(未完)ロストマンのセイリング・デイ(王直→ホーミング)   作:アズマケイ

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第134話

「すまないな、見習い君。おれはどうも白ひげにいわせると、心ってやつがイマイチ理解できてないらしい。これを見て欲しいんだが、あってるか教えてくれるか。見るのも嫌ならその場で燃やしてくれていいから」

 

ハチノスにて、何枚もの報告書とマッチをカイドウに渡しながら話しかけてきた男がいた。王直と自己紹介した男は、海運商としてしのぎを削ってきた運輸王ウミットに負け、違法な武器商人に堕ち、最終的に海賊になった男らしい。新しく入る船員を調べるのが日課だという。

 

狙撃手としてロックスに入った王直は、少しでも見聞色の精度をあげるため、敵味方問わず情報収集を欠かさない男だった。人間不信に陥り、一言も話さない無口すぎる見習いにリンリンやニューゲートが手を焼いているのを見かねて、話しかけてきたのだ。

 

カイドウは報告書に目を通した。

 

カイドウ。偉大なる航路のウォッカ王国生まれの15歳。ウォッカ王国は経済状況が闇のシンジゲートの関係で極めて不安定であり、周辺国と戦争をわざと行い、それに勝つことで賠償金を収奪することを繰り返し、天竜人に払う莫大な「天上金」を用意することで知られる。

 

すぐ下にニューゲートの解説がかいてある。

 

納められなければ非加盟国のように奴隷として公然と国民を売買され、海軍に守ってもらえず、海賊に国が踏み荒らされる事態が発生する。彼らとしては生きるために必要なことだ。

 

字体が違うから、ここからは王直の報告書だろう。

 

カイドウは、物心ついた頃から少年兵として幼少期を過ごし、わずか10歳にして最強の兵士と讃えられ戦場で活躍していた。カイドウが13歳の時にウォッカ王国は、海軍にカイドウを身売りさせ、世界会議の参加権を得る。

 

「得る」のところが消されていて、得ようとしたと直されている。その真下にわざわざ赤字で解説がついている。

 

王国の権力者たちからすると自分達でコントロールしきれないほど強い兵士というのは逆に厄介な存在でもあった。 そのため、カイドウが13歳の頃、ウォッカ王国の国王は、厄介払いとでも言うようにカイドウの戦闘能力に目を付けた海軍に彼を引き渡す事を決めた。その見返りとして、次回以降の世界会議の参加権をウォッカ王国は得るはずであった。 こうして本人の承諾無しに身売りも同然で鎖で拘束し、完全に本人の意思を蔑ろにして、海軍に徴兵された。政府の“いぬ”になることや政治に使われることに反発して海軍船から脱走。初頭手配で7000万ベリーの賞金首となる。

 

海軍及び四皇に挑み捕まる事18回の文章が、また赤で消されている。

 

それから2年間は食事目的の為にわざわざ監獄船に出頭して、その後再び脱走して腹が減ったらまた監獄船に戻り食事すると言う行為を繰り返していた。

 

カイドウは特になにも思わなかったから、ライターごと報告書を返した。

 

「わりいな、こいつの見聞色はおれがいねーと使いもんにならねーんだ」

 

カイドウをスカウトしたニューゲートは、王直の肩を叩こうとして逃げられ、手が空振りしていた。行き場を失った手が勢いのまま、目の前のテーブルを粉砕する。

 

「おいこら、逃げんな。ここは親睦を深めとくとこだろう」

 

「ばかいえ、机ごと死ぬ未来が見えたら、誰だって避けるわ。殺す気か!」

 

そこからカイドウのロックスとしての見習い時代は始まった。

 

カイドウがロックス海賊団に入った際には「ロックス海賊団は無敵」と人々からは称された。

スカウトした白ひげはもちろん、姉貴分のリンリンからは「ロックスはロクでもねェ男だ、信用はするな。何かあったらおれに言いな」と忠告するなど、彼女なりにこの時から目を掛けられ、特に弟分として可愛がられていた。

 

王直は、ワプワプの実でイタズラすることに命をかけていた。あるいは、好きあらばカイドウに、ニューゲートの女性関係やずっとバンダナをしている真の理由、ヒョウ柄タイツが性癖になった理由などいろんなことを暴露しようとして、本気でニューゲートから殺されかけていた。

 

ロックス海賊団が壊滅するゴッドバレー事件の直前も、カイドウはリンリンからウオウオの実を与えられる恩をうけた。今だにでかい借りがある、恩は一生だぞといわれていた。カイドウからしたら、昔の話なわけだが。

 

そしてゴッドバレー事件でロックス海賊団壊滅後、カイドウは海軍に捕まり、政府の実験施設で「血統因子」を抽出され、囚われていた。

 

自分と似た境遇を持つルナーリアと共に自力で脱出し百獣海賊団を結成。その後は個人の強さのみで凶暴な海賊達の尊敬を集め、四皇まで上り詰めることになる。

 

そのころ、王直はハチノスの元締めをしていて、消息不明になっていたカイドウが自力で脱出し、無事に海賊になったと知って喜んでいた。ただ、海賊というよりは、ウミットにいいように扱われる海賊派遣業をするようになっていたため、不思議に思った。

 

ニューゲートがニヤニヤしながら、トーンダイヤルを渡してきたのだ。

 

ウミットッ!!こないだ、酒の肴に政府科学班の研究施設に最近ルナーリアを輸送したって自慢してたろう!どこだ、どこにある!?うちの優秀な見習いが世界政府に拉致られた!あいつらにとってこれ以上ないほどの実験台だろうよ!!教えねえと今からハチノスな奴らにお前んとこ襲わせるからな、はやく教えろ!!

 

なに?ご自慢の見聞色で調べたらいい?馬鹿野郎ッ!!今のおれにはなにもみえねえんだよ!ロックス失った直後の精神状態で見える見聞色なんかあてになるかァッ!!

 

たのむよ、一生のお願いだウミット、これ以上世界政府に奪われたらおれは頭がイカれちまう!!なんでもするから教えてくれ!!カイドウを助けてくれ!!

 

「到着した時には研究施設が破壊された後だったからな。そっからもうあいつは海賊派遣業しかできねーんだよ、グララララッ!!」

 

本気で海賊王を目指すカイドウと自分好みの海賊王じゃないと認めないニューゲートの争いは今だに決着がつかない。その余波で2年前、ニューゲート側についていた王直は戦死した。そのワプワプの力は黒ひげではなく、たまたま発現した見聞色でみた王直と自分がぐちゃぐちゃになり、ロックスかぶれになった元天竜人のところに渡った。

 

エッドウォーの狙撃手がそいつだと覇気で気づいてから、ずっと金獅子は空島ウェザリアを巡り、人堕ちホーミングに喧嘩を売りにきている。時々現役を退いたことをいいことにガープが来ていることもある。

 

「ウォロロロロ、お前らの戦争を終わらせにきたぞ!!」

 

「世界を終わらせにきたの間違いだろ、カイドウ。今度は何のようだ、ウェザリア落としてやるの脅迫は聞き飽きたから、さっさと要件を話しやがれ」

 

辛辣な物言いにカイドウは笑うのだ。戦いに来た。ホーミングは露骨に嫌そうな顔をしていた。

 

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