プロ棋士の桐山くんは伊地知姉妹に拾われました   作:あまざらし

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第1章
0話 桐山零


 

『ゼロだってぇ──』

『──でも、ぴったりよねアナタに。だってそうでしょ』

 

『家も無い』

『家族も無い』

『友達も居無い』

 

『──ほらアナタの居場所なんて、この世のどこにも無いじゃない?』

 

『でも──』

 

 ◇ ◇ ◇

 

 高校一年の春休み。

 普段は生徒たちの談笑で賑やかな教室も、今日は先生とボクの二人。

 今の教室に音はなく、グラウンドから声出しする野球部員の声がよく聞こえてくる。

 

「桐山、もう演習は終わったか?」

「はい」

 

 採点の結果は問題なし。

 補習に一度出席することで、不足分の出席日数を補い、何とか担当教員から留年回避してもらった。

 この一年。先生から見れば、ボクの存在は仕事を増やすただの不良少年だったに違いない。

 

「お疲れ、桐山。別の高校でも頑張れよ」

「はい。先生、ありがとうございました」

 

(なんのために学校に通っているのだろう)

 

 思えば高校に進学することを決めたのは、ちょっとした意地だった。

 入学当初は環境が変われば何かが変わるかもと、少し期待したこともあった。

 しかし結局は普通の学生らしい生活に馴染めず、高校入学後の一年間はこれまでの中学三年間と大差なく。友達も出来できず、ひっそり学校に通う毎日だった。

 

 だからだろうか。

 一人暮らしを決め、引越しを決めた時には、家から近い別の高校へ転校することに躊躇いは全くなかった。

 

 そして今日。

 ボクは、下北沢に引っ越す。

 

 最初考えていた引越し先は中央区六月町だった。

 小さい頃、田舎にいたからだろうか。

 大きな川沿いの小さな町、六月町の景色が好きだった。

 それに将棋会館まで電車で一本で通うことが出来る。

 住むなら"六月町"、最初はそう思っていたんだ。

 

 ここに来るまでは。

 

『母さん昔ね、下北(ここ)に住んでいたのよ』

 

 今年の初め電車でぼんやり路線図を眺めていると、偶然目にした『下北沢駅』の文字。

 文字を見た瞬間、今までしまっていたおぼろげな記憶が蘇ってきた。

 あの日、家族4人で下北沢を散策した記憶が。

 

 ずいぶん昔のことだからもう記憶はほとんど残っていないと思ってた。

 

 けれど……

 坂を登ったあの時の景色が、まるで昨日のことのように鮮明に蘇ってしまったから。

 

 音楽を始めとしたサブカルチャーと目まぐるしい都市開発が混ざりあった街。

 駅から道なりに進んでコンビニのある交差点を右に曲がり、急坂を登った先にある6階建てのマンション。

 603号室、そこがボクの新しい居場所。

 

 

 桐山零(きりやまれい) 16歳

 

 職業『プロ棋士』

 来月からB級2組 六段

 そして『高校二年生』になる。




桐山くん原作よりも強い設定(きらら世界補正?)

原作:一年遅れて高校入学 今作:留年せず高校二年生へ進級
原作:C級1組に残留 今作:B級2組へ昇級

音楽も将棋も共に詳しくはないですが、あまり違和感ないよう頑張りたい
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