(更新停止)ロストマンのセイリング・デイ(王直→ホーミング)   作:アズマケイ

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第14話

 

 

「ガッハッハ、せっかくの殺し合いのとこ悪いが金獅子がウェザリア怒らせたのが原因だ!悪く思うなよ!!ロジャー、今度こそ決着つけにきたぞォ!覚悟しろォ!!」

 

エッド・ウォー沖では1番いてはいけない男の声が響き渡る。この声は海賊には悪魔の呼び声も同じだ。この瞬間、たしかに世界は凍りついた。

 

マリンフォードから新世界に入りエッド・ウォー沖にくるにはあまりにも時間がかかるはず。それは新世界でしのぎを削る四皇達の常識だ。ガープ中将の船だとロジャー海賊団と金獅子海賊戦艦が気付くのは時間がかかった。

 

私には関係ないため魚人達に金獅子海賊戦艦を沈めにかかるよう指示をだした。皆殺しにしなければ報復されかねないから、容赦するなとは伝えてある。これはウェザリアを含めた世界中の気象予報士、航海士を金獅子から守るための戦いなのだ。躊躇するような社員は私の船にはいないのだが。

 

ようやくどちらの船も一気に騒がしくなる。それは当然といえた。

 

ついさっきまでシキが海賊艦隊を率いて一船のみのロジャーに対し、脅しをかける形でロジャーが在処を知る世界を滅ぼす兵器と自身の兵力・計画があれば世界を支配できると持ち掛ける緊迫の場面だったのだ。

 

シキは自由を愛するロジャーには断られ、交渉決裂によりロジャー海賊団と戦争になる。互いに激しい戦いを繰り広げているところだった。

 

そこに突然の悪天候と落雷。

 

ロジャー海賊団は小さな船一隻だったこともあり、かろうじて避けた。しかし、金獅子艦隊の八割が壊滅、金獅子の艦隊の残りを沈没させるべく活動を開始した魚人達によれば、船体から抜けた舵輪がシキの頭に突き刺さり抜けなくなった上から落雷が直撃したのか黒焦げになっているらしい。

 

不慮の事故の結果、痛み分けとなり戦いは終わった、はずだった。

 

それがいきなり現れたガープ中将の船から大声でウェザリアのせいだと叫んだのだ。生き残っている誰もが空を見上げた。台風の目からわずかな青空が見える。そこからウェザリア名物のシャボン玉が見えたらもう誰もがここにいたらまた台風か落雷に晒されると気づいてしまうのだ。

 

ロジャー海賊団も金獅子海賊戦艦もただちに逃走を開始するしかない。この海戦の末路が広がれば二度とウェザリアを攻撃しようとする馬鹿は現れなくなるに違いない。

 

それはさておき、あたりに特大の水飛沫が上がる中、魚人達がガープ中将の船の進行先の障害物を全てあけてくれるからどんどんロジャー海賊団に近づいていく。

 

ロジャー海賊団の海賊旗がよく見える位置まで船が近づいたとき、黒ヒョウのミンク族パンサがガープ中将の肩に飛び乗った。

 

「はいはいはーい、船長、船長質問でーす!僕達イヌアラシ様とネコマムシ様に会いにいってもいいですかー?」

 

ちゃっかり反対側に黒ウサギのシデも乗っている。

 

「ついでにあの噂のおでん様がどんだけ強いのか見に行きたいでーす!」

 

「あの2人がお仕えしてるんだから、絶対強いですよね!ガープ中将についていってもいいですかー?」

 

私の船に密航してきただけあって度胸はあるようだ。思わず笑ってしまう。

 

「いいけど瓦礫には当たらないようにしなさい、船から離れたら守ってやれないよ」

 

「大丈夫でーす!」

 

「ガープ中将、ガープ中将!ぽーいってやってー!」

 

「ガッハッハ、そういうことならお安いご用だ。死ぬんじゃないぞ!」

 

「はーい!」

 

「わかったー!」

 

「せーの、とりゃあああ!」

 

「きゃー!」

 

「わー!」

 

