(未完)ロストマンのセイリング・デイ(王直→ホーミング) 作:アズマケイ
「天夜叉だと......?おれがこの世で一番聞きたくねぇ名前がでやがったな、黙らせてこい!!」
「さすがにそれはまずいです......頭目。ここは天夜叉のシマだ、それにこの町と海軍本部は目と鼻のさ......ぎゃああ!」
「......それにさっきからなんだ、あの女。下品な女め、こちらの食事が不味くなる」
背後がなにやら騒がしいがそれどころではない。待ち合わせの時間になってもウルージが現れない。賞金稼ぎの足止めでもくらっているのか、新世代のいざこざに巻き込まれたか。それとも挑発した側か。時計を見るのが嫌になってきたローは席を立つ。
「おかわりまだか!?無くなりそうだ!」
「今全力で作ってるそうで、船長」
「間に合わねえだろ!!!ピザおーかーわーりー!!」
ベポが慌てて立ち上がり、ローに続く。
「も......申し訳ありません!」
「なぜです船長!こいつおれの服にスパゲッティを!」
「その服の運命......脅かしてすまなかったな。今日は殺生すると運気が落ちる日なんだ」
扉をあけて、外に出る。ウルージ達が宿泊しているホテルに向かおうとしたその矢先、怪僧達が暴れていると野次馬が叫んで注意喚起しているのがきこえてきた。どかーんという轟音と爆発が向こう側から聞こえてくる。
「うわァ、ひどい爆発だな!?」
「あそこか、行くぞベポ」
「アイアイキャプテン!」
「時間守りそうな奴だったのに可笑しいと思った。さては絡まれたな?」
現場に急行してみれば、ローの懸念したとおり、新世代達のいざこざから始まったと思われる抗争の最中にウルージを見つけることができた。キッド海賊団が喧嘩をふっかけたようで、アプーやドレーク、ウルージが応戦しているようだ。
ローは鬼哭に武装色を纏わせ、一気に振り払う。さすがに新生達は本能でやばいと思ったようで一斉に飛び退いた。さっきまで戦場のただなかにあった路地には巨大な裂け目が生まれた。舌打ちする。このどさくさで1人くらい仕留められたら海賊王を狙うライバルが減ると思ったのだが、ウミット海運の足切りを逃げ切った者達にそんな雑魚はいるわけがなかった。
その真ん中に着地したローは円を描くように取り囲む群衆の中からウルージを見つけて近寄る。
「遅いぞ、怪僧屋。待ちくたびれたから迎えにきたらなんだ、この騒ぎは。約束は守れ、時間指定したのはそっちだろ」
「メチャクチャだ…噂以上……さすがは気に入らないというだけで喧嘩を売るだけはある......しかも昔世話になったのにこれとは......」
これが死の外科医トラファルガー・ローの世間一般の純然たる評価だった。
「しかし助かる......私も困っていたのだ、この男がこれをよこせといってきてな」
約束の歴史の本文の翻訳された紙束を無事に受け取ることができて一安心のローだったが。さすがにそんなことを言われては黙ってはおけず、キッドに殺意を投げた。
「そんなに面白いモンが書いてあんならよこせよ。あの天夜叉の船にいたお前が頼むんだ、絶対なんかあるだろ」
ローは眉を寄せた。一番面倒くさい奴に目をつけられてしまった。どうやら歴史の本文の価値に気づいてはいないようだが、本能的なものか、野生の勘か、その重要性に気づいているらしい。はいそうですかと渡すわけがないだろう。
ただでさえ海賊王を目指すと公言し、エニエス・ロビー襲撃という大事件を引き起こした麦わらの一味がニコ・ロビンを確保しているのだ。すでに一歩先をいかれている。だから歴史の本文が読めそうな人材を探して必死で調べてようやく辿り着いたつながりだ。ようやく手にした海賊王への一歩を奪われるわけにはいかない。
キッド海賊団は南の海のとある島に存在する政府非加盟国育ちの4名から誕生した海賊団だ。ある島にある4つの街にはそれぞれ不良グループが存在し、4人はそれぞれの不良グループのボスとして日々抗争が絶えなかった。
しかしある日、キッドの親友であるヴィクトリア・S・ドルヤナイカがギャングに殺されてしまう事件が起こり、頭に来たキッドが4つの不良グループを束ねて国1番のギャングを打倒。
その後は「こんなせまい世界にはいたくない」と悪友達を引き連れたキッドにより、キッド海賊団が結成される事となった。 船員全員がビジュアル系バンドのような服装をしている。旗艦はヴィクトリアパンク号。
ローを含む新生世代達の中で、麦わらの一味に続く3つしかない億越えが2人以上在籍する海賊団である。
キッドやキラーの為に苦行や屈辱に一心に耐え続けるなど、仲間意識は強く、ある意味で気持ちのいい連中。
その一方でクルーが酷い仕打ちを受ければ、相手が何者であろうともキッドを先頭にして一丸となって、無関係な周囲までも巻き込みながら報復行動に出るなど、彼らなりの理由こそあれど素行不良の面は目立つ。明確な敵対者に対しては容赦せず、戦意を失おうとも徹底的に叩き潰す。
世間からは麦わらの一味に負けず劣らず危険な集団と認識されており、実際に民間に対しても大きな被害を齎している。主にキッドが暴れた結果巻き込んでしまっただけであり、完全な悪意を持って積極的に一般の人々を襲撃するような気質ではないらしい。
情報は武器だ。無知が仲間に死をもたらす。あの日の事件から痛感しているローだから調べたことを思い出しはしたがそれだけだった。ウミット海運とドフラミンゴファミリーが北の海の次に勢力が拡大していて、もう少しで支配下におくところまでいっている南の海の出身。それだけで警戒するに値するが、それだけだった。
「そんな理由で怪僧屋の手間かけて、おれは待たされたのか......。ユースタス屋、ここでしね。お前は一番に潰さなきゃならないやつだと思ってたんだ」
「奇遇だな、トラファルガー。おれもお前が気に入らなかったんだよ!」
「ゴチャゴチャ言ってねェで、黙っておれに従え格下」
カチンとしたらしいキッドの殺意が膨れ上がる。
「民間人に被害出してねえお前がなんでおれより懸賞金上なんだよ」
「ウミット海運とドフラミンゴファミリーに真正面から喧嘩売って生き残ったからに決まってるだろ」
ほんの数千万ベリーの差なのだが、キッド的には気に入らないところがあるらしい。闘争心むき出しにするキッドにローはまた鬼哭をかまえた。
次の瞬間、ボニーの姿がチラついた。見聞色を怠っていた自分を恥ながらローは咄嗟に覇気をまとって無効化する。キラーは飛び退いて能力の射程範囲から逃げた。舌打ちしたボニーが仁王立ちする。
「てめぇら一体どういうつもりだよ、バカ共!!この島に今この瞬間に大将呼んだら、激怒して飛んで来るんだぞ、そんくらいわかれ!!海賊なら海賊の暗黙の了解ってもんがあんだろ、ウチらに迷惑かけんな!!」
覇気を纏うのが遅かったら、次の瞬間には殺されていた事実を前に、ようやくロー達は静かになったのだった。頭に血が昇ってしまったのはたしかにバカのやることだ。