透き通るような霞龍   作:右側に居るタイプのゴア・マガラ

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凱旋─シャーレ─

 全く別々の家路につくはずだった、全く持って接点のない四人組は、シャーレの先生の手引きによって簡単な”入部祝い”を行われながらも、全員が酷く忙しい一日だったと考えていた。最も、各学園の確執という物は根深いもので、いくら同じ部活に所属する運びになったとはいえ、そう簡単に相容れないのが現状でもあった。

 だが、それを加味しても尚、全く何も行わないよりはマシだということで、このお人よしの先生は”自腹を切って”この場を用意したのだという。指揮も正確で、そしてここまで生徒のために色々考えを巡らせてくれるのであればと、戦っていた生徒たちは施しを受けることにし、簡素な食事を行っていた。

 無論、それにはデミペロロも含まれていたようだ。何を好むのかも、何が食べられないのかもわからないその存在の前に、先生は様々な食材を並べ続けている。

 が、どうやら雑食のようでなんでもかんでも並べたそばから、舌だけをぺろりと伸ばしてごっそりと食べてしまう。

 まず一安心、そしてその次に食費の捻出が頭をよぎり、まあ今気にすることでもないかと気前よくおススメの食事を並べていく先生。

 その光景を見ていたユウカは、今後自分がこの部活においてしっかりと財布を握らねばならない、と決意した。初期メンバー──なんと、今後の新入部員らには自身らと同じ古株としてこいつを紹介しなければならないのだ──の化け物の実力と燃費を失念していたことを後悔したし、上手い扱い方を考えなければならないとも思わせられたのだ。

 ハスミはというと、渦中の巨大なドラゴンにも負けぬ食べっぷりを発揮し先生を喜ばせていた。彼女自身は自制しようとしているようだったが、隣にここまでの悪食が居て、その上表情を読み取れないとはいえ凄まじい健啖具合を披露しているのであれば、無意識に釣られるなという方が酷というものだろう。

 スズミとチナツは、相反する学園の生徒同士であれど、この状況下においては互いになじむものがあったようで、遠巻きにこのカオスな打ち上げを肴に────酒は飲めないので、ジュースを飲んでいた。

 先ほどまで引き金を引いていたとは思えないほどの和やかさで終始進行し、数十分ほどで解散したささやかな歓待は、それぞれの心の中にシャーレという存在の雰囲気を強く印象付けた。

 だが、スズミだけは……その巨大で、しかし人懐こく見えるその龍に、何処か他の生徒とは違う印象を持った。その角、その牙、その手足の全てが、よく見て見れば強靱な武器なのだ。生徒たちは確かに強靱ではあったが、銀の匙の如く、銃を持って生まれてくるわけではない。自然に成型された天然の暴力という物を見なくなって久しい文明人だからこそ、感じ入るものがあったのだ。不思議と、それほどの暴力相手であるというのに、スズミが抱いたその感情は恐怖ではなく、小さな尊敬や興味と言えるものだった。

 あるものは仕事の延長線上と認識したかもしれないし、またあるものは、何ものにも縛られずに集まることのできる場所だと認識したかもしれない。兎にも角にも、悪いものとは思われなかった。それはオオナズチにとっても同じことで、この瞬間からシャーレは餌場兼隠れ家ということになった。

 既にオオナズチの好感度は、追い出してきた上に犯罪者扱いしてきたリンよりも、食事を提供した先生のそれが上回っていたのだ。なんと勝手なのだろう。流石の連邦生徒会も青筋を浮かべるかもしれない。

 

 騒々しさは何時か消えて、最後に残るものは何時でもしじまである。生徒が全員帰路につき、ここに残るのは他に行き場所のないものたちだけであった。先生と霞龍、何の接点もない二つの存在は静かに佇んでいた。

 

 しかし、残ったしじまの中に生じるのもまた、喧騒であるのだ。

 

 

 

 


 

 砂塵舞う、砂原のみの世界に瓦礫が立つ。数多の生徒を何時かに抱いた都市、数多の学びを与えた巨大な校舎が、今やたった一つの繭のために蠢いていた。

 それは豪華絢爛、留まることも躊躇うこともせず。豪奢豪快、強靱極まりない姿を誇示し、文明のキュビズム、あるいはコラージュとして振る舞う。

 ついに起動した女王の玉座は、障害全てを踏みつぶし進行する。

 宝を巻き込み肥大化したその”巣”は、奪い取れれば末代までの財産となることは間違いない。

 だが気を付けるべきだ。その宝の元の主たちは、皆そう考えていたから”宝”の一部と化したのだ。ミイラ取りがミイラになるという言葉が、これほどまでに似あう怪物は存在しないだろう。

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