(未完)ロストマンのセイリング・デイ(王直→ホーミング)   作:アズマケイ

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第27話

 

 

バレルズ海賊団は海軍とのオペオペの実の取引の前に、ウミット海運を経由して倉庫王ギバーソンに真偽を鑑定してもらうつもりのようだ。もちろん偽物、本物に限らずギバーソンやウミット海運が50億より高値をつけたらそちらに売り飛ばす。適当な海賊をでっちあげて奪われたと主張するつもりのようだ。

 

バレルズ海賊団がウミット海運に鑑定依頼の輸送の取引を行おうとしている島もまた、なぜか同じルーベック島。海軍がきている可能性も考え、正当性を主張できるようない頭なりに考えているようだ。そこにひとり、なにかを確認するように空を見上げて、大丈夫だと思ったのか降りたドフラミンゴの後ろ姿が遠ざかる。よくドフラミンゴは初めていく島が近づくと空を見上げてから、ファミリーに指示を出すことが多い。なぜか外れない。それが海賊団を率いる船長という役職なのだろうか。

 

ドフラミンゴファミリーの船はそのまま東に進み、バレルズ海賊団が廃墟をアジトにしているミニオン島に向かい、バレないような位置どりに停泊。おれ以外はみんな降りていった。

 

カンテラが船が揺れるたびにかたむいて、部屋全体をぼんやり照らしながら波打つ光をたたえている。時計の針だけが響いている。夜なはずなのに、不意に外が強烈に明るくなって、おれはたまらず外に出た。ルーベック島の方角があまりにも明るくなっている。

 

「───────!?」

 

とっさに目を閉じたが、瞼の裏にあまりにも強い残像が残る。おれは白い稲妻の残像が消えるのを待ちながら、ようやく目を開けることができた。まだ目の隅が白く残像が残っている。

 

鳥籠全体に走る電気の光、あちらこちらから発火して大炎上しているルーベック島がみえた。今度ははるか上空目掛けて突き抜けていく爆発と繭のようにからみついた糸に閉じ込められたなにか。また電気が走り、その頑丈なはずの繭はあっさり引きちぎられてしまい、電気をともないながら燃えていく。満月に黒い影がうつる。

 

一瞬すぎてわからないがドフラミンゴではなさそうだ。ウミット海運の担当者だろうか。そこに真横からすさまじい勢いで通り抜けていくのは、ルーベック島近くにあったはずの巨大な岩々。ドフラミンゴが高く跳躍して逃げたそいつの真横に豪快にぶつけたようだ。ふっ飛ばされた黒い影をおいかけて雲に糸をひっかけながら飛んでいくドフラミンゴらしき姿がうつる。

 

爆発音がこだまして、まるで花火のように真横に並んで飛んでいく。あっというまに見えなくなってしまった影。時折、雷鳴に似た音と光が見えるから、ルーベック島付近のどこかで戦っているのはわかる。だがもう満月にひたすらに燃え続けるルーベック島の黒煙がその姿すら覆い隠してしまい、その戦いの結末をみることは叶わなかった。

 

おれは呆然とみていることしかできなかった。なんだあれ。そもそもドフラミンゴの奥義ともいうべき鳥籠をやぶるってどんな奴と戦ってるんだドフラミンゴは。

 

おれはようやくドフラミンゴが誰にもついてくるなと言った意味、誰もついていかなかった理由を悟るのだ。ドフラミンゴが相手と戦うには他の幹部達がいると連携はとれるし、数の有利はとれる。だが均衡がやぶられて防戦となった瞬間に、守ってやらないといけない隙もできるのだろう。悪魔の実の覚醒した技を同時並行で長時間使役できるのは、ドフラミンゴファミリーの中ではドフラミンゴしかいないのだ。

 

しばらくして、バレルズ海賊団からオペオペの実を強奪するのに成功した幹部達が帰ってきた。いまだに黒い煙に阻まれているルーベック島をみて、派手に暴れてるなあと軽口を叩くやつはいたが驚いてるやつは誰もいなかった。なんだそのよくあるって反応は。

 

「そういえば、ついて行ったロシナンテ中佐は?」

 

「バレルズ海賊団の引き渡しに仲間を呼ぶってわかれたんねー。ミニオン島に残るって」

 

「船長のバレルズは元海軍将校らしいぜ」

 

