(更新停止)ロストマンのセイリング・デイ(王直→ホーミング)   作:アズマケイ

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第108話

ローが空の旅を終えてやってきたのは、ウェザリア。空島の1つではあるが、純粋な空島ではなく今はなき空島ビルカ出身の天候学者ハレダスらが65年前に作った人工島である。「風の結び目」や「ウェザーボール」など、天候の科学について研究している。 人工島であるため移動も自由であり、島ごと移動できるという。

 

ローがハレダス博士に会いたいと連絡をいれたとき、何日待たされるのか不安だったが、案外はやく会うことができた。毎日忙殺されているのがわかる研究室だったが、そんなもの今はどうでもいいとばかりに奥に案内してくれた。

 

「......これは」

 

「私がホーミングから預かっている研究成果の全てだ。おかげで彼はウェザリアと協力関係でいてくれる」

 

「おれに見せてよかったのか」

 

「死ぬために戦争起こすやつを止めずに友人と呼べるのか?」

 

「......」

 

元をたどれば、ホーミングがベガパンクから購入した血統因子の研究データにあったグリーンブラッドがもとだ。ベガパンクが発明した人工血液の試作品。人工的に悪魔の実を作るには成功率が上がらないため、いっそのこと液体のまま作ってしまおうという発想の転換からもたらされたものだった。

 

超人系悪魔の実能力者の血統因子を生成できるもので、投与することで超人系の能力を得ることが出来る。つまり、これまで不可能とされていた能力の複製が可能となっている。

 

現在SSGではパシフィスタの上位互換に搭載すべく超人系の様々な悪魔の実をグリーンブラッドにする計画が進行しているらしい。

 

ローは新世界で繰り広げられている科学の代理戦争に息を呑むしかない。

 

本当は天候を閉じ込めることができるウェザーエッグの技術を欲しがったそうだが、ハレダス博士が頑として譲らなかった。ウミット海運との取引を全て拒否してあらゆる不利益が被ると脅されても嫌がった。そのうち根負けしたホーミングが、空島ウェザリアを海に落とされたくなかったら協力してくれと色々取引を持ちかけるようになった。30年におよぶ関係は、やはり、ドフラミンゴのいう時期から、だんだん変化してきてはいたらしい。

 

「エッド・ウォーのころから、思えば兆候はあったんじゃ。金獅子との戦いがよほど楽しかったのか、思い出したようにワプワプがあればとこぼしておったよ」

 

ホーミングほどの狙撃の名手でも喉から手が出るほど欲しいのか、ワプワプの実は、とローは思った。ハチノスの元締めの王直の能力として知られた力だ。

 

「なんで再現しないんだ?ワプワプの実は超人系じゃないか」

 

「一部が再現されても意味はないと笑っておったわ。何年かかるかわからない。もう待てないとな。王直は海賊派遣をする関係でよく世話になるから奪うわけにもいかなかったんじゃろう。王直はハチノスの海賊達に慕われておるからな」

 

話はそれたが、ホーミングはニキュニキュのグリーンブラッドを使用し、特定の成分をバブルに閉じ込めることができるようになったところに着目したようだ。

 

それはウミット海運が血統因子となるニキュニキュのなんでも弾く能力を応用し、開発した兵器だった。銃火器はこれで無効化となる。衝撃吸収ゲルの耐熱性まで高めたような強力なものである。

 

くまは『圧力砲(パッドほう)』という大気を弾いて衝撃波を発生させる技を攻撃に使っていたが、その最大の技だろうと思われるのが『熊の衝撃(ウルスス・ショック)』。見聞色なしで避けることができたのは正直運が良かったといってよかった。

 

このバブルガンはおそらく実弾やレーザーみたいなものを発射するわけではなく、大気を弾いて衝撃波を発生させるような武器であり弾切れみたいなものはなく、またエネルギー切れなんかもない理想的な武器である。近接ならば大勢の敵を弾いて吹き飛ばすというような事もできる。

 

しかし、ウルススショックは単に大気を弾くだけでなく、手の平の中で大量の大気を凝縮して弾き出し解放することによって超強力な衝撃波を放つ技だ。ただし、完全な再現は難しいため、ためが必要である。

 

溜めるごとに威力を凝縮し、あくまでオリジナルには及ばないが、擬似的なウルススショックを放つ事はできる。

 

そのための間に何をするか。

 

海の成分を抽出してシャボン玉のようなものに閉じ込めてばらまく兵器だった。のちにバブルシールドとよばれることになる新兵器のサンプルだった。

 

シャボン玉なら環境によってはすぐにわれてしまう。実際、ベガパンクも天気温度湿度というあらゆる環境を整えて初めて利用可能で、そのせいで自身の研究所だけしか防犯用に使用できないことに頭を悩ませているという。

 

なぜこれが切り札たりえるのか。できるから戦場に投入するんだろう。途方もないなにかをホーミングはまだ隠しているようだった。さすがにハレダス博士は教えてくれなかった。

 

こんなものを三日月型の島目掛けて空から大量に投下する。降り注ぐシャボン玉。触れた瞬間に力が抜ける。戦場は空から降ってくるシャボン玉により、それは陸も船の上ですら海と化すことを意味する。ホーミングの足切りだ。覇気で回避できないような者は戦場に立つ資格はないと宣言しているようなものだった。

 

そこに世界政府や海軍、まわりの関係機関、民間に至るまで一切の流通を止めた悪魔の実の弾丸をぶちこみながら戦場を歩くホーミングを幻視した。あるいは類似した効果を付与した兵器を爆破したらどうなるか。少しでもいいのだ、体内に一定の成分がどんな形であれ、入ればいい。能力者でなくても能力者にしてしまう。あるいはホーミングの標的になり回避できない者は、能力者なら1発、能力者でないなら2発で問答無用で爆発四散するだろう。

 

いつまで海兵の士気が保てるか。ローには想像することすらできなかった。ドフラミンゴがそれどころじゃないと叫んでいたのを思い出す。ドフラミンゴは今、きっとホーミングを止めるために邪魔な者達を戦場から遠ざけたいのだ。あるいはホーミングが用意する新時代の戦い方についてこれない者達の排除に必死なのだろう。

 

「......」

 

ローは考えるしかない。どうやったら、滅茶苦茶にできるのだろうか。


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