(未完)ロストマンのセイリング・デイ(王直→ホーミング) 作:アズマケイ
大柄でテンプレの様な成金の福耳が特徴的な男が目の前にいる。早朝からル・フェルド財閥に呼び出された私は客室のソファに座っていた。この南の海の方言コテコテで話すのが闇金王ル・フェルド。
現在進行形で私は直々に呼び出されて苦言を呈されていた。
「ロジャーに情報漏らした件はどうしてやろうか思うたけど、算盤弾いたらなんや知らんがこっちの方が儲け出るみたいやから結果オーライやネン。今回は特別に許したるから、次からは絶対に先に教えて欲しいネン。心臓がなんぼあっても足りへんネン。アンタん儲け話に外れがあれへんといっても、先立つモノに代わるモンが無けりゃ補填もエライネン」
「申し訳ありませんでした。ロジャーのところに行くとうちの見習いが言って聞かないもので」
「ホンマ堪忍してほしいネン、ホーミング。ウミット海運がモコモ公国を重視しとるのはわかっとるが、それとこれとは話が別やネン。信用が第一なのはこの世界の常識ヤネン。お前、この世界にいて何年目やネン、新人ちゃうやろ。どう落とし前つけるつもりやネン」
「実はここだけの話、ロジャーの寿命があと1年だと聞いたので話を通す時間がなかったんですよ」
「今なんて?あのロジャーの寿命があと1年?ホンマ?今日も元気にカイドウと戦争しとるあの男が?」
「どういうわけか寿命過ぎてるんですが、クロッカスっているでしょう専属医の。宴で聞いたから間違いないです。この薬飲んでるみたいで」
私が後で入手した現物と同じ種類の薬をみせるとル・フェルドはそれを抱え込んでいる闇医者に見せるようつげた。ついでに宴の会話を記録したダイヤルを渡してやる。しばらくして、病名を特定した医者がル・フェルドに耳打ちした。
ル・フェルドはタバコを消した。そして心底安心したという顔で笑い始めた。
「あーもー心配してソンしたネン、なんじゃいな!先にこれを出さんかい、ホーミング!これじゃあまるで話が違ってくるネン。わしでもたぶん同じことするネン。まさに今しかできない儲け話ってワケやな。それを聞いて安心したネン、お前に限ってとは正直思ってたが、お前身内をすごく大事にするのは周知の事実やネン。だからお前がミンク族に絆されたかと思ってヒヤヒヤしたネン」
「勘弁して欲しいのはこちらの方ですよ、ル・フェルド社長。なぜそうなるんです」
私の呆れ顔をみて、ル・フェルド社長はさらに笑った。
「それはそうと血統因子の研究の進捗はいかがですか?」
「あー、ベガパンク最新作の?奴がいうには最終段階に入っとるそうやネン」
「そうですか、ならサイボーグの研究は?」
「そんなに心配せんでも順調そのものやネン。金と資源さえあればあいつは納期は守るネン」
私が今1番進捗を心配している血統因子とは、「生命の設計図」と呼べる代物であり、ベガパンクの偉業の1つである。 MADSの万年2位争いをしているシーザー・クラウンの「SAD」及び人造悪魔の実「SMILE」、ジェルマ66の「複製(クローン)」兵士やヒトの「改造」研究などにその成果が用いられる計画が進んでいるのだ。
表向き慈善事業家である闇金王が「MADS」のスポンサーならではの研究といえる。そもそもベガパンク達の所属したているMADSはそのレベルの高さゆえにそのスポンサーたるル・フェルドがそもそも無法な金融業をしないと資金も資源も提供できないのである。
それとサイボーグの研究は、闇金でありがちの債権が焦げついた者を「MADS」に送り込み、臓器を売って金を返せというやり方で進んでいる。こちらに噛んでいるのが臓器売買業者ジグラ。主に奴隷や囚人達を使って人体実験している。その者から臓器を取り出して売りさばく。そして臓器の代わりに人工的な何かを入れる。そういう事を繰り返した結果がサイボーグだ。
ル・フェルド社長曰く、借りたお金を返さないクズが世界から減れば世界平和に一歩近づく。だから臓器を売れば返済の足しになる。そして、その身体は世界平和の為の研究に使われる。お前にとっても良い事だろうと債務者にいうそうだ。それが闇金王なりの慈善事業らしい。実に合理的だ。
今回初めて気付いたのだが、顔馴染みなはずのMADSメンバーが自分の血統因子を使ってクローンの赤子を作ったのは明らかにフラグじゃないか。あの女はたしか白ひげの女だったぞ。しかもあの顔は繁華街の元締めの女でスパイじゃなかったか。
クローンがいつのまにか本人と入れ替わり、スパイ活動されていることにさえ気づければもっと優秀な男なのだが。これじゃあどさくさに紛れて暗殺されそうだな。次の闇金王は優秀な男なことを期待しよう。
「世界政府が買い取る前に研究データだけでも欲しいんですよ。いくら払えばいいですか?」
「まったく儲け話のことになるとホンマ情報早いネンなあ、ホーミングは」
「あなたに損はさせませんから安心してください」
後のパシフィスタに繋がる研究データだからなんとしても手に入れたいのだ。インペルダウンに収監されている能力者や七武海達の血統因子を使って作り上げたパシフィスタ率いる海軍大佐コビーと黒ひげにかつての私は敗北したのだから。
「それはそうと同業のよしみで教えてやるが、カイドウに相当恨まれてるネンな、お前。気をつけたほうがいいネン」
「わかっていますよ、もちろん」
趣味が自殺の最強生物からしたら、ロジャーが死んだ後は白ひげが定期的に襲撃にくるわけだから願ったり叶ったりだろう。この男が心配するほどではないと思うのだが、念のため用心しようと思う。
「そういや、ウミット海運は魚人島も大事な取引先やネンな」
「そうですね」
「白ひげ海賊団の支配下やネンな、魚人島」
「そうですね、それがどうかしましたか」
「なあ、怒らんから正直に教えてほしいネン、ホーミング。なんでか白ひげにも情報漏れとんやけど、漏らしたんお前か?」
「それは違いますね、ロジャーと白ひげが仲良しなだけでは。おでんはもともと白ひげのクルーだったわけですから、貸し出すくらい仲良いのはご存じでしょう?」
「ホンマか?」
「白ひげには取引の時に挨拶に行っただけですから」
「ホンマかぁ?まあ、ええけんど。カイドウと白ひげの戦争が長引けば長引くほど、ワイらは儲かるわけやからな。でもなあ、ホーミング。取引先大事にするのも一線ひかなあかんで?絆されたら終いやで、この商売は」
「わかってますよ、もちろん」
「でもなあ、そもそもカイドウがワノ国から手を引いたらどないすんネン」
「その時はその時ですよ、ありえないとは思いますが。なぜか古代兵器情報までカイドウは把握しているようですし、海賊王になりたいカイドウがポーネグリフが必須な以上、大事な拠点としてのワノ国を諦めるとは思えません。あの男はジョイボーイにご熱心だ」