(更新停止)ロストマンのセイリング・デイ(王直→ホーミング)   作:アズマケイ

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第106話

それはたまたまだった。ドフラミンゴは忙しいと門前払いをされた翌日の朝早く。火拳のエースが海賊王の息子として処刑されるという号外が出た。ローはオークション会場の舞台裏に侵入し、ダメもとでドフラミンゴに電話をかけたのだ。通じた。

 

「久しぶりだな、ドフラミンゴ」

 

「ローか?随分と派手に暴れてるみたいじゃねえか。大将には心底同情するぜ」

 

「ひとつ聞きたいことがある。エースはアンタの弟か?赤の他人か?」

 

「フッフッフ、新聞でも読んだか?弟みたいなもんだが」

 

「わかった」

 

「ほんとうに悪い子になったな、ロー」

 

「いい子は新聞には載らないからな」

 

「フッフッフ、ちがいねえな」

 

「今、なにが起こってるんだ?なにか大きなことが......」

 

「黙れ…......本当にめんどくせェ野郎だなッ!!こっちはそれどころじゃねえんだよ!!おれは今......おれ達は今、海軍の強制招集を受けてんだッ!部外者のお前にはどう見える?どんな未来がみえる?白ひげ海賊団ウミット海運連合と海軍七武海の戦争がよ!!」

 

いつかのように激昂しているドフラミンゴがいて、問われてもローはわからないというしかない。見えないからだ。ドフラミンゴがいう状況に至るまでの過程がまずわからないし、エースの処刑がなぜ大戦争の引き金になったのか。なんとなくわかるが点と点が離れすぎていて繋がらない。

 

ただ、ドフラミンゴにとっては切実な意味でそれどころではないのだということだけはわかる。

 

「すべてが予定調和なのはわかってるが、万が一でもエースは絶対に死なせちゃならねえんだ。あいつは知らねえし、いうつもりもねえ。だがあの日父上から受けた拳はおれの武装色を貫いて効いたんだよ。ガープ中将でもあるまいし……愛の拳のきっかけはルージュからオハラの流れだから転換点なんだ。そのくせロックス世代に被れてる父上は、あの日からずっと最高の終わりに苛まれてる。だからおれは七武海を目指したんだ。最初期はマリージョア襲撃して海兵のおれかロシーに殺される計画立てて、おれが残ったことで破綻したっていってたんだ。今回だってようやく動き出しただけで本懐はなにひとつ変わってねえんだよ!」

 

過剰なほど情報が降り注ぐドフラミンゴが自ら望んで得た環境は、変な誤解は生まない代わりに情緒が常にぐちゃぐちゃになるらしい。

 

「殺してたまるか。殺されてたまるか。他のやつにも、父上自身にもだ。父上はあの日から時が止まったままだから諦めてた。ニキュニキュ、メモメモ、ソルソル、そしてオペオペ。片っ端から調べたがあの日、あの国で、あの町で、ずっとおれ達と家にいたはずの父上に近づいたやつはいなかった。可能かどうかすらわからないヨミヨミの憑依を受けたんだろうって諦めてた。でも22年前のあの日から、おれは父上が昔みたいにおれに笑いかけてくれてるのがわかった。ヨミヨミは麦わら一味にいるから違った。まだ間に合うとわかった矢先にこれなんだ。どこまで理不尽なんだよ、この世界は!!負けてたまるか!!!」

 

ローはなにもいえなかった。

 

「父上が死んだらエサを失い鎖の切れた怪物達は何をすると思う......?今の偉大なる航路新世界に頂点と呼べる奴ァいるか?この海の王者は誰だ!!?海の皇帝達「四皇」の内の一人か!?巧妙に海を生きる「七武海」か!?お前ら超新星か?いやァ...正義の軍隊「海軍」こそ海の覇者か?民衆の意志「革命軍」にも、油断ならねェ猛者共がいる...!!!お前らみたいなやつらだ、ロー。歴史の底でくすぶり続ける”D”の一族は........それを簡単に超越する次元にいるんだよ。おまえや麦わらみたいなやつがようやく現れた。だから父上は動き出したんだ。マリージョアの天竜人共にお前達は引きずり降ろされるって警告しながら死ぬために!!」

 

「......!?」

 

「ゴールド・ロジャーが世界で初めて偉大なる航路を制して22年!!宿敵白ひげは王座につかず そのイスの前に君臨した。今はどうだ!? 膨れ上がった海賊達の数に対して.........ガラ空きの王座が一つ!!ここまでいけばわかるよな......?父上は始める気なんだよ、自分の死と引き換えに!海賊の歴史上最大の覇権争いを!!本物の海賊だけが生き残れる世界を!力のねェ奴が逃げ出し、手に追えねェうねりと共に豪傑共の新時代の礎になる気なんだ!!させてたまるか!!だから忙しいんだ、そっちに行けるわけねえだろ、クソガキが!!!」

 

「やるようにやれ、その全てをおれは肯定する。あの日そういったのはアンタだ、ドフラミンゴ。自分の言ったことには責任もてよ。あの日、あんたはおれに教えてくれたよな。聖地マリージョアではDの一族をこう呼ぶ者達もいる。神の天敵と。なら、なってやる。おれがなってやる。麦わら一味と同盟組んで全部無茶苦茶にしてやる。世界政府にいっとけ、勝手に頂上決めんじゃねーよって!!」


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