(未完)ロストマンのセイリング・デイ(王直→ホーミング) 作:アズマケイ
マリンフォード頂上戦争が終結し、はや2年が経過している。当時のセンゴク元帥はすべての責任をとり辞任。盟友のガープ中将と共に退役を望んだが、コング世界政府全軍総師に請われ、今は大目付として、ガープ中将は肩書きこそ残ったが第一線を退き、後進の指導に当たっている。
白ひげが新時代到来を宣言したことにより、各地の海が混乱することを想定し、故郷であるフーシャ村に戻ってしばらくの間駐在することになった。なぜかここにいるが。
ホーミングの問いにガープ中将が笑いながらいうには、ダダンから追い出されたそうだ。マキノの店で待ち伏せていたダダンからは、助かったとはいえ、世界政府と四皇の政争にエースを利用したことが許せない。ガープにとっても彼女にとってもかけがえのない家族であったエースを処刑台送りにしたことはなおさら。それに加えて思想犯がどういう扱いを受けるのかドラゴンで知っていながら、妻子の恩がある人堕ちホーミングを同じ思想犯にまで堕としたことも。
ホーミングが30年かけて作り上げた建前はあまりにも強硬だった。ホーミング自身が制御不能になるほど、人堕ちホーミングの生きてきた証は深く世間に受け入れられていたわけだ。ガープ中将ですら、今だに真意に辿り着けていないくらいには。
仕掛けた世界規模の戦争の火蓋はたしかに切っておとされている。あの日、ホーミングが死んでいたら世界の流れは決定打になっただろう。ホーミングがドフラミンゴにより最高の終わりを阻止されて、最悪の事態は免れた。
しかし、あの日から世界はたしかに新時代を迎えた。弱者に権利はないが強者が望めば再起できる世界、あるいは形を変えたロックス時代は再来しつつある。影響はたしかにあるのだ。海軍への入隊希望が目に見えて減り、ウミット海運や白ひげ達の支配下に入りたい国地域が増えているくらいには。
ガープも一般市民のその気持ちを理解しており、ただ黙ってダダンの暴言を甘んじて受け入れた。
「謝ってこいだそうじゃ、謝って欲しいのはわしの方なのにな」
「何度も申し上げたじゃないですか、ガープ中将。ごめんなさい、もうしませんて」
「アホか、その程度で許されると思っとるのか。それで許されるのは子供だけじゃ。お前が天竜人かどうかなんて、今更どうこういう奴はおらんわ。そんなくだらんことのために、どれだけの人間の傷になろうとしたんじゃ、ホーミング」
「ごめんなさい」
「そんなやり方でエースが助かったって、あと追ってなにしでかすかわかったもんじゃない。少なくてもあの日、お前の中にいた王直もホーミングも、わしの知っとる男じゃなかった」
「ごめんなさい」
「そういうわけだから、せいぜい逃げ回れ。殺しはせんが、手加減もせんからな。......そこまで悩んでるなら、なんで一言相談してくれんかったんじゃ。ひとことこぼしてくれればわしだってなあ!海軍とはいえなあ!お互い見て見ぬ振りしながら、うまいことやってきただろうが!何で一番大事なときに教えてくれんのだ、ホーミング!あとからドラゴンに20年も前から悩んでたって知らされたみにもなってくれ!何で30年以上付き合いあるわしじゃなくて、初対面のベガパンクやドラゴンにはこぼしとるんじゃ、しかも後からバレるような巧妙さで、あーもー腹立つー!!」
そういうわけで、ホーミングは暇があればすぐやってくる30年来の腐れ縁から、逃げ回っているわけだ。ワプワプの力を覚醒させないと殺されるレベルで、どうやらガープ中将はホーミングに友情を感じていたらしかった。2年前の再会時にそこまで思われてるとは知らなかったとうっかり本心をガープ中将にこぼしたせいで、今に至るのは間違いない。
父上が悪いが息子達の総意である。
家族を殺したウィーブルが七武海入りしたとき、黒腕のゼファーは特に反応をみせず、海賊遊撃達として今なお活動している。4年前にドフラミンゴが事前に説明をしてくれたのもあるのだろうか。どこまで耐えてくれるのか。子供は成長を待ってくれない。感情付きの子供の人間兵器を前にしたとき、いつまで保てるのか不安だ。そんな報告をうけたときもある。
大将青キジは海軍の改革のため、新たに創設された機密機関に就任、ロシーもそちらになったと知らされてもいる。いいのがバラしてとつっこんだら、30年たってようやく人間になったんだから、父親もちゃんとやれとキレられた。
赤犬は元帥就任後、海賊殲滅のため本部の場所を新世界の支部G1と入れ替えたそうだ。それはウミット海運経由で知っていると答えたら黙って聞いてろと怒られた。
そして世界政府は、立場上前線に出張りにくくなった赤犬、ガープや青キジら退役組の抜けた穴を補てんするため、「世界徴兵」を行い、藤虎や緑牛をはじめとする強大な戦力を世界政府加盟国から海軍に編入、より強力な正義の軍隊となった。 ホーミングがいっていた、新世界に睨みをきかせられる海軍に、ようやくなろうとしている。そこまで言われてホーミングはガープ中将の中にある人堕ちホーミングの強固さを悟るのだ。
おもしろそうなことやってるなあ、とカイドウは聴いていたが、口を挟んだ。
「藤虎と緑牛ってのはおれと同じか?」
「あァ、調べはついてる。どっちも非加盟国が世界政府加盟と天上金免除を理由に入隊させられた形だ。世界徴兵っていうんだな、しらなかった」
「ウォロロロロ、あいかわらずこりねえ連中だ!ロックスに対抗すんのにおれを売ろうとして、ロックスの名声を不動のもんにしたってのに!もう忘れてやがるのか!」
「喉元過ぎればなんとやらだな。さっそく命令違反してるようだ。特に藤虎はキャプテン・キッドと共闘したり、情報提供したり、功績を自分のものにして庇ってやがる」
「ジハハハハッ、ズシズシはおもしれえ能力だったぞ!おれは嵐で制御を失っちまうが、あっちは範囲がずば抜けた重力操作だ!能力だけなら上位互換だな」
「おれはモリモリが欲しいな、人工悪魔の実に」
「だまれ、おまえら。わしはホーミングに話をしとんじゃ!!ホーミングも平然と金獅子達と話をするんじゃない!」
「おれがいうのもなんだが、ホーミング。そりゃあ30年来の腐れ縁に『え、おまえに親友って思われてたの、おれ?まじ?微塵も思ってないから自殺悩んでるのいわなかったわ』っていわれたら、ガープじゃなくてもキレると思うぞ?」