(更新停止)ロストマンのセイリング・デイ(王直→ホーミング)   作:アズマケイ

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第107話

エースの処刑が決まったことを伝える号外と今までのローの話は、麦わら一味に同盟を持ちかける決意をさせた理由をその場にいた全員が理解するにいたっていた。この世界で友達のためにどこまでもつっぱしれる男は麦わらのルフィだけだ。麦わらの一味は誰もがルフィに救われたり、惹かれたりして船に乗ってきたばかりだ。

 

まして、エースが処刑という現実が彼らを決意させた。ルフィと兄弟盃を交わしただけなら、ゾロ達は反対した。ただ、エースがアラバスタで覇気の稽古をつけてくれなければ、間違いなく麦わらの一味は全滅していた恩がある。提供してくれた情報が今までの航海でどれだけ助けになったか実感しているのだ。まだ返せていないほど大きなものだ。返す前に死なれるのは困るのは彼らの方だった。

 

「......麦わらとトラファルガーは同盟を組むとして。おれ達は巻き込まれるどころか、完全に共犯者扱いだなキラー」

 

「麦わらのルフィの噂通りのいかれ具合をみれたが......さすがに今大将と当たるのはごめんだ」

 

「もののついでだ、お前ら助けてやるよ。表の掃除はしといてやるから安心しな」

 

カチンときた3人はそのまま入り口に向かってしまう。

 

「お前ら、下がってていいぞ」

 

「お前ら二人に下がってろといったんだ」

 

「もう一度おれに命令してみろ。今度はお前から消すぞユースタス屋」

 

「やれやれ思ったより数が多いな」

 

「お前ら変な能力もってんなー!?」

 

「てめぇのが一番変だろ」

 

「そんなに待ってられるか」

 

「なんだそりゃ麦わら屋、しまらねえなァ」

 

「そうか?」

 

「これでひとまず陣形もクソもねえだろう」

 

「トラ男!わりーけど、おれ達コーティングしなきゃなんないんだ!」

 

「ロー、3日後の夕刻に彼らと会うといい。ビブルカードを持っていけ」

 

「わかった」

 

ローと麦わら一味は一度わかれることになった。

 

「さて、ウミット海運で故郷に帰るか、おれと来るか?キャプテン・ジャンバール」

 

「───────そう呼ばれるのは久しぶりだ。しかも選ばせてくれるのか?ならば喜んでお前の部下になろう。天竜人から解放された恩は返さなければならないからな」

 

「半分は麦わら屋に感謝しな」

 

天竜人・ロズワード聖の奴隷として人間オークション会場前に繋がれていたのを発見したローは、オペオペの能力で首輪を外してやる。ベポが見聞色で安全な道を探し、案内してくれる。ローも敵がくるほんの少し先の未来をみて、どちらの分かれ道が大丈夫そうか調べてから走った。

 

「ジャンバール!おれ、ベポ!おまえ新人だからお前はおれより下ね!」

 

「奴隷でなきゃなんでもいい」

 

「あーもーまだ追ってくるなあ、橋壊したのに」

 

「当然だ。街に戻っても海兵はいるはずだ。さっさと島を出るぞ。3日もいたら大将に見つかりかねない。別の島でやり過ごしてから戻ればいい」

 

ローがオペオペでバラバラにしても、ベポが体術で全て薙ぎ倒しても。ジャンバールが奴隷脱走罪という言葉にガチギレしても。時間経過で増えてくる海兵達は、どんどんどっちがマシか、になっていく。そして、最終的にはベポの見聞色では敵の数が同数かつ見たことがないから詳細なデータがわからない分かれ道にやってきた。

 

「どーする、キャプテン」

 

「どっちもやばいな。全滅よりはマシだ、二手にわかれるか」

 

「わかった」

 

「おれはこっちにいく。ベポ達はあっちで頼む。もしおれが1時間たってもこなかったら、先に出航してマリンフォードの深海に潜伏しろ。わかったな」

 

「アイアイキャプテン!いこっか、ジャンバール」

 

ロー達は二手にわかれたのだった。後は野となれ山となれだ。

 

「ユースタス屋と七武海!?なんでこんなところに!?今はそれどころじゃないはずだぞ!?その七武海は偽者だ、きをつけろ!」

 

「七武海じゃねえだと?おい、トラファルガー、何知ってやがる!?どこをどうみてもこいつは───────」

 

