰キャリリックなんて出した日には……
『ナニコレ、呪い?』
『はあ~、後藤さん。流石にこんな映えない歌詞じゃ歌えないわ』
『じゃ、結束バンドは音楽性の違いにより解散で。
新・結束バンドはもっと明るい歌詞書ける人間入れるから』
「ヤメテ……、ヤメテ……、ツイホウシナイデ……」
「もしも~し、ぼ~っちちゃーん?」
ぼっちの画素数がファミコンみたいにガビガビになってしまった。
「う~ん、この前『青春コンプレックス!!』とか言ってたから、ぼっちちゃんに書いてもらえば地雷踏まなくていいかな~と思ったんだけど……」
「じゃあ、試しに郁代書いてみる?」
喜多さんが書くのかあ……
確かに、ボーカル担当が書くほうが
「うーん、確かに書いてみたい気持ちはあるんですが、流石にギターでいっぱいいっぱいで……」
あれ、でもソレが実現したら……
『青春~、恋愛~、ルルラララ~。
友情! 努力! LOVE、結束!!』
不味い! そんなの隣で聞いてたらギターどころじゃない!
毎回灰にされて、ハンディ掃除機で掃除される*16ハメになる!
でも、わたしが書いたらバンドが空中分解するぅ……
どうしよう、どうすれば……
いや、まてよ?
そもそも、わたし一人で書くからダメなんじゃないか?
喜多さんと二人で書けば、陰と陽でいい感じに中和されないか?
でもでも、そもそも喜多さんと共同作業なんてわたしにできるか?
いや、やろう! そうしないと、
強烈な危機感がぼっちにフタリグミツクッテー*17を乗り越える勇気(?)を与えた!
「あっ、あの!」
「おおっ、なに? ぼっちちゃん」
「わ、わたしと喜多さんの二人で担当するのはどうでしょう!
なんか、こう、えっと、いい感じに陰と陽が混ざって色が出るんじゃないかというか。
その、えっと、はい……、出しゃばってすいません……」
次第に声が小さくなるぼっち。
やはり、一日にそう何回も自己主張するにはHPが足りていなかったようだ。
「なるほど! 喜多ちゃん、それならどう?」
「はい! 後藤さんと一緒なら、頑張れる気がします!」
どうやら、ギリギリのところで伝わってくれたようだ。
「頼むよリョウ。それと作詞ペアーもね!」
「はい、頑張ります!」「は、はい……」
「後藤さん、いっぱいカッコいいところ、見せてちょうだいね!」
「か、カッコいい……」
「ま、まぁ……、作詞なんて朝飯前……、ちょちょいのちょいですよ~」
「後藤さんってすぐ調子乗っちゃうのね」
これが数十秒前まで解散の危機に怯えてた姿だろうか?
ぼっちの危機感はいつも一過性だ。
「大ヒット間違いなしの、バンドらしい歌詞、書いちゃいますから~」
「らしい……」「ん?」
その一言が山田のなにかに引っかかったようだ。
しかし、その場では結局口にすることはなかった。
ぼっちの言っていた『陰と陽が混ざって色が出る』という一言に感じた魅力がまだ心の中に強く残っていたためだ。
その後、その場は解散となり、ぼっちは即日で非公開の結束バンドチャンネルを作成した。
ここに自分たちの曲が並ぶのか……
100万再生行っちゃうかな、いや、1000万……、いや1億……
捕らぬ狸の皮算用。
しかし、いつものことなので、家族には生暖かい目で見られるだけで終わった。
そのチャンネルが公開されることになるのは、もう少し先の話だ。
今回も高評価を頂いた、以下の方々に心より感謝を。
敬称略です。
☆9 柚男 第九の怒濤 キサラギ・メイノ K356 テーデーエア ヘクトール 転凛虚空 そーえもん
☆8 影之美津雄 Ice coffee
今回の話では、喜多ちゃんも作詞担当に巻き込まれました。
これで予定では、作中曲以外が部分的に出せるかも?
次回は今度こそアー写回!
原作世界線では山田株がピークを迎えた瞬間ですが、本時空でも株価を維持できるのか?
次回はもう少し早い間隔で出します。