1日1レズセ   作:仲島尚

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全然時間ないのにこんなもの書いてる自分がいる現実


犬神と冷子

「犬神、そろそろ帰るよ」という声に、

「もうちょっと居ようよ〜、冷子ちゃん」と言いながら私は彼女の肩に身を預ける。

「距離が近いわよ。まったく、犬みたいなんだから」などと言われながら私は追加の注文をする。今日の目論見に関する必要条件が足りていないからだ。

 

―今日こそは必ず冷子ちゃんに抱いてもらう。

そんな思いを胸に秘め、私は父親とLINEで口論をしている。今日は外に泊まってくると言っていたのに、突然予定が変わったとか言って家にいるからだ。ラブホテルに行くというのも考えたが、今の私たちの高校生という身分では厳しいだろう。そして何より、そんなの全然ロマンティックでない。初めてそういうことをするときは、とびっきりロマンティックで、二人きりの場所で心に残るようにするものだ。そのためには、私の父親は邪魔以外の何物でもない。どうにかどこかに行ってもらわなければならない。そして二人きりのお泊り会で、私たちは愛を確かめ合うのだ。

 

父親が折れた。今日は飲み歩いてくるらしい。明日は休みだからちょうどいいと言っていた。私たちは店を出た。太陽が傾きかけている。私たちを収容していたファミリーレストランも、今は一人として客を持たない。大きな道路に出て、私は冷子ちゃんに声をかける。

「冷子ちゃん、今日お泊り会しない?」

しかし、あらゆる面で冷静な彼女は言う。

「だめよ」

「なんで~?」

「だって……」

「だってもあさってもなし!」

「私たちは恋人同士で、しかもまだ未成年でしょう?何か間違いがあったらいけないのよ」

「……いいじゃん」

え?と冷子ちゃんが言う。私は耳元でささやく。

「私たち二人で、まちがっちゃおうよ」

冷静であったはずの彼女には、今はその割れたひとかけらすらも見当たらない。顔を真っ赤にして、ぱくぱくと口を開いたり閉じたりしている。そのすきまに指を入れてみると、もっと顔が赤くなった。爆発してしまうのではないかと思うほど焦って、これがもしアニメだったら彼女の頭からは蒸気が上がっていただろう。

「じゃ、決定ね!八時に私の家に集合で!」

引き留めようとする彼女を置いて、私は家に走り去っていった。

 

「お邪魔します……」

「どうぞどうぞ~!」

あれから三時間ほどが経って、私は彼女を家に迎えている。

「今日のご飯はねえ、冷子ちゃんの好きなエビフライなんだよ!」

……全く聞いていないようだ。彼女は緊張でかちこちになってしまっている。その緊張をほぐそうと、私は彼女の肩に触れる。

「ひゃっ!?」

「大丈夫?聞いてた?」

「ごめん、聞いてなかった……」

「もう、緊張しすぎだよ」

かわいいと思いながら、もう一度言う。

「今日はエビフライだよ!私が作ったんだ~」

「そ、そう。ありがとうね」

 

「それじゃあ、いただきます!」

「いただきます」

 

「あら、これおいしいわね。エビがぷりぷりで衣がサクッとしてて」

「自信作なんだ!」

 

「ごちそうさまでした」

「ごちそうさまでした……」

 

楽しい食卓はあっという間に終わってしまった。となれば次は……

「冷子ちゃん、先お風呂入って」

「いや、一番風呂は家主のあなたでしょ」

「いいからいいから」

彼女の入った後の湯につかりたいなんて変態的な理由では断じてないが、彼女を先に入らせることに成功した。今のうちに、私の部屋をいい感じのロマンティック空間に変えるのだ。

 

「お風呂あがったわよ」

そんな声が聞こえて我に返った。果たしてロマンティックな感じにはならなかった。私の部屋はもとから殺風景だったので、飾り立てればいいだろうと思っていたが、それすらも難しい。いい感じにならなかったのを片付けているところに、彼女の声が聞こえた。

「はーい」と、返事をした。

お風呂から出て数十分、私は彼女に声をかけた。

「じゃあ、そろそろ寝よっか」

 

「一緒に寝るなんて久しぶりだね」

「そうね……確か私たちがまだ一年生のころにやったきりだと思うわ」

「ああ、冷子ちゃんが『氷の花』なんて言われてた頃の!」

「その話はやめて……恥ずかしいわ」

「かわいいなあ……」

 

「じゃあ、おやす……」

「待って」

私は彼女に声をかける。

「……本当に、寝ちゃうの?私、そんなに魅力ないかな……」

彼女の鼓動が聞こえる。ばくばくと鳴るそれは、彼女が考えていることを私に伝える。けれど、彼女からのアクションはない。私はあきらめることにした。彼女がしたいと思っていなければ、そんな行為には何の意味もないのだから。そして、わたしがおやすみを言いかけたときに。

「待って!」

彼女が乞うた。

「まったくもう、素直じゃないんだから冷子ちゃんは」

 




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