(未完)ロストマンのセイリング・デイ(王直→ホーミング) 作:アズマケイ
海賊王になるには、ロジャーの意思を継ぐ者、あるいはロックスの意思を継ぐ者でなくてはならない。血縁は関係ない。それ以外は白ひげが認めないから意味は同じ。世界政府が禁じてなお、脈々と受け継がれてきた歴史の本文を理解して、戦いを挑む者でなければならない。
世界政府は、未来の海賊王がしかける世界中を巻き込むほどの巨大な戦いを恐れている。すでに準備を始めている世界で一番愛している家族のために、どこまでも堕ちることを決めた男が準備をしているからなおさら。
白ひげと人堕ちホーミングはその時を待っている。赤髪を除く四皇達、あるいは超新星を含む挑戦者たちはそれが自分だと主張するためにずっと新世界でしのぎを削っている。だから、ひと繋ぎの大秘宝は実在する。
全世界にばら撒かれた情報はまたたくまに拡散され、新時代が幕を開けることになる。
その日、世界は思い出すことになる。四皇の中では穏健派で、赤髪の次に秩序側である。暗黙の了解でそう認識されていた白ひげが、今でこそ、と但し書きがつく、所詮は海賊にすぎないのだということを。かつてロックスという本気で武力で世界をひっくり返そうとした男に賛同して歴戦の猛者たちと同じ船に乗っていたという事実を。ロックス再来に王手しながら不慮の事故で戦線から離脱した人堕ちと手を組んでいた時点で、かつてを思い出すのは自明の理だということを。
白ひげ海賊団船長の大海賊白ひげ。グラグラの実の能力者で圧倒的な戦闘力を誇る世界最強の男。寄る年波に抗えず、身体は衰弱していると噂されていたが、所詮は噂にすぎないのだと思い知ることになる。
息子たちの全てを受け止め、守りきった生ける伝説の寵愛は、どこまでも息子達と白ひげ支配下の非加盟国、そして海賊王を本気で目指す者たちだけに向けられている。世界政府と加盟国ではない。あたりまえなのに、あたりまえを忘れていた人々は、これから世界はどうなるんだと恐怖するのだ。
ひとつなぎの大秘宝が存在すると宣言し、新時代の到来を高らかにうたいあげた男はいったのだ。最果ての地で、白ひげに戦いたいと思わせるような男でなければ、海賊王とは絶対認めないと。絶対強者にしか許されない傲慢でありながら純然たる事実からくる本心を全世界に宣言した。
暗黙の了解をわざわざ自ら宣言したのだ。暗黙の了解をいいことに謀殺しようとする世界政府の思惑を許してたまるかと書いてある手紙がきっかけかは不明だ。何度読んでも白ひげがロックスかぶれの元天竜人の手紙なのに、いつもまるで見てきたように話す王直を思い出していたことはたしかだが。
何百年もこの世界を守り続けた正義の要塞はすでに半壊だったが、この日、白ひげによって全壊することになる。沈没させることもできたが、あえて隆起させた。戦争を戦い抜いた猛者だけが生き残った。白ひげが全力で戦っていないと世界政府と海軍が思い知るのはいうまでもない。
同日、火拳のエースを捕らえて七武海入りしたはずの黒ひげは百獣海賊団と手を組み、王直率いるハチノスと全面衝突し、インペルダウンも陥落した。世界秩序たる3つの象徴がすべて完膚なきまでに叩きのめされた。
「要塞などまた建て直せばいいのだ。ここは世界の中心マリンフォード。白ひげが宣言した新時代を恐れる人々にとって、我々が生き残り、今ここにいること。それ自体に意味があるのだ。仁義という名の正義は滅びはしない。だからこそ、海軍は変わらなくてはならない。世界政府もまた。諸君らの奮闘を期待する」
今回の全ての責任をとり辞任することになったセンゴク元帥の後任は、サカズキ元帥となった。
「人間は正しくなけりゃあ 生きる価値なし!!! お前ら海賊に生き場所はいらん!!!海賊という“悪”を許すな!!!」
就任式典でそう演説することになるサカズキ元帥がかかげる正義は徹底的な正義である。今の海軍にもっとも必要な男なのは間違いなかった。
「麦わら屋と火拳、おい待てなんで海侠までいるんだ!?うちに魚人の輸血剤ストックあんまねえぞ!?おい、ベポ!今すぐにウミット海運に連絡して持ってくるよう伝えろ!」
「アイアイキャプテン!」
みるからに助ける気満々のやりとりである。ウミット海運と連絡がとれるということは、エースの父親ホーミングの部下かなにかかと思う者がいる。いや、シンボル的にドフラミンゴファミリーだろと考える者がいる。なんにせよ味方なのは間違いない。ルフィ達の命を命懸けでここまで繋いできた者達はほっと息を吐いた。
「おいこら早く乗せろ!!麦わらとは敵だが、悪縁も縁だ。こんなところで死なれちゃう困るんだよ!何勝手にしにかけてんだ、もっとうまくやるはずだったろうが、麦わら屋!こいつらまとめてにがすぞ!一旦おれに預けろ、おれは麦わら一味と同盟を組んでるハートの海賊団船長トラファルガー・ロー!医者だ!!」
こんなに頼りになる宣言がほかにあっただろうか。
なお。
1週間前、死の外科医がなにもしらないまま革命軍やウェザリア、王直に啖呵を切るのにつかった『神の天敵』の意味を本人がしるのは、3人の大手術をおえた翌日である。
14年前、Dの意味を知りたいなら海賊王か四皇になるしかないと笑っていたドフラミンゴの意味をようやく理解した彼は。おのれがやりたいと思ったからやったことがとんでもないことだったと青ざめることになる。
おめでとう、トラファルガー・ロー。お前も今日付けで麦わら一味と同列だとドフラミンゴからデンデン虫でからかわれるのは別の話だ。
「おまえにはでかい貸しができちまったな、ロー。いつか借りは返すから、使いどきを間違えるんじゃねえぞ」