「ローみてえなガキを見つけたから、海軍が引き取るんだと」

 

「そんなことより、これがオペオペの実だ。図鑑と比べた。間違いないな、ロー?」

 

おれの目の前に悪魔の実辞典の該当ページの図解と全く同じ姿形をした悪魔の実が並ぶ。頷いたおれは食べることにした。

 

この時口の中に広がったクソまずい味は二度と忘れないだろう。思わずうめいた。みんな通ってきた道だからと懐かしそうに言われてしまう。

ムカついてきて、一口でいいと知っていたが意地で食べ切る。ここはあくまで通過点だ。

 

オペオペの実を食べれば治るわけではなく、珀鉛病を治療できる数少ない手段でもあるとは、自分で自分を治すことが出来るという意味だ。

ドフラミンゴが全世界の闇のシンジゲートを駆使しても治療法が見つからなかった。

 

これはもうオペオペの実の能力で引っこ抜いた自分の肝臓に直接メスで切り刻んで蓄積された鉛を摘出するという荒療治しか今のおれには思いつかない。能力を使うたびに体力を消耗するらしい。右も左もわからない中、ぶっつけ本番の究極のワンオペがはじまった。

 

ぶっ倒れて、寝て、休憩してから食事をして、また能力を発動させてを繰り返す。初めから全部除去できるとは思ってない。何度目かの起床をする。すっかり外は朝だった。

 

外に出るとまだ島は炎上していて、近づくことができない。おれにできることははやくオペオペの実の勝手を掴むことだ。心配することじゃない。

 

気づいたらまた朝を迎えていた。まだ島は燃えているが、少し風が出てきて煙が晴れてきた。昼頃になるとようやく島の全貌がみえてきた。

船を近づけていくと、地形という地形が消失しており、まるこげの世界が広がっていた。

 

たぶん鳥籠発動前に廃墟や隠れられそうな場所を糸に変えたり、攻撃に転用したり、熾烈な攻防があったのだろう。島中のありとあらゆるものが糸になった結果、鳥籠発動からのあの電気を活用した炎上になった。そしてなにもなくなってしまった。

 

人影がみえた。ぼろぼろだったが、ひしゃげたサングラスをかけたドフラミンゴが誰かと並んで歩いてくるのが見えた。ゾオン系の悪魔の実の能力者だろうか。真っ黒なうさぎの獣人がドフラミンゴの横を歩いている。

 

「決闘でもねえくせに、1人で勝手に盛りあがりやがって。いい加減にしろよ、このウサギ野郎」

 

「なんだよー!最初から殺す気できたのはどっちさー!動きを封じて猛毒とか薬品とか何考えてんの?僕じゃなかったら死んでるよ!?」

 

「むしろ正面からひっかぶった癖になんで動けるんだよ、毒回るの遅すぎるだろうが。だいたい海楼石仕込みすぎなんだよ、お前は。全部除去すんのにどんだけかかったと思ってやがる」

 

「なんだよ、悪魔の実の能力者へのスタンダードな対抗手段でしょ?」

 

「うるせえ。こっちは覚醒してんだぞ。それを覇気のゴリ押しで突破してくるいかれ野郎に対策して何が悪い」

 

どうやらウミット海運の担当者はこの黒いウサギらしい。やけにドフラミンゴと会話が弾んでいるのは気のせいだろうか。ウサギモデルの悪魔の実で、電気がつかえるなんて記述なかったはずだが、なにか派生技でもあるんだろうか。

 

ようやく船の前までたどり着いたドフラミンゴが、さすがに疲れた様子で労いの言葉にかけてくる幹部連中に応じている。

 

「だいぶ顔色がマシになったな、ロー」

 

「おとといまで死にかけてたおれより、なんで重症なんだよアンタ。話をするんじゃなかったのか」

 

「今回の担当者が大外れをひいただけだ、気にすんな。先に完治させろ、おれはすぐ死ぬわけじゃねえ。手術の真似ごとくらいならできる」

 

「ウミット海運の制裁じゃないのか?」

 

「話せばわかるが、それはそれとして戦わせろな奴が来やがった」

 

黒ウサギはドフラミンゴがいっていたように、おれの血液さえ持ち帰れば譲歩すると笑っている。はやく完治させよう、重病人がふたりもいる。

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