(未完)ロストマンのセイリング・デイ(王直→ホーミング)   作:アズマケイ

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あの日の残響(ドフィ視点の過去話①出奔まで)

今、父上の手を取らなければ、二度と取り返しのつかないことになる。漠然としているのに確信できるような、そんな予感があった。最愛の弟の懇願を退け、大好きな母上の反対も振り切り、自分の直感を信じた。これが運命の分かれ道だったと父上から最初期の最高の最期について聞かされたとき、ドフィは自分が父上の隣に生きているだけで邪魔ができたのだと知って嬉しかった。

 

父上について非加盟国を地図から物理的に消す方法を学んだ。ついていけばいいのだと思っていたが違うのだと気づいたのは、覇気というやつで気絶させられた時に思い知った。

 

目覚めた時、炎が廊下の絨毯や壁紙を飲み込みながら迫ってくる。じりじりと肌をあぶられるような熱気を感じる。立ち込めた黒煙がまとわりついてくる。煙が目にしみて痛みが走る。炎が部屋のドアを舐め始める。熱を帯びた黒い煙が部屋の中へ入ってくる。痛みを伴った熱気が蜂のように襲い掛かってくる。

 

ドフィは姿勢を低くした。そうすることで煙が弱まってくる。目線を床に近づければ近づけるほど炎が灯りとなってほんのりと視界が利いてくるようになった。そして目の痛みも和らぎ、少しだけ呼吸も楽になった。

 

黒煙の隙間からオレンジ色の炎が見えかくれする。炎が出口を求めて上へ下へ渦巻く。火の壁をくぐって、亡霊のような人影がもつれ合いながらよろめき出る。罵詈雑言を浴びせる大衆に家族の思い出を全て破壊され、火を放たれた。父上に置き去りにされたのだと気づいたドフィは泣きたくなったがそんな暇はなかった。もうそこまで、炎の舌が這ってきた。

 

「覚えてろ、オマエら。おれは死なねェ......!!!何をされても生きのびて...おまえらを一人残らず殺しにいくからなァ!!!!おれは......やらなきゃいけないことがあるんだッ!!こんなところで死んでたまるか、邪魔をするなァッ!!」

 

魂の叫びだった。渾身の叫びだったといっていい。この瞬間にドフラミンゴの覇王色は目覚めた。迫りきていた男達は気絶し、ドフィは躊躇なく打ち殺し、必死で逃げた。見聞色も覚醒段階に入っていたため、命からがら、父上のいるところまで辿り着いた。

 

 

「父上、父上、やっと見つけたえ!!なんで置いていくんだえ、危うく殺されるところだったえ!!」

 

「思ったより早かったね、ドフィ。もう少しかかるかと思っていたよ」

 

「酷いえ!父上の背中を見て学べと言いながら、家に放置とかなに考えてるんだえ!危うく、焼き殺されるところだったえ!」

 

「初めから用心するのといきなり襲撃されるのでは怖さが違うだろう、ドフィ?あの程度逃げきれないならばこの世界は生きてはいけないよ」

 

「だからって置いていくのは酷いえ!」

 

「気絶するドフィが悪いよ」

 

「無茶いうなえ!!」

 

まるで見てきたみたいにいう父上に、ドフィは嬉しいやら悲しいやら感情が無いまぜになり、怒るしかなかった。父上は初めからドフィがここにくるとわかっていたのだ。死ぬとは思っていなかった。どれくらいで来れるか確かめたくなったのだ。たしかにこのときも、ドフィの行動力は父上の予想を超えられた。

 

覇王色は相手を威圧する力で、中でも特殊な種類の覇気だと教わった。この力は使用者の「気迫」そのもので、数百万人に1人しか素質を持たないが、大海賊ロジャーの右腕冥王レイリーによると世界で名を上げる大物はおおよそこの資質を備えているという。

 

この覇気を持つ者は“王の資質”を持つとされる。

制御は出来ても他の2つの覇気と違って鍛錬による強化は不可能で、当人自身の人間的な成長でしか強化されない。

 

ただし制御できない状態のままでいると、激情などに駆られて暴発するかのようにこの覇気が出てしまい、敵味方関係なく周囲を威圧するため非常に危険であり、どの道鍛錬は不可欠である。

 

また、新世界を進めば“王の資質”を持つ者はザラにいるとされ、その中で決するのは塞き合う“覇王”達の更なる頂点とされる。

 

「なにかあれば起こそう。ここまでこれたんだ、もう置いてはいかないよ」

 

「ほんとかえ?」

 

「ああ、本当さ」

 

「信じられないえ」

 

ほんとうにドフィは父上の中にまだ自分の大好きな父上がいるのかわからなくなっていた。

 

父上は父上ではいてくれたが、父上としての愛情はなにひとつ与えてはくれなかった。路傍の石とかした母上や弟よりは気にかけてくれたが、将来への投資だと言ってはばからなかった。ウミット海運の新人研修となんら変わらない。周りはホーミングの後継者だと見ていたがドフィはわかっていた。父上の目に自分がうつったことは、あの日から一度もない。

 

そして、からくり島をこの世界から完全に消失したウラヌスの恐怖や火炙りの恐怖は、やがてドフィの精神に深いトラウマをうえつけた。父上といれば大丈夫だとわかっていても、同じところにずっといるとウラヌスや天竜人とバレた時のような目に遭うのでは無いかと恐怖にかられるようになった。ドフィは眠れなくなっていた。

 

そんなドフィを気にかけてくれるのは、ホーミングの跡取りで子供なのに覇気が使えて銃の腕もあると褒めてくれる周りの大人だった。

 

その矢先に元天竜人の存在を抹殺したい世界政府に金で雇われた暗殺者のせいで、ギバーソンのところの見張りの下っ端達が全滅した。

 

「ドフィがヘマするとは珍しい。よほどのてだれだったんだね」

 

「おう」

 

「なにかあったのかい?」

 

「みりゃわかるだろ。しくじったんだよ。ギバーソン社長んとこの見張りが全滅しやがった。あいつら、おれなんか庇う暇あったら海に突き落としたらよかったんだ。そうすりゃイールの電気で瞬殺だって知ってたくせに」

 

「ああ、なるほど。彼らはドフィを特に可愛がっていたからね、つい庇ってしまったんだろう。とっさのことだと案外頭は回らないものだよ。子供を庇うのはまともな大人の性質だ」

 

アンタがいうのかとドフィは思った。よりによってそんな言い方するのか。おれがそうして欲しいのはアンタなのに。

 

「ドフィ、襲撃犯がどんな奴らか覚えているかい?」

 

「ちちうえ?」

 

「お前がやりたいとそこまで考えることは生まれて初めてだろう。やるようにやりなさい、使えるものは親でもつかいなさい。私はその全てを肯定しようじゃないか」

 

なんでそんなふうに言ってくれるくせに、一番欲しい言葉をくれないんだアンタは!!!

 

ドフィは衝動的に復讐をするため、ひとり、ウミット海運を飛び出したのだった。

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