無邪気な13歳の少年達の笑い声が響いている。ガープ中将の全力の投擲により、2人はロジャーの海賊船目掛けて飛んでいく。こちら目掛けて発射された砲弾が2人に着弾する寸前にばら撒かれた種が芽吹いていく。一瞬にしてあたりに鮮やかな花吹雪が舞った。2人はお構いなくありったけのタネを海賊船にばら撒いていく。これで火薬という火薬が花になって役に立たなくなっただろう。

 

「なんだありゃ!?」

 

「MADS最新作の火薬で芽吹く植物です。なかなか買い手が見つからないっていうんで、重宝しているんですよ」

 

「ガッハッハ、そりゃそうだろうな。どこの国も武器ばかり欲しがってるんだから。そりゃいい!よし、おれも行くとするか!ホーミング、船は頼んだぞ!沈んだら帰れないからな!」

 

「任せてください」

 

とうとうロジャー海賊団にガープ中将が殴り込みにいった。阿鼻叫喚が聞こえてくる。

 

「イール、船はこのままでいい。あまり離れるとガープ中将が戻れなくなってしまうからな」

 

「了解した、船長。でもこれだと金獅子のところには......」

 

「充分だ、ありがとう」

 

「そうか?」

 

「ああ」

 

私はイール達に船の護衛を任せて持ち場を離れる。練り上げられた覇気は時に未来予知ににた領域に達するのだ。

 

私は銃を抜いた。

 

飛んでくる崩壊寸前の戦艦の山が見えた。

 

見つけた。

 

久しぶりだなあ、金獅子。ロックス時代を忘れてないか私に見せてくれないか。能力にかまけてあっさりヘッドショットされるほど落ちぶれたわけじゃないことを教えてくれ。過剰な覇気なら覚醒した能力と拮抗するし、なんなら練度の差では貫通することを忘れてないか?大丈夫か?

 

誰もが黒歴史というが私はあの時代もそれなりに楽しかったんだよ。だからあの時みたいに殺し合おうじゃないか、全盛期が今だなんて悲しいこと言わないでくれ。

 

過剰な覇気を込めて弾丸を撃ち抜く。鉄の塊が次々と貫通する。それはたしかに金獅子に届いた。

 

ああくそ、止められたか。無性に悔しくなってきた。なんで今の私にはワプワプの力がないんだ。かつての私ならあの数秒で回り込んでヘッドショットすることができたはずなのに!!!

 

弾丸を補充しているとロジャー海賊団に逃げられてしまったガープ中将達が撤収してきた。時間切れか。私は深いため息をつくしかない。非常に名残惜しいが、今回の私の戦場はこれで終わりだ。まだガープ中将に本性をみられるわけにはいかない。動きにくくなってしまう。

 

「お疲れ様でした、ガープ中将。今回もロジャーに逃げられてしまいましたね」

 

「なあに、あそこにまだ残党はいるから問題ない。まだ戦いは終わってないぞ」

 

肝心のロジャーとの決着こそまた持ち越しになってしまったが、ガープ中将はかなりご機嫌だった。

 

「しかし、しばらくみないうちにまた腕を上げたな、ホーミング!やっぱり天竜人ってのはちゃんと鍛えたら強いんだな!おれのうっかりゲンコツでもピンピンしてるからそうだとは思ってたんだよ!」

 

「うっかりで殴らないであげてください、さすがに死にますよ」

 

「ガッハッハ!まあまあそう言うな。仕方ないだろ、むかついたんだから」

 

「全然よくないですよ」

 

そして数時間後、ようやく到着したセンゴク大将とおつるの部隊に金獅子と残党を引き渡した。ガープ中将は大量の始末書と減俸とひきかえに新たなる伝説を刻んだ。

 

金獅子は全身黒焦げなんだからいっそのこと射殺したほうがあの世にいけるだろうに。どうせ世界政府のことだ。なにがなんでも生かそうとするだろう。

 

 

 

 

 

こうして四皇金獅子の陥落は全世界を揺るがすニュースとなってモルガンズによって号外がばら撒かれることになる。ウェザリアに手を出してはいけないという不文律が築かれたのはいうまでもない。

 

 

 

 

ある日のインペルダウン レベル6

 

「ジハハハハ、あの白ひげが海軍と戦争するだと?海軍自ら新世界の均衡を破るとはなに考えてやがるッ!!おい、麦わら小僧。その話、少し聞かせろ」

 


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