(未完)ロストマンのセイリング・デイ(王直→ホーミング)   作:アズマケイ

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最終話

頂上戦争の結末は、実況中継のような臨場感で全てを書き切った手腕をもつ元天竜人の女記者を抱えている世界経済新聞の売り上げが最高記録を叩き出すくらいには世界中で注目されていた。碇マークのウミット海運印の中継も途中で切断されることなく映されていたので、情報の鮮度だけでいえば同じだ。これがシャボンディ諸島の記者達の手で拡散されることとなった。

 

世界政府の情報操作が完璧に封じられた状況下で起こったたくさんの出来事は、人々に新たな時代のうねりを恐怖させるには充分だった。

 

「ほら、読んでみろよ、父上」

 

差し出された新聞をホーミングは受け取る。

 

まずはニコ・ロビンを奪還するためにエニエス・ロビーを壊滅に追いやったことで知られる麦わら一味。革命軍宗司令官ドラゴンの息子であることを知らない一般人ですら、実は海賊ではなく革命軍の急進派ではないかという説が出るくらいには、すさまじいことをやっていた。

 

兄弟盃を交わしたエースが海賊王の息子という罪で処刑日が決まり公表されたその日にシャボンディ諸島で事件をおこした。王下七武海天夜叉ドフラミンゴのシマであるにもかかわらず。オークション会場で他の超新星と共謀して天竜人3人を人質にとり、立て篭もり事件を起こしたのだ。エースの解放を要求したと思われる。海軍本部が人質の奪還に成功するが、超新星は全員逃げ出した。

 

エースの処刑日当日、麦わらのルフィは単身エースを奪還するために不落の城として名高い大監獄インペルダウンを襲撃。麦わらのルフィとは東の海の決闘やローグタウンの死闘が有名な道化のバギーと共謀して、大量の危険な囚人達を解放する。麦わらのルフィ達は、あの伝説の大海賊金獅子のシキと共に海軍の軍艦を1隻強奪して、エースのいるマリンフォードを襲撃したのである。

 

その結果、漁夫の利を狙った七武海の称号を剥奪された直後の黒ひげと百獣海賊団連合とハチノスの元締め王直の衝突を招き、インペルダウンは陥落した。のちに黒ひげ側は王直を殺害、ワプワプの力を手に入れたはずだが、何故か仲間には与えていない。ハチノスは黒ひげの支配下となった。そして、黒ひげは天夜叉ドフラミンゴのシマであるドレスローザを攻撃し始めている。

 

「シャンクス、カイドウ抑え込めてなくない?」

 

「黒ひげんとこには、催眠術使えるやつがいるだろうが。ま、赤髪の名声に傷はつけられたわな」

 

一方その頃。

 

マリンフォードでのエースの処刑理由を説明する海軍本部センゴク元帥と冤罪を主張するウミット海運副社長ホーミングのやり取りは余すことなく広められた。30年間ロックスのように世界政府と海軍の権威失墜を狙っていたホーミングの作り上げた建前は強固だった。

 

世界の世論を動かす上で建前は一定の価値がある。それが子供を想う親心といういつの世も不滅の価値観で構成され、冤罪を訴え、証拠を出せという主張になれば。建前の上ではホーミングに理があるように見える。

 

一般市民が数多の情報規制を受けている関係で、どうしても理がない根拠で世界政府は海軍にエースの処刑を命じているようにしかみえない。海賊王の血を継ぐものがまだいたという話題性をもかき消すほどに、世界の流通の頂点に君臨する男と四皇では穏健派の白ひげを相手に戦争をしかける海軍とうつる。

 

この時点で、世界政府と海軍への不信感を抱く者が少なくなかった中、麦わらのルフィ達が襲撃にきたのだ。マリンフォードは大混乱に陥ったが、ほかの戦場はただちに停戦に持ち込まれた。

 

金獅子がやってきたことで、正当防衛にウェザーエッグを解禁したウェザリアの攻撃が開始された。それが金獅子のフワフワの能力でエースに軌道が向き、とっさに庇ったホーミングが負傷。七武海にしてホーミングの弟子天夜叉ドフラミンゴがホーミングを捕縛。人質にとることで停戦に持ち込んだのだ。

 

戦争前に制空権を掌握しているウェザリアは金獅子に攻撃をしかけるため、無差別にウェザーエッグを発動させるとホーミングは事前通告していた。ウミット海運はエース奪還のためなら皆殺しにする、白ひげ海賊団はエース奪還のためならマリンフォードを壊滅させると宣言していた。

 

ホーミングがドフラミンゴに捕縛されたことでウェザリアは金獅子相手に攻撃をするしかなくなり、ウミット海運はそちらに対応するため戦線から離脱、気球による浮上から空の戦いは別にシフトした。

 

白ひげ海賊団と海軍の全面戦争となるはずだったが、制空権を握っている上記の戦いを注視しながらの陸上あるいは海上での戦いのため、どうしても勢いは弱まっていた。

 

そこに殴り込みをかけてきたのが世界政府から『ロジャー海賊団の残党』として警戒されるのを避ける為、元船員である事実を徹底的に隠して活動していたはずの道化のバギー率いる脱獄囚達である。白ひげとの共謀だったと判明するのは後の話で、この時点では三つ巴の大混乱に陥ることになる。

