(更新停止)ロストマンのセイリング・デイ(王直→ホーミング)   作:アズマケイ

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第104話

「麦わら一味のせいでオークションが台無しだ、全く......めんどくせえことしやがって。いきなりなにすんだ、ロー。あいかわらずイタズラ好きだな、クソガキ」

 

オペオペの能力でチャルロス聖から転移してきた黄金の銃の超至近距離の発砲をうけたにもかかわらず。ランブル・ブキーニは悪戯小僧を咎めるようにローをみる。

 

お気に入りの缶詰に入っている黒い塊をぼりぼり食べながら飲み込むと、穴が空いていた場所がなにもなかったかのように再生した。

 

石炭と思われがちだが、ブキーニが食べているのは外気に触れないよう加工してあるダイナ岩だ。古代兵器にも匹敵するという巨大なエネルギーを持つ鉱物。酸素に触れ衝撃が加わると、島一つが消し飛ぶほどの大爆発を起こす。

 

そのため本来全てのダイナ岩は海軍により厳重に管理され、普段は特殊な容器の中に保管されている。大将赤犬によれば、海賊たちへの切り札である。ただ四皇クラスがダイナ岩を爆破させたことで発生する地震や地下火山の噴火程度で、死ぬわけがないだろう。そんなことを考えて、他の使い道を模索するSSGの馬鹿がいた。それだけだ。

 

「ドフラミンゴが出てくるまで暴れさせてもらおうと思っただけだ、悪く思うなよ」

 

「そのために死ぬのか?アホなのか?」

 

「見えないんだから仕方ない」

 

ランブル・バギーニは大笑いし始めた。

 

「お前も大概だが!おれの見聞色も衰えたもんだと思ったが、理解を超えてただけだったとはな!こんな気持ちのいい馬鹿共も、わざわざ見に来てる馬鹿共も見たのは久しぶりだ!」

 

オークションを台無しにされたのに、大笑いし始めるバギーニに麦わら一味は困惑した様子でローとバギーニを交互にみている。

 

明かす気もないのか、豪快に笑いながら麦わらの肩を叩き始めたバギーニは、実はドフラミンゴファミリーの幹部にしてグツグツの実の超人系能力者だ。

身体が超高温の熔鉱炉となり、あらゆる物を取り込み融かす事が出来て、また融かした状態で取り出す事も出来る。燃料を食べなければならない分、大将赤犬と比べて下位互換だが、その汎用性の高さなら群を抜く。

自身の身体を溶鉱炉へと変える溶鉱炉人間であり、炎や熱を自在に産生し、超高温の攻撃を仕掛けることができる。火拳のエースや赤犬等の戦闘を見ても炎を操ることの強力さは知られているが。

 

特にグツグツの実の場合はその温度の高さゆえに、触れるものを全て溶かしつくてしまう並外れた殺傷力を有する。まともに攻撃を防御しようとしても守った部位が溶けてしまうため事実上防御不能、こちらからグツグツの実の能力者相手に直接接触する攻撃をしかけることも叶わず、回避し続けるしか打つ手がない。

 

更に自身の身体が溶鉱炉であるが故に、常に高熱のマグマを流し続けることができる。

 

特に激昂した際には大量のマグマを解放しながら身体も溶鉱炉状に変形し、その圧倒的なエネルギー量と巨大化した身体を見た者からは「超人系能力者のはずなのにまるで自然系能力者じゃねえか」と評されている。

 

ちなみにそれが遺言となった。

 

前述した通り炎や熱を操る能力者は数多く存在するが、グツグツの実の能力者の場合は自身の身体が「溶鉱炉」であるが故に、鉱物を自在に加工することができる点が強み。

 

加工した鉱物の使い道は非常に豊富であり、高熱だけでは攻略できない一部の人間相手への攻撃&防御手段としたり、あるいは建造物を生み出したり、仲間の武器や防具を強化したりと枚挙に暇が無い。並み居る炎や熱を操る能力者とは一線を画す、強力かつ汎用性の高い悪魔の実といえる。

 

「気分がいいから力を貸してやろう、超新星。ここで死んだら興醒めだからな、多忙すぎて新聞見るしか楽しみがねえんだ。これからも好きにやれよ」

 

ローは心に無理やり火をつけられた。バギーニは他人の気持ちを燃えたぎらせ戦闘能力を上げることが十八番なのだ。自分が戦うのも好きだが、他人を気持ちを燃えたぎらせて傭兵軍団を指揮するのはもっと好きな男でもある。

 

「海軍ならもう来てるぞ、麦わら屋」

 

「なんだお前......なんだそのクマ」

 

「海軍はオークションが始まるずっと前からこの会場を取り囲んでる」

 

「えェッ!?本当か!?」

 

「この諸島に本部の駐屯地があるからな。誰を捕まえたかったのかは知らねえが。まさか天竜人がぶっ飛ばされる事態になるとは思わなかったろうな」

 

「トラファルガー・ローね......あなた......!───────ルフィ、海賊よ彼」

 

「ふふ......面白えもん見せてもらったよ、麦わら屋一味」

 

「クマもか?」

 

「クマもだ、うちの自慢の優秀な航海士だ」

 

「キャプテン!!」

 

「うわ、しゃべった!!おもしろクマか!?すげー!!ハチ助けてくれてありがとうな!トラ男!」

 

「......とら......それはおれのことか、それは」

 

「トラ男はトラ男だろ?」

 

「......。気にするな、気に入らなかっただけだ。おれは天夜叉の船に乗ってたことがある。天夜叉の師匠を認めてた魚人の部下が、よりによって天竜人に撃ち殺されるなんてあっちゃいけないと思っただけだ」

 

「......それってまさか」

 

「お前がどう思うかなんて関係ないな、ナミ屋」

 

「......知ってるのね」

 

「情報は武器だ。無知は仲間を殺す大罪だ。それをおれは知ってるだけだ。ところで同盟組まねえか、麦わら屋」

 

「!」

 

「同盟ですって!?バカバカしい......何が目的か知らないけど、ダメよルフィ!こんなやつの口車にのっちゃ!」

 

「......」

 

「目的?そんなもん決まって───────」

 

「つーかどっから入ったクソジジイ!システムのことは知ってんだろーが!なんで来た!てめーは出禁だっつってんだろーが、何度目だ!!しまいにゃシャクヤクか海軍本部に売り飛ばすぞ、てめえ!」

 

「ははは、まあそういうな、灼熱のバギーニ。そこの麦わらに用があるのさ」

 

「麦わら?」

 

「お前と一緒だ、気にするな。その麦わら帽子は精悍な男によく似合う。会いたかったぞ、モンキー・D・ルフィ。あいかわらず悪戯が好きだな、トラファルガー・ロー。私に最初に気づいたのは、たしか君だな。なかなか筋がいい、将来が楽しみだ、ユースタス・キッド」

 

三面記事を見せようとしたのにタイミングを失ってしまい、ローはしぶしぶカバンにしまった。これからこの男の覇気に耐えながら、大乱闘に興じなくてはならない。


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