(更新停止)ロストマンのセイリング・デイ(王直→ホーミング)   作:アズマケイ

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第13話

金獅子海賊団海賊戦艦提督金獅子のシキ。この男は名刀桜十と木枯しの二刀流でゴッドバレーのロックス海賊団が壊滅したあと、大規模の海賊艦隊を率いて大親分として名を挙げた大海賊だ。

 

ゴールド・ロジャーや白ひげエドワード・ニューゲート、ビッグマムとしのぎを削っている伝説級の海賊。新世界の覇権を巡って争う、四皇の一角でもある。

 

超人系悪魔の実、フワフワの実の能力者で自身を含むあらゆる物を浮かせることが出来る浮遊人間。触れたものを浮かして操ることが可能で、自分自身も浮かして飛ぶこともできる。ただし、自分以外の生物は能力の対象外だがなんの制約にもなっていない。

 

なにせ、その能力を覚醒させ極めたシキの力は驚異的で、山のような大岩や自身の戦艦を浮かせるのはもちろん、島を丸ごと持ち上げることもできる。さらに、悪魔の実の能力者の弱点である海水すらも操ることができるため、あらゆる能力者に対して天敵になり得る存在だ。

 

ただ単に物を浮かせて動かすだけでなく、地面や雪を獅子などの形に変えて相手に襲い掛からせるなど、かなり洗練されたレベルで能力を使いこなしている。

 

シキはロジャーのことを高く評価しており、その実力も認めているが、性格や考え方は真逆。自由を大事にするロジャーとは対照的で、シキは海賊の本分は支配だと語っており、歯向かう者やミスをした部下に対しては容赦をしない残虐な性格をしている。

 

豪快かつ大胆であると同時に、狡猾で忍耐強い一面も併せ持っているため、非常に厄介な人物だ。

 

 

 

 

金獅子のシキは私の儲け話において最も危険視すべき存在だ。宇宙船や空島を観測される可能性がある。その艦隊を率いていて、シキが空を飛んで戦うスタイル故に、悪天候の影響をモロに受けてしまう。そのため優秀な航海士や気象に詳しい学者が拉致される事件があいついでいるのだ。

 

もちろん私の大事な取引相手であるウェザリアも、世界で唯一グランドラインの天気予報ができて、グランドラインの気象を把握しているため幾度も勧誘をうけてきた。襲撃されなかったのは、ひとえにウェザリアが人工的に移動できる空島であり、私が見聞色で予知した航路を伝え、あわないようにしてきたからだ。

 

おかげでしょっちゅうウェザリアに行く必要があり、宇宙船が見つからないよう気を使う羽目になり、ウミット海運の仕事も私の儲け話も進行に多大な悪影響が出始めている。ハレダス博士が世界政府や海軍に何度も直談判しているのだが、大船団を率いる大海賊。しかも制空権を握ることもできるあの男を捕縛することなど出来るはずもない。いや、捕縛してもやつはその気になればインペルダウンだろうがなんだろうが必ず脱獄する。海軍は厄介な悪魔の実が別の人間に渡るのを嫌がり、研究対象として血統因子を欲しがり終身刑にしかしようとしない。

 

世界政府も海軍もあてにならないなら、やるしかない。ただ、今の私はまだ表舞台に立ちたくない。1人ではシキの相手は到底無理だ。白羽の矢を立てたのがこの船の大将であるガープ中将というわけである。

 

深層海流に乗ってガープ中将の船が海底深くに沈んでいく。世界最速で新世界エッド・ウォー沖に向かっている。太陽の光すら差し込まない暗闇に世界が包まれたあたりで、にっとガープ中将が笑った。イタズラが大成功した子供みたいな顔だ。

 

「ガッハッハ、うまくいったなァ、ホーミング!さすがは元天竜人頭がいいな!」

 

肩をバンバン叩いてくる。あまりの痛みに私は顔を歪めた。拳骨のガープなんだから少しは加減してほしいものだ。咳き込む私にガープ中将が手を合わせてくる。

 

「いやァ、すまんすまん。待ってろよ、ロジャー!今度こそ決着をつけてやるッ!!」

 

「はは、世界最速で宿命のライバルのところに行くわけですからね。お気持ちはわかりますよ。ガープ中将の本命はあくまでもロジャーですか」

 

