(未完)ロストマンのセイリング・デイ(王直→ホーミング)   作:アズマケイ

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第111話

いつかの海戦のように天気予報は外れていた。今にも降り出しそうな曇天だった。

 

海軍本部のある島マリンフォードには、主に海兵達の家族が暮らす大きな町がある。現在住人達には避難勧告が出ており、避難先のシャボンディ諸島からモニターによって人々は公開処刑の様子を見守っていた。

 

なお映像を流す電伝虫は利権ごとウミット海運が買い取っており、世界政府がそれを買い戻そうとしていた矢先に、黒ひげとエースの戦いが狙ったようなタイミングで起こった。そのためモニターの隅っこには碇マークのウミット海運と書いてある。

 

各所より集まった記者やカメラマンもまたここから世界へ情報をいち早く伝えるべく身構えていた。

 

海軍からの監視船は出航のたびに撃沈され、白ひげの目撃情報はない。マリンフォードに走る緊張感は高まるばかり。せまる処刑までとうとう3時間を切っていた。

 

世界各地から招集された覇気使いの名のある海兵達。総勢約5万人の精鋭がにじりよる決戦の時を待っている。三日月型の湾頭および島全体を40隻の軍艦が取り囲み、湾岸には無数の銃砲が取り囲む。港から見える軍隊の最前列に構えるのは、戦局を握る5名の七武海。

 

そして、広場の最後尾に高くそびえる処刑台には、自ら事件の中心になることを選んだ、白ひげ海賊団2番隊隊長ゴール・D・エースが運命の刻を待つ。その眼下で処刑台を見守るのは海軍最高権力3人の大将達。

 

今考えうる限りの正義が、自らの存在意義を示してみろと言外に挑発してきた旧世代の海賊達を待ち構えていた。

 

モルガンズのマークを浮かべた、カモメたちがたくさん羽ばたく船が空を飛んでいる。

 

真ん前に突然浮上してくる碇マークの船がある。ウミット海運の船だ。深層海流を使う都合上、やはり最初にしかけてくるのは、この男だった。

 

「私の息子は無事かね、センゴク元帥」

 

センゴク元帥がデンデン虫でいざ話そうとした矢先だった。予想通りとは言えため息を殺しながら、センゴク元帥は応じる形で言葉を続ける。

 

「違うだろう、ウミット海運副社長ドンキホーテ・ホーミング。諸君らに話しておくことがある。この男は20年間我々を欺いてきたのだ。エースはこの男の息子ではない」

 

「エース、きみの父親は誰だね?」

 

「おれには2人父親がいる。どっちをいえばいい?」

 

「違うだろう!!」

 

「違わねえ、おれの親父は白ひげだ!!父さんはホーミングだ!!」

 

今から処刑されるというのに、目の前にホーミングがいるせいで、口元がうれしそうに歪んでいる。センゴク元帥はエースの余裕を隠すようにエースの出自を暴露する。

 

「証拠はなんだね?上から録音を重ねられるトーンダイアルだと我が社は隠し立てすることなく、情報提供をしたはずだが?養殖ダイアルは我が社の登録商品だ。海軍も使っているんだ、忘れたとは言わせんぞセンゴク元帥。私の息子と海賊王が親子だとどうやって判断した?再三情報開示したのに、お前達は答えないまま処刑日を迎えた。冤罪のまま私の息子を殺す気か、貴様。うちの血の掟を忘れたわけではあるまい?」

 

「お前の手の内はわかっている、人堕ちホーミング。お前は世界政府への恨みから次代の海賊王を育てるために出生からエースを庇い、海賊王のかつてのライバルである白ひげの船に乗せたのだ。ワノ国のおでんの肩書きを新入りが名乗るわけがない。現に我々は二重で手が出せなくなった。───────そして、放置すれば必ず次世代の頂点に君臨する資質を発揮し始める。だからこそ、今日、ゴールド・エースの首を取ることに意味があるのだ。たとえ、貴様らと全面戦争になろうともだ」

 

「私が世界で一番愛しているのが家族だと知ってもなおほざくのか。ならば私も容赦はしない。ウミット海運の血の掟に従い、エースを奪還する。身内に手を出されたんだ。皆殺しにされても文句はいうなよ、貴様ら」

 

ホーミングは不意に空を見上げた。そしていうのだ。センゴク元帥は目を閉じた。ホーミングの見聞色は群を抜くのだ。嫌な予感はしていた。

 

「話は変わるが、私達海運会社にとってもっとも大事なものが天気予報だ。27年前、私達は再三なんとかしてくれと直訴してきた。金獅子のシキが優秀な航海士や天気予報士を拉致する事件が相次いでいたからだ。だが貴様らは放置した。ガープ中将が力を貸してくれるというから、我が社とウェザリアは手を組み、金獅子のシキを捕まえ、貴様らに引き渡した。処刑を望んだのにインペルダウン送りにした。放置すれば衰弱死したものを治療までして生かした。その結果どうなったか」

 

あたりがざわざわしはじめる。

 

「───────今日脱獄して私達に報復しに向かっているようだ。どういうつもりだ、貴様らは。私の息子を処刑して、私が殺されるのは放置するのか。これが人間を選んだ天竜人への世界政府と海軍のやり方なのか。30年たっても私は人間になれないのか。ならば私達にも考えがある。守ってくれないなら、自分で守らせてもらう。こちらに金獅子が向かっているんだ、ウェザリアがなにをしても文句はいわないでくれたまえよ。もし金獅子がきたら。わかっているだろうがこれは正当防衛だ。お前たちは守ってくれないんだからな」

 

エッド・ウォーの時のような嵐が近づいている、曇天の切れ目からウェザリアのシャボン玉が見えた。

 

そして、ウミット海運のコーディングにより深層海流を通じてやってきた白ひげの船が次々浮上してくる。

 

「グララララ、何十年ぶりだ、センゴク?おれの愛する息子は無事なんだろうなあ?」

 

雨がぽつぽつと降り始めていた。

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