口からビームが発射された。二人は回避するが、今度は手からビームが発射された。バーソロミュー・くまはニキュニキュの能力者であり、改造人間になりつつあるが、本人は手からビームは出せないはずだ。

 

「手当たり次第か、こいつ!?トラファルガー、さっきのはどういう......」

 

「七武海は海軍側で白ひげ達からの防衛戦でそれどころじゃない。つまりこいつはベガパンクの作った改造人間兵器だ」

 

「はあ?!元は人間だっつーのか!?双子とかよくあるオチじゃなく?」

 

ローはうなずいた。ローの啖呵をきいたドフラミンゴが今朝教えてくれたのだ。今回のように大将と軍艦に乗ってくるのは海兵だけではない。軍艦一隻分の予算を投じて作成する新型兵器。人間ベースにバーソロミューくまそっくりに改造を施した改造人間。その名は平和主義者と書いてパシフイスタ。

 

こいつはパシフィスタの方だとローはわかった。ビームの件もそうだが、くまは太陽十字教徒である。聖書を持ちあるいていないのはおかしいのだ。神聖な聖書を素手で持ち歩ける人間はいない。手袋をするのが普通なのだ。シスターがそうだった。

 

身体は王下七武海バーソロミュー・くまの姿をモデルにしており、鋼鉄以上の硬度を持つ。大将黄猿の「ピカピカの実」の能力を再現した、金属をも溶かすレーザーを口と掌から発射できる(くまは口からのみ)。

 

また、その目を通じて見た賞金首の名前と賞金額を識別することが可能。ロボットの類ではなく、元々は人間がベース。1体造る費用は軍艦1隻分に相当するという。くまの姿を模した何体ものパシフィスタが存在しており、「PX-○」の製造ナンバーが刻印されている。バーソロミュー・くまは自ら志願しこのパシフィスタへと改造手術を受け「PX-0」となり、自我も失う途中。

 

主な攻撃手段はレーザーだが、強固な肉体により格闘でも圧倒的な実力を誇る。戦闘能力は億クラスの賞金首に全く引けをとらず、マリンフォード頂上戦争では、20体以上のパシフィスタが投入される予定である。

 

キッドはローが詳しいから、少し考えたあと、共闘すればなんとか突破できるだろうかとつぶやいた。

 

「よくしっているな、天夜叉に習ったか」

 

ローの見聞色は格上の行動を見ることはできない。ベポの見聞色が2人ずつと教えてくれたから、一か八かに賭けた。比較的マシな道をひいたのは自分らしいとローは自覚する。怖気がはしる。恐る恐る振り返ると、そこには手袋をして、太陽十字信仰の聖書をかかえたくまがいた。

 

「旅行するならどこへ行きたい…......?」

 

「ハァ?なにいってんだお前」

 

「アンタ、革命軍なんだってな。少し話をしないか?」

 

「む......」

 

「えっ、こいつ七武海だぞ、トラファルガー」

 

「いいから黙ってろ、ユースタス屋。おれはこいつに用があるんだ。二人きりで話がしたい。だから、あいつらをどこかにやってくれるか。ドラゴンの指示でこれから麦わら達を逃しにいくんだろ?邪魔されたくなけりゃはやくしてくれ」

 

「おい、トラファルガー何言ってやがる!お前正気かッ!?」

 

「うるさい黙れ、お前はおれが倒すんだ。それまで死ぬな」

 

「おいッ!」

 

「一部は的を射ているな......すべてではないが。ならば......」

 

くまは能力を発動する。ローの前からキッドとパシフィスタが消えた。ローは息を吐いた。ここからが正念場だ。

 

「知ってたらでいいんだが、オハラにベガパンクとホーミングとドラゴンが行ったことがあるのは知ってるか」

 

「そこまでよく調べあげたな、この短期間で。天夜叉に聞いたか」

 

「昔はコラソンも考えてもらったことがある」

 

「なるほど」

 

「ベガパンクは......ドラゴンでもいいが......オハラからエルバフまでの同行で、なにかホーミングに変化があったことには気づいていたか?」

 

「......あるな」

 

「ホーミングからなにか依頼されてないか?」

 

「..................天夜叉からの依頼か」

 

「ああ、おれは神の天敵だからな」

 

長い長い沈黙がおりた。

 

「───────空島ウェザリアに興味はあるか」

 

「!!......ある、とてもある。ファミリーじゃなかったから、連れて行ってもらえなかったんだ」

 

くまは聖書を開いた。ローの意識は突如途絶えることになる。


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