 

その騒ぎに乗じて麦わらのルフィが現れ、エースを奪還。道化のバギーとともにドフラミンゴを旗揚げ時から敵視しているハートの海賊団と共に戦線を離脱。

 

そこに四皇赤髪海賊団が仲裁に訪れ、表向きすべての陣営が一時停戦となった。ホーミングを出せと主張するシキに、七武海のドフラミンゴが確保したと通告すると、一旦ひくと言い残し、シキはそのまま逃亡した。

 

マリンフォードも陥落し、世界政府への不信感は煽られたが、七武海の活躍で最悪の事態は免れた。様々な火種となることは確実で情勢は見通せない情勢である。なお、世界政府は道化のバギーに七武海入りを打診しており───────。

 

「人堕ちホーミングがロックスかぶれの死にたがりで、新時代の礎になりたくて死ぬつもりだったなんて誰も知らないよ。誰も知らないままでいいよ、そんなこと。なんでそんなこと考えたんだよ、父上。おれ、ずっとわからなかったんだ。あの日の父上はほんとにそう思ってたし、でもあの会議でおれ達のこと守ってくれてるのはわかったし、でも父上は戦争の引き金を握ってるし、なにがなんだか」

 

「おれも聞きたいことが山ほどあるが、先に聞きたいのはあれだろ、ロシー。時間は腐るほどあるんだ、順番なんざなんでもいい」

 

「ごめん、つい......父上と話ができるの30年ぶりだから......」

「ま、気持ちはわかるけどな」

 

勝者の権利を行使して、ドフラミンゴが真っ先に行ったことはロシナンテとホーミングの再会の強制だった。テーブルの横にトーンダイアルが置かれるのは海軍の慣例ゆえだろうか。

 

「敗者の義務だ、なんでも聞きなさい。お前達に理解できるかはともかく、話はしよう。嘘はつかない」

 

「あたりまえだろ、オトヒメでも読めないアンタの胸の内とか初めから完全に理解できるとは思ってねえよ。嘘ついたら神の息吹でメモリア使って強制的に見るからな」

 

「やめた方がいい、ホーミングの人格が受け止めきれずに私の人格とぐちゃぐちゃになるくらいには衝撃的なものだ。今だに私はどこから私でどこからホーミングなのかわからないのだから」

 

「......そうかよ、そうなのかよ。やっと聞けた、30年もかかったがようやく聞けた。父上は生きてるんだなアンタの中に?」

 

「そうでもなければ、愛の拳なんか発現するわけないだろう。私には一番縁遠いものだったからな」

 

「やっぱり愛ってすごいんだなあ、ドフィ」

 

「あたりまえだろ、ガープが拳ひとつで数多の大海賊と渡り合える理由なんだから」

 

「そうでした」

 

「まず聞きたいのはあれだ、なんであの時おれ達に2択を迫ったんだ?アンタの目的を考えたら、問答無用でモルガンズのところに連れていけばよかったんだ」

 

「それだけはできなかった」

 

「なんで」

 

「私のところにくる理由づけだ。最初期の計画では海兵になってほしいし、疑問持ってほしいし、私の複雑怪奇な本音も多少混ざってはいるがね。予想外だったのはドフィがあんなに小さな頃から感情が爆発すれば覇気に目覚める資質に恵まれていたことだ。おかげで邪魔された。私はドフィとロシーがふたりで選ぶなら、どちらでもよかった。だからいきなり片方だけ残ったから計画が破綻した」

 

ロシナンテとドフラミンゴは顔を見合わせる。

 

「どういうことだよ、父上」

 

「なんでそれだけでぶっ壊れるの?」

 

「なんだ、お前達気づいていないのか?1カ月しか生活していない私ですらわかったのに。ドフィは天竜人の価値観が崩壊して、新しい価値観を求めた結果、絶対に裏切らないはずの家族を基軸においただろう。おかげでお前は無意識に周りの期待通りの自分になろうとする癖がついている。特に家族相手の場合は顕著だ。無自覚だから八方美人に理想を叶えてくれるお前に人は集まるが、解釈違いを起こされてトラブルになる。お前は自覚がないからパニックになり、相手を排除しようとする。そこに漬け込もうとしたわけだ、私は」

 

「......お、おう......」

 

「そうなの、兄上?」

 

「......おれが入団試験をはじめたきっかけだからな、よくわかってるよ」

 

「自覚があるなら結構だ。海兵になればドフィは周りやロシーの望む理想の海兵になるだろう。センゴク以来の覇王色の覇気使い、元天竜人が志願したとなれば後継者として申し分ないから、誰もが期待するだろう。それはお前の癖と致命的に噛み合うが、噛み合わなくなった瞬間に起爆剤になる。昇進の果てに海軍の矛盾に突き当たりパニックになる。その瞬間に私が行動起こせば、お前は私を殺してくれる。私のところに来てくれても、遅かれ早かれ、ロシーか私が引き金になっただろうことは想像に難くない。そういうわけだ。答えになっているか?」

 

「アンタの目的が初めから破綻する運命だったのは、よくわかったぜ」

 

「兄上、大丈夫?すごい顔してるけど」

 

「うるせえ、黙れ」

 

「いたい!」

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