(未完)ロストマンのセイリング・デイ(王直→ホーミング)   作:アズマケイ

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第102話

34年前まで、天竜人とは、家紋が天駆ける竜であることに由来する800年前に世界政府という一大組織を作り上げた20人の王達、その末裔。最も誇り高く気高き血族として、世界の頂点に君臨する者たち。

 

聖地マリージョア以外の土地では「下々民と同じ空気を吸いたくない」という思考のためにシャボンのマスクを付け、さながら宇宙服のような恰好をしており、髪を殿様の髷状に上に伸ばした独特な髪型をしている。

 

また、海軍の中でも大将以上の階級に就く者は、必然的に天竜人の直属の部下として扱われる。

 

また、彼らとそのボディーガードは金色の銃を持っており、気に入らない相手に向かって発砲することもよくある。もちろん、その対象には失態を犯したボディーガードも含まれる。

 

当初20人の王達は世界政府トップの王位を独裁的に使用しないよう、そして各国の王達は皆平等であるべきであるという理念から、円卓の騎士のようにマリージョアのパンゲア城中心に「誰も王位につかないこと」を意味する虚の玉座を設けて遺し自戒するほど強いノブレス・オブリージュが有った様だ。

 

長年の内に伝承・根拠が歪んで権力が暴走し、人を人とも思わないような「教育」により、世界中の全ての地域において殺傷行為や奴隷所有等の傍若無人の限りを尽くす極悪非道を当たり前のように行う外道となっていった。

 

自分達が至高の集団であると唱えられ続けた環境が生み出した怪物といえる存在。 それが天竜人のはずだった。

 

33年前から天竜人に対する恐怖はさらに深まることになった。黄金の銃や海軍、世界政府の工作員を使うのは慈悲だとすら考える者も出始めた。人堕ちホーミングという家族のためなら非加盟国を滅ぼせる男が、ただの銃だけでそれをなしたという事実。非加盟国に降ろされた翌日には、ただの銃を使った工作員の殺害を行なった事実。

 

なぜそこまで詳細な様子が世界経済新聞に載っているかはさておき、その全てが天竜人という枷を外した瞬間に、その脅威すぎるポテンシャルが世界に向く可能性があることに人々は気づいてしまったのだ。まさに眠れる獅子を起こすに等しい愚行である。

 

実際に迫害を理由に非加盟国を滅ぼした男がいるのだ。リュウグウ王国のオトヒメに感化されて感性が人間になってくれたからよかったものの、感性が天竜人のままだったら今頃どうなっていたか。

 

そんな天竜人のひとり、チャルロス聖がきている。目撃情報は瞬く間に広がり、異様な緊張感が走った。チャルロス聖は特に悪趣味な天竜人だという認識がシャボンディ諸島で広がっているのだ。

 

基本的に傲慢な者が多い天竜人の中でも一際酷い男で気に入らない者はとりあえず銃殺。気に入った女はとりあえず奴隷。奴隷にはとりあえず暴力とその最低さは際立っている。天竜人としての権力と地位を特に深い考えもなく暴虐的によく振りかざして挑発する。ドフラミンゴファミリーの支配下であるシャボンディ諸島では、市民の反撃は許容されているのにだ。

 

常人なら即死してもおかしくないレベルの反撃を何度も喰らっているのに致命傷にならず、せいぜい気絶する程度で後遺症も無く生きている。とても鍛えている様には見えないが、実は肉体のポテンシャルは高い。

 

わざとやっているのだと噂し始めたのは誰かはわからない。ただ、チャルロス聖がシャボンディ諸島に訪れると、大将クラスの海兵達が必ず現れる騒動に発展しているため、否定しきれない部分はたしかにあった。

 

シャボンディ諸島の人々は、チャルロス聖が目撃された場所には絶対に近づかない。目撃したら真っ先にドフラミンゴファミリーが必ずいるオークション会場に情報提供する。世界政府と何らかの繋がりがあるドフラミンゴファミリーは、天竜人と衝突しても背後にある権力と渡り合える実力と根拠不明の特権があった。

 

「......誰か、チャルロス聖にぶつかったね」

 

「知ってるやつか」

 

「しらない。麦わらの一味の誰かかな」

 

「だろうな......ニコ・ロビン奪還するためにエニエス・ロビーを陥落させた奴らだ。それくらいする」

 

「これはボニーかな」

 

「助けに入ったのか、優しいことだ」

 

オークション会場の一角を陣取りながら、ベポがソナーとしての役割を担ううちに広大になった見聞色でローに伝えてくる。

 

「ここにはいないみんな、それ見てるね」

 

「エニエス・ロビーを陥落させるくらいヤバい奴らだ、誰だって一目みたいだろ。その代わりにオークション会場は立ち見になるかの2択だ。おれ達とは違う選択をしたんだろ」

 

「そっかあ」

 

だからこそ、これから起こる騒動を予見したローとベポはここを陣取っているのだ。特等席で見物するために。

 

ローとベポと同じ選択をしたキッドとキラーは、別の席で行儀悪くすわっているのが見える。ハンドサインで首切って死ねと挑発してきたので、ローは中指立てて応じた。

 

「なにもしなくても、ランブル・バギーニが競り落とすのにな。それをリュウグウ王国が買い取るのに優しいやつらだ」

 

「友達のためにそこまでするの、普通にこわいよキャプテン」

 

「いえてるな、たしかに」

 

見聞色はあくまで見聞色だ。どこまで現実に再現しうるものなのかは、その日のベポの精神状態や覇気の練度に左右されるため参考程度ではある。ローもつかえるがベポとは得意とする種類も範囲も全く異なる。

 

「それはそれとして、ドフラミンゴとウミット海運が構築したシステムの穴をつくようなやり方するのが気に食わないな。土壇場に出荷して本物をオークションに出さざるをえない状況に陥らせた奴らが特に。そんなに天竜人に人魚の奴隷を買わせたいのか」

 

「準備できない状況にしちゃったのキャプテンでしょー」

 

「仕方ないだろ、練度の差があると見えない」

 

「これが新世界の壁ってやつなのかな」

 

「だろうな」

 

「やだね、ミンク族も人魚の相場もまた跳ね上がってる」

 

入手したばかりのオークションの種族別の相場を見ながらローはうなずいた。ベポは友達で仲間だ。ミンク族が奴隷として需要が高まっているのを示すように、前の月との金額の差が書いてある。それだけで不快だった。

 

「どうする、キャプテン」

 

「レイさんの覇気に耐えるのが先だろ」

 

「たしかにそれはいえてるかも」

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