「えっ、あ、ち、違うんだ今のナシッ!勘違いしないでくれ、ホーミング!おれはウェザリアやウミット海運が金獅子のせいで酷い目にあってんのに、見て見ぬふりする上の嫌がらせにはずっと歯痒くて仕方なかったのはほんとだからな!!」

 

「大丈夫です、わかっていますよ。あなたのおかげで妻もロシーも無事なんですから。ロシーは元気にしていますか?」

 

「そりゃもう元気すぎるほど元気だ、こないだなんかまた何もないところですっ転んで大怪我してたからな」

 

「相変わらずですね、はは」

 

「なあ、ホーミング。いいかげん、ロシナンテに手紙の返事書いてやってはくれんか?寂しがっとるぞ?」

 

「それだけはいくらガープ中将のお願いでもできません。6年前のあの日、私は理由はなんであれ国を滅ぼしました。あの子は私と運命をともにすることを拒んだんだ、血に塗れた私はもう父上ではありませんから」

 

「ホーミング、まだそんなこと言ってるのか!お前は完全なる正当防衛だろうが。世界政府が犯罪者にしたがっても、それだけは許さん」

 

「ありがとうございます、ガープ中将。でもこの話はここで終わりにしましょう、埒が開かない」

 

「強情な奴め......天竜人がみんなお前みたいなやつならいいのにな」

 

「ガープ中将。私は人間ですよ、昔から」

 

「そうだったな、すまん。ひどいことを言ったな」

 

ひとりごちるガープ中将に私はなにも言わなかった。くだらなすぎて話を続けるのが苦痛だ。

重苦しい沈黙が降りる前に私は話題を変えた。

 

「ガープ中将、失敗はできませんよ、絶対に。負けたら今回の計画に協力してくれるウェザリアのみなさんが拉致されることになる。わかってますよね?」

 

「わかっとるさ、もちろん」

 

海軍の英雄の士気は途方もなく高くなっている。

やがて深層海流はガープ中将の船を新世界エッド・ウォー沖に到達させた。船はまだ海底にある。

 

「イール、手筈通りにみんなとそろそろ配置についてくれ」

 

「わかった、船長」

 

「失敗できないが、死なれたら元も子もない。万が一気づかれたらすぐ帰ってこい」

 

「了解」

 

イール達魚人がガープ中将の船から離れて配置についていく。海面ではロジャーの実力と、世界を滅ぼす兵器についての知識を欲したシキは、ロジャーを幾度に渡って右腕になるよう勧誘しているはずだ。海賊艦隊を何十隻も引き連れて現れたシキはロジャーと交渉しているところだった。支配に興味のないロジャーは誘いを断り、まもなく両者は激突する。

 

「本当にできるんだよな、ウェザリアは」

 

「門外不出の大発明を行使しなきゃいけないほど追い詰められているの間違いですよ」

 

ウェザリアはたしかに遥か上空からこの戦いを見守っている。実際は護衛を兼ねている私の宇宙船の試運転だが大した違いはないだろう。

 

海底で潜伏していたイール達が動き出す。目標から返ってくる電波を検知し、目標を捉える。魚人の中でも電気を扱う精鋭ばかりだ。彼らは電磁波のなかでも、電波は光波より大気圏内の透過性が高く、より長距離でも目標を探知・捕捉できる。事前の偵察によって得た情報を元に、より正確な設定が帰還したイール達からもたらされる。

 

私は宇宙船のスペーシア中尉に信号をおくる。

 

熾烈を極める激戦が繰り広げられている海上に、本来ありえないはずの台風が訪れる。そして、この日、エッド・ウォー沖は全長700キロの単一としては観測史上最長と認定する雷に襲われることになる。水平方向に広がり、長さ数百キロに到達する雷は、なぜか金獅子海賊戦艦を直撃した。

 

ガープ中将の船が海面に浮上する。あたりは瓦礫が広がり、ロジャーの船はなかなか進むことができないようだ。まだ金獅子の戦艦はある。しぶといやつだ。

 

「いきましょう、ガープ中将」

 

「ガッハッハ、面白くなってきたな!」

 

ゴッドバレーで学んだくせに、あんな大船団で来る方が悪い。悪く思うなよ、金獅子。私の儲け話の邪魔をするからだ、捕縛なんて許さん。ここで死